中断期間が明けて再開したJリーグ。各クラブ、準備する時間は十分に得ることができたはずだ。だからこそ、どのチームも再開明けの一発目に重きを置いていたはずだ。
できることならば内容を伴って勝利を得ることができればよかったのだが、内容では湘南ベルマーレが圧倒、結果は鹿島アントラーズというものになったベルマーレvsアントラーズ。
明確に再現して勝利を目指したベルマーレと、創発性、突発性を中心に勝利を目指したアントラーズ。
今回はこの試合について考察を広げていこう。
- スターティングメンバー
- Chapter1:ロングパス
- Chapter2:鹿島がサイドを取られる理由
- 再現性を生み出せるかも?
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スターティングメンバー
Chapter1:ロングパス
強風雨の中で行われた試合は、浮き玉、特にロングパスには苦戦を強いられた両者。このような状況の中でも、ロングパスをうまく使ったのは湘南ベルマーレで、苦戦を強いられたのは鹿島アントラーズという印象を僕は受けた。(それでも犬飼のスーパーミドルは追い風を利用したものだったけど。にしても凄かった!)
ではまずはロングパスをうまく利用した湘南ベルマーレについてを考えていこう。
1−1:ロングパスを繰り返す湘南の攻撃
湘南ベルマーレの攻撃はCFウェリントンを目掛けてロングパスを送り込んで一気にボールを前進させて、2ndボールを回収して早い攻撃に移行するというものだった。
では彼らはどこを狙って前進を行っていたのか。
基本的にベルマーレはGK谷からCFウェリントンへのロングパスが多かった。(種類としてゴールキックやフリーキック、バックパス)
この時にCFウェリントンのボールの受ける位置は中央のレーンであり、アントラーズCB⇆CHのライン間だ。ここでロングパスを受けることが基本となる。そして2ndボールを作り出すのが、ハーフスペースだ。
ここに人を配置したかったので、この試合は3-1-4-2ではなく、3-4-2-1だったのではないだろうか。
そして以下のように2ndボールを回収していく。
このようにCFウェリントンがボールを流すと、そこに反応するのがSTとWBだ。特に前向きに反応できるようにWBがロングパスの移動中に距離を斜めに詰めるという決まりが確実にあった。これでベルマーレはいくつかの下のパスを省略して、一気に鹿島陣内に入ることを狙っていた。
そしてここから、サイドを取って攻撃を仕掛けるように設定されていた。(この攻撃についてはChapter2で触れる)
このようなシーンを確認できるのが、3:30〜、11:20〜、17:53〜(プレースキック)、35:07〜もそうだろう。これらのシーンがわかりやすいと個人的には感じた。
では次はなぜ、アントラーズが2ndを拾えず、サイドを取られる現象が起きていたのかを考えていこう。
1−2:ロングパス→2ndを拾えない鹿島
CFウェリントンにロングパスを打ち込んでくる湘南に対して、アントラーズはCB犬飼を当てて対応を行う。CB林よりも空中線の強い犬飼をCFウェリントンに当てに行くのは定石だ。
だがその次の展開と周りの準備に問題があり、これが原因でボールを回収することができなくなっていた。
まずはCFにロングパスが入った時点についてを考えていこう。
先ほども触れたように、CFに対して対応を行うのがCB犬飼。これに連動して当然のように他のバックラインの選手は絞ってカバーポジションを取っていく。バックラインの連動を完璧だ。
では次は中盤に目を向けていこう。まず最初の問題はここにある。アントラーズは前からプレスを嵌め込みたい(今はどこで嵌めにいくのかが曖昧)感じなので、湘南CHに対してCHレオと三竿が前に意識が向き、自然とポジションが少し高くなる。
ここに大きな原因があり、赤のエリアバックライン⇆CHのライン間が大きく開いてしまい、さらにCB犬飼⇆CHでCFウェリントンを挟み込むこともできなくなってしまっていた。まずこれがアントラーズがロングパスに対してうまく処理を行えなかった原因となる。
次はその先の2ndボール回収の場面に移っていこう。
この場面でも原因となるのが、押し戻しになる。結論、この押し戻しがないと、人を集めることができず、頭上を越してひっくり返されるだけになってしまうのだ。それか、そもそものボールの出ところを潰しに行かないと、ボールを回収することは難しくなる。
この試合のアントラーズのように、バックラインと2ndラインが分断されてしまうと、簡単に2ndボールを回収されてしまう。
ではどこで押し戻すべきだったのだろうか。
このようにハーフスペース(厳密にはSTのところ)周辺にボールを落とされると、そこに対応にいけるのは絞ったSBのみになる。これは上の図を見てもらったらわかるように、SHの押し戻しがない分、その背後に空間ができてしまうからだ。
この空間が広ければ広いほど、STはボールを扱いやすくなり、ボールを自分のものにする確率を上げることが可能になる。
だからアントラーズはロングパスから2ndボールを作られた時にボールを回収できないことが多くなっていたのではないだろうか。
