この試合が行われると「あぁ、今季がとうとう始まるんだな!」と思う方が多いだろう。
昨季のリーグ王者とFA杯王者が戦う、今季一発目の試合。それがこのコミュニティー・シールドだ。
今回、対戦することとなったレスターとマンチェスター・シティ。ユーロやオリンピックの影響もあり、ベストメンバーを揃えることのできないシティ。それに対してメンバーがほとんど揃っているレスター。
ベストメンバーか否かの差はあれど、試合内容はとても興味深く、挑戦と狙いがよく分かる一戦となった。
では早速、この試合について考えていこう。
- スターティングメンバー
- Chapter 1:レスターの戦い方
- Chapter2:シティの挑戦とは?
- リーグ開幕が楽しみだ!
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スターティングメンバー
Chapter 1:レスターの戦い方
まずは見事に勝利を収めたレスターの戦い方についてを考えていこう。
彼らは攻守ともに明確な狙いをもってこの試合に臨む。
1-1:攻撃の狙い
まずは攻撃時の方法から考えていきたい。そこでまず触れなければならないのが、攻撃時の可変についてだ。まずは以下の図に可変した時の配置を表してみた。
レスターはこのように変形することで、シティの守備を掻い潜っていく。それができるようになっていたのが、SHペレスが内側に入ることでDMFの脇をOMFマディソンと取ることができるようになっていたから。
さらに、シティのプレス人数に対してSBバートランドが下り目の位置に止まることで、数的優位を作り出してプレスの逃げ道を作り出していた。
これでまずは「配置的な優位性」を取ることを考えていた印象だ。ではここからどのように前進していたのだろうか。
まず話していきたいのが、レスターが最も行いたかった前進方法から。
まず最初の段階で行うのが「2トップを動かす」ということだ。上の図のように、GKとCBのパス回しを行なって、シティの4-4-2の「2」の選手を動かしていく。
これを行うことで、以下の場所に最終的にスペースを作り出すことを狙っていた。
シティの守備スタンスも大きく関係しているのだが、GKまでボールを戻すとシティのFWはそこまでプレスを行うようになっていた。
例えば上の図のように、FW(押し出されたIH)がGKまで外切りのプレスを行うと、押し出されたFW側のWGが内側に絞ることでCHをマークし、IHも前に出てCHを捕まえる。これで、前にシティの選手を釣り出す。
この誘い出しにより、その背後のDMFの脇にSHペレスとOMFマディソンがポジションを取ることが可能になる。ここにGKシュマイケルからミドルパスを打ち込むことで、一気にシティの選手をひっくり返す狙いがあった。
そしてここから、左SHバーンズの推進力を生かす攻撃を中心にゴールまで迫っていた。だからこの攻撃に関連して、CFヴァーディーが右抜けをすることが多かった。
空いている場所を使いながら、右から左に持っていく攻撃が最も行いたかった攻撃だろう。
だが『右に持っていく』ことを潰された時にレスターは次点を用意していた。この試合でより多く見受けれたのがこの方法だ。
ではどのようにプレスを回避していたのだろうか。
右側を消される場合も同様に、GKとCBでボールを回していく。だがここで立ち位置が違うのが、両SBの立ち位置だ。特に左SBバートランドは下り目に止まるのではなく、少し高めの位置にポジションを移す。
これを行うことでCBソユンチュが広がりを持つことができるので、プレッシングプレーヤーと距離を確保することが可能になっていた。
だが、シティはIHとWGで中央を消しているのでボールを引き取ったCBソユンチュは外側の選択肢またはロングパスの選択肢の2つに絞られる。
ここでロングパスを蹴らされてしまうと、シティの守備の勝ちで、実際にシティはソユンチュにロングパスを蹴らせることでボールを回収していた。
ではソユンチュが外側を選択した場合はどのようにプレスを回避することができるのだろうか。
ここで肝となってくるのがSBバートランドだ。昨季、チェルシーにチルウェルを引き抜かれたレスター。上手くやりくりをして彼らはシーズンを戦ったが、やはり「左SB」に苦しんだ。そして今季、獲得したのがバートランド。彼の個人のプレス回避の能力もまた非凡。
