2022-23 プレミアリーグ第18節 トッテナムvsアストンヴィラ マッチレビュー~最善の限界~




f:id:kwsk_bito:20230105190134j:image


トッテナム0ー2アストンヴィラ

 

得点者(TOT)
なし

 

得点者(AVL)
50' 10エミリアーノ ブエンディア
73' 6ドウグラス ルイス

 

 

両チームのフォーメーション

 

前書き

 前節、ブレントフォードとのアウェイゲームに引き分けたトッテナム。2023年一発目となる試合は、ホームにアストンヴィラを迎えた。

 

 トッテナムは前節からスタメンを4人変更。ワールドカップの決勝を戦ったロメロとロリスがこの試合でスタメン復帰を果たした。また、左HVにデイビスが入り、スリーバックの真ん中にはラングレが起用された。そして、軽い筋肉系のトラブルを起こしたクルゼフスキはメンバー外。代わりにブライアン・ヒルがプレミアリーグ初スタメンとなった。

 

 対するヴィラは前節のリヴァプール戦と同じ11人を起用。ベンチにマルティネスが復帰した。

 

影を潜めた疑似カウンター

 ヴィラは昨年の10月にジェラードを解任。新しい監督として、ビジャレアルで指揮をしていたエメリを引き抜いた形となった。

 

 そんなエメリのサッカーは早速チームに浸透しているように感じた。初戦となるマンチェスター・ユナイテッドでは、これまで使ってきた4-3-3から4-4-2に変更。更に、後ろからのビルドアップで相手を釣り出す「疑似カウンター」っぽい戦い方を見せ、3-1で勝利を収めている。

 

 ということで、この日のヴィラも4-4-2の布陣でボールを握りながらのスタートとなる。GK+2CBにCHのカマラとドウグラス・ルイスがレシーバーになるような配置でビルドアップを行なっていた。

 それに対しトッテナムは左右非対象っぽい守備の入りを見せる。カマラに対してはホイビュアがマンツーマン気味の対応をしていたが、ドウグラス・ルイスに対してはヒルが背中で消しながら守るような形である。

 

 序盤は、ここのドウグラス・ルイスに対しヒルがプレスバックするのか、ビスマが出て行くのかで迷いか生じてしまっていた。一方でヒルがミングスや左で幅を取るディニュへプレスに行った際は、ビスマが着いて行くことが多かったので、まずはヒルが背中で消しながらサイドに誘導させるというのが決まりだったのかもしれない。

 そこからヴィラの狙いは、トッテナムのWBが釣れたら、2トップのボールサイド側の選手がWB裏に流れて受ける形である。例えば7分のシーンみたいに前から来たトッテナムのプレッシングに対して、ミングスがひっくり返すような長いボールを入れる。

 

 そこで、ドハティがディニュに出て行ったスペースにワトキンスが流れてボールを受けていた。この場面は、ワトキンスがボールを収めることが出来ていたため、速攻に失敗しても全体を押し上げる時間を確保出来ていた。

 

 9分の場面はサイドに流れたワトキンスが直線的な動きを見せ、そのままゴール前に侵入。ここでは、ドハティが中途半端な立ち位置を取っていたため、簡単に裏を取られてしまっていた。

 

 一方悪かった場面で言えば、ヴィラの前線の選手がボールを収められ無かった時である。ヴィラのビルドアップは2CHも下がって受けるので、全体的に重め。そのため、繋いだ先が手薄であることが多かった。

 特にヴィラの右サイドはかなり苦しそうであった。トッテナムのソンがアシュリー・ヤングにまで出てくるため、幅を取ったマッギンにはペリシッチが対応。また内側のベイリーもデイビスに捕まっているため、前進することが難しそうであった。

 

 良かった時で言えば、カマラがケインの立ち位置を見て、ボールを運べそうな時は運んでたいた場面だろう。そのままハメられる場所に託すよりも彼が持ち上がる方が遥かに良さそうであった。

 

 それでもこの日のトッテナムは、前線がプレッシングに行った後に、DFラインが続けてボールホルダーにチャレンジ出来ていた。特にロメロのインターセプトはかなり目立っており、彼の前向きのディフェンスでCH裏で受けようとするブエンディアからボールを奪い、攻撃を未然に防げていた。

 

 ということで、序盤のヴィラはボール保持でなかなか違いを作れない展開となってしまった。

6バックに大苦戦

 ボールを持てなかったヴィラに対して、この試合長く保持が出来ていたのはトッテナムの方だった。

 

 序盤からヴィラのカウンタープレスを上手く剥がして前進するなど、ブレントフォード戦のような停滞感をあまり見せない試合の入りとなっていた。

 

 しかし、直ぐに雲行きが怪しくなる。ヴィラの特徴はボールを持てなければ、割り切って戦うことの出来るチームである。3-2-5っぽい保持をするトッテナムに対して、両SHを下げた6バックで対抗をしてきた。

 ヴィラのSHは大外の選手担当。そこに合わせて守備の位置を変える感じである。分かりやすく言えば、ウェストハムのフォルナルスみたいな役割をマッギンとブエンディアが行っていた。

note.com

 

 つまり、6-2-2みたいなブロックが出来上がるのだ。

 

 ヴィラ自体そんなにプレスに来ないため、CHを経由しての前進は可能。2トップ脇でビスマが顔を出してボールを受けることが出来ていた。ただ、そこから先は壁が築き上げられているため、なかなか真ん中を攻略出来ない時間が多かった。

 

 正直真ん中に刺してもミングスとコンサのCBなので、彼らを背負うのはなかなか難しい。ましてやこの試合はクルゼフスキが不在でヒルがスタメン。当然フィジカルでは太刀打ち出来ない。

 

