【上回った修正力】プレミアリーグ第19節 アストン・ヴィラ vs チェルシー

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皆さん、どうも。今回はヴィラ×チェルシーのマッチレビューを行っていきます。最後まで目を通して頂けると嬉しいです!

 

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スターティングメンバー

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ミスを誘発させるヴィラ

ここ数試合のチェルシーは中央でのミスが目立ち、そこからカウンターを受けて失点を喫すること、ピンチを招いてしまうことが多い。明確に中央、詳細に述べるとCHジョルジーニョとカンテのところだ。チェルシーはジョルジーニョのボールの引き取り方と離し方、スペースメイクによってとんでもない安定感を発揮していたが、ここ数試合はそのジョルジーニョがコンディションを落として、らしくないミスを連発。さらに本職ではないチャロバーやロフタスチーク、サウールも彼の代役を完璧に遂行することが難しかった。(ジョルジーニョと同レベルのプレーを求めるのは酷だが)

 

当然のことながら対戦相手はここを見逃すわけがない。もちろん、アストン・ヴィラも。そのために中央のミスを誘発させる守備とサイドの『人キャッチ』のタイミングを明確にすることで、カウンターでチェルシーを苦しめた。

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①ブエンディアとワトキンズがハーフディフェンダーに向かっていける立ち位置
②ラムジーとサンソンはSTの縦パスを消しつつWBへ出て行ける立ち位置
③ルイスは中央のカンテ/ジョルジーニョへ向かって行ける立ち位置
④イングスはジョルジーニョを背中で消す

ヴィラは3CBに向かって行ける立ち位置を取り、斜めから中央のジョルジーニョに差し込むためのパスを遮断、もしくはその精度を絵着る限り下げていく。当然、チェルシーは一度、中央でポイントを作ろうと考え、そして多少のプレッシャーをものともしない選手が揃っているので、中央に差し込むことが可能になる。

ヴィラはここまで許容し、中央に差し込まれて時点でゾーンから人を意識した守備に移行する。こうすることでボールホルダーに対してプレッシャーを与えつつ、出しところにマーカーを置くことで選択肢を削いでいく。これで特に横パスのミスを誘発してカウンターに出て行くことを考えていた。

さらに外側に逃げられたときには、早い段階で『人キャッチ』に移行する。

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ハーフディフェンダーにパスが入ると、ワトキンズ/ブエンディアがプレスを開始。この時は中央をしっかりと消しながらプレスに出て行く。
他の選手はこの瞬間に人を明確にキャッチしに行く。
WB⇆IH・ST⇆SB・CH⇆DMF・逆CH⇆逆CF(ST)
基本はこの担当で入る場所、その次を潰しにかかる。

ヴィラはサイドの捕まえ方のタイミングもその強度も申し分ないものだった。試合開始から戦うジェラードのチームに、トゥヘルチェルシーはとても苦しんだ。当然、チェルシーはこれを打破するために動きを加える。それがWBの立ち位置を少し下げてSTが幅を作ったりと様々なことを行ったが、ここには担当ゾーンを明確にしていたヴィラが上回った。だからこそ、ヴィラは人キャッチのタイミングが正確で、迷いがないのでその強度も維持できた。さらにCBもしっかりとスライドを行っていくことで、カバーポジションを取り、場所を消すこともできていた。

 

このようにしてヴィラはチェルシーのミスを誘発してヨーロッパ王者を苦しめることに成功していた。

 

レアルと酷似の前進の考え

この試合で僕が最も興味深いと感じたのがアストン・ヴィラの前進の考え方がレアル・マドリードと酷似しているなということだ。ここ最近、僕が感じているのは『ハーフディフェンダーの司令塔化』が試合を支配していく上でポイントになっていると思っている。もっと詳細にいうと、プレッシングプレーヤーの外側で起点を作り出すということだ。だから1つ外側、とは言っても大外ではなくいわゆるハーフスペースで起点を予め作れる3バックシステムを採用するチームが増えているのではないだろうか。

 

そしてレアルもヴィラも嵌めパスとなるSBの場所に『IHを落とす』ことを行う。これを行うことでどのようなメリットがあるのか。SBよりもパスのセンスがあり、場所を見つける目、展開の先がIHにはある。そしてサイドを往々にして嵌めパスになることが多い。

だからこそプレスを呼び込むに至るのだが、このプレスを個人で打開することが叶うのがIHという訳だ。だからこそ、ハイプレスを剥がし、そしれ剥がした段階で速攻に移行することが可能になる。そして速攻に移行するタイミングも至極シンプルで、共有しやすい。

また、IHを落とすことで中央のマーカーを引き連れることができれば、中央が空いて縦パスを打ち込むことができるし、さらに全体的に相手を広げることもできる。そしてIHが降りることで、より縦のプレーが得意なSBを押し上げて攻撃に人を送り込むことも可能になっている。

この早い攻撃を仕掛けるための前進の考え方が僕はヴィラとレアルが酷似していると感じた。

ではこの試合、ヴィラはどのようにしてチェルシーのプレッシングを回避していたのだろうか。

この試合のポイントとなっていたのは「WBの手前と背後」になっていた。

WBの手前

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土台はGKを含めた菱形
IHが落ちる⇨SBを押し上げる
これを行うことでWBを押し下げる
ワトキンズとブエンディアでCHをピン止め
(チェルシーはCBに対してSTが外切りプレスを行う)

先ほども触れてたIHが落ちる動き。これを加えることでヴィラはSBを押し上げることを行う。これをすることで、チェルシーWBを押し下げてWBの手前にスペースを作り出す。これで菱形のパス回しでSTのプレッシングを呼び込んで、外側に落ちたIHへミドルパスを供給することでプレッシングを回避。そしてそこから早く攻めることを考えていた。