だからこそ、CBソユンチュからボールを受け、WGマフレズのプレスを呼び込んでCHウンディティへ斜めのパスを差し込むことでシティのプレスをリセットして見せた。
もちろん、この時にSHバーンズがSBを、OMFマディソンがDMFをピン止めしていることを忘れてはならない。このピン止めがあるからこそ、中央でボールを引き取った時にスペースが生まれていたのだ。
この方法で、レスターは残っているシティのバックラインと勝負をしていた。
1-2:守備の方法
では次は守備の方法を考えていこう。これはシティの振る舞い(次項のシティの挑戦で詳しく解説)に大きく関係しているのだが、ここではレスターの守備を中心に考えていこう。
まずネガトラの部分から考えていきたい。可変に関係して攻撃参加の多かった右SBのペレイラ。攻撃が終わると、彼を押し戻す時間を稼がなければならない。だからこそボールを失った瞬間に、近くのCFとSHとOMFの誰かでボールホルダーに対してプレスを行い、余った選手でまずは近くのパスコースを消すことが決まりとしてあった。
このようにしてまずはSBペレイラを押し戻す時間を稼ぐ。そして以下のようなミドルブロックを基盤としてシティの攻撃を受け止めていた。
基盤となっているのは「中央消し」だ。そのためにまずはCFとOMFでDMFを消す立ち位置をとる。まず試合最初に行なっていた立ち位置は「横並び」となっていた。
さらにSHはSBを気にするタスクがあり、特に左SHバーンズはSBカンセロのマークの意識がより強くなっていた。これで、IHにはCHがマークを行うことで、外側に誘導。そして作り出しているのが、SB vs WGの1vs1の状況だ。(暗示的にはWG vs SB+カバーリングCBの数的優位)
外側のWGもしくは無理やり打ち込んでくる中央へのパスを奪うことをレスターは基盤として考えていた。
だが、実際にはそう上手く行かなかった。それはシティの動かし方に大きく関係している。
まずレスターが苦しかったのが、トライアングルでの数的不利だ。上の図のようにCFとOMFのところとCHのところで2つのトライアングルの数的不利を作られてしまう。
さらに、ここでSB(特にメンディ)がかなり中央に絞り込むようになっていたので、SHもそれにつられて中に入り込むようになっていた。
もちろんレスターは能動的に守備を行うチームなので、準備が整うと守備を開始していく。だが以下のようにその守備を攻略されてしまっていた。
このようにCBに対してCFとOMFが牽制に行くと、DMFを消すためにCHが一枚前に出るように設定されていた。これで残ったCHに対して2枚のIHになるので、数的不利な状況になる。これに追い討ちをかけるように、IHがCHの外側に流れることでボールを引き取って前進されてしまっていた。
だがここでIHが流れるタイミングが早いと、IHは後ろ向きのボールの引き受けになるので、CHがそのまま流れて潰すことも可能な場面もあった。
もちろん、守備の修正も行なっていく。まず前半のうちに行なった守備の修正というのが、CFとOMFの縦関係に立ち位置にすることだ。DMFフェルナンジーニョ番を明確に付けるためにこのような修正を行う。これを確認できたのが23:16秒のことだ。これで、CHがDMFまで出ていくという状況を未然に防ぐことで、CHの横のカバーを明確にした。
さらにハーフタイムでの修正。これは絞るSBの対応の変更が見受けられた。どのように変更したかというと、SBに対してCHが縦スライドで対応を行うというものだ。
これは横の距離よりも縦の距離の方が近いので、この方法を採用したのではないだろうか。当然のことながら、これに関係してSHのタスクも変わり、サイドに流れるIHをマークするタスクに変わっていた。もちろん、流れの中で修正後の前半のような形もあり。後半から新たにCHの縦スライドの守備が見受けられるように。これは45:46秒で確認できる。
このようにしてレスターはシティの攻撃のスピードを吸収しながらサイドでボールを回収することを考えた。そして入ってくるボールを跳ね返し、早い攻撃も仕掛けることも行なっていた。
修正・対応を見せながら見事にシティの攻撃を0に抑えて見せた。
Chapter2:シティの挑戦とは?
