PL アーセナル vs エバートン ~アーセナルの大人な戦い~

 

 

はじめに

 

(noteの方でより詳しい「アーセナルのゲームの締め方」と「後半にエバートンが攻撃に出るために」をまとめています。無料公開で読める内容はこの記事と同じですが、有料記事に先程の2つを掲載しています。気になる方はリンクが「お知らせ」のところにあるので、そちらをご覧下さい)

 

ライバルよりも出来るだけ上の順位でシーズンを終えるために。ELに出場するために。そしてCLに復帰するために。お互いに色んな事情を抱えての重要な一戦。そしてお互いに似たような状況にある。アーセナルはアルテタ監督に変わり、劇的にサッカーの内容が変わり、調子を上げた。エバートンも同様に名将アンチェロッティ監督を招聘し、こちらも見事に立て直すことに成功。そして迎えたビッグ6との一戦。ここを叩ければ、エバートンはこれからの厳しい戦いに勢いを持って臨むことができる。これに対してアーセナルはここでエバートンを叩くことができれば彼らよりも上の順位に躍り出ることができる。さらには逆転でのCL圏内フィニッシュもより現実的になる。そしてこの一戦は打ち合いになり、スリリングな展開となった。では今回はこの試合の解説をしていこう。

エバートンのビルドアップ

まずは試合早々にゴールを奪うサプライズを見せたエバートンのビルドアップについて紹介していこう。

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エバートンはビルドアップの局面でこのような形をとる。2CHが組み立てに参加し、四角のエリアで数的優位を作り出す。こうすることでSBを押し上げることができる。そうするとSHが中にポジションをとる。また2トップの一角が少し下がる事でSTの役割を担う。こうすることでCHの周りでフリーな選手を作り出すことができる。これはアーセナルの守備も関係していて、4-4-2のブロックで守るのだが、前半30分までは特にCHのジャカが1列前に出る事が多かった。するとCHセバージョスの周りでフリーな選手を作ってしまうことになっていた。さらにアーセナルSHは立ち位置が難しいものになる。

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このように引いたCHがボールを持つと、SHは脇にSBと絞ったSHがいるので、立ち位置が曖昧になり、さらにはボールホルダーに対してプレスに行くのか否かの判断も非常に難しくなる。このようにしてエバートンはビルドアップをして攻撃を組み立て、アーセナルが守備の修正を施すまで、ある程度上手く攻撃に移ることができていた。

エバートンの攻撃①:SBの背後の突き方

攻撃の準備をしたエバートン。次にエバートンの攻撃パターンを紹介していこう。まず1つ目がこの試合で最も多かった攻撃パターン。

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シンプルだが、これが1番多く見受けられた攻撃で、アーセナルが最も嫌った攻撃パターンではなだろうか。シンプルにSBの背後のスペースにボールを流し込み、そこCFが抜け出す。(前半はカルバート=ルーインが抜け出すことが多く、後半はリチャルリソンが抜け出すことが多かった)

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そしてこのように独力の突破からクロスで攻撃を完結させる。シンプルだが実に強力で、2トップの個性を十分に生かす事ができる合理的な攻撃だ。
さらにこの攻撃にはもう1つのパターンがある。それがCFが時間を作った場合。

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このようにCFがサイドで時間を作ることでSBとSHのサポートを待つ。この時に素早く三角形を形成できるのは、ビルドアップの時にSHが絞ってSBが高い位置で幅を作ることをオートマチックに行っているから。これで速攻と遅攻を織り交ぜながら攻撃を仕掛け、何度もこの形から際どいチャンスを創出した。

エバートンの攻撃②:CHの周辺を使う

そしてもう1つがこのような攻撃方法だ。

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まずはこのようにSHに対してCHがマークにこない場合。この場合はSHに1度預けることで目線を中に集めて、そしてSBに広げる事で起点を作る。ここから素早く2トップに預けることで攻撃を完結させる。ではSHに対してCHが着いてくる場合はどうなのか。

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CHが食いついて来た場合はこのようにCFへのミドルパスを選択する。そして四角のエリアに人を集めて丸のエリアに展開する事で一気にスピードを上げて攻撃を仕掛ける。この方法は①の攻撃パターンよりも少なかったが、これも要所で効果的なものとなっていた。

アーセナルの守備対応

試合開始直後の失点。嵌らない守備。さすがに厳しい戦いになると感じたが、予想を覆し、逆転勝利をもぎ取る。そこの根底には30分あたりの守備の改善が鍵を握っていた。ではどのように守備を改善したのか。

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まずは修正する前。先程も少し触れたが、これがアーセナルの守備が機能していなかった理由。CH(ジャカ)がCHまでマークに出るので、CH(セバージョス)の周りにスペースができ、そこを突かれて攻撃を構築されてしまう。だからアーセナルは3つの修正を施す。

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まずはSHのタスクをはっきりとさせる。SHはCHにプレスを行うタスクと背後でSHを消すタスクを担う。これで中央へのパスをシャットアウト。次にCH(ジャカ)のポジショニング。中央へのパス、具体的には中にポジションをとるSHへのパスを消したアーセナルだが、少し触れたようにCFへのミドルパスも攻撃のパターンに入っている。そのため、CHが前に出てCHを捕まえるのではなく、中央のエリアで横並びにポジションをとる。こうすることでCHが競ることができ、またCBが競る場合は2ndボールに人数をかけることことができる。そしてSBこれで外回りにさせ、エバートンCHはSBへのボール、またはアーセナルSBへのボールぼ2択になる。これでアーセナルSBはポジションを取りやすくなる。スタートは背後を消すポジションをとり、エバートンSBにパスが出るとプレスをかける。これで前進させずに徐々にサイドを圧縮していき、ボールを奪った。
また中央を通されてしまった時はこのように対応する。

