EL オリンピアコス vs アーセナル ~狙われたソクラテス~

 

はじめに

CLの影に隠れているかもしれないが、この大会、ELも相当面白いチームが出揃っている。もちろん、CL程の『メガクラブ』といわれる存在は少ないかもしれない。それでも各国の『曲者』と称されるクラブが参加していて、来季のCL出場のため、そして栄冠を掴むためにしのぎを削っている。そして今回、レビューを行う対戦カードはオリンピアコス vs アーセナル。言わずと知れた、ギリシャとイギリスのビッグクラブだ。この試合はアウェイのアーセナルが勝利を収めたが、しっかりとオリンピアコスアーセナルに対してのゲームプランを練って試合に臨んでいた。では今回はオリンピアコスのゲームプランに触れながら、この試合を振り返ってみよう。

スターティングメンバー

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お互いに直近の試合から5枚、メンバーを入れ替えて試合に臨むことを選択。アウェイのアーセナルはベジェリンとエジルをこの遠征に帯同させなかった。さらに直近のリーグ戦で大活躍を果たしたセバージョスもベンチからのスタート。代わりに、ヤングスターのマルティネッリ、ウィロック、ゲンドゥージ、右SBにソクラテスが先発に入った。では早速、この試合のレビューを行っていこう。

アーセナル、右サイドでのエラー

まずはアーセナルの前進方法から探っていきたい。この試合、いつもと違うのは右サイド。ここで少しばかりエラーが起きていたのではないだろうか。

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アーセナルはこのようにCHが1枚、組み立てに参加、もう1枚がIHの位置まで上がる。さらに、左SBが高い位置で幅を作り、WGがハーフスペースに入る。このようにする事で、OMFが右サイドに流れる事ができる状況を作り出す。そして次のような形を作り出す。

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このようにOMFが流れてボールを受けれる状況を作り出すために、WGがもう1列前でSBをピン留めし、スペースを作り出す。これでOMFが流れて、SBのサポートをするという算段だ。そしてこれの目的として、赤丸のエリアにスペースを作り出すことが狙いとしてあったのではないだろうか。ここにボールを送ることで、一気にこのような展開に持って行く事が予想できる。

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このように一気にスピードを上げれ、そして広いエリアで勝負する事が可能だ。この狙いがあっただろうが、SBからここにボールを入れ込めなかったので、この攻撃を仕掛ける事は出来なかった。
そして右サイドでエラーを起こして行く。

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このように、中央に差し込めないので、SBのパスコースはOMFかWGになる。この状況下ではオリンピアコスの守備陣に読まれやすく、そして彼らはとても守りやすい。赤丸のエリアでボールを奪われるか、WG(白丸のエリア)が孤立してしまうかのどちらかになってしまう。はたまた、オリンピアコスのWGにプレスをかけられ、SBは捨て球を蹴る羽目になってしまっていた。このような状況下に陥ったので、右サイドで上手く前進する事ができなくなっていた。

オーバメヤンの機能不全

さらに攻撃面。エース、オーバメヤンが機能不全に陥っていた。これはいつもと違う役割を与えられ、そしてサポートがなかったので、機能不全になったのではないだろうか。ではなぜ、75分に左サイドにポジションを移すまで目立った活躍ができなかったのか。

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このように左サイドで詰まり、サイドを変えた時。ここでオーバメヤンは孤立する事が多かった。もちろん、単独での打開も可能な選手だが、サポートがあってこそより脅威になれる選手の1人。ここでSBがオーバーラップなり、インナーラップなりををする事で、数的同数になるのだが、SBは後ろのみのサポートしかしなかった。さらにOMFのサポートの距離も遠く、だからWGが孤立した状況に陥り、機能不全となった。いつもならペペが個人での打開、ベジェリンのサポート、またはエジルの絶妙なサポートで切り抜けるのだが、この試合に至っては、それができなかった。
現にこの試合の決勝点はSBのインナーラップから生まれている。それだけWGに位置するオーバメヤンはDFを引きつけ、他の選手のスペースを作ることができる。ここを使う選手が左には存在し、そして右には存在しなかった。
(補足:ほとんど右SBのソクラテスが攻撃のサポートをしなかったので、もしかしたらアルテタ監督の指示なのかもしれない。この選択肢も念頭に置いてもらいたい)

オリンピアコスの狙い:プレスのスイッチ

格上とのホームゲーム。格上といえど、ホームで負けるわけにはいかない。そして何としても次のラウンドへ進むために、アウェイでの試合を優位に進めるため、勝利が必要だった。そしてそれを感じさせるだけの準備をオリンピアコスはしてきていた。その狙いについて解説していこう。