この試合で起きていたことは、まさにグアルディオラの新たな挑戦と言えるだろう。SBをかなり中に絞らせること、DMFを横に動かさずに縦の動きを加えさせること、IHの立ち位置を外寄りのハーフスペースにすること、WGに明確に幅を取らせ続けることをこの試合で行なった。
ではこの挑戦にはどのような考えと狙いがあったのだろうか。それについて考えを広げていきたい。
まずはこの試合のシティの基本的な立ち位置についてを確認していこう。
Chapter1でも少し触れたが、シティの基本的な立ち位置はこのようになる。特に左SBのメンディが中に絞ってプレーすることが多くなっており、DMFフェルナンジーニョとダブルボランチのような振る舞いをしていた。右SBカンセロはまず初めはバックライン付近にポジションを取ることが多く、内側に絞ることはメンディよりも少ない印象を受けた。
さらにIHがCHの外側に立つことが多くなり(これはレスターとの兼ね合いかも?)、CFトーレスがライン間をうろつくようになっていた。
ではこのような立ち位置をとる狙いを考えていこう。
2-1:SBのインナーラップの促し
まず個人的に考えたのがSBのインナーラップの促しだ。より走れるSBが中をランニングすることで、外側の選手を対峙する選手に対して優位に立たせることができる。(選択肢を増やし、DFに見るものを増やさせるから)
この立ち位置にすることで、SBメンディのランニングの強度と迫力を存分に生かすことが可能になる。
ではなぜそれが可能になるのだろうか。
このようにIHが外側に流れることでCHを外側に引っ張り出すことが可能になる。これはSBが中に絞っているので、大外のレーンにスペースがあるからIHが外側に流れることができる。
ここで注意すべきなのが、WGが下がってここを使うことは少ないということだ。(多分キャラクターによるけど)
仮にここでWGが下がってくると、SBを引き連れてきてしまうのでレスターのプレスの前へのベクトル強めてしまう。そもそもサイドにIHが流れなければ、CHを中央から動かすことができないので、ここでWGが下がることが少なくなっていた。(後にWGが下がるパターンも解説)
WGが下がってこない理由は他にもある。それがSBのピン止めだ。仮にここでWGが1つ内側のレーンに入っていると、SBからCBにマークを受け渡されるので、SBがサイドに流れるIHにプレスを行えるようになる。だからこそ、WGが幅を作ってSBをピン止めすることが大切になってくる。
これで中央にスペースを作り出す。
このようにSBが初めから中に絞ってポジションをとっていることで、SBメンディはそのまま中を駆け上がることができる。ここで3列目から遅れて入ってくるので、守備者はかなり捕まえにくい。さらにメンディの走力と迫力を持って、サポートを行うことができるように設定されている。
グラルディオラは外側でメンディの走力を生かすことを昨季考え、今季はもしかすると、「内側のランニング」で彼を生かそうとしているのかもしれない。この試合でも何度か見せたこのランニングは、個人的には効果的に映った。
2-2:IHのサイドの抜け出し
次に考えていきたいのがIHの背後の抜け出しだ。これは1−1で考えたことと相反するじゃあないか!と思う方もいるかもしれない。だが、これには条件がある。それがWGで時間を作れることという条件だ。
この配置からのこの攻撃方法を見ると、イングランド最高額でグリーリッシュを獲得した理由が分かる。
グリーリッシュはボールを持って時間を作ることのできる稀有な選手だ。スピードでぶっちぎるタイプの選手ではなく、合気道のように相手の逆を突き、緩急でスルスルと尚且つパワフルに前進していく。
そして何度もいうが、キープする、時間を作るボールの持ち方ができるので、この項の方法を採用することができる。
だから以下のような攻撃を仕掛けることが可能になる。
このようにWGが下がってボールを引き取ることで、SBを釣り出して背後にスペースを作り出す。そこにIHが抜け出すという簡単な方法だが、これには「WGがキープできる」という条件が必須となる。
例えば2シーズンの優勝時のマリノス。彼らはSBが内側に絞ることでWGへのパスコースを創出。そしてボールを引き取るのが仲川や遠藤。少しシティと意味合いは違うが、ドリブルの上手い選手に勝負させるという方法で圧倒的な攻撃力を誇った。(当然、他にも要因はたくさんある)