Chapter2:鹿島がサイドを取られる理由
ではアントラーズがサイドを取られてしまう理由についても考えていこう。
これは2つのパターンがある。
まず1つ目が2ndを回収されてしまった時だ。まずはこれについてを解説していこう。
2−1:WBで起点を作られる
2ndを回収されてしまう理由についてはChapter1で解説した通り。ここでは2ndを回収してからのことについてを触れていく。
先ほども触れたように、STでボールを拾われるとそこに対応を行うのがSBになる。こうなると、大外のWBが少し前に出るスペースを得ることができる。これで湘南WBはSHに対して斜め前の関係になる。
これでアントラーズはSHを完全にひっくり返されて無力化されている状態になる。だからここでWBが起点を作られてしまうのだ。そして以下のように前進されてしまう。
このようにWBで起点を作られ、大きな展開をされたくないのでSBが2度追いをかけてWBに圧力をかける。当然のことながらSBとWBには距離があるので、WBにはそこまでプレッシャーを与えることは難しい。
だから、SBの背後をSTに使われてしまう。ここで問題なのがロングパスを打ち込まれた時点でCHを押し戻し切れていないので、CHのSTに対する対応は敗走の状態になる。これで不利な状況で守備対応を行わなければならくなっていた。
さらにこの試合で気になったのが、SBとCHのマークの受け渡しの曖昧さだ。SBは場所を空けたくないので、背後に抜けようとするSTを意識することがあり、CHと被ることが何度か見られた。仮にマークの受け渡しがスムーズになっていたならば、WBに対してはCHが出ていくことができただろう。(マリノス戦はCHが外側の対応をするように明確なものになっていた)
ここのマークの受け渡しも背後を取られてしまう要因の1つとなっている。
これがよくわかるのが11:20〜FKを与えてしまうシーンだ。
2−2:広がるCBのビルドアップ
アントラーズは3バック、WBを配置するチームのビルドアップに滅法弱い。良い例がサガン鳥栖との試合だ。彼らもまたCBが広がりを持つチームだ。
ベルマーレもCBが広がりを持つことで、相手を動かして背後を突くように設定されていた。
この現象がよく起きていたのが、湘南右サイドから左サイドにボールを動かされた時によく起こっていた。
このように右から左に動かされる時、右SHのアラーノはCHを捕まえるタスクを課されていた。だから広がりを持つCBに対して内→外のプレスを行うことになる。このプレスを確認してSB常本はWBに対して前に出て対応を行う。
このようにWBに対してSBが出ていくとその背後が空いてくる。ここを使うのがSTになるわけだが、ここでもマークの受け渡しが曖昧になっていた印象だ。ここでのマークの受け渡しというのがCHとCB間の受け渡し。
CHはマークを受け渡しCBが外に対応にいくと、縦スライドでCBが空けた場所を埋めようという動きを見せ、一方のCBはその場に留まって中を埋める動きを見せる。
この一瞬のすれ違いで背後を取られる(取られそうになる)ことになっていた。
これは36:27〜のシーンがよくわかるので、ぜひ確認してもらいたい。
アントラーズはこれら2つのパターンでサイドを取られることが多くなっていた。とりわけ2−2のパターンはこれまでも見られているものなので、そろそろ解を示して欲しいと感じている。
再現性を生み出せるかも?
基本的にアントラーズの攻撃は創発性・突発性が中心のものになっている。いわば再現しろ!と言われても難しいものだ。それもそれで、そこか!とかそうくるか!とか、観ていて面白いが、やはり脆さがある。トリニータ戦やこの試合の65分あたりまでは場所を埋められてしまうと、キツいものがある。ここが脆さと言えるだろう。
だが、僕がこの試合で再現性を生み出せそう!と感じたシーンがある。それが8:53〜の攻撃だ。
意図してか意図せずか、このシーンの配置はとても良かった。SB永戸の配置で2ndラインを越え、SH土居でCHを動かす。そしてSBでボールを受けるとSHアラーノ(アラーノじゃなくてOMF荒木でも代用できる)が1つ内側のレーンでボールを引き取る動きを見せる。
ここでCBを釣り出せるので、3オンラインを応用してその背後のスペースにSH土居が遅れて入ってくる。これで一気にスピードアップをして見せた。
悲しいかな、この攻撃は8:55〜のシーンしか見受けることはできなかったが、ボールと同サイドに人を集めるという基盤があるのならば、こういったシーンは意図的に作り出せそうだ。
きちんと人の配置とタイミングを合わせていけば、再現性のある攻撃を組み立てられる気がする。
思わぬ形での逆転勝利とこの再現性を生み出せるかも?というのがこの試合のアントラーズからのプレゼントだったのではないだろうか。
湘南ベルマーレからすると、手応えのある一戦だったに違いないから、悔しい敗戦になっただろう。
順位と内容。それぞれ苦しむところがある両チーム。果たしてここからそれぞれの課題を克服し、上昇していくことができるのか。これからも動向を見守っていきたい。
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