2022ー23 プレミアリーグ 第22節 トッテナムvsマンチェスターシティ マッチレビュー~これを平均に!~

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トッテナム1-0マンチェスターシティ

得点者(TOT)
15' 10ハリー ケイン

得点者(MCI)
なし

両チームのフォーメーション

 

 

前書き

 現在公式戦2連勝中のトッテナムは、ホームにマンチェスターシティを迎えての一戦となった。

 前回対戦は3週間前に行われ、その際は前半にトッテナムが2点を先行するも、後半シティに4点を決められ逆転負けを喫している。

 今節は上位陣が相次いで勝ち点を取りこぼしており、CL圏内進出のためには負けられない試合である。

 そんなトッテナムは前節のフラム戦と同じ11人を起用。この冬にビジャレアルから加入したダンジュマと、スポルディングが獲得したペドロ・ポロはベンチからのスタートとなった。

 対するシティは前節から4人スタメン変更。ウォーカーが右SBに入り、リコ・ルイスが左SBで起用された。CBはストーンズに代わりアケ。IHにはアルバレスが入った。

蓋→下げさす→押し上げ

 前回シティと対戦した際は、右SBのリコ・ルイスが内側に入り3-2-5のような陣形を作っていた。それに対しトッテナムは、前からプレスに行く傾向が強め。なるべく高い位置で奪いたい!という意図を感じたが、シティのプレス回避によって前進されるケースが多かった。

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 そんな中、この日のトッテナムは前から行くのではなく、早々に撤退して自陣に5-4-1のブロックを形成していた。まずは、自陣にスリーラインを作ってコンパクトに守る入りである。

 自陣で敷いたブロックでボールを引っかけ、そこからロングカウンターで押し込もうとするシーンが序盤から目立つ。1分のソンの加速や、3分のエメルソンが右サイドを駆け上がったシーンなど見ても、まずは守りから入り、奪ったらカウンターで前に出て行く意思を感じた。

 それに対しシティは、ビルドアップでなかなか不思議なことをしていた。

 前回は3-2-5っぽい布陣にしつつ、ギュンドアンが自由に動くケースが多め。そこからトッテナムのCH裏で受けて前を向ければチャンスになるような感じである。そんなギュンドアンが行なっていた、前線と後ろを繋ぐリンクマン的な役割をこの試合ではベルナルドが行なっていた。

 ただ、ベルナルドは自由に動く訳では無く、基本的にはトッテナムのCHの裏に常駐。その代わり、ハーランドとアルバレスがトッテナムのHV前に立っていた。数字で表わすと、3-2-1-4的な感じである。

 確かに噛合わせで見れば、ベルナルドは浮くような形である。トッテナムのCHであるホイビュアとベンタンクールはロドリと絞って来るリコ・ルイスを監視するため、そこでライン間が開ければベルナルドは余裕を持って前を向けるはずだ。

 ただ、この日のトッテナムは最初に書いた用に撤退して守ることを優先。5-4-1のライン間は常にコンパクトな状態であった。

 トッテナムのCHも片方がボールホルダーに出て行き、片方がカバーをするチェーンの関係を行っていたため、中を閉めて守ることに成功。そのため、良い形でベルナルドにまでボールが入らない時間が続く。

 また、ダイアーも常にベルナルドに対して迎撃を狙っていたため、尚更自由にボールを持てる時間は少なかったはずだ。

 更にこの日トッテナムはが良かったのはサイドの守備である。特にペリシッチはマフレズに前を向かせないで守ることに成功。そこでサポートに来るウォーカーにバックパスをしたら、今度はソンがウォーカーの前に立って蓋をしていた。

 出し所が無いウォーカーが更にバックパスをすれば、全体がプッシュアップして今度は人を捕まえる形に変更。エデルソンが持った際は、マンツーマンディフェンスで、出し所を消すことが出来ていた。このマンツーマンと撤退の割り切りが非常に良かった。

 前半の序盤から

  • ①ブロックを組む

  • ②サイドで蓋

  • ③バックパスをスイッチにして押し上げて人を捕まえる

 という流れを徹底して出来ていたトッテナム。その流れから15分に先制点が生まれる。前回対戦のクルゼフスキのゴールのように、高い位置からのプレッシャーでホイビュアがボールを奪い、最後はケインがネットを揺らした。

 ケインはこれでジミー・グリーヴスが持つクラブ歴代最多得点を更新。更に、プレミアリーグ通算200ゴールというメモリアル弾になった。

シティが抱えた悩み所

 ホームで幸先良く先制点を奪ったトッテナム。この日は押し込まれた後の守備も非常に良かったように感じる。

 相手のWGへとボールを進められた際は、WBとシャドーがダブルチームを組んで対応をする。シティはWGが単騎で進められない場合は、サポートに来るリコ・ルイスやロドリにバックパスする頻度が多め。これは前回対戦もそうだった。

 この日のトッテナムは、シティのバックパスによるやり直しを入念に狙っていた。WGからのサポートに来る選手へのバックパスに対して、ホイビュアやベンタンクールが素早い出足を見せてボールカットするなど、二次攻撃を未然に防ぐことに成功。これにより、ワンタッチでのアーリークロスを封殺することが出来た。

 一方でこの日のシティが何を狙っていたのかはかなり不透明だったように感じる。恐らく、トッテナムのライン間が大きく開くを予測しての配置だと思うが、何度も書いているようにトッテナム側が常にコンパクトに守っている。そのためスペースは空かない。

 18分にベルナルドがCHの裏で受けてから加速し、シュートまで行くシーンがあったが、恐らくああいう形を沢山作りたかったのだろう。そうで無いとベルナルドをわざわざあそこで立たせてる意味が無い。

