- はじめに
- スターティングメンバー
- プレッシングの2つの意図
- 4-4-1-1のブロックの形成
- 試合で優位に立つためのビルドアップ①
- 後半のアーセナルの守備戦術の変更
- 試合に優位に立つためのビルドアップ②
- まとめ
- お知らせ
- 終わりに
はじめに
ヨーロッパリーグ 2nd leg。アーセナルはアウェイゴールを1つ奪ってのホームでの試合。圧倒的に有利とはいかないものの、多少のアドバンテージを持って2nd legに臨んだ。エミレーツスタジアムに乗り込んでくるオリンピアコスを叩き、次のステージへ駒を進めたいところだったが、まさかの敗退。このショッキングな敗戦に、選手、監督、さらにはサポーターも失望を隠せなかった。ではなぜ、1st legで先勝し、有利な状況だったのに敗戦を喫してしまったのか。今回はオリンピアコスが用意してきた逆転突破を成し遂げる為の策を中心にこの試合について紐解いていこう。
スターティングメンバー
アーセナルは週末のPL、マンC戦が延期になったため、フルメンバーでこの試合に臨む事ができるという幸運にも見舞われ、現状でベストの布陣でホームゲームを戦う。一方のオリンピアコス。バックラインのキーマン、セメドを累積傾向で失い、ベストメンバーが揃わない中で、この大事な試合に臨むことになった。
では早速、この試合について触れていこう。
プレッシングの2つの意図
何としてもゴールが必要なオリンピアコス。特に立ち上がり、プレスを仕掛ける事でアーセナルに圧力をかけた。ではどのようにオリンピアコスはプレスを行なっていたのか。
このようにオリンピアコスはハイプレス時、4-4-2の形で守備を行う。IH(主に4番)が1列前に出る事で2CBに圧力をかける。この時にCFとIHは必ずCHへのパスコースを消す。これで外回りのパス回しにさせる。この時にSBに対しては2ndラインに入ったWGが牽制、幅を取っているWGに対してはSBが牽制を行う。そして1番厄介なOMFは近くのDMF、またはIHが必ず視野に入れておく。こうする事で白のエリアにボールと人を集める。
このようにIH、WGでプレスをかける事で前進をさせず、ボールを奪い切る。この時にCFはCHとCBへのパスを牽制できる位置に。さらにSBはWGへのパスをカットできるポジションをとる事でボールサイドを完全に圧縮。この方法でオリンピアコスはボールを奪った。
さらにもう1つ、このプレスには目的があった。それはOMF、エジルをライン間に立たせないようにする事。ではなぜこのプレスがOMFエジルをライン間から追いやることになったのか。
アーセナルはバックラインで数的優位を作るためにSBがポジションを少し落として3バック化。これで数的優位でボールを持つ事ができる。だが、こうするとSBがボールを受けてもライン間にポジションをとるOMFとの距離が遠くなり、縦パスを通す事が難しい。だからOMFはこのようなポジションをとる。
上の図のようにOMFはライン間ではなく、4-4のブロックの前まで降りることでボールを受ける。これで時間を持ってボールを受けれるのだが、ブロックを形成されているので、なかなか中に入り込む事ができない。これこそがオリンピアコスがプレスをかけたもう1つの目的。OMFエジルをライン間から追い出す事で、2ndラインの選手が常に前向きでOMFの事を視界に入れておく事が可能になる。
これでアーセナルは次に解説するブロックを形成する時間を稼ぐと同時にエジルをライン間から追い出すことに成功した。
4-4-1-1のブロックの形成
プレッシングだけでは守り切れるほど甘くないのがサッカー。さらにはオリンピアコスが戦っているのはビッグクラブのアーセナル。ボールを持たれ、そして押し込まれる事など安易に予想がつく。だからこそ、この時のプランも用意されていた。
このようにオリンピアコスは引いて守備を行う時は4-4-1-1のブロックを形成する。ではなぜこのブロックだったのか。それは中央を固めつつ、さらにはアーセナルCHのセバージョスを消す事ができるから。これで上の図で表している、四角のエリアにボールを出させる事ができる。この時にSBのベジェリン、CHのジャカにはある程度ボールを持たれても良いという判断を下している。そして次の局面でこのようにしてボールを奪う。
外にボールを渡させることで四角のエリアで数的優位を作り出し、ボールを回収。さらにこの回収率を上げるため、CHをマークしていたIHがSBを、CFが替わりにCHをマークする事でボールサイドを圧縮。これでオリンピアコスはボールを持たれても耐える事ができた。
試合で優位に立つためのビルドアップ①
守備で安定したオリンピアコス。そして先制点を奪うため、オリンピアコスはこのようにビルドアップを試みる。このビルドアップで後半からのアーセナルの守備戦術を変更させ、偶然か、必然か、先制点に繫るCKを獲得している。ではまずは前半のビルドアップについて解説していこう。
アーセナルは4-4-2の形で守備を行う。この時に2トップの位置に入るOMFとCFはオリンピアコスDMFとIHを消す形をとる。そしてここでボールホルダーのCBが2トップの脇を突いて前進する。このようにする事で、SHを「タスク過多」に陥らせる事ができる。先日のアーセナル vs エバートンのように4-4-2の弱点を突く事、さらにはJリーグ、マリノス vs ガンバの「タスク過多・過少」を同時に起こすことでアーセナルよりも優位に立った。
