Football Base 〜サッカー戦術分析〜

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FA カップ 南野拓実のフィルミーノ・ロールの可能性 〜エバートン戦のプレー解析と評価〜

 

 

はじめに

ザルツブルクに加入してはや5年。24歳の青年はとうとうビッグクラブに辿り着いた。CL、アンフィールドでの一戦で1ゴール1アシストと自身の能力、実力をリバプールの選手、監督、サポーター、はたまた世界に知らしめ、そして確かな実力でつかんだこのステップアップ。「日本人選手がリバプールに移籍した」という事実だけでリバプールの試合を見る人は増えるのではないだろうか。そして迎えたデビュー戦。世界最古のカップ戦とされるFAカップで先発出場。しかもマージーサイドダービーでのデビューとなった。では今回はこの一戦で見せた南野拓実のプレー解析、「フィルミーノ・ロール」の可能性を探っていこう。

 

スターティングメンバー

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引用:https://www.whoscored.com

まずはスターティングメンバーから。リバプールは過密日程ということもあって、若手主体のメンバーに。一方のエバートンはほぼフルメンバー。対照的とも言えるこのメンバー選考でマージーサイドダービーが始まった。

 

可能性を秘めたフィルミーノ・ロール

この試合で南野は3トップの一角、CFに入ってプレー。前目のポジションならどこでもハイレベルで行える南野だが、CFで起用されたのはクロップ監督が『フィルミーノの代役、もしくはもう一つのオプション』として選択肢が持てるかどうかを観たかったのではないだろうか。(もちろん、まだ1試合、しかもチームに合流して数日しかたってないので判断を下すには早すぎる)そこで、南野はフィルミーノ・ロールを行える、数少ない選手なのか。早速、解説していこう。

 

フィルミーノと南野のプレーエリアの比較

まずはわかりやすく、プレーエリアの比較をヒートマップで確認してもらおう。

フィルミーノのヒートマップ

vs レスター タッチ数:51

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引用:https://www.whoscored.com

vsウルブズ タッチ数:50

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引用:https://www.whoscored.com

vs シェフィールド・ユナイテッド タッチ数:66

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引用:https://www.whoscored.com

 

このようにフィルミーノはピッチ全体でプレーすることが多く、同じエリアに「留まる」ことがない。これは中盤のサポートを行ったり、リンクマンになったり、サイドに流れて起点になったりと様々な役割をハイレベルで行なっているからだ。だからこそリバプールにおいて、フィルミーノの存在は円滑油として必要不可欠なのだ。

仮にだが、もしもフィルミーノが他クラブへ移籍したとする。そこでフィルミーノがリバプールで見せたこの活躍ができるか問われると、もちろん活躍はするだろうが、ここまで「必要不可欠」の選手にはならないだろう。リバプールだからこそ、ここまでの活躍ができるのではないだろうか。

 

南野のヒートマップ

vs エバートン タッチ数:33

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引用:https://www.whoscored.com

 

70分までのプレー、若手主体、合流して数日、というこれらの事象を考慮してもタッチ数33は悪い数字ではないだろう。そして何よりも南野のプレーエリアも「留まる」のではなく、様々なエリアに顔を出し、サポート、リンクマン、起点、というプレーを行なっている。安直かもしれないが、このデータを見る限り、南野はフィルミーノ・ロールを行える裏付けができる。ではさらにこの可能性を探っていこう。

 

ポジショニングと動き直しと確認の精度

これが彼の最大の武器であり、そして評価を高めた要因だ。この試合もその強みをしっかりと見せた。だが若手主体で他の選手もアピールをしたいが為にパスが回ってこなかったという印象を受けた。(若干、贔屓)

それでも南野はパスが来なくてもポジションを取り直し、何度もパスを要求。このポジショニングがかなり秀逸だ。ではこれを紹介していこう。

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まずはこの場面から。南野はこのように『観る』ことに優れている。この『観る』とはただ観るのではなく、きちんと『認識』する事だ。これが土台にあるので、南野のポジショニングが光る。ここで南野がスペースに抜け出すことで手前の選手が時間を持ってボールを受けることができる。これが南野のフィルミーノ・ロールの可能性があるプレー。そして次の場面。

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このようにスペースに抜け出したことで、南野は赤線のようなイメージを 持っていたのではないだろうか。ここにポジションを取ることでCBを一枚引きつけて、味方をフリーにすることができる。この絶妙なポジショニングができるのが南野の強みだ。ここもフィルミーノと似ている部分。だが現実は厳しく、ボールを受けることができず、黒線のようにボールが動く。