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結論から述べると、狙ったのは右SBに入ったソクラテス。彼にボールが入ると、オリンピアコスはプレスをかけ始める。敵陣深くでのプレスについては、CFがCBを牽制、ボールサイドのIHが1列前に出てCH(主にゲンドゥージ)を牽制する。WGが中央へのパスコースを消しながら、CHの脇辺りにポジションを取る事で、CHにパスが出ると、IHと一緒にボールを刈り取る。そしてSBがボールを持つと、WGがプレスを開始。これがプレスにスイッチとなる。そして次のようにボールを奪いに行く。

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WGがSBにやや外を切りながらプレスをかける事で、OMFへのパスを誘発させる。このパスが狙いで、DMFがしっかりとパスカット、またはOMFから強奪する事でショートカウンターを仕掛けるというスタンスだ。このときにDMFが中央を開けるので、IHがスライドして中央(白丸のエリア)をカバー、さらに逆WGが中に入りCHを牽制する形を取る事でリスクを軽減する。この中盤3枚のフィジカル的な強さがあるので、例えパスカットができなくとも、フィジカルを生かして対人を制し、ボールを回収する事に成功していた。

オリンピアコスの狙い:プレスのスイッチを入れるために

右SBにボールが入ると、プレスのスイッチが入ることは理解してもらったのではないだろうか。ではオリンピアコスがプレスのスイッチを入れるために、ソクラテスにボールを回させるために、どのような守備を行っていたのかを解説していこう。

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このように左サイドではそれぞれが人を捕まえる守備を敢行。幅を取っているSBにはボールを持たせても良いが、絶対に前進させない、絶妙な距離感を保ちながらWGが牽制。さらにCHに対してはIHが捕まえる事で、中央へのパスコースをなくす。もちろん、ハーフスペースに入っているWGに対してもSBがマンマーク。CBのD・ルイスはここに何度か縦パスを打ったが、全て奪われてしまっている。またOMFに対してはきちんとDMFが牽制を行っているので、ここのパスコースももちろんない。(もしもここが相手を動かす事、味方のスペースをつくる事に長けたエジルだったら、戦況はかわっていたかも知れない。)
これで左サイドを「詰めさせる」ことで、アーセナルは右サイドにボールを送る事になる。これで先述したように、オリンピアコスはプレスのスイッチを入れる事でボールを回収していた。

2ndの回収方法と前進方法

このようにしてオリンピアコスは守備を展開し、ボールを持たない時も試合をコントロールしていく。そしてボールを保持している時はこのように前進し、また2ndボールを回収する事で、攻撃に厚みを加える。

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このようにアーセナルは守備時4-4-2の形になる。一方のオリンピアコスはDMFがバックライン付近に降りることで、数的優位を作り出す。これで安全にボールを回す。そして上の図のようにWGが下がる事で、SBを釣り出し、その背後に絵スペースを作り出す。そこにIHがCHの間を通って飛び出す事で、CH2枚の注意を引く。そうすると、もう1枚のCHに少し時間ができる。ここで時間ができたCHは逆のWGにボールを渡す事で、一気にスピードをあげて攻撃を展開。このようにしてクロスから際どいチャンスをいくつも作り出すことに成功した。
そしてもう1つ。この前進方法がとめられた時に繰り出していたのがCFへのミドルパス。これで収まればよし、収まらずとも、2ndボールを回収できればよしというものだ。そしてその2nd回収の方法がとても理に適っていた。

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このように、WGが下がるまでは同じだが、ここでIHが飛び出さない。そうすることにより四角のエリアで数的優位、もっというと、2CHに対してWG +2IHで数的優位を作り出すことができる。ここに人数をかけることで、CB、ないしはSBからのミドルパスを送ることができ、2nd ボールを回収できる確率が上がると言うことだ。現に、ここの2ndボール、特にジャカの付近ではこのような状況が多く見受けることができた。

まとめ

このようにしてオリンピアコスアーセナルと対等の戦いを演じたが、アルテタ監督の交代策により、失点し、そしてホームで痛い敗戦を喫することとなった。どれか一つでも決定機を沈めることができていたら、勝利は限りなく近いものになっていたのではないだろうか。一方のアーセナル。アウェイで貴重な勝ち点3。だが課題が浮き彫りとなってしまった。エジルとベジェリンの存在の大きさ、さらには右でオーバメヤンを使った時の物足りなさがこの試合ででた課題だろう。さらには人を捕まえられると、まだ若干、あたふたするところも見受けられた。ここの改善も継続して必要だろう。だが裏を返せば、ベストメンバーだと、かなり良いサッカー、ニューカッスル戦のような戦い方が可能と言うことだ。はたしてアルテタ監督はチームを底上げする事はできるのだろうか。これからの指揮にも注目だ。

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終わりに

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