【試行錯誤のための引き出し】J1第26節 サガン鳥栖 vs 横浜F・マリノス

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今回はJ1第26節 サガン鳥栖×横浜F・マリノスについてに考えて行きます。

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では早速、この試合についてを考えていきましょう!

 

 

スターティングメンバー

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Chapter1:サガン鳥栖の考え

上位対決となった大切な一戦。ホームにビッグウェーブに乗っているマリノスを迎え入れた。彼らが乗る波に飲まれないために、ホームチームは戦い方を少し変え、マリノスを転覆させようと試みた。

では彼らはどのような考え方を持って試合に臨んだのだろうか。

 

1−1:ハイプレス→ショートカウンターの考え方

まずはハイプレスの局面から考えていこう。

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プレスの当て嵌め方

まずはプレスの当て嵌め方。彼らは前からプレスをかけていくことで、マリノスの組み立てに圧力をかけて、満足に前進させないように仕向けた。

だから上の図のような個々のタスクとなっていた。CBまで当て嵌めにいくことで、GKからの近くの組み立てを牽制した。もちろん、中盤もきちんと当て嵌める形になり、極め付けはCBエドゥアルドはCFセアラに対してマンマークを行う。

 

これでボールの移動中にSBに対してWBが出ていくことになっていた。ここでWBが出ていくとここに連動してSHにCBが出ていくように設定していた。

そして以下のようにボールを奪うことを狙う。

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CBの選択肢を消す

まず考えていたのが、CBの選択肢を消すこと。この時にGK→CBのボールの移動中にWBがSBまで出ていくことを行う。ここのプレススピードがかなり重要になっており、これで上の図のように選択肢を消していくことができるようになっていた。

そしてもう1つが以下のものだ。

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中央を締めといてGKからのパス

このようにそもそも中央を当て嵌めているので、GKからSBへのミドルパスを打たせることで、ボールを回収していく。もちろん、ここでもボールの移動中にWBのプレスのスピードが重要になる。ここで間に合えば、SBはボールの処理とWBのプレスをかわすことを考えなければならなくなる。だからミスを誘導することができてボールを回収することが適う。

このようにしてサガン鳥栖はハイプレスを完結させることを考えた。

 

そして上記の方法でボールを回収することができれば、1本目のパスは必ず前に設定されていた。ではなぜこの1本目のパスが前方向だったのか。

これはマリノスCBの間を割るパスを打つことで、CBを内側に背走させることを考えていたからだろう。こうすることで、内側にいるサガン鳥栖CFの方が場所的に優位に立つことができるので、できるだけ早く、そしてなるべくCBを背走させれるパスを1本目のパスに設定していた。

だから、CF小屋松や酒井が背後をシンプルに取ることが多く、チャンスを作り出すことができていたのだろう。

 

1−2:ボール保持の考え方

当然ボール保持、下からの前進も考えていた。これは普段している戦い方を行うことで、背後を取って、一気にチャンスを作り出そうと試みていた。

ではなぜ、背後を取ることができたのだろうか。ここに焦点を当てて考えてみたい。

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左サイドで前進して背後を取るために

まずサガン鳥栖が特に動かしたいのがOMFマルコスだ。ここを動かすことで、CBのところではDMF樋口を消されている状態になるのだが、その先で優位に立つことができるようになる。

その先というのが、上の図の白のエリアだ。ここで普段通りの可変を行うことで、CHとSHに対して数的優位を作り出す。ここで重要なのが、DMF樋口がプレスに出たOMFの背後でフリーになっていることだ。

なぜこれが重要になっていたかというと、樋口を消すためにCH扇原がここまで出てくる立ち位置をとることが多くなっていた。こうなると、マリノスCHはIHを捕まえることが多くなっていたのだが、DMFとIHをみなければならなくなる。この優位性を作り出すために、OMFマルコスを動かすことが大切になる。

さらに、CB大畑が幅を作ることで、SHエウベルを外側に引きつけ、WBが内側に入ることで、CH扇原の背後をとりつつ、SB松原を中に寄せることができるようになっていた。

これで主に以下の3つのパターンで背後を取ることができていた。

 

【1つ目のパターン】

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【2つ目のパターン】

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【3つ目のパターン】

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このようにサガン鳥栖は背後を意識して守備と攻撃を組み立てた。この考えに沿うことで、マリノスのハイラインの背後にボールを落とすパスが多くなり、CBを背走させることができ、それによって再び前からプレッシングを行えるようになっていた。

 

この方法が嵌り切り、特に前半は失点こそしたものの、サガン鳥栖は自分たちのペースで試合を運べている手応えはあったはずだ。

 

