PL エバートンの「具合が悪い」理由

 

 

はじめに

シグルズソン、リチャルリソン、ウォルコットにシュナイデルラン。カルバートルーインもいる。もちろんアンドレゴメスも完全移籍で加わった。守備ではピックフォードを中心にミナ、ディーニュ、キーン、ホールゲイトとしっかりと名を知られている選手もいる。さらにはモイーズキーン、イウォビ、デルフも加わって今シーズンこそビッグ6の牙城を崩そうと意気込んでいた。シーズンが始まる前の期待感を裏切る形となる。現在、エバートンは16試合を終えて、5勝2分9敗の14位。誰がこの現状を予想できただろうか。では今回はリクエストがあった、「エバートンの具合が悪い理由」を考察していこう。

エバートンの直近6試合の結果

では参考までにエバートンの直近6試合の結果をデータとともに紹介しておこう。

2019.10.29 vs ワトフォード(ホーム)

2-0の勝利 フォメ 4-2-3-1

シュート:11本

パス:576本

ロングボール:88本

ショートパス:463本

クロス:23本

ポゼッション:59%

右の攻撃:38%

左の攻撃:43%

中央:19%

 

2019.11.03 vsトッテナム(ホーム)

1-1のドロー フォメ4-1-4-1

シュート:7本

パス:409本

ロングボール:73本

ショートパス:306本

クロス:28本

ポゼッション:47%

右の攻撃:36%

左の攻撃:47%

中央:17%

 

2019.11.09 vs サウサンプトン(アウェイ)

1-2の勝利 フォメ3-4-3

シュート:24本

パス:404本

ロングボール:66本

ショートパス:310本

クロス:26本

ポゼッション:53%

右の攻撃:32%

左の攻撃:45%

中央:23%

 

2019.11.23 vs ノリッジ・シティ (ホーム)

0-2の敗戦 フォメ4-2-3-1

シュート:18本

パス:443本

ロングボール:75本

ショートパス:334本

クロス:33本

ポゼッション:57%

右の攻撃:42%

左の攻撃:35%

中央:23%

 

2019.12.01 vs レスター(アウェイ)

2-1の敗戦 フォメ3-4-3

シュート:11本

パス:305本

ロングボール:65本

ショートパス:217本

クロス:22本

ポゼッション:31%

右の攻撃:25%

左の攻撃:47%

中央:28%

 

2019.12.05 vs リバプール(アウェイ)

5-2の敗戦 フォメ3-4-3⇨4-4-2

シュート:12本

パス:373本

ロングボール:57本

ショートパス:287本

クロス:26本

ポゼッション:41%

右の攻撃:31%

左の攻撃:49%

中央:20%

 

2019.12.07 vs チェルシー(ホーム)

3-1の勝利 フォメ4-4-2 監督交代後初試合

シュート:13本

パス:269本

ロングボール:73本

ショートパス:182本

クロス:12本

ポゼッション:30%

右の攻撃:40%

左の攻撃:38%

中央:22%

 

これらの数字からわかる事はボールを持つチームに対して圧倒的に弱いような結果になっている(レスター、リバプールノリッジ)。逆にボールを持てるとエバートンは本来の力を発揮しやすいのではないだろうか。現にサウサンプトン戦、ワトフォード戦は勝っている。例外なのがつい先日のチェルシー戦。これは監督が変わってブーストがかかっていたのだろう。sky sportsによるとこの一戦でのタックル数37回とエバートン最高記録だった。それだけ気合の入ったものだったのだろう。後に詳しく説明するがリチャルリソンが左に入った時に敗戦することが多い。データからはこのような情報を得られる。

 

では早速、エバートンが調子を落としている理由を解説しよう。

 

エバートンの具合が悪い理由

①:リチャルリソンの守備

良くも悪くもこのリチャルリソンにかかっているエバートン。彼の攻撃での才能は申し分ない。だが守備に目を向けた時にどうだろうか。エバートンはここを狙われ、起点を作られ、入り込まれて失点することが多い。ではどのような形で起点を作られているのか。

(黒⇨エバートン 白⇨レスター)

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 例えば2019.12.01のレスター戦。レスターのプレースタイルも相まってり、この試合はかなりボールを持たれ、押し込まれる展開に。3バックで望んだ理由は中盤4枚+CFに対抗するためだろう。5-4-1のブロックを敷くのだが、STのポジションに入ったリチャルリソンがしっかりとセカンドラインに入り込むことができず、『どっちつかず』のポジションをとる。そうするとその背後のスペースをSB、DMF経由で使われる。これがレスター戦の例。これでライン間で起点を作られて自陣で守備に回る時間が多くなった。

