【攻撃は最大の防御なり】J1第25節 横浜F・マリノス vs ベガルタ仙台

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今回はJ1第25節のマリノス×ベガルタの試合について考察を広げていきます。

内容は以下の通りとなっております。

 

Chapter1:ベガルタの守備プラン

Chapter2:攻撃は最大の防御なり

2−1:横のサポートの作り方

2−1−1:もう1つ奥のサポート

2−2:SBの抜け出し

2−3:マルコスのセンス

Chapter3:マリノスの攻撃がなぜ終わらないのか?

 

 

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では早速、この試合についてを考えていきましょう。

 

 

スターティングメンバー

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Chapter1:ベガルタの守備プラン

 マリノスの攻撃を受け止めるために、ベガルタ仙台もしっかりと守備プランを用意していた。ではどのような守備プランを行っていたのだろうか。

ではまずベガルタ仙台のスタンスについてを考えていこう。そのスタンスを以下の図にまとめてみたので、確認してもらいたい。

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ベガルタの守備スタンス

まずチームとして行うこと、それが「外回りにさせる」ことだ。これで中央に差し込ませずに、サイドを狭くしてボールを奪い切ることを考えた。

 

このチームのスタンツを実行するために、上の図のような個々のタスクがあった。特にSHはSBのマンマークを行う重要なタスクがあり、マリノスSBが絞ったり、幅を作ったり、チャンネルランをしたり、これらによる混乱を防ぐためにSHがマンマークを行うようになっていた。

 

さらにWGにはSBを当て嵌めることが主なタスクで、中央レーンの選手は常に数的優位を作るようになっていた。

 

1つ例を紹介しておこう。

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このように外回りにさせると自然とWGにボールが集まってくる。そこに出ていくのがSBになっていた。だがこうなると自然とチャンネルが広がる。そしてマリノスはそこを使うことが上手く、特に右サイドではSB小池がチャンネルランを行うことが多い。

もちろん、そこを使わせないためにSHがそのまま着いていくように設定されていた。だからベガルタは場所を埋めることができて、ある程度ゴールからボールと人を遠ざけることが叶っていた。

 

だが、この守備の上を行くのがマリノスのスピード感溢れる攻撃だ。ではマリノスはどのように攻撃を構築し、崩していったのだろうか。

 

Chapter2:攻撃は最大の防御なり

この試合もマリノスはゴールを量産。前節は前田がハットトリック、今節はセアラがハットトリック。対応もプレースピードも相変わらず早く、圧倒的な攻撃力を誇った。

ではこの試合、どのようにして中央を消してくるベガルタ仙台を攻略したのだろうか。

 

2−1:横のサポートの作り方

中央を消されて外回りのボールの動きになるのだが、マリノスは横のサポートで1つ内側に入っていく。

ではどのようにそこサポートを行っていたのだろか。

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SHを動かして場所を開けてサポート

まず横のサポートを効果的にするために、まず行うこと。それがSHを動かすことだ。この方法は至ってシンプルで、SBの立ち位置を決めさえすれば、ベガルタSHを動かすことができる。

だから上の図のように、若干低い位置を取ることもあった。これでSHを動かしといて、WGへボールを動かす。そいてSHの背後のスペースにOMFとCHが流れてくる ことで横のサポートを2つ作り出す。こうすることでWGは逃げ道を2つ得ることができ、さらにスライドしてくるベガルタCHに対して一瞬数的優位を作り出すことが可能になる。(SHのプレスバックがあるので、一瞬の数的優位になるが、その一瞬がとても大切)

 

このように横のサポートを作り出すことがオートマチックになっているので、プレーがスムーズになり、ここからパターン化されているワンツーでサイド奥をとることができるのだろう。

 

2−1−1:もう1つ奥のサポート

もちろんワンツーだけの抜け出しだけでなく、横のサポートの「その奥」も選択肢として用意されている。

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CFへの横パス(斜め)

このようにベガルタの横のスライドと縦のスライドが間に合うと、もちろん横のパスが詰まるのでパスを出しにくくなる。(そこに出しても取られることが少ないのもマリノスが強い理由の1つなのだが)

そこで横のパスを消されると、その奥のCFへの横パス(斜めの縦パス)を打ち込むことで、一気に2ndラインを超えることもできるように設定されている。

だからかつてはオナイウ、現在はセアラが斜めのパスを引き取ることが多くなっている。この選択肢も事前に用意することができるので、パスがいとも簡単に通るようになっているのではないだろうか。

 

2−2:SBの抜け出し

次に話していくのがSBの抜け出しだ。これも見慣れた光景で、だが対戦相手は不思議とこれを止めることができない。これには理由があり、準備の早さ(動き出しの速さ)が肝となっている。

ではこの試合はいつ、どのようにしてSBの抜け出しを促していたのだろうか。

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背後に抜け出す準備

まずSBが抜け出すための準備を解説していこう。この図のように、まずは2トップ脇にスペースを作り出すことを行う。そのために、この試合のマリノスはCHが下がることが多くなり、さらに2トップの間にCHが1枚残る。

まず、バックラインを3枚にすることで2トップを脇を持ち上がれる選手を用意する。さらにここのスペースを作り出すために、間のCHとパス交換で2トップを中央に寄せる。これで、2トップ脇にスペースを作り出す。(CFもプレスは間に合う距離だが、動かしている分だけ時間を持てる)