 しかし、ただ自分たちでボールを動かしても中々スペースは生まれない。そこがシティにとってのこの試合での悩み所だったはずだ。

 それならば自分たち主導でライン間を開かせる作業をすべきだったと筆者は思う。例えば、両WGが背後を狙って深さを作る動きは欲しかったであろう。

 この試合で言えばグリーリッシュもマフレズも下がって受けることが多かった。これだとトッテナムのDFラインはコンパクトさを維持する上では困らない。何故なら普通に着いて行き前を向かさなければ良いからだ。

 また、HVをピン留めしてるアルバレスやハーランドの裏抜けも少なかったのは気になる。2人とも比較的下がって受けることが多く。深さを生み出す作業よりも、手前に引き出すプレーを多く行っていた。

 その狙いとしては、HV裏をもう片方の選手が流れて攻略したかったのだろう。何度かアルバレスが下がって受けることで、デイビスを引き連れることは出来ていた。そこから左→右へのダイアゴナルの動きをハーランドが狙う場面は見られた。ただ頻度は多くないため、ゴールに迫る回数は少なめという感じである。

 そういった意味では、36分のシーンは理想的だったかもしれない。ハーランドも動き出していたし、そこにベルナルドからのスルーパスが出ていれば決定機だっただろう。

 しかし、ベルナルドが前を向いた瞬間にデイビスに潰されている。トッテナム目線で言えば、デイビスのファインプレーに救われた。

 徐々にボールホルダーが出し所に迷い始めるとトッテナムの選手がボール奪取を狙う。この試合ホイビュアが対面するリコ・ルイスやロドリから容赦なくボールを狩り取ろうとするシーンが目立っていた。毎回この位戦って欲しい。

 シティが攻めあぐねている間に試合の流れはトッテナムに傾く。この日はボール保持も直近の試合に比べれば良かったと思った。特に、エメルソンの背後へのランニングはかなり効いていたように感じる。

 シティは序盤4-1-4-1気味で守っていたが、途中から4-4-2へ変更。高い位置を保つWBを気にしての変更だと思うが、2列目のサイドの選手が行方不明になる場面が多かったため、トッテナムはサイドを経由しながら前進に成功していた。

 チャンスの数を見てもトッテナムの方がシティを圧倒。主導権を握り続けたまま前半を1-0で折り返した。

オープン合戦で時間を溶かす

 後半の頭も前半の終盤と同じようにトッテナムが主導権を握りながら試合を進めた。前半の終盤と同様にサイドを起点としながら押し込む回数を増やしていく。

 対するシティも50分に差し掛かるあたりからトッテナム陣内へと押し進める。ここで頑張っていたのは左のグリーリッシュである。

 この日のシティの右サイドは上記で書いたようにマフレズが前を向けないため、機能不全に陥っていることから左サイドが頼みの綱であった。

 ただ、ここに対してエメルソンが良い対応を見せる。時よりファウルで止めたりもしていたが、グリーリッシュに大きな仕事をさせなかった。

 シティは中盤の活性化を図るべく、デ ブライネを投入。ベルナルドがやっていたタスクを引き継いだ。しかしベルナルドと同様にスペースを与えて貰えず、思うようにボールを引き出せない時間帯が多かったように感じる。

 トッテナムは奪ってからカウンターアタックを徹底。前回対戦は受けに回る機会が多く、そこから立て続けに失点を喫したが、この日はアグレッシブに攻撃を続けていた。

 このオープン合戦によって、トッテナムは攻撃の試行回数を増やすことに成功。対するシティは、ピッチの上下動を余儀なくされたし、常にボールを握っての攻撃機会は減って行った。

 ここで、チャンスを作りつつ後半の半ばをやり過ごせていたのは非常に大きかった。1点が欲しいシティにとっては、攻撃している時間から一気にピンチを招いてしまっていたため、シンドイ時間帯になっていたはずだ。

 また、この日のトッテナムは交代策も抜かり無かった。サイドでカードを貰ったペリシッチに代わりセセニョンを投入するなど、運動量が必要となるWBのところに控え選手を投入して強度を保ち続けていた。

 84分にはソンを下げてビスマを投入。5-3-2へシフトし完全に守りに出る形を取った。このまま試合をクローズ出来るかと思われた87分。グリーリッシュの突破を止めたロメロがこの日2枚目のイエローカードで退場。一気に数的不利になってしまう。

 その直後にクルゼフスキを下げてサンチェスを投入。5-3-1にしてシティの攻撃を跳ね返して時間を溶かしていく。

 終盤に何度も押し込まれ危ない場面を作られるが、GKロリスを中心にシャットアウト。途中から入ったセセニョンが陣地回復の役割を担うなど、交代選手が時計の針を上手く進めてくれたのも大きかった。

 試合はこのまま終了。トッテナムが3週間前のリベンジをホームで達成。CL圏内進出に向けた大きな勝ち点3を手に入れた。

雑感

 試合は1-0で勝利。会心の勝利だったように感じるし、今季のベストバウト級のゲームだったと思える。

 前半から無理なハイプレスでは無く、撤退することを優先しシティにスペースを与えなかったことが大きかった。そこから下げさせて、人を捕まえるまでの流れは見事だったと思う。あのプッシュアップが出来るなら毎試合やって欲しいところだ。

 また、アタッキングサードまで進められてもダブルチームを組んで、サポートへのやり直しを狙う形もお見事。相手を分析してこの試合に臨んだことが伝わる一戦であった。

 これでビッグ6相手に今季初勝利。凄く長かった。ただ、この結果に満足するのでは無く、これを平均まで押し上げて欲しいところ。そうすれば、何となく続く停滞感から脱出するための足がかりとなるはずだ。

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(編集者:川崎人)

 

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