さらに例を挙げよう。例えば2019.12.05のリバプール戦。同じく3バックで臨んだエバートン。ここでもSTの背後で起点を作られる。

(vs リバプール

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この試合のエバートンの狙いは5-4-1のブロックで確実に中盤で引っ掛けてショートカウンターを打つ狙いがあった。そのためかなりリバプール相手にもかなりハイラインで臨む。そこでSTのプレスのかけ方に問題があった。プレス時に外を切らずに中切り。そうするとどうなるか。チームとして中央で奪ってショートカウンターを打つことを狙いとしているのだが、中を切られ外にボールを出されるとST、リチャルリソン単発のプレスになる。ここからSBで起点を作られ、一気に背後にボールを出されてピンチに陥る。

現にこの試合は幾度となくSBやCBからのDFラインの背後へロングボールを蹴られてピンチに陥るシーンが目立った。だからこの試合も圧倒的(特に4バックにするまで)にボールを持たれた。

ここまではボールを持たれてリズムを作れずに守備に回ることが多く、その背後を突かれるパターン。そして極め付けは昇格組のノリッジ・シティとの一戦。この試合はボールを握ったが、敗戦している。この試合は4-2-3-1の布陣だった。この試合はSHに入ったリチャルリソンが上がったスペースを使われてカウンターを仕掛けられる。ボールを保持したが、要所での守備に問題があった。

非凡な攻撃センスを持つリチャルリソンだが、ボールを動かすチーム相手の守備に少し問題があり、単発のプレスになり守備の崩壊を招く羽目になっていた。

 

②:はっきりしない守備戦術

①の説明を聞くと「リチャルリソンが悪い」と感じるかもしれないが、そうではない。

これがきっかけでこのような対応になっているのではないだろうか。ある時はハイプレス、ある時はカウンターを打つためにリトリート、ある時はサイドを圧縮、ある時は中央を圧縮。この良く言うと多種多様な守備の仕方、悪く言うと定まらない守備戦術で選手に迷いがあった。

例えばトッテナム戦、サウサンプトン戦はハイプレスでサイド圧縮、ノリッジ・シティ戦はハイプレスで中央圧縮、ノリッジ・シティ戦でうまくいかなかったのでレスター戦はリトリートのカウンター、このリトリートのカウンターがうまくいかなかったのでリバプール戦はハイラインでコンパクトに保ち、中央圧縮でショートカウンター。そしてこれがダメで3-4-3から4-4-2のミドルゾーンからのゾーンプレスでサイド圧縮。このようにどのように守るのかがはっきりしなかったので、選手も混乱し、プレスが試合毎に連動性がなくなっていった。

 

③:バラバラな守備とプレスバック

②と似ているのだが、より詳細を詰めると中盤とDFラインの守備。ここにばらつきがあったので特にレスター戦であのような結果になった。

(vs レスター)

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レスター戦。このようにリトリートというゲームプランを無視してプレスをかけるSTとCF。そうするとそれに呼応してCH、STが連動して動く。そしてここには規律がなく、ほぼリアクションのプレス。さらにDFラインはゲームプランを守り、自陣に吸収するためにラインを下げる。すると当然のごとく、間延びし、ライン間にスペースができる。ここにポジションを取られ、パスを供給されるのでピンチに陥ることが多かった。

さらにここにボールが入った時に中盤の選手がプレスバックすれば何とか守れるのだがここのプレスバックも甘かった。

 

④:インテンシティの低さ

負け越している、ボールを握られる試合が多い、etc...これらの理由からインテンシティがかなり低くなっていたエバートン。50:50のボールに食いつかず、球際で激しく当たるのはデイビスのみ。これでは勝てる試合も勝てなくなってしまう。数試合見ている方ならわかると思うが、完全にここで負けていた。純粋にモチベーションの問題があっただろう。

 