 それだけではなく、ヴィラの4バックはボックス幅で守っているため、SBの選手がシャド-の選手を捕まえやすい構図になっている。実際にヒルはディニュに苦戦するシーンは多かった。

 

 そのため、この試合は外経由で崩す時間を増やそうとする。だが、上記で述べたように幅を取る選手にはヴィラのSHがマンツーマンで対応。そこを外しても絞ったSBの選手がサポートに飛んでくるので、常に複数人相手にする状況が生まれており、サイドでは数的不利の局面が続いていた。

 

 そんな中で見せた工夫は29分と42分に見せたソンがインナーレーンを突撃する形。ただこれもマークを剥がせていないので、正直意味が無い。

 

 この試合前半であった決定機を紐解くと、1つは39分に見せたペリシッチの中央への裏抜けである。

 ヴィラは6バックで守るため、なかなかラインの統率が出来ていないように見えた。また、ボールホルダーに対してもそんなに厳しく寄せて来ないので、DFラインもボールを蹴ることは出来ていた。個人的にはこういうシーンは何度もトライして良かったのではと思う。

 

 もう1つは43分の中央での崩し。少ないタッチでボールを回すことで、相手DFを引っ張り出し、その裏でケインが浮く場面を作れたがボールが上手く入らず。とても良い場面だったが、正直ここまで辿り着くのに43分かかったのは、頂けないなという印象を受けた。

 

 試合は前半共に決定機を作り出せないまま0-0で終えた。

 

ゲームチェンジャー不在の現状

 両チーム共にメンバー変更を行なわずに臨んだ後半。正直前半とは変わらない構図だったように感じる。ヴィラは4-4-2から6-2-2に変化する形。幅を取る選手には常に監視を行なっていた。

 

 そんな中、アウェイのヴィラに先に試合を動かされてしまう。前半から続けていた2トップの片方がWBの裏に流れる形から押し込まれると、そこから中央を使われドウグラス・ルイスがシュート。これをロリスが弾いてしまい、こぼれ球をワトキンスに拾われると、最後はブエンディアがネットを揺らされた。

 

 ここでトッテナムの気になった対応としては2つ。1つはベイリーの受け渡し。ゴールに背を向くボールホルダーに対して、マークの受け渡しをミスって前を向かせたのはマズかったと思う。ここは、身体をくっつけて前を向かさないように対処する必要があった。

 

 そしてもう1つがドウグラス・ルイスに誰が寄せに行くかで有る。フリーで枠にシュートを打たせている時点でシュートブロックに入らないディフェンダーが悪い。一見ロリスのミスのようにも見えるが、正直ロリスはそんなに攻められない。

 

 先制点を失ったトッテナムだが、ここで流れを変えられるカードがベンチに居ないのは痛いところ。最初の交代がヒルを下げて、セセニョンを投入。シャドーにペリシッチを配置というかなり苦肉の策だったように感じた。

 

 一方でヴィラは試合をクローズさせに入る。FWのベイリーを下げてSBのキャッシュを投入。フォーメーション5-3-2にして、明確に割り切って試合をクローズさせに入った。

 

 そんな中でもヴィラがトッテナムのゴールへ迫るシーンが多め。先制点を受けて以降、メンタル的にダメージを受けたのか、ネガトラでほぼ負けていた。そのためヴィラのカウンターから盤面をひっくり返される時間帯が非常に多く見られた。

 

 トッテナムも68分に再び狭いエリアでの崩しを見せる。43分のシーン同様に、ホイビュア、ソン、ケインで段差を作りながらズレを生み出したが、ケインのシュートはミートせず。

 

 すると迎えた73分。ケインがプレスバックでボールを奪われるとヴィラのショートカウンターを受ける。最後はビスマがマークを外した隙にゴール前に飛び込んできたドウグラス・ルイスに決められ2失点を喫する。

 

 ヴィラの厚いブロックを崩せないのと交代で流れを変えられない状況。それに加えリードを2点に広げられてしまったトッテナムに、ここからの挽回はかなり難しいミッションであった。

 

 このまま後ろの選手とカードマネジメントで逃げ切りを謀るヴィラに対して、出場機会のあまり無い若手と構想外になりつつあるエメルソンの投入でしか対抗出来なかったトッテナム。試合の結果は言うまでも無いだろう。

 

 試合はこのまま0-2で終了。新年早々キツい敗戦となってしまった。

雑感

 正直こうなってしまったらどうしようも無いなと思う試合だった。

  •  相手のブロックを崩せない。

  •  途中から流れを変えられる選手がいない。

  •  その上、リードを広げられてしまう。

 典型的な負けパターンだったと見て良いだろう。正直、途中から入ってくる選手やあまり出場機会を貰えなかった選手のパフォーマンスを見ると、コンテが使わないのもまぁ分かるなと思う。なので、今試合に出ている選手にはあまり文句は言えない。

 

 一方で主力級にあたる選手のパフォーマンス低下はかなり気になる。特にソンはワールドカップ前からの憑き物が晴れない状態が続いているし、ケインも勤続疲労が目に見えている。まぁ前線の駒が無いから彼らには出て貰うしか無いんだけど…。

 

 正直コンテはやることはやっている感はある。これだけ同ポジションに怪我人が出まくって、質が担保出来ないなら仕方ない。この状況でコンテのクビを切ったらいよいよ終わりだし、誰が指揮を取っても同じような地獄を見るだけである。

 

 一先ずは怪我人が戻るまで待つか、この冬に補強しつつスカッドを整理していくしか無いだろう。勿論これはコンテと心中することを選んだ時の話である。

 

見返しツイート

今回はおやすみ。

 

(編集者:川崎人)

 

Twitter↓

twitter.com

 

Blog↓

blog.livedoor.jp

 

note↓

note.com