Football Base 〜サッカー戦術分析〜

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PLチェルシー vs アーセナル 〜共に苦しんだビッグロンドンダービー〜

 

 

はじめに

前回対戦は約3週間前。前回のビッグロンドンダービーはチェルシーがアウェイで逆転勝利を収めた。そして今節。チェルシーはホーム、スタンフォードブリッジに赤いライバル、アーセナルを迎えた。前節、チェルシーニューカッスルにまさかの敗戦、アーセナルは終盤に追いつかれてドローに終わった。どうしてもこのダービーに勝利し、勢いをつけたい両チーム。試合内容も荒れたものになった。では今回は白熱のこのダービーの内容を紹介していこう。

 

スターティングメンバー

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引用:https://www.whoscored.com

チェルシーは前節、動きの悪かったランパードの愛弟子、マウントに変えてコバチッチを先発に据える。アーセナルはやっと復帰したベジェリンが先発に名を連ねる。共に現状のベストメンバーでこのダービーに臨んだ。

では早速、この試合のトピックスに触れていこう。

 

いつもと違ったアーセナルのビルドアップ

まず触れておきたいのがアーセナルのビルドアップの仕方。この試合はいつもと違う方法でビルドアップを行なっていた。

(白⇨アーセナル 黒⇨チェルシー

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アーセナルのいつものビルドアップだと、CHのジャカがバックラインに入り、3バックの形をとり、SBを押し上げてボールを前進させる。だがこの試合はCHがバックラインに入ることがなかった。さらに前節はOMFのエジルが右のサポートを行なっていたのだが、この試合は左のサポートを行う。この動きはよく見られるパターンだ。アーセナルの大きな変更点は、このビルドアップの局面だろう。

なぜビルドアップのやり方を変えたのか

ではなぜビルドアップの方法を変えたのか。これはあくまでも推測にすぎないが、このような思惑があったのだろう。それがポゼッションを失わないため。ポゼッションを失う理由についてはこの記事で触れているので、気になる方はご覧になってほしい。

 

www.soccer-bunseki.com

 

もしも「いつも通り」にCHがバックラインに入り、3バックの形でビルドアップを行なったとしたら、チェルシーの3トップをバックラインに呼び込み、捨て球を蹴らざるを得ない状況に陥るか、最悪ボールを失ってしまう。この状況を打破するため、バックラインで数的優位を作り出すために、CHが降りずに、SBが開き、4 vs 3 または4 vs 2の状況を作り出した。なぜいつもと違うビルドアップを選択したかをまとめると、

大枠に『ポゼッションを失わないため』があり、細かく分けると、

  • バックラインにプレスを呼び込みたくないから
  • 3トップに対して3バックの形になりたくないから
  • バックラインで数的優位を作るため
  • SBで時間を作るため

これらを考えていたため、CHがバックラインに降りて3バック化するビルドアップをしなかったのではないだろうか。

 

チェルシーの守備

次のトピックスがチェルシーの守備。基本「ハイプレス」の守備戦術を採用するチェルシー。この試合も変わらずにハイプレスを敢行。そしてそれにはきちんとした狙いがあった。それがこちら。

決まり①:CBムスタフィにボールを持たせる

最初の決まりがD・ルイスにロングパス、ミドルパス、ショートパス(縦パス)を蹴らせず、CBムスタフィにボールを持たせること。そうするため、このような布陣をとる。

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まずCFがCB、D・ルイスにプレスをかけることで、その相棒のムスタフィにパスを出すことを選択させる。その時に右WGのウィリアンが内側に入りながら前に出ることで4-4-2の形になる。4-4-2にすることで、セカンドラインから後ろを上の図のようにマンマーク、または牽制を行う。これでCBのムスタフィは唯一マーク、牽制されていない、同サイドのSBへの横パスだけが安全に出せるパスコースとなる。何度かムスタフィは縦パスを入れていたが奪われてしまっていた。これがまず一つ目のチェルシーの狙い且つ決まり事で、ボールの奪い方。

そしてムスタフィはチェルシーの思惑通りにSBにパスを出す。

 

決まり事②:WGの2度追いと連動

SBにパスを出させると、決まってWGが2度追いを行う。その時に後ろももちろん連動して守備を行う。

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このようにCBがSBにパスを出すとWGが2度追いでプレスをかける。その時にボールサイドのIHも背後でCHを消しながら牽制を行う。その他のセカンドラインの選手も決まってスライド。さらにバックラインもスライドすることで徐々にサイドを圧縮していく。そして次の局面でボールを奪う。

チェルシーの懸念

これはハイプレスを行う時のチェルシーの懸念。それはIHに入っているカンテの守備のカバーエリア。この試合の彼のカバーエリアは上の図の黒の四角の部分。1人でカバーするのには広すぎるエリアだ。ここのエリアを彼1人でカバーを行う超人ぶりを見せている。だからカンテがいない試合ではハイプレスが機能しないことが多々ある。ここの守備エリアのカバーをどうするのか、これから先、ランパード監督は考えなければならないだろう。

 

