【スペイン戦の守備考察】オリンピック 準決勝 日本 vs スペイン

 

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悔しい結果となった先日の準決勝。スペイン戦の日本代表、いやこの大会の日本代表の『勝利』にこだわる執念、全てを賭け、全てを出し切るその姿に、心を打たれる方は多いのではないだろうか。少なくとも僕は、全力で勝利を掴みにいくその姿に心を動かされた。

 

『どんな形であろうと勝利を掴みにいく』という勝利の飢えをチームに根づかした森保監督。とやかく言われることが多い監督だが、僕はとても良い監督だと思う。

その中でも森保監督が根づかした守備。スペイン戦こそ負けはしたものの、これまでの日本代表の中で歴代屈指の守備の堅さを誇っているのだろう。

サンフレッチェ広島がリーグを制したときも、サンフレの守備は森保監督の手により、激変し、元々あったロマン満載のアタッキングフットボールに安定感が加わった。その結果がリーグ優勝だ。

 

そんな「守備の監督」がスペイン戦でどのような守備プランを用意し、勝利に拘ったのか。

今回はこれについてを考察していこう。

 

 

 

日本代表の守備考察

早速、スペイン戦の守備の考察を行なっていこう。

日本は基本的に人を意識した守備を行っていた。高い位置からは基本的にプレスは行わず、ミドルブロックを基本としていた。こうすることでスペインにボールを持たせて、カウンターで仕留めるというプランを組む。

 

唯一、高い位置からプレスをかける条件が敵陣リスタートの局面だけだ。このときだけ、明確に高い位置からプレッシングを行い、ボールを奪いに行っていた。

 

チームとして奪いところとして設定していたのが、CBからのIHもしくはCFへの縦パスだ。これを設定した理由として、CBにボールを持ち出させ、縦パスを打たせることで持ち出したCBの背後をダイレクトに突くためにこのように設定していた。

 

ではこのチームとしての狙いを実行するために、個人守備の決まりはどのようになっていたのだろうか。 

 

  • 敵陣ではOMF久保はDMFを手前に置き監視する。CBが自陣に持ち出してくるとDMFを背中で消しながらCBに牽制。自陣深くではCF林と横並びで2トップの立ち位置へ。

 

  • CF林は2CBへ牽制を行う。牽制する際、片側CBを消しながら牽制を行うことを基本とする。(ガルシアにプレスをかけ、トーレスに持たせるように誘導しているようににも映った)

 

  • SH旗手と堂安の守備時の立ち位置は内側に絞ってハーフスペース。こうすることで中央への縦パスを消すことをまずは試みる。さらにCHやOMFが場所を開けたときにそこのカバーを行う役割を果たす。外側に誘導してSBにボールが出るとそこにプレスをかけるタスクもあり。自陣でブロックを作ったときは、SBが外側に対応にいくとそこのヘルプとカバーを行う。CHが前に出ると内側のカバーも担当。

 

  • CHは基本的にIHのマーク担当。かなり人を意識する。

 

  • SBは基本的にWGのマーク担当。ここも人を意識。1つ内側のレーンに入るWGも担当。ハーフスペースでIHと入れ替わるとマークが変わる。この場合はSHに大外のSBの対応を任せる。

 

  • CBはCFの対応を基本とする。チャレンジ&カバーの関係を常に維持。さらにCHの背後の対応も行う。外側に対応に行ったときのSBのカバーは基本的に行わない。中央3レーンをきっちり締める。この試合の肝となる重要なタスクはCBガルシアとトーレスの縦パスを奪うこと。

 

これが個人のタスクとなる。ではここから先は具体的にその現象を考察していこう。

 

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左側の守備

まずは左側の守備から考えていこう。上の図のように、決まりに則りSHが1つ内側に絞り、IHの縦パス(中央への縦パス)をまずは消す。さらにOMFはDMFを手前に添えるように立ち位置をとる。当然、IHにはCHがマークを行う。

このようにすることで、左側では基本的に外誘導を行うようになっていた。

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誘導して奪う場所

そして外誘導してボールを受けたSBに対してここに内側から外に向かってSHがプレスを行う。これでIHの縦パスの選択肢を消す。もちろん、リスク管理のためにCHがスライドをし、逆SHもかなり内側に絞ってくる。このときに忘れてはいけないのがIHのマークを引き続き行うということ。

これでスペインSBに対して縦の選択肢を残してWGに縦パスを出させる。ここの対応を行うのがSBだ。このSBで1vs1を作り出す守備は大会中、ずっと行なっていることで、この試合も例外なくこの守備を行なっていた。SBの圧倒的な対人能力があるからこそできる芸当だ。

 