ではここからはマリノスが攻撃に出るために行った対応についてを考えてみよう。

 

Chapter2:試行錯誤するための引き出し

まさにこれだ。マリノスは試行錯誤するための引き出しが多い。だから、嵌り切っていたとしても、ある程度前進させることができ、その引き出しの多さが相手を混乱に誘う。

ではどのような試行錯誤を行って、最終的に解を導き出したのだろうか。

(悔しいかな、まだ全部の引き出しを見つけることができていないので、僕がこの試合で見つけたものについてをここで紹介していきたい。)

 

まず行っていたのが、SBとCHの入れ替わりとその奥のパスコースの提供だ。

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このようにSBティーラトンとCH扇原が入れ替わることで、IHとWBのマークのズレを生じさせようと試みていた。そしてそのズレを利用して、1つ奥側のOMFマルコスへの縦パスを打ち込むことを考えているように見えた。

だがこれは、IHとWBのマークの受け渡しのゾーンとタイミングが明確になっていること、OMFマルコスにはDMF樋口がマンマークで着いていくように整理されていたので、この方法はひとまず上手くいかない。

 

次に試したことがこれだ。

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まず行うことがSBとWBの距離を作り出すこと。これを行うことでWBのプレスの出方を伺っていた印象だ。この時のサガン鳥栖WBのプレスの掛け方はSHを消すように外切りのプレスを行うようになっていた。

ここでOMFマルコスが流れてボールを引き取ることもあったが、CFセアラ降りてきてボールを引き取ることも行った。これを行っていく中で、逆サイドへの対角のパスを打ち込むことが徐々に見受けられるようになっていった。

SBのキャラクターの違いも大いに関係しているが、これを行ったので特に右SB松原が内側に入ることが少なく、内側のレーンをランニングすることも少なかった。

 

だがここでも触れたように対角のパスを数本打ち込み始めてから、SB松原も徐々に内側で、さらに高い位置にポジションを取るようになっていく。

 

その前に、SB松原が内側に入る前に行っていた、CFセアラの引き取り。この精度を上げるために行っていたことについてを話していこう。

それがシンプルな縦の入れ替わり、セアラとマルコスの入れ替わりだ。

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このように入れ替わりを行うことが多くなっていたマリノス。ではなぜこれに効力があったのか。

それはDMF樋口とCBエドゥアルドのタスクに大きく関係している。この縦の入れ替わりを行うことで、マークの入れ替えを強制した。これで、CFセアラが勝負するのが、DMF樋口になる。樋口の視野外から降りてくるセアラ、かつセアラは勝負するのがCBエドゥアルドではなくDMF樋口になったため、ボールを収めることが容易になる。

仮にここでCBエドゥアルドがそのまま着いていくと、出て行ったスペースにマルコスがいるので、一本のパスで背後を取られるようになる。だから強制的にマークを受け渡させることができ、セアラがボールを収めることができるようになっていた。

さらに、ここに縦パスを打ち込むのはSBだけでなく、GKからもラインを飛ばして打ち込むことも行うようになっていく。

 

そして安定してボールが収まり始めると、SB松原が内側に出てくるようになる。この内側のランニングがほとんどなかった前半だったが、先制ゴールの一歩手前の局面では、SB松原が内側をランニングしている。そしてそこに残っていた松原に、GK高丘から一本の縦パスが入ったことで、先制ゴールが生まれた。

このように、現状を打開していくための試行錯誤とそれを行うための選択肢が多いので、マリノスはブレずにアタッキングフットボールを展開できるのではないだろうか。

 

道理に適う強さ

マリノスは理不尽な強さではなく、道理に適った強さだ。アタッキングフットボールを掲げるために、それを実行するために、クラブが動き、スタッフが動き、選手が答える。付け焼き刃ではなく、しっかりとした土台がある強さだ。どんな相手にも信念を貫く意志があり、そしてそれを実行するだけの引き出しがある。だから選手たちは伸び伸びとプレーをすることができるのではないだろうか。

もちろん忘れてはならないのが、個人の技術も存外に高いということだ。マルコスの場所の取り方やセアラの強さと柔軟性、前田の速さ、バックラインに目を向ければ対人の強さと、配球能力の高さ、喜田と扇原のポジショニングとリスク管理にもいつも唸らされる。

これら選手の能力を生かし切るためのチームがマリノスにはあり、だからここまで勝利を積み上げているのではないだろうか。この勝利でフロンターレの肩にとうとう手をかけたマリノス。果たしてこの優勝レースはどのような結末になるのか。

リーグ終盤に差し掛かるJリーグも目が離せない。

 

今回の記事はここまでとなります。ここまでお付き合い頂きありがとうございます。

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