決まり事③:WG、OMFでボールを奪う or ロングボールを蹴らせる

SBにボールが入りプレスを行う。そしてSBからWGまたはOMFへのボールをパスカット、はたまたボールを持ったらそこで奪い切る。これでチェルシーはボールを回収していった。

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このようにしてSBからパスが出るとIHもヘルプに行き、挟み込んでボールを奪った。

バックラインからボールを回すアーセナルに対して、チェルシーはしっかりと対策を練ることで試合を優位に進めることに成功した。

 

エジルのポジショニングの修正

チェルシーの守備に対してOMFのエジルはポジショニングを修正。これをすることで、自分、もしくはWGが優位にボールを持つことを狙った。

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このようにOMFが幅をとることで、OMFをマークしていたDMFのジョルジーニョマンマークを諦める。そして幅をとったOMFの代わりにWGがハーフスペースにポジショニング。これで一瞬、チェルシーSBはどっちのマークをつくか迷うことになる。さらにSBがOMFにマークをつくと、WGに対してDMFがマークをつくことになる。そうするとSBの守備力よりもDMFの守備力が劣るので、質的に優位に立つことができる。このWG vs DMFの形こそ、エジルが狙ったことだろう。

 

D・ルイスの退場

数的優位に立ったチェルシー

26分のD・ルイスの退場により、数的優位に立ったチェルシー。だがアーセナルの守備のブロックを思うように突破できずに追加点を奪えずにもがき苦しんだ。

『思った時間に追加点を奪えない』

これが今のチェルシーの最大の課題ではないだろうか。

ではなぜ追加点を奪えないのか。それは「単調なクロス攻撃」に問題がある。

カウンターやショートカウンターでゴールを奪うことの多いチェルシー。それには紛れも無い『個の力』と『圧倒的なスピード』、そして『推進力』があるからだ。だからこそ、カウンターやショートカウンターで試合を仕留めることが多い。だが、この試合の10人になったアーセナルのように、ブロックを固められると、途端にゴールを奪えなくなってしまう。先制すると相手が前に出てきてスペースができるので、お得意の形に持っていけるのだが、この試合はわけが違った。10人になって、死に物狂いで守るアーセナルの守備ブロックに対して、チェルシーは焦り、クロスが多くなる。こうなると簡単に跳ね返されるので、カウンターを受けてしまう。

そしてそれにはこのような原因が考えられる。

クロスからゴールを奪えている時のチェルシーは、『斜めのサイドチェンジ』を多用していたのだが、この試合はそれがあまり見られなかった。だからこそ、目線が変わらずに、マークのズレも起きない。そうすると、たとえサイドを突破しても、中でマークを突かれているので、跳ね返されてしまう。だから追加点を奪えずに、アーセナルの息の根をとめる事ができなかった。

なぜやめたのかわからない、この『斜めのサイドチェンジ』。チェルシーはこれをもう一度取り入れる必要がある。これがチェルシーがもう一度、調子を取り戻すプレーだと考える。

 

数的不利に立ったアーセナル

アーセナルは攻守の要を失って約70分を戦うことになる。そこでアーセナルはどのように試合を進めたのか。

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まず、このようにアーセナルは4-4-1の形で守備を展開。4-4-のブロックを敷くことで、中央を締め、サイドにボールを出させることができる。そこでWGがプレスバックでSBのヘルプに行くことで無理やり数的優位を作り出す。ここでボールを奪う、またはクロスを跳ね返し、そのセカンドボールを拾うことでカウンターの機会を伺った。そしてカウンターはWGを中心にこのように行った。

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奪ったボールをOMFかCFに預けることでWGが上がる時間を作る。そしてSBの背後、CBの脇にひたすらボールを供給。ここでCBを釣り出してオープンスペースでの1vs1に持ち込んでカウンターを何度か仕掛けた。これで糸口を見出そうとしたが、シュートまでは持ち込めず。ブロックを敷いてカウンターは有効的ではあったが、どちらかというと、チェルシーの自滅感が強かった印象だった。

 

まとめ

チェルシーは勝てた試合、いや、勝たなければいけない試合で、引き分けに終わったことにランパード監督をはじめ、選手、サポーターも相当ストレスになっているだろう。「追加点を奪えない」という課題がまたも露呈し、さらにはディフェンディングサードでの「緩さ」もまたしても見えた。そして交代で流れを引き寄せる選手もいない。追い討ちをかけるように大黒柱のエイブラハムが負傷した可能性もある。この試合でチェルシーは勝ち点だけでなく、失ったものはとても多いだろう。この試合を見る限り、今冬のマーケットでCFとSB、CB、少なくともCFの補強は必須ではないだろうか。

一方のアーセナル。この試合でアーセナルも次3試合、攻守の要のD・ルイスを失ってしまった。課題は残るが、勝ち点をはじめ、得たものは多いのではないだろうか。何よりも、10人で、アウェイのチェルシー戦で負けなかった、追いついた、という事実が大きな自信につながるだろう。果たしてロンドンの両雄はこれから残りのシーズンをどう戦っていくのか。それぞれ課題が積もっている。これからの修正、そして戦い方に注目していきたい。

 

終わりに

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