Jリーグ 名古屋グランパス×横浜F・マリノス 〜3-3-1-3の意図とグランパスの守備とは?〜

皆さん、ご機嫌よう。

一番初めに自己紹介から。気になる方は下記のリンクからご覧ください!

 

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では早速、分析レビューを行っていきましょう!

 

 

はじめに

共に前節は黒星で、今節は必ず勝利を収めたいミッドウィークのゲーム。さらには上位猛追のために、優勝争いに絡み続けるために、お互いに譲ることのできない、熱すぎる一戦となった。そしてこの試合を制したのは、今シーズン、守備の安定感を築きあげ、勝利を淡々と重ね続ける、ホームの名古屋グランパスだった。そして前回王者のマリノスはこの守備を崩すために『奇策』とも取れる、「3-3-1-3」を採用。もちろん、グランパスを混乱に陥れることはできたが、その混乱している間に追加点を奪い切ることができずに、逆転負けを喫してしまった。では今回はマリノスが3-3-1-1を起用した意図と、適応していったグランパスの守備について解説していこう。

 

スターティングメンバー

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3-3-1-3の意図とは?

  • SHの背後を使うために

まずは攻撃面から触れていきたい。マリノスは3バックにすることで、ビルドアップの方法を少し変え、グランパスの守備の泣き所を突こうと考えていたのではないだろうか。ではその守備の泣き所とはどこだったのか。

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それがSHを背後だ。グランパスの守備時のブロックはOMFの選手が一列前に出ることで4-4-2のブロックを形成して守備を行う。

この時、3バックにしていることで、ポジションを変えなくても(CHが降りなくても)グランパスの2トップに対して数的優位を作り出すことが可能になる。これで簡単に2トップの脇をCBが持ち上がることが可能に。さらに、中央のCBに入っていたチアゴがDMFロールをすることで、DMFに入っている喜田を1列前に押し出す。これはいつしかのドルトムントが行っていた方法だ。気になる方は下の記事をご覧になって欲しい。

 

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このようにすることで、中央(チアゴで)にパスコースを作り出しつつ、外のCBが2トップの脇を持ち上がることができ、仮に厳しいようならば、GK経由でサイドを変えて再び持ち上がる準備を行う。

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チアゴがDMF化、喜田が一列前に上がったことで、「いつもの」4-2-3-1のような形にすることができる。これでグランパスの2CHをマルコスと喜田でピン留めし、さらにWGの前田と仲川でSBをピン留めできる。そしてWBの位置に入った高野と松原が中に絞ってCH化することでSHの背後を取れ、縦パスを引き出すことができる。

 

このようにSHの背後を使って起点を作り出すことで、ここから一気に縦に早い攻撃を仕掛けて、フィニッシュまで持っていこうという意図があったのではないだろうか。

SHの背後が使えなかった時

では補足としてSHの背後が使えなかった時にも触れておこう。これはシンプルにWGへのパスで、1vs1を仕掛けさせるか、GKに戻してもう一度やり直すかの2択になる。

GKに戻してやりことは同じことの繰り返しなので省略させてもらう。ではWGへパスが出た時はどのようになるのか。

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このように局面でSBとの1vs1になることは容易に想像できるだろう。そしてWGがボールを受けると、マルコスが3人目の動き(もちろん高野やサントスの場合もあり)、サントスが2人目のサポート、高野が後ろのサポート+ボールを奪われた時にすぐプレスにいける位置(ネガティヴ・トランジションの準備)を行う。これでリスク管理をしっかりと行っていた。このようにしてSHの背後を使えない場合はWGで時間を作り出し、一気にベクトルをゴール方向に強めて攻撃を仕掛けていた。

 

  • サイドチェンジの対策

そしてもう1つがサイドチェンジの対策だろう。これは前節の川崎フロンターレ戦で散々狙われ、そしてピンチを招いたので、その対策としてこの配置を採用したのではないだろうか。

ちなみにこちらが前節のレビュー。

明らかにフロンターレにサイドチェンジの展開を狙われていた。

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ではこのサイドチェンジの対策はどのように行っていたのか。

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シンプルに守備時は後ろを5枚にすることでスライドを行い、圧縮仕切れなかった際の逆のスペースを物理的に埋めることを試みる。これでハイプレスをかけた時にWB高野はSHの選手、またはSBまで思い切りプレスに出ていくことができる。さらに金崎に対してはチアゴがマンマークを行え、OMFに対しては喜田がマンマークを行える。これで守備のタスクもはっきりと分担することができていた。

このような守備を行い、実際に開始早々の先制点を奪うことができていた。

だがこの守備にはもちろん、弱点がある。

半ば5-1-4の守備の弱点

ハイプレスを仕掛けた時、半ば5-1-4のような形になる。もちろん、そうすると弱点となるのが喜田の周りだ。ここを使われてしまうと、バックスは後退を強いられる。そしてここを使うためにグランパスは金崎へのミドルパス、マテウスの背後へのパスを何度も送り続け、阿部が喜田の周りを使えるように仕向けていた。ここを使われる回数こそ少なかったが、マリノスはここを使われることを見せられていたため、ボディブローのようにじわじわと効いて、徐々にラインが低くなっていた。さすが阿部という立ち位置だった。

 

グランパスの守備は?

