- スターティングメンバー
- 効いたシャキリの起用
- シャキリを消すための守備
- 早く入る選択を取ったリバプール
- ポグバ右SHの起用の狙い
- 工夫を凝らす王者
- スコアレスでも見応えあり!
- サッカーを愛する全ての人へ!
Premier League 19節
リバプール vs マンチェスター・ユナイテッド
アンフィールド
結果:0−0
得点者:なし
「いつも通り」の光景が失われて早10年。モウリーニョが率いたユナイテッドで首位に立ったが、またその時とは状況が違う。より攻撃的に、そして現実的に闘うことで、とうとう今シーズン、初めてリーグテーブル首位に立った。そして何の悪戯か、このタイミングで王者にして現在2位の宿敵、リバプールとの『シックスポイントマッチ』。
この一戦でスールシャール監督の導き出した答えは、堅実に闘うことだった。これにより、ユナイテッドはリバプールの攻撃を凌ぎつつ、カウンターで好機を伺った。スコアレスの試合だったが、それでも見ていて面白い一戦だった。では今回は、このナショナルダービーを紐解いていこう。
スターティングメンバー
CBの台所事情が苦しいリバプール。重要な一戦で起用されたのはヘンダーソンとファビーニョ。さらにサプライズと表現して良いのが、シャキリの起用だ。特に前半、これが効き、ユナイテッドの守備網に穴を開けていた。
一方のユナイテッド。右SHにポグバ、中央にラッシュフォード、左SHにマルシャルの起用。いつもと違う配置には明確な狙いがった。
では早速、この試合で何が起きていたのか読み解いていこう。
効いたシャキリの起用
この試合の1つのサプライズ。それが先にも述べたシャキリのIHでの先発だ。ここにシャキリが入ったことにより、ユナイテッドの守備にズレを生じさせてブロックに入り混むことに成功していた。ではどのように入り込んでいたのだろうか。
まずはユナイテッドの守備から触れていこう。彼らはDMFチアゴを消すことを行い、ボールを外回りかつ保持させることをリバプールに強要していた。だからCFとOMFがDMFを消しながら、CBに牽制、SHはSBを意識してサイドを変えさせないこと、そしてSBがWGをマンマークする形をとる。
この守備に対して、リバプールは以下のように剥がし、IHに入ったシャキリの良さを存分に生かしていく。
まず1つ目が同サイドからIHへ縦パスを打ち込むパターンだ。これはDMFを消している選手がCBを牽制すると同時に、チアゴが場所を変えてCHフレッジを釣り出す。こうすることで、フレッジの背後にスペースを作り出してシャキリへの縦パスを打ち込めるように設計されていた。
そして2つ目がこちら。
このパターンは逆サイドからIHへ差し込むパターンだ。この時のユナイテッドの守備は上の図のように、SBに対してSHがプレスを行い、その斜め背後に立つIHに対してCHが縦スライドで捕まえる。これで逆CHのフレッジが中央のカバーのためスライドを行う。この現象を引き起こすことで、リバプールはラインを超えていく。
ここでもDMFチアゴが重要な役割を果たす。この場合は空間でチアゴがフリーでボールを受けれるので、中央に絞ったCHフレッジを釣り出し、逆IHシャキリへのパスを選択できるようになっていた。
このようにして、リバプールはチアゴのボールの受け方とスペースの作り方を利用し、CHを動かすことで、カバーエリアを広げて、スライドを間に合わないように設定していた。この現象に追い討ちをかけるため、スペースでボールを受け、攻撃を組み立てられるシャキリが先発に入ったことにも納得がいく。
シャキリを消すための守備
狙ってか、偶然か。どちらにせよ、ユナイテッドは前半のうちにシャキリを消すことに成功する。シャキリを消すために一役買ったのが、本調子に近づきつつあるポグバだ。ではどのようにしてシャキリを消すことに成功し、リバプールの攻撃を堰き止めたのだろうか。
シャキリを消すために大きく影響していたのが、ポグバが中よりにポジションをとるようになったことだ。これにより、DMFチアゴに対してCHフレッジが出た場合にも、CHマクトミネイがIHシャキリを捕まえることが可能になる。これはポグバが中に寄ったことでスライドが間に合うようになったこと、そしてIHワイナルドゥムをポグバに任せることができるからだ。
こうなったことで、ボールを持つCBはパスの選択肢がなくなってくる。これでSBが下がってサポートを行うようになるので、リバプールの最大の強みを消すことができる。