これが基本的な左側の守備だ。

もちろん、スペインSBがWGに対して縦パスを打ち込まない場合もある。というよりも左側は縦パスを打ち込まないことの方が多かった印象だ。

ではスペインはどうするのか。当然、CBに戻してやり直す、角度を変えることを選択する。

この場合の日本代表の守備はどのようになっていたのだろうか。

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重要なのはCFの守備

SB→CBのバックパスを選択させたときに最も重要になるのはCFの守備だ。スペインCBはSBからのバックパスを受けるために、サイドに流れるか少し深い位置まで自陣に下がる。こうすることでスペインCBはCF林の守備範囲から外れて、ボールを引き取ることが可能になる。これでCBガルシアは『再び縦パスを打つ』準備が整う。

 

これに対してCF林はまず縦パスのコースを消す立ち位置をとる。(CBに明確にプレッシャーを与えることもあり)

こうすることで、CBガルシアからCBトーレスに横パスを出させることを選択させるように誘導。

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横パスを打たせて陣形回復

横パスの誘導が重要なものとなっており、この一本のパスの時間の間に左側に寄った全体の配置を戻すことを行う。

これで日本は陣形をリセットすることができ、再び良い状態から守備を行うことが可能になっていた。

だがここで1つ、懸念すべき点がCBトーレスにフリーになってしまっているということだ。だが日本代表、森保監督の考えは、ここでフリーに持たれることを許容していた。

 

ではここからは右側の守備を考えていこう。

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敵陣で持たれる分はプレスをかけない

まずプレスを行うときと行わないときの線引きから。基本的に上の図ように敵陣でCBトーレスがボールを保持している状況のときはプレスをかけない。そもそもここにCFのプレスは間に合わないし、無理にプレスをかけて再び左側に持っていかれてしまうと後ろの選手たちは戻した陣形をもう1度左側に寄せなくてはならなくなる。

だからこそ、敵陣でボールを持たれてしまうことは許容していた。

ではCBにプレスを開始するのはどのタイミングなのだろうか。

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持ち出し自陣に入ったときにプレス

このようにCBトーレスが敵陣から自陣にボールを持ち出したときにCBにプレスをかけていく。ここにプレスをかけるのが、OMF久保に設定されていた。久保はDMFの背中で消しながらプレスを行う。

ここで久保が出ていくことで、4−4のブロックは崩さず、しっかりと陣形を維持することが可能になっていた。

そして以下のような状況に持ち込んで、ボールを回収してカウンターに移行する。

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勝負する所は中央

勝負する所は中央に設定されていた印象だ。リスクがあるかもしれないが、そのリスクを可能な限り軽減して中央で勝負をしていた。

そのリスクの軽減というのが、CBからのラインを越えた縦パスIHをブロック外に追い出すということだ。これがこの試合の日本代表の守備の生命線となっていた。

 

まずCBからのラインを越えた縦パス。

これはシンプルに距離が長くなるので、その精度はやはり落ちてくる。さらに4−4のブロックの隙間を通さないといけないので、かなりのパススピードが必要で、受け手の止める技術も必要で、ボールを止めるのも難しくなる。(それを高精度で行うスペインは恐ろしかったし、世界とのレベルの差を目の当たりにした)

 

次にIHをブロックの外に追い出すこと。

これは縦パスを入れられた時点での、サポート、特にレイオフを消すことを考えていたのだろう。さらに受け手(CFやWG)との距離を作り出すことでネガトラの強度を少しでも落とすことができる。

 

これでCBで勝負を仕掛けてボールを回収できるように設定していた。一見、危険なパスに見えたが、見返していくとCBに縦パスを打たせることを誘導しているように僕には映った。

 

そして持ち運ばせたCBの背後にボールを落とし、そこにCF林が走り込むことで一気にカウンターへ。

 

日本代表はこのようにして守備を考えていたのではないだろうか。

 

ではここからはスペインの修正による日本代表が受けた影響を考えてみよう。

 

スペインの修正による影響

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頑張れ、日本!

悔しい。この試合が終わって本気で感じたことだ。多くの方はこのように感じただろう。疲弊していたスペイン代表とはいえ、最後まで戦い、決勝に手をかけた日本代表。

 

『日本は守れる』

 

この試合で僕はこう確信した。もちろん、この戦い方が好きじゃない方もいるかもしれない。岡田監督の時と変わらないじゃないかと思う方もいるかもしれない。

でも僕はこのチームが好きだ。世界と戦うために、守備は絶対に必要だ。

現に結果を残してきたチームは守備が基盤にあった。だからこそ、日本もこれが必要なのではないだろうか。

アジアではこのような戦い方とはいかないが、引いた相手にもしっかりとゴールを奪っているのも事実。

ここから果たしてどのような進化を遂げていくのか。そして来年のW杯はどのような結果になるのか。

結果は悔しいが、その先の多くのものが見えた一戦だったように感じる。

 

そして、困難に本気で立ち向かう姿。本気で闘う姿。

間違いなく、僕は彼らの姿に心を打たれた。

 

なんとしてもこのチームにメダルを獲ってもらいたい。頑張れ、日本!!!!

 

 

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ではまた次回の記事でお会いしましょう!