⑤:解決策が見つからなかった攻撃

守備に追われることが多くなっていたエバートン。瀬戸際で守りきっても前線にボールを送ると、CFのカルバートルーインの一枚。ここで潰され、攻撃に移れない。まさに負の連鎖。CFが個人で勝つことができていたサウサンプトン戦とワトフォード戦。ここでロングボールを入れて起点を作ることで全体を押し上げることができ、展開することができた。だからこそロングボールが多くる結果。だがCFよりも強いDFがいるレスター戦とリバプール戦。押し込まれるかつCFの孤立、さらにはCBで潰されることが多かったこの2試合。ロングボールを解決策として持っていたが、ここに良い案を見出せなかったので他の案を探すがその肝心の解決策が見つからない。これで戦い方に迷いが生じ、攻撃に転じることができなかった。

 

⑥:ボールウォッチャーのCB

シンプルにこれは個人の戦術の問題。クロスの対応とカウンター時の吸収の仕方とマークのつき方。これ問題が多く見られた。勝てないかつ失点が多いので余裕がなかったのではないだろうか。

 

これら6つがエバートンの具合が悪い理由だと考察する。

 

光が見える修正への挑戦

本当に為す術もなく1試合、1試合を終えているのだろうか。自分の意見はそうは感じない。ノリッジ・シティ敗戦からの修正の仕方を見ると修正へ挑戦しているように感じた。ではそれを紹介しよう。

ノリッジ戦を受けてのレスター戦

ノリッジ戦を受けてのレスター戦。格下相手に負け、当時の監督、マルコシウバは修正を試みる。レスターのプレースタイルも相まっているだろうが、3バックで守備時の5バック化。ではなぜこのような修正を施したのか。

(vs ノリッジ・シティ

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このように4バックで攻撃する時に、エバートンのSHが中に入り込むのでSBが上がるスペースができる。ここでSBが上がりボールを奪われるとその背後のスペースを使われてしまう。ここにCFが流れ、使われるとCBが釣り出さられ一気に守るのが難しくなる。そこで3バック。こうすることにより、このような守り方、ボールを奪われた時のリスクマネージメントができる。

(vs レスター)

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このようにリスクマネージメントは取れるのだが、なんせこの試合の守備はリトリート。かつ先述したようにバラバラな守備だったので間延びしてライン間を使われて押し込まれる展開が続いた。そこで次の修正。それがリバプール戦。

レスター戦を受けてのリバプール

リトリートで守備がバラバラになり間延びするならばと臨んだリバプール戦。その解決策こそハイライン。これで守備の一体感を図った。

(vs リバプール

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これでこの試合、中盤をコンパクトに保つことができ、ライン間のスペースをほぼ使わせなかった。だが相手はリバプール。ハイライン、ハイプレスとなると分が悪いのはエバートンリバプールの土俵に自ら上がり込み、先述したSTの背後を突かれてそこからロングボールで裏を取られて失点。これで万事休すかと思われたエバートンだったが、4-4-2にすることで息を吹き返す。これが今のエバートンの最適解ではないだろうか。

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これで懸念だったSTリチャルリソンがCFに。そうすることで今までの試合でずっと懸念だった背後のスペースで起点を作られることがなくなる。さらに4-4のブロックで守るので、ロングボールを送り込んだ時にCFカルバートルーインが孤立することがなくなる。これで息を吹き返したエバートンだったが巻き返しも叶わず、5-2の敗戦。そしてここでマルコシウバ監督が解任される。

迎えた監督交代後の初試合

そして迎えた監督交代後の初試合。もちろん最適解を見出した4-4-2の布陣で臨んだ。相手は若手中心で勢いに乗るチェルシー。4-4-2のバランスの良さに加え、監督交代のブーストもありインテンシティの高さが明らかに今までとは違い、タックル数も過去最高の37回。当然チェルシーは苦戦を強いられ、エバートンは生き生きとプレーをし3-1でチェルシーを下した。まさにここまでの試合の度に修正を加えた結果ではないだろうか。

まだ4-4-2になり、1試合しかしていないがこれから巻き返しそうな予感のある4-4-2に移行してからのリバプール戦とチェルシー戦だった。

 

まとめ

エバートンの具合の悪い理由を考察してみると様々なことが一気に起こり、そして勝てなくなり、メンタルがやられてインテンシティが低くなる。この負の連鎖にはまっていき、ゴールが奪えず、失点が多くなっていった。戦い方もはっきりせずに負け続けるので、マルコシウバを信用できなくなってしまっていたのだろう。だがリバプール戦で見せた確かな手応えを元に、チェルシーを下し、巻き返しを測りそうな勢いだ。果たしてシーズン前の期待に応えることができるのか。難しい試合が続くエバートン。ここからの巻き返しに注目だ。

 

終わりに

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