はじめに
アーセナルとマンU。どちらも現状に苦しみ、そして全盛期と比べると牙を失った猛獣のように「恐さ」がなくなった。だがそうは言ってもビッグクラブ同士の一戦。見逃すわけにはいかない。アーセナルはアルテタ監督の下、初勝利をかけて。マンUは3連勝を、そして威厳を取り戻す為の勝利をかけて。そんなビッグマッチだったが、この試合の内容は圧倒的にアーセナルが良かった。この2試合で見せた積み上げてきていることに、さらに上乗せをし、志しているサッカーを体現し始めた。そして何よりもホームでビッグ6相手に勝利を挙げることができた。一方のマンUはずっと課題であるボール保持時の攻撃が一向に改善されず、不甲斐ない結果に終わってしまったのではないだろうか。では今回はこのビッグマッチについて紹介していこう。
スターティングメンバー
アーセナルは前節のチェルシー戦から29番ゲンドゥージに変えて34番のジャカ、怪我をしたという情報のあったSB77番のサカに変えて31番のコラシナツ、CB5番のソクラテスが戦列に復帰。ジャカが先発に戻ってきたのはアーセナルにとって大きかった。
一方のマンU。両SBが入れ替わり、マンチェスターダービーで、印象的な働きをした2人が先発。さらにOMFにアンドレアス。ペレイラではなく、リンガードが先発に。明らかに戦い方は『カウンター』だっただろう。では早速この試合のトピックスを紹介していこう。
アーセナルの新しいビルドアップ
まずはアーセナルのビルドアップについて触れてたい。アーセナルのは試合を重ねるに連れてどんどん前進の方法が改善、整理され、効果的に、能動的にボールを動かすことができるようになっている。そしてこれが基本的なビルドアップの方法。
新パターン①
そして今回はこれに加えて、新しい方法でビルドアップし、そしてそれを起点に先制点を奪って見せた。では早速、どのように前進したのかを解説していこう。
CHがバックラインまで入るところまではこれまでの試合でなんども観られてきた。(特にボーンマス戦 後半)そしてここからの前進の仕方が新しいものになっていた。C今までだとWGがハーフスペースに入り、縦パスを受けていたのだが、この試合の多くはCFが降りてきて縦パスを引き出し、そして受ける。これでマンUのCBを誘き出し、スペースを作る。そして縦パスを引き出したCFがフリックをすることでWGが抜け出すというものだ。マンUSBが絞れば対応が可能だが、CHがバックラインに入ったことにより、SBが高い位置で幅を取っているので絞ればSBに絞らなかったらWGに抜け出されるという難しい状況に追い込まれていた。この方法がアーセナルがこの試合で試した新しい方法だ。さらにこのようなパターンも見受けることができた。
新パターン②
このパターンはCHがバックラインに入らない、左サイドでの前進のパターン。
このように逆のSBがバックラインに入り、CB(特に23番のダビド・ルイス)で幅を作る。彼のフィードのうまさを生かして、CF(状況によってはWG。この試合はCFが異常に多かった)に縦パスを入れる。CBからCFに縦パスが入ることで一気にボールサイドに目線を集めることができ、さらにCHが落としのボールを前向きにもらう事ができる。これでSBが下がる事でできたスペースにOMFが入り、ボールを受ける事で一気に攻撃のスピードを上げることができていた。
そしてこのようにOMFがボールを運びながら時間を作ることでWGが斜めに、ゴールに向かう時間、そしてSBがオーバーラップをする時間を作り出す。この前進方法も何度か観られたものだった。やはりするべきプレー、ビルドアップの方法がはっきりするとダビド・ルイスは一気にワールドクラスのCBになるなと改めて感じる試合だった。
パターン③
パターン②と若干似ているのだが、これはSBにコラシナツが入っていたからこその前進方法だったかもしれない。次の試合で確認しようと思うが参考までに。
SBに入ったコラシナツは割と高いポジションを取りたがる傾向があった。CBのパス精度の高さも相まってWGの背後でボールを受けれることが多かった。そしてここからWGが内から外に抜け出す事でボールを引き出し、SBがインナーラップ。またはCFがボールを受けに降り、できたスペースにドリブルで進出。このような方法も見受けることができた。