少し話しは脱線するが、ここでレアルと違うのはSBの立ち位置で、レアルは内側にSBを立たすことが多いが、ヴィラは決まってSBが幅を作り出していた。前進の土台・考え方は一緒でも、有する選手のキャラクターにあった方法をお互いに選択しているので、このような違いがある。

WBの背後

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SBが低い位置でWBを釣り出す
IHがWBの背後に流れてスペースを取る

このようにWBを釣り出すためにSBが低めのポジションを取ることもあった。この場合、空いてくるのがWBの背後になる。ここにIHが外流れを行うことで、GKもしくはCBからのミドルパスを引き取る回数が多くなっていた。これはジョルジーニョ側で行われることが多く、カンテだとスプリントとカバーエリアの広さで、強引に間に合わすことが可能だ。だからカンテよりもアスリート能力の低いジョルジーニョサイドで行われることが多かった印象だ。

 

このようにしてヴィラはプレス回避を考えて、速攻にスムーズに移ることができていた。ここのどこにポイントを作るのか、プレッシングプレーヤーの外側で起点をどのように作るのか、という考え方はこれからもっと詰めていきたいと思う。

 

チェルシーの修正とは?

不運と言ってもよい失点。これによって再びクリーンシートで試合を終えることはできなくなったが、そこからのリアクションは良かったと思う。中央・サイドともに満足に前進できない中でも、オドイが降りてきてドリブルで起点を作ったり、マウントの気の利いたワンタッチパスで、中心点のジョルジーニョに展開を促したり、さらにネガトラで無理矢理中央に起点を作ったりと、徐々にチェルシーもヴィラの守備を上回っていく。特にネガトラからの起点の作り方はカンテがいるといないでは、その精度と完結率は全く違うのは明らかだ。同点ゴールのPKに繋がるシーンを見れば分かるように、WB +ST vs SBの構図を作り出すことができたのはカンテのネガトラからだ。

このシーンで初めて大外で数的優位を作り出すことができて、SBとCBを引き剥がすことができていた。

 

チェルシーはこのシーンを多く作り出すために、後半からCFルカクを投入。これがかなり大きな効力を得ることになる。中央に構える(ペナ幅で動く)ルカクの存在はヴィラのCBを引き付けることができる。これはヴィラのCBのスライドの遅れを生じさせ、SB–CBを引き剥がすことが可能に。

だから大外のWBがフリーになることが多くなり、さらにチャンネルランも多くなっていく。そしてルカクが入ったことにより、クロスのターゲットマンが明確になり、クロスからの攻撃も迫力が増していた。ルカクの逆転ゴールは必然的だったと思っている。

ルカクの効力は外側の数的優位と1つ内側のランニングをより効果的なものにしていた。シンプルだがこの修正はかなり効いていた。

 

さらに、守備でも修正を加える。ルカクと交代したのCBチャロバーだ。これでCBに入ったのがジェームズでWBに入ったのがプリシッチに。この修正はスリアドのスピード感を意識したものだった。

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落ちるIHを空ける
WBは1つ内側でHSの縦パスを消す

修正はWBのプレスの立ち位置とCBの立ち位置だ。WBはまず外落ちするIHへのプレスを行うタスクに変更されていた。ここでハーフスペースに立つ選手にパスを出されては意味がないので、まずは内側に立つように修正。さらにCBは幅を作り出すSBに対してすぐに対応できるように、いつもよりも外側に立っている印象を受けた。

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WBの内⇨外のプレス
CHの玉突きスライド
CBのSB対応
逆WBのバックラインへの斜めスライド
これで非対称のプレッシングを完結させる

チェルシーはIHへのプレスと幅を作り出すSBへのプレスのスピード感を出すために、ジェームズをCB、プリシッチをWBに配置。だからこそ、IHにミドルパス(上のパス)が出た時に、一気に詰めることが可能になっていた。これでIHにプレーさせないことでヴィラの前進を食い止めることに成功。さらに奪う選手、もしくは奪った先にいる選手はより攻撃的な選手なので、カウンターも完結させることもより簡単になっていた。

だからこそ、チェルシー右サイドで守備の完結が多くなり、カウンターでより早い攻撃を仕掛けることが可能になっていた。

そしてコバチッチの投入で3−5−2に変更することで、2CBには2CFで、中盤は当て嵌めることを選択して、より守備の強度を上げていく。この修正のトゥヘルのメッセージは「1つ前で攻撃の起点を潰せ。そしてカウンターでもう1点取って来い」というものだったではないだろうか。

より少ない人数で、そしてより鋭利にカウンターを仕掛けることができるようになったチェルシー。最後はルカクのバケモノプレーでPKを獲得して、試合を終わらせることに成功した。

 

紙一重だった試合

正直、どちらに転んでもおかしくなかった試合だった。戦術的で戦うチームになったヴィラ。仮にジェラード監督がベンチにいたら大きく試合の顔は変わっていたのではないだろうか。それぐらい、ヴィラのパフォーマンスは好印象だった。チェルシーに対してどこを潰せばよいか、そしてどのように攻めるのが有効かが整理されている試合だった。

対するチェルシー。特に前半はかなり苦しんだ。最前線に起点となれる選手がいる重要性も再確認することもできた。この試合でルカクがいなかったら、正直キツかったのではないだろうか。それでもトゥヘルの修正とそれを即座にプレーできる選手たちはさすがだった。

そして両選手の個々人のキック精度とターンの技術の高さが際立った試合。個人技もチームとしての戦い方も見どころ満載の試合。ぜひ皆さんも見返してみてはどうだろうか。

 

最後までありがとうございます!

今回の記事はここまでとなります。ここまでお付き合い頂きありがとうございます。

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