サッカー戦術分析ブログ〜Verbalizing Football〜

Jリーグ・プレミアリーグ・セリエAを中心に解説をしていきます。

PL アーセナル vs チェルシー 〜ビッグロンドンダービーの行方〜

 

 

はじめに

ベンゲルからアルテタへ。モウリーニョからランパードへ。お互いに所属した選手、レジェンドが現チームの監督を務めるという、なんとも感慨深く、そしてどこか教習にも浸れるピッチサイドでの両指揮官の立ち姿。そして何と言ってもビッグロンドンダービー。共にクラブのレジェンドに立て直しを任せての一戦。特にアーセナルはアルテタ監督になり2試合目でこのビッグゲームだった。結果から述べるとアーセナルの逆転負け、チェルシーの逆転勝ちという、とても興奮し、そして戦術的にもレベルの高い一戦だった。では今回はこの試合を振り返っていこう。

 

スターティングメンバー

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引用:https://www.whoscored.com

 

これがお互いのスターティングメンバー。アーセナルは前節からジャカに代わりゲンドゥージ、CBのソクラテスに変わりチェンバースが入る布陣。ここで気になるのはジャカの移籍は決定的かもしれないということだろうか。一方のチェルシー。前節、前々節と同じく3バックでこの試合も望む。前節と変わったところはジョルジーニョに変えて出場停止明けのコバチッチが先発復帰したこと。では早速この試合を振り返っていこう。

 

攻守の噛み合わせ

アーセナルは前節と同様にボールを保持し、しっかりと前進することで前半35分あたりまで完全に試合を支配した。一方のチェルシーはガンガン前からプレスをかけるが尽く剥がされ、そして簡単にラインを突破された。ではどのようにアーセナルはボールを回し、そしてチェルシーは剥がされたのか。

OMFエジルを「使った」優位性

前節と同様、アーセナルは整理されたビルドアップにより、この試合も存分にエジルが輝いていた。

まずはそのビルドアップについてをこちらの記事で紹介しているのでご覧になって頂きたい。 

www.soccer-bunseki.com

 ではアーセナルのビルドアップの方法がある程度、理解できたところで話を進めていく。

(黒⇨アーセナル 白⇨チェルシー

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アーセナルはこのようにSBがやや内側をとることで上の図の黒の四角の部分で数的優位を作り出す。チェルシーの守備ブロックは5-3-2のような形をとり、CHに対してSTとCH、逆のSBに対してCHが牽制を行う。そしてSBにパスが出るとSTがプレスを行う。そうするとチェルシーのバックラインとセカンドラインの間に広大なスペースができる。(赤の四角)STのプレスでCHを消せ切れればよかったのだが、アーセナルはSBとCHのワンツーでこのプレスを剥がすことが多かったので、STはSBにプレスを行うことが難しくなっていた。そしてアーセナルはSBで時間ができる。

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そしてこのようにOMFのエジルが降りることでその優位性を生かすことができる。これにはチェルシーの守備も関係している。5-3-2で守るチェルシーの狙いとして、中央でボールを受けるOMFエジルに対し、CBの誰か(主に29番のトモリか15番のズマ)がマンマーク気味の守備を行う。これでOMFの自由を奪おうと試みていた。だが上の図のようにSTのプレスが機能しなくなり、SBでアーセナルに時間を作られる。そうするとアーセナルはOMFがCBを引き連れて作ったスペースにWGが抜け出し、一気にスピードを上げる。このようにエジルを使った優位性でチェルシーを苦しめた。

 

OMFエジルで「作る」優位性

ビルドアップの方法は先述したものと同じで、ここの優位性はOMFエジルがボールを触れることで作る優位性。ではどのように優位性を作り出したのか。

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このパターンはシンプルにOMFの技術の高さで上回り、CBを剥がすパターン。ボールを受けるタイミングと降りる場所、受けてからの技術、そしてスペースの認知。さすがエジルといったところだった。そしてもう一つはこちら。

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このようにCBがマンカークできない場所まで流れることで、四角のエリアで数的優位を作り出す。ここでボールを受けてWBを釣り出し、フリックする事でWGがフリーでボールを持てる。これでアーセナルは優位に立った。

 

ここまではアーセナルのボール保持、チェルシーのボール非保持の解説。では次はチェルシーのボール保持、アーセナルのボール非保持について解説しよう。

チェルシーのボール保持

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 このようにチェルシーアーセナルに尽く嵌められてしまい、3バックの強みを使うことができなかった。チェルシーの狙いとして3バックでボールを回しながら、WBに斜めのサイドチェンジを打つ込むことで一気にスピードを上げようとしたが、アーセナルがCFとOMFでプレスをかけ、そしてWGで中央を消されたことにより、ボールと同サイドのWBにしかパスコースがない状況に陥る。ここでアーセナルSBとWGがプレス、バックラインはしっかりとスライドする事でサイドを圧縮し、ボールを奪う、捨て球を蹴らせる事でチェルシーに主導権を握らせなかった。

 

4-3-3への変更

攻守ともにアーセナルに主導権を握られ、先制点を奪われてしまったチェルシー。せめてもなく、シュートまで持ち込むことすらできなかった。3バックが嵌っていないことは明らかだった。そこでランパード監督は35分に33番と5番を交代。これでチェルシーは面白いように攻守ともに嵌り始める。ではその理由を解説していこう。