このようにデザインされてか、ポグバの個人戦術か、どちらかはっきりしないが、どちらにせよユナイテッドはこれで良い距離感でコンパクトな状態を保って守備を行えるようになった。
そして、リバプールの攻撃を跳ね返し続けて前半を折り返すことに成功した。
早く入る選択を取ったリバプール
コンパクトな守備に手を焼いたリバプール。どうしても勝って勝ち点で並ばなけらばならないホームチーム。だからこそクロップ監督はハーフタイムで早めに入る指示を飛ばした。
これはたとえ低い位置であろうとも、SBからアーリークロス、または逆SBへのサイドチェンジを行うことで、ユナイテッドSHを動かそうと試みた。現に、前半には見られなかったサイドチェンジとアーリークロスが多く見受けられ、そしてこれを行ったことで、ユナイテッドSHを釣り出し、その背後でサラーやマネがボールを受けることが多くなっていた。
だがこの攻撃も、SBワン=ビサカとルーク・ショーの極限の集中力と完璧な対応で押さえ込まれ、その先のカバーもCHとCBにされてしまい、攻撃を思うように完結できなかった。
ポグバ右SHの起用の狙い
もちろん、勝利を狙うのはユナイテッドも同様。前半は防戦一方だったユナイテッドだが、後半頭で立て続けにチャンスを迎える。そしてこの試合もう1つのサプライズ、ポグバの右SHでの起用だ。これがユナイテッドの攻撃の狙いとなっていた。
まずこれがユナイテッドのビルドアップ。彼らはリバプールのプレスを回避するために、まずSHポグバへのロングパスを選択することが多くなっていた。そしてここでSBと勝負させることで、優位に立とうと試みた。さらに、後ろから繋ぐ場合は必ずと言って良いほど、SBを経由していた。
これには、リバプールの守備が大きく関係している。リバプールはWGがCBを捕まえ、CFが2CHを見る形をとるので、SBを経由することができれば、IHを釣り出すことができる。IHを釣り出すことができれば、CFのスライドの遅れによってCHが一瞬フリーになれる。この一瞬で、CHがターンしてポグバ、またはB・フェルナンデスにボールを届ける。
そして時を経てポグバがボールを持つと、CFラッシュフォードが斜めに抜け出す。これは前半から行われていたことで、たとえオフサイドにかかったとしても、ラッシュフォードは斜めに抜け続けた。そして迎えた後半。後半からは、ラッシュフォードの斜めの抜け出しに加えて、ポグバから一気に逆サイドのSHマルシャルへボールを届ける。ここでボールを受けたマルシャルが、単独で仕掛けることで、攻撃を完結させうとする狙いが見えた。
これを行うために、右SHにポグバを配置した。右利きのポグバは外側にボールを置くことができるので、DFからは遠い場所にボールを置くことができる。そしてワンステップで飛距離と高精度のパスを出せるポグバ。彼だからこそ、このプランを遂行することができたのではないだろうか。
工夫を凝らす王者
シャキリを消され、早めの攻撃も防がれる。それならばと取った対応がこちら。
シャキリが消されたので、その代わりにC・ジョーンズを投入。彼の役割はチアゴを中央に留めること、アーノルドを高い位置に押し上げることだった。シャキリが消されてから、アーノルドやチアゴがCBの脇に降りることが多くなっており、純粋に攻撃力が半減していた。彼らの攻撃のタレントを使うために、C・ジョーンズがCBの脇に降りるようになる。これで、チアゴがミドルシュートを立て続けに打つことにも繋がっていたし、アーノルドがクロスを高い位置で上げる場面も見受けることができた。
だがこの方法も、ユナイテッドの守備陣に堰き止められてしまっていた。
スコアレスでも見応えあり!
堅実な戦い方を選んだユナイテッド。それに対して攻撃に比重をおいたリバプール。仕掛けたリバプールと、対応し逆に仕掛けたユナイテッド。お互いに思惑と対応、そして個人能力の高さが目立った試合だった。そして強く感じたのが、ユナイテッドの守備能力の高さ。組織的なカバーと引いた時の強さ。対人能力。しっかりと守れるチームだからこそ、負けずに無敗が続いているのだろう。よく聞く、『守備が良いとタイトルを取れる』という表現。現にこの試合でも守備に強さを見せたユナイテッドが首位にいる。これはもう偶然ではないだろう。早10年前のリーグタイトル。名門復活の時となるか。残りの彼らの動向にも注目だ。
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