・「4-4-2の弱点」が気になる方はこちらをご覧になってもらいたい。
・「タスク過多・過少」が気になる方はこちらをご覧になってもらいたい。
ではどのようにしてボールを動かしていたのか。
これには大きく3つのパターンがある。
・SHがSBを消す
このようにSHがSBにプレスを行った場合はこのようになる。IHが開くのでそこを使う事でWGまでボールを届ける事ができ、SBもIHもさらにサポートを行う事ができる。
・SHがIHを消す
この場合はSBにパスを出す事でWGへ届ける事ができ、そしてIHのサポートいにより、WG +IH vs SB の構図を作り出すことができる。
・CBにプレス(ボールホルダーにプレス)
アーセナルサイドからすると、このシチュエーションだけは避けたい。ボールホルダーに対してプレスにくると、CBはIHにも、SBにもパスコースを持つことができる。これで簡単に展開が可能だ。
このようにしてオリンピアコスは優位に立つ事に成功。そしてアーセナルの守備戦術を変更させることに成功する。
後半のアーセナルの守備戦術の変更
先程紹介したように、アーセナルはSHが狙われる(タスク過多に陥る)事でビルドアップの局面でかなり苦しい状況に陥ってしまう。そこでアルテタ監督は守備戦術の変更、修正に打って出る。ではどのように守備にテコ入れしたのか。
このようにSHが2トップの位置まで出る事で、CBにプレスをかける。その時にOMFがDMFを牽制、SHが出た事で空いたSBをアーセナルSBが出てきてマーク。IHにはCHがマークを行う事でパスコースを無くす。さらにバックラインはスライドを行う事でWGの対応もできるように準備。最後に逆のSHが中に入り、IHをマークする事でオリンピアコスのビルドアップを封じ込めた。
かのように見えたが、この守備戦術の変更により、中央を簡単に突破されてしまい、そして先制点を奪われる事になる、コーナーキックを与えてしまう。
試合に優位に立つためのビルドアップ②
アーセナルの守備戦術の変更を待っていたかのように、オリンピアコスは中央を突破する事で先制点を奪う。ではどのように中央を突破していったのか。
まずはこのようにIH(もちろんDMFの場合もあり)に縦パスをつけることで、ボールサイドに人を集める。(アーセナルは守備戦術の変更により、この縦パスを狙う事でショートカウンターを仕掛けるように戦っていたので、人を集めることができる)そしてSBまでボールが渡ると、GKまでボールを下げてやり直す。こうするとどうなるか。
このように中央にポッカリとスペースができる。「ここでSHかCHが中央を埋めればいいじゃん!」と思うかもしれないが、SHが中央を埋めることでSBがフリーに、CHが中央を埋めることでWGがフリーになってしまう。だからこそ、特にCHは前に出れず、中央がポッカリと空いてしまう現象が現れる。最初に危険なところ(一気にスピードをあげられる事を防ぐために)アタッキングサードでの中央を開ける事を選択したのではないだろうか。かなり難しい判断をさせるために、オリンピアコスはこのようなビルドアップを選択。これで実際に前進できるようになり、先制点を奪った。
補足:ボールサイドに人を集めたのにそこから前進しないのか?
中央を開けるためにボールサイドに人数をかけ、そして人を集めたと紹介した。ここで勘違いしないでほしいのは、必ずしも全部が全部、このようなビルドアップをしていないという事。もちろん、ボールサイドに人を集め、狭い局面を突破するという方法もとっていた。さらにはアーセナルSBが高い位置まで出てくるので、その背後を使うボールも何度か打ち込んでいた。このように、ビルドアップを使い分けていたからこそ、中央を突破することができたという事を念頭に置いていてもらいたい。
まとめ
この試合の勝敗を握った大きな局面は「ビルドアップとその守備」ではないだろうか。もちろん、オリンピアコスの守備戦術はとても気の利いたものだった。だがそれ以上に、自分はビルドアップの局面において優位に立ったからこそ、逆転でのラウンド16入りを果たしたのではないだろうか。アーセナルの終盤の猛攻に耐え、延長後半にスーパーゴールを挙げられるが、そのあとに執念の逆転ゴール。オーバメヤンのバイシクルで試合を締め括っても美しい試合だったが、そのあとのエルアラビのゴールでより美しい幕切れになったのではないだろうか。もちろん、アーセナルサポーターは苦しみを伴うだろうが、ここまで『ゴールの重み』に触れることのできる試合は中々ない。サッカーというスポーツが美しい感じれる、理由の1つがこの試合で見受けることができた。どちらのサポーターでもないが、ゴールが決まった瞬間、鳥肌が立つほどの試合。そう簡単には見られない、良い試合だった。ショッキングな敗戦を喫したアーセナルはここからどのように立て直すのか、劇的な展開で次のラウンドに駒を進めたオリンピアコスはここからさらなる旋風を巻き起こすのか。とても楽しみだ。
お知らせ
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