さらにベガルタの守備のタスクを利用して、SBが一気にMF-DFのライン間まで上がっていく。こうなるとSHがついてくるので『SHの手前』(青のエリア)になる。

これがSBの抜け出しの重要な準備となる。

ではなぜ、この準備で抜け出すことができるのだろうか。

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SBが内→外で抜け出す

Cbが持ち出したことで起こり得ること。それが視線の誘導だ。これが成立するのはCBの持ち出しがあるからだ。だから上の図のようにSHの視線を引きつけることができる。そしてこの視線を誘導した時点で、ほぼ勝負は決まっており、SBが抜け出す準備をしていて、CB→WGのパスを打ち込んだ時点でSBはライン間から抜け出しを行っている。

そしてボールを受けたWGは1タッチで背後に流すことで、SBがサイド奥をとることが可能になっている。

これで一気にスピードを上げて攻撃を仕掛け、全体を底上げすることができるようになっているのだ。

 

2−3:マルコスのセンス

次はチームとしてではなく、個人に焦点を当ててみよう。誰がどうみても非凡な選手、マルコス。彼の動きがマリノスに相乗で優位性を与えることができている。ではどのような動きが、マリノスというチームに優位性を与えているのか。

 

その動きというのが『空いた場所』をとるセンスだ。この動きがあるので、マリノスは相手よりも優位に立つことが叶う。

これだけでは理解しにくいと思うので、1つ例を挙げてみよう。

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WGでSBを動かして場所を開ける

このようにWGが下がってボールを受けにいくことでSBを動かす。この時に空いてくるのがSBの背後だ。マルコスは空いた場所を見つける眼とそこを取るセンスが非凡だ。

そしてこの動きを加えることで以下のような優位性を取ることができる。

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守備者をひっくり返す

このように、2−1の横のサポートを応用してCHでレイオフを行う。このレイオフの多さと作るスピードもマリノスに強さの1つだ。そしてこのレイオフを行うことで、空いた場所を取ったマルコスにボールを供給することで、攻撃の次のフェーズに移っていく。

この時にマルコスはSBをひっくり返すことができているので、守備者を1枚減らすことができる。この優位性をマルコスがいるのでマリノスは獲得することができるのだ。

もしもマリノスの試合を見ることがあれば、マルコスの動きとその周りのサポートを見るだけでも、面白いものになるだろう。

 

 Chapter3:マリノスの攻撃がなぜ終わらないのか?

では最後にマリノスの攻撃が続く理由についてを考えていこう。これは攻撃の時点でほぼ決まっていて、そのキーポイントとなるのが『敵陣奥深く』もっというと『サイド奥深く』だ。だからSBやWG、時にCHがサイド奥深くを取ることが多くなっている。

 

ではなぜ、これがなぜ肝となっているのか。それは『ボールを奪った選手』に焦点を当てると分かりやすい。

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ボールを奪われる場所

このようにボールを奪われる場所が敵陣サイド奥深くだとする。こうなるとまず考えられることが「セーフティなクリア」だ。これを行わせれば、自分たちのスローインにすることができる。

次に考えられることが、前線へのロングパスだ。実際にこのパスを打ち込んでひっくり返そうと考えるチームは多いだろう。だがこれは、以下の理由により難しくなる。

  1. 自陣奥深くで距離を出しにくい
  2. プレスがかかるので万全の状態でキックできない
  3. 受け手の状態は悪く、守備者の状態は良い
  4. 自陣深くに下がっているので受け手のサポートが難しい

この4つの理由により、ロングパスでの打開が難しくなっている。とくに「万全の状態で蹴れない」という理由は大きく、サッカーをやったことがある方なら分かると思うが、プレッシャーがかかると、精度は落ちていく。さらに、ここにはボールを奪われた選手と幅を作り出した選手が前向きにプレッシングを行える。

だから、圧力をかけてキックの精度を落とすことが可能になり、CHの手前、最悪CBの手前にボールを落とさせることができるので、再びボールを回収して攻撃に出ることが可能になっている。

 

そして最後に考えられるのが、ショートパスでの打開だ。これは言わずのがな、マリノスのハイプレスの餌食となる。これもサイド奥深くまで押し込んでいるので、一気に圧縮することができ、ボールを回収することができる。

 

このようにして、攻撃の時点でサイドを奥深くを取る理由があり、それが奪われたとしても再び攻撃に移れる準備、布石となっている。

ここで言うのは簡単だが、相当な運動量とスプリントが必要で、それを連戦でも難なくこなすマリノスはシンプルに末恐ろしい。

 

猛追のマリノス

特にマルコスのゴール。このゴールは衝撃だった。ハイプレスを完結させる強度を70分近くでも保てている。もちろん、選手交代でその強度を保つことができているのだが、替わって入った選手もそのプレッシングの意識と強度を持ち合わせているのだから、マリノスの選手層の厚さとしっかりとチームに落とし込んでいることが一瞬で理解できる。

今節はレオセアラのハットトリック。このストライカーが覚醒すると、もう1つ上のレベルに登るだろう。もともと、ボールを引き取る上手さを見せていたストライカーだ。ゴール量産体制に入れば、コンビネーションからでも、理不尽な形でもゴールを取ることができる。

ストライカーとはそういう生き物なのだ。

波に乗ればなんでもできてしまうのだ。

そしてそれがスタンダードになっていくのだ。

 

フロンターレの背中に手を掛けたマリノス。このまま首位の座からフロンターレを引きずり下ろすことができるのか。スリリングで魅力的なアタッキングフットボールでどこまでいけるのか、とても楽しみだ。

 

 

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