この試合のWGグリーリッシュ。彼が投入されてからこの方法は多く見受けれた。これはグリーリッシュの時間を作れるという能力があり、IHにベルナルド・シウバというフリーランの上手な選手がいたことで、この攻撃が多く見受けることができたのだろう。
条件付きにはなるが、この攻撃方法も明確に挑戦していたことだろう。
(もちろん、グリーリッシュが入った後も1−1の攻撃も仕掛けていた)
2−3:バックスからの縦パス
そしてこれも挑戦していたことだ。ここで重要となってくるのが、DMFの縦の動きとCFの降りてくる動きだ。ここにこの試合、DMFを横に動かすことが少なかった理由が詰まっていると個人的には考えている。
ではなぜ、CBから縦パスを打ち込むためにこれらの動きが必要だったのか。
DMFが縦に動くことでCHの絞りを食い止める。これがDMFの縦の動きが必要な理由だ。こうすることでバックラインから一気にCFへの縦パスのコースが開くようになる。これはもちろん、IHがサイドに流れることも必須になる。
こうすることで、CFがボールをピックアップすることが可能になっていた。
仮にシティがケインを獲得するのならば、このパターンの精度ももっと上がってくるのは間違いない。ケインはトッテナムで、下がって起点の役割もになっていたので、難なくこのパターンに馴染むだろう。
さらに得点能力も申し分ないのだから、仮にシティがケインを獲得するとなると、末恐ろしいチームになってしまう…
2−4:IHのサポートの役割
もちろん、SBが内側に絞ることでIHのサポートの役割も果たすことができる。2−1や2−3のようにIHがサイドに流れてボールをピックアップした時。ここで前を向くことが難しいようであれば、中に絞ったSBが逃げ道になり得る。このパターンは左サイド(メンディ側)ではなく、右サイド(カンセロ側)でよく見受けられたパターンで、カンセロのサポート能力が高いということが改めて証明される試合だった。
2−5:ネガトラのカウンター対策
SBが中に絞ることの理由はもちろん守備にもある。SBが内側に絞ることで、予め中央を埋めることが可能になるのはいうまでもないだろう。中央にポジションを取っていることで、カウンターを打つチームは一度外に展開しないといけない状況に陥る。これがグアルディオラがきっと考えていることで、ダイレクトに縦にプレーさせるのではなく、横に一度プレーさせることで、被カウンター時のスピードを落とさせようという狙いがあるように僕は感じた。
横にプレーさせることで、味方が帰陣する時間を稼ぐことができる。これが被カウンター時に大切な事項の1つとなる。
さらに、この狙いに気づけたのが、バックラインのスタンスが「まずは背後を早めに埋める」というものだったからだ。個人的な印象だと、昨シーズンのシティは前に出て潰すことが多いように感じた。その駆け引きの上手いディアスがいたからこそ、完結できてしまったのではないのだろうか。
だから今季は「できてしまった」部分を改善すべく、このような立ち位置とスタンスを採用しているのかもしれない。
2−5−1:SBが中に入るジレンマ
これにはジレンマが存在する。そのジレンマというのが一気にSBの背後、CBの脇のスペースにボールを落とされた時とこの試合のレスターのように、SHやWGに圧倒的なスピードを持つ選手がいた時だ。
スピードのある選手が1つ内側から外側に抜け出された時にSBもCBも背走してしまうこと、CBが外側の対応にいくとSBが斜めにカバーポジションに戻らないといけないので、マークの受け渡しとズレが生じる可能性が高くなってしまうということが挙げられる。
このジレンマはこの試合でよく見受けられたことだが、メンディとウォーカーというアスリート能力が高い選手がいるともしかすると、解決するかもしれない。
リーグが開幕し、シーズンが進んでいくにつれて、このジレンマ解消方法は見えてくるのかもしれない。
リーグ開幕が楽しみだ!
狙いと挑戦が見え、その中でもインテンシティの高い試合で、とてもエキサイティングな試合となったコミュニティー・シールド。しっかりと今季最初のタイトルを獲得したレスター。一方でタイトルは逃してしまったが、挑戦し、新たなフットボールを見出そうとしているシティ。
より一層、リーグの開幕が楽しみになる一戦だった。時間がある方、ぜひともこの試合を確認してみてほしい。
最後までご朗読ありがとうございました。
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