攻撃の部分

まずは攻撃の部分から触れていこう。

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DMFのジョルジーニョが入ったことにより、チェルシーは4-3-3に並びが変わる。こうなると何がよかったのか。まずはDMFの存在でOMFが1.5列目まで下がり、DMFの牽制を行う。これでCBの所(四角のエリア)で数的優位に立てるようになる。さっきまでのようにWGが出れば良いのでは?と感じるかもしれないがSBが幅を取っていて、かつアーセナルの守備はサイドを圧縮することでボールを奪うので逆のSBに展開されるとまた最初からやり直しになり、走る距離も長くなってしまう。このような関係でWGがCBまで出れなくなっていた。これでCBが時間を得れるので、ここから様々なボールを供給。ランパード監督になり斜めの長いサイドチェンジを多く使うようになったチェルシーはこの交代から明らかにこのボールが増えていった。そしてどんどんアーセナルを押し込んでいく。

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ボールを支配し押し込んだチェルシー。このようにアーセナルを圧倒していく。アーセナルは自陣に下がり、中央を徹底的に固める。そうすることでボールを外に追いやるのだが、チェルシーの右サイド、アーセナルの左サイドで問題が起こる。上の図のようにCBとDMFに有り余る時間とスペースがあるので簡単にサイドを変えることができ、目線を変え続けたチェルシー。そして右サイドにボールを振った時にこのような状況を多く作り出していた。WGにボールが入るとSBがプレスを行う。その時に同サイドのアーセナルのWG、オーバメヤンはSBに付くのかWGにプレスに行くのか、IHを見るのか、この迷いにより立ち位置が曖昧になっていた。そしてアーセナルSBがプレスに出たのでそのスペースをIHのカンテが使う事でWGオーバメヤンを押し下げることに成功。これでカウンターの脅威もなくし、守備選手ではないWGに守備を強制させることでチェルシーは優位に立ち続けた。

 

守備の部分

これも明らかに改善された。その理由を解説しよう。

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理由は二つで、マークがはっきりした事とOMFに対してDMF(ライン間を埋める役割)が牽制を行なった事。これで一気に守備が改善。中央を締めれるようになり、CBのムスタフィにボールを出させるように仕向ける。これで上の図のようにCBからWG(幅をとるようになったSB)へパスが出ることが多くなったアーセナル。ここにパスが出ると例のようにOMFがサポート行うのだがDMFがしっかりとそこをケア。これでサイドで囲い込むことでボールを奪う。OMFが抜け出すことが多くなったのだが、ここをまだうまく使えなかったWGのネルソン。ここの理解に改ざんの余地がありそうだ。そしてチェルシーはボールを奪い、ポゼッションを高めることで守備の時間をどんどん減らしていった。チェルシーとの違いはCBに質の高いパスが出せる選手がいるかいないかの違いだったのではないだろうか。

 

希望が見えたアーセナルとその課題

それでも粘ったアーセナル。ここまで粘れたのは純粋に『闘う』事が出来ていたから。明らかに今までの試合と違い、球際が激しく、フルスプリントでプレスバックも行う。だからこそデュエルの勝率がアーセナルの方が高かった。アーセナルサポーターはここまで闘うアーセナルを久しぶりに観ることができたのではないだろうか。

闘うこと、整理されつつあるサッカー。ここを継続していくことで内容は良くなっていくだろう。一方の課題としてベンチワークではないだろうか。先発のメンバーと控えのメンバーで差が大きすぎる。だからアルテタ監督はこの試合でなかなか交代カードが切れず、守備の修正ができなかったのではないだろうか。冬の補強で選手を連れてくることが必須だろう。

 

DNAが残るチェルシーのカウンター

チェルシーが逆転ゴールを決めたのは『カウンター』。第一次モウリーニョ政権からカウンターの色が濃いチェルシー。タイトルをとった時のチームを見てみるとやはりカウンター主体で多々かっいることが多い(例外もあり)。この試合もやはりカウンターで勝ちきっている。モウリーニョ監督にその才能を見出され、中心人物として起用され続けたランパード。この師弟の関係があり、そしてチェルシーというクラブカラーをランパード監督がよく理解しているからこそ勝ち切った試合だったのではないだろうか。カウンターでのゴールが決勝点。少なくともこれは偶然ではないだろう。戦術を超えたものを感じることができたゴールだった。

 

まとめ

アーセナルはこの試合、とても悔しいものになっただろう。インテンシティも高く、上手くいく時間帯もあった。だが如何せん、守備に回る時間が多すぎた。もしもベンチに流れを変えることのできる選手がいたならば、、、そう思うサポーターも多いのではないだろうか。アーセナルの次節の試合はマンU戦。アルテタ監督にとって厳しい試合が続くが、どのように闘うのか楽しみだ。そして一方のチェルシー。勝っては負けて、の繰り返しで失速気味だったがこのダービーでの勝利はもう一度、波に乗るのに十分すぎる結果だろう。戦術的な変更で勝利をもぎ取ったこともランパード監督にとって途轍もない自信になるだろう。だが気を緩めてはいけないチェルシートッテナム勝利の後の試合も格下に負けてしまっている。果たして元旦のブライトン戦で勝利を掴むことができるのか。ここも楽しみだ。

何よりもこの試合。流石のビッグロンドンダービー。すこぶる熱く、戦術的駆け引きも見受けることができた。戦術を超えたものを感じることもできた。とても良い試合を観せてもらうと同時に学ぶこともできた。選手は大変だと思うが、この時期にもリーグ戦を中断せずに行うFAとプレミアリーグのクラブに所属する選手に感謝したい。

 

終わりに

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