ではこの一戦に勝利したグランパスの守備について触れていこう。最初は混乱に陥っていたが、すぐに適応し、完全にマリノスのビルドアップを押さえ込んだ。ではどのように守備を行っていたのか。

  • 混乱に陥っていた理由

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まず、グランパスがなぜ試合当初、混乱に陥っていたのか。それは先ほども少し触れたように、CBに対してSHが前に出てプレスを行うことでその背後、CHの脇のスペースを使われ、CHが対応にいくことで、中央を空けてしまい、展開される…という風に、後手の守備を踏んでしまっていたから、グランパスは混乱していた。だが、このマリノスのビルドアップにもすぐに適応・対応し、守備を安定に導く。ではどのように適応していったのか。

  • 行った修正

この修正により、グランパスは守備を安定させ、そしてマリノスの前進を難しくさせた。ではどのような修正を行ったのか。

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その行った修正が「SHの立ち位置」だ。CBにプレスに出るのをやめて、絞るWBをマークをすることにタスクを変更。このようにしたことで中盤はお椀型のような形になり、中央にボールが入るとプレスを行えるようになる。さらにCBにもプレスをCFがCBにプレスを行い、OMFが立ち位置でCBとDMFを牽制する。

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だからマリノスは中央にパスを入れれなくなり、WGへのパスに限定されてしまう。(GKへのバックパスは許容)このようにするとSBはWGへの対応がより簡単になる。そしてここでパスカットを狙う、またはミスを誘う、バックパスをさせることを選択させることで守備を行う。このSHの立ち位置を変えたことが主な守備の修正だ。

 

  • 追い込み方とプレスを強めるタイミング

上記の修正を行ったことで、グランパスはハイプレスを強めるタイミングと追い込み方がはっきりとする。

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このようにWGにバックパスを出させると、これがプレスを強めるスイッチとなる。この時にWGのバックパスを受ける選手は中から外にサポートを行うWB、またはCBになる。ここをしっかりと捕まえているのがSHとCFだ。だからここでサイドをかなり狭くすることでミスを誘いボールを奪う確率をかなり上げることができる。もちろん、ここではGKへのバックパスは許容させない。

またここでボールを奪うことができなくても、ミドルパスを蹴らせることができる。これができるのは、流れてくるDMF喜田にCH米本が前に出て捕まえ、逆CH稲垣がOMFマルコスを捕まえているからだ。だからボールを受けた選手は縦パスを打ち込むことができなくなって、ミドルパスを送ることになる。そしてここが回収エリア②となっていた。

実際に同点弾もミドルパスを蹴らせて、そのセカンドを回収してショートカウンターでゴールを奪い、逆転ゴールも似たような形で叩き込んだ。この修正と追い込み方、プレスを強めるタイミングがはっきりしたことでグランパスはマリノスの奇策を押さえ込み、前進を困難なものにさせた。

 

  • 強すぎる対人

そしてグランパスの強靭な守備を支えているのは間違いなく『対人の強さ』だ。純粋にここが強いので前田と仲川にボールが入っても、良い状態で仕掛けることができていなかったし、マルコスも米本と稲垣にマークされて、ボールを触れることがままならない状態だった。さらにはCFサントスもCB丸山と中谷に潰されて、ボールを収めることができていなかった。化物揃いのマリノスの選手をほぼ抑え込める、グランパスの選手も十分化物ということが証明された一戦だったのではないだろうか。

 

まとめ

マリノスの3-3-1-3もかなり面白いもので、この試合がさらに面白くなった要因は確実にグランパスの守備の強さもあったからだろう。シンプルに対人と球際の激しさと、攻守ともに走れるマリノスとグランパスの選手の戦いは見所満載でかなり熱い試合だった。ミッドウィークにこのような試合を見れたことに純粋に感謝したい。そしてその中でも戦術的な駆け引きと、修正と対応の掛け合いが見れたこの試合は、自分の中では確実に今シーズンの見返したい試合の1つとなった。是非皆さんもこのお互いに闘った熱いこの試合を見返してみてはどうだろうか?

 

 

終わりに

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