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そしてボールが動いている間に周りを確認することで動き直しの質を高める。

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トラップのタイミングでボールを要求することで出し手とのタイミングを合わせる。さらにワンプレー前に確認を行なっていたので、DFとの距離をとれ、狭いスペースでフリーになれる。このDFとの距離感が上手く、そして絶妙だ。だがここでもボールが出てこない。

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そしてここでもこのようにボールの移動中に確認を行う。この確認で次のプレーの予測を行い、ポジションを決める。そして次のポジショニング。

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確認を行なったことでここのスペースでボールを受けることができる。これはよく、フィルミーノとサラーが行うコンビネーションプレーと似ているものだ。

他にも多くのこのような場面があった。

例えば23分12秒の場面。

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このようにまずはスペースに抜け出す。これは先程、紹介したパターンと似ている。この動きを何度も繰り返すことで南野は味方に時間とスペースを与えれる。

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これで時間を得た選手はここから新たに攻撃を構築。南野はすぐさまポジションを取り直す。

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そしてここでも確認を行う。どこにスペースがあり、そしてどこのスペースを空けるのか。さらにはポジションを取り直した場所もよく、DFの間に立つことで「浮いた」

ポジションをとる。中村憲剛の言葉を借りると「DFの間に立つ選手は、パサーからすると浮いて見える」。まさにそのポジショニングだ。

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このようにボールを受けにスペースに降りたことで、上の図の①と②の選手が数メートル前に上がる。ここでライン間にスペースが生まれる。

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どこに誰がいるのか、そしてどこにスペースがあるのかを再び確認。これでまたポジションを取り直す。

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次に確認するのがボールと味方の動き、DFの動き。この三つを確認した上で次のポジションをとる。

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これでスペースでフリーになれる。

もちろん他にも20分25秒からの場面や32分10秒から、33分11秒のヘディングの場面、48分18秒から、50分28秒など、多くの確認、動き直し、ポジション取りを行なっていた。この一連の流れを絶えず行うことで味方をフリーにし、そして自分もフリーになる。ここに南野の武器が詰まっており、そして数少ない、とても希少な選手となり得た。これがフィルミーノ・ロールに可能性を見い出せるプレーの一つ。

 

リンクマンとしての役割

次に紹介したいのはこの「リンクマン」。これもザルツブルク時代から得意としているプレー。その象徴的なプレーがこのプレーだ。

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まずはこのように中盤に降りるところから始まる。ここに降りることで、WGが中にランニングするスペースとSBが上がるスペースと時間を作り出すことができる。フィルミーノもここに降りることで時間とスペースを作り出している。

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そしてここでボールを受けれるのが南野。先程も述べたがここでボールを受けることによってWGが中へランニング、SBが一列前にポジションを取ることができる。これで全体を押し上げることができる。

 

この試合で南野はこのような動きをしていたが、ボールを受けれる回数が少なかった。これから信頼を得ることでボールを引き出す回数も増えるだろう。

そしてこの「リンクマン」としての役割も南野がこれからリバプールで生き残る道ではないだろうか。

 

プレッシング

このプレッシングに関してはリバプールに必ずフィットすると多くの人が感じていたのではないだろうか。ザルツブルクリバプールはプレッシングカウンターという戦術を取り、その中で南野は揉まれてきた。だからこそリバプールでもプレッシングに苦労することはなかった。実際にこの試合もしっかりとプレッシングを行えており、エバートンCBにビルドアップの時間を与えていなかった。この守備時の動きに関して、この1試合で大きな評価を得れたのではないだろうか。

 

まとめ

70分までの個人的な評価として、「かなりよかった」までは行かないが、「よかった」というのが個人的な意見だ。これはまだ合流して間もない、そして若手主体のメンバーだったのを含めた評価だ。これからフルメンバーとの掛け合いが増えてくるだろう。本当の勝負はそこからで、まだスタートラインに立ったばかり。フルメンバーとどのような掛け合いをし、そしてその速さについていくことができるのか。はたまた「プレミアリーグの水」に適応できるのか。とても楽しみで、興奮する。

何と言っても、この試合で好印象を残せ、そして南野がリバプールで生き残るための道を見出せたのではないだろうか。これからの南野に期待したい。

 

終わりに

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主にこの3冊で勉強しました。まだまだ読み漁っていき、面白い本があればまた紹介しようと思います。ぜひみなさんもこれらの本を読んで、そして試合を観て、このブログで自分の試合の解釈を確認していただけると幸いです。

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では次回もお楽しみに!バイバイ!