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このように中央を通されてしまうと、すぐにリトリートし背後を消す。ここで逆のSHが牽制を行う事でリトリートする時間を作り出す。このようにする事で遅攻を選択させ、そしてプレスバックする時間とブロックを形成する時間を作り出す。ウィンターブレイク明けからカウンターを受けて決定機を作られることが少なくなったのも、中断期間中にこのような詳細を詰めたからではないだろうか。

4-4-2の弱点を突くアーセナル

アーセナルは先制されてからすぐに反撃に出る。その方法は4-4-2の弱点をしっかりと突く、理に適ったものだった。ではどこが弱点で、どのようにその弱点を突いていたのか。

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例に倣ってこのように2トップの脇を使う事で優位に立った。この方法はマンCが取る方法と少し似ている。マンCの場合はDMFがCBの間に降りて、CFの脇をCBが持ち上がって使うという方法だが、アーセナルの場合はCHジャカと右SBのベジェリンが使うことが多かった。ここを使うために、CHセバージョスが2トップの間にポジションを必ずとる。中央に差し込ませたくないエバートンはここを使わせないために距離が近くなり、脇が開くことになる。ここにCHがポジションをとる事でSBを押し上げ、そして起点を作った。

左サイドでの攻撃

そして左サイドでの攻撃について。アーセナルはまず左サイドで優位に立ち、そして同点ゴール、逆転ゴールと立て続けに奪うことに成功。これには先程解説した4-4-2の弱点を突いた事と関係している。

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コラシナツの負傷交代で入ったサカの攻撃時のポジショニングにより、左サイドでの攻撃はこのようになっていた。4-4-2でブロックを形成し、ゾーンディフェンスで守備を行うエバートン。上の図のように、アーセナルはSHをハーフスペースに配置しエバートンのSBをピン留め。さらにCHがCFの脇で時間を作って運び出す事で、エバートンSHを誘き出す事に成功する。これでフリーになるのがSBのサカ。ここからの突破、または高精度のクロスを供給する事で、チャンスを作り出す。実際にこの形で同点ゴールを奪っている。そしてこのような形で攻撃することにより、副次的なメリットが生じる。それがこちら。

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このようにSHをバックラインまで下げることで後ろを重くする事に成功。これでカウンターの脅威を下げ、さらにCHが時間とスペースを確保でき、より簡単に展開を作る事ができるようになった。

右サイドのローリング

そしてもう1つ。それが右サイドのローリングだ。今まではここまで露骨に観られなかったが、この試合は右サイドでのローリングが多く見受ける事ができた。

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これもウィンターブレイク中に落とし込んだものの1つではないだろうか。このローリング方法がSHのペペがポケットに入る事でSBの意識を引く。次にSBのベジェリンがハーフスペースをインナーラップする事でエバートンSHを引き付ける。SBが中央に入るのでOMFがサイドに流れてフリーでボールを受けれるという方法だ。補足だが、この時にCHのジャカは1列前に、SBのサカは上がらずに低い位置で幅を作る。こうする事により、SBへの逃げ道を確保することもできる。
このようにしてエジルがフリーでボールを触る機会を増やし、展開を広げていった。

ゲームの締め方


(より詳しい解説は下の記事に掲載しています。ご購入、そして一読のほど、宜しくお願いします。内容は「後半、エバートンが攻撃に出るために」と「アーセナルのその対応」です)

後半開始早々に奪った決勝点。これにより、エバートンは前に出ざるを得ない状況に陥り、攻撃の圧力を高める。だが結局は最後まで同点ゴールを奪えずに敗戦を喫している。これにはアーセナルのゲームの締め方が関係しているだろう。アルテタ監督は75分にセバージョスに変えてトレイラを投入。これでより「走れる」選手、より「闘える」選手を投入する事で中央の守備を強化。さらには80分にエジルに変えてゲンドゥージを投入。この交代で4-3-3に変更し、中央をより強化しつつ、もう一度、高い位置からのプレスを敢行。今までのアーセナルだと、前から嵌められるとロングボール一辺倒になり、これによりボールを失ってリズムを崩し、失点というパターンだったが、この試合、さらにはELオリンピアコス戦、前節のニューカッスル戦と、ゲームを締めれるようになっていた。相手に付き合わず、やるべき事をやる。ここの改善もアーセナルが完成に近づきつつある、大きな証拠ではないだろうか。

まとめ

エバートンに出鼻を挫かれたが、相手に付き合わず、「観て」サッカーを展開し、見事に勝利を掴む事に成功。さらにはゲームをしっかりと締め、エバートンの攻勢を凌ぎ切った。まさに「大人の戦い方」だった。中断期間前のアーセナルとは全く違う試合内容になっている。戦術の面も整理され、アルテタ監督がやりたい事が落とし込まれていっている。もうそろそ完成に近づいているといってもよいのではないだろうか。果たしてこれからどのように積み上げていくのか。そして勝利を挙げ続け、逆転でCL圏内に滑り込むことはできるのだろうか。これからの戦いがとても楽しみだ。

 

 

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