これらの新しいパターンをこの試合で試していたので、SBが中に入ることが少なくなっていた。ヒートマップもこのようになっていた。
これがSB、メイトランドナイルズ、コラシナツ、サカのヒートマップ。もちろんここ2試合で試したビルドアップももちろん使っていた。だがこのように新しいことにも挑戦している。これだけでは語れないものもあるが、この新しいビルドアップの方法を裏付けるには良い資料ではないだろうか。
アーセナルの守備
嘘のように良くなったアーセナルの守備。特にネガティブトランジションの反応がかなり良くなったのではないだろうか。そしてこの試合の守備についても少し触れておきたい。ではこの試合はどのように守っていたのか。
まずアーセナルの守備陣形は4-4-2。これでCBにプレスをかけていく。その時にマンUのCBのマグワイアにプレスにかける場合はこのようにOMFが中央を消し、WGがSBを消す事で隣のCB、リンデロフにパスを出させる。そしてリンデロフにボールが入るとスイッチが入る。
このようにしてCBのリンデロフにロングボールを蹴らせる事でCBのダビド・ルイスとソクラテスでボールを弾き、守備をしていた。これが主にこの試合で狙っていた守備戦術ではないだろうか。(基本的な守備戦術はもう少し試合を見てから後々更新予定)
持たされたマンU
後半に入り、マンUはボールを持たされた、いやボールを持たなくてはいけない状況に陥っていた。ボールを持ってしまうと勝てなくなってしまうマンU。その要因が以前紹介したように、工夫がなく、そして動きがないから。この現象は全くもってエバートン戦と同じものだった。どのような現象かきになる方はこちらをご覧になってもらいたい。
そしてこの試合は特に選手が孤立状態で、まさに個人技頼みの攻撃になっていた。マルシャル、ラッシュフォードにボールを集めるが、サポートがないので為す術がなく、ボールを奪われ、守備に回る。マンUは負けるべくして負けた試合だったのではないだろうか。
まとめ
対照的な内容となったこのビッグゲーム。アーセナルはアルテタ監督になり、難しいゲームが続いて苦しんだが初勝利を掴むことができた。しかも内容もよく勝てたこと、ジャカも帰ってきた事、新しいビルドアップが機能した事、そして何よりもマンUというビッグクラブを叩けた事は大きな自信につながるのではないだろうか。懸念材料としてはSBだろう。重点的にこのポジションにけが人が続出しているので冬のマーケットで補強は必須だろう。アルテタ監督になり、嘘のようにアーセナルの試合が面白くなった。これからどのようにチームを組み立てていくのかより楽しみになる試合だった。
一方のマンU。ビッグ6相手に善戦を繰り返していたが、ここにきて敗戦。内容も負けパターンのもので、ポジティブな面は少なかった、あるいはなかったと言っていいのではないだろうか。冬にザルツブルクのハーランド獲得の噂が出ていたが、彼はドルトムントへ移籍。クラブの格も徐々に落ちてきている感じが否めない。果たしてこのまま「ボールを持つと勝てない」というチームになってしまうのか。それともポグバ復帰+スールシャール監督の修正を見る事ができるのか。どうなるのか、これからも注視していきたい。
終わりに
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アナラシス・アイ
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セットプレー最先端理論
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主にこの3冊で勉強しました。まだまだ読み漁っていき、面白い本があればまた紹介しようと思います。ぜひみなさんもこれらの本を読んで、そして試合を観て、このブログで自分の試合の解釈を確認していただけると幸いです。
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最後までご朗読ありがとうございます
これからもなるべくわかりやすく伝えていくので引き続きよろしくお願いします。
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では次回もお楽しみに!バイバイ!