【UCL グループE 第5節】
セビージャ vs チェルシー
監督
セビージャ:ロペテギ
チェルシー:ランパード
スタジアム:エスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスファン
結果:0−4
得点者:8' 54' 74' 83' (PK) ジルー
スターティングメンバー
動かしていくチェルシー
この試合、チェルシーはセビージャの守備を動かすことで前進するためのスペースを作り出していた。そしてこの作業が面白いように嵌ったので、4ゴールのセンセーショナルな試合を演じることができた。
ではこの試合、どのようにチェルシーはセビージャを動かし、攻撃を仕掛けていたのだろうか。これには主に3つの方法があった。
まずはセビージャの守備から触れていこう。失点を喫するまでセビージャの守備はCBにボールを持たせ、中央のDMFとIHを捕まえることで、ボールを外周りにさせることを狙っていた。
だから上記の図のように、チェルシーは最終ライン(CB)で数的優位を保て、最前線で数的不利の状況になっていた。
ではここからどのようにセビージャを動かして攻撃を仕掛けていたのだろうか。
パターン①:OMFを動かして中央突破
まず1つ目。この方法が最も多く見受けることができた。
このように、数的優位を保てているCBがボールを持ち出すところから攻撃の仕掛けが始まる。そしてここでCBが持ち出すと、CFの意識を引きつけることができる。
さらにこれと同時にIHが縦パスを受け、CHを釣り出しながら逆CBへ展開。
こうすることで、次の展開を見込める。
このように展開してCBがフリーになることを嫌うセビージャはOMFがプレスを行う。これが1つ目のチェルシーの狙うOMFの動かし方だ。これでOMFを釣り出すと、DMFジョルジーニョが流れて縦パスを引き出すことと同時に、セビージャCHを釣り出す。
こうすると、IHはマークされていたCHがいなくなるのでライン間でフリーになれる。さらにCBからの縦パスを受けるために中央に移動し、CBから縦パスを受けることが可能に。これで主にIHハヴァーツが前を向いてプレーをすることが多く見受けれることができた。
そして現にジルーの1点目はこのようにOMFを釣り出し、IHハヴァーツがライン間でボールを受けることで、よりダイレクトにゴールに迫ることができていた。
これが1つ目の方法だ。
パターン②:CHを動かしてサイドチェンジ
これも多く見受けることができた。主に右WGのオドイが幅を作って攻撃を仕掛けていた。ではどのようにCHを動かし、サイドを変えていたのだろうか。
この場合はIHが幅を作り出すことで、マーカーのCHをサイドまで釣り出す。これと同時にWGがIHと入れ替わるように縦パスを受けに降りてくる。これで縦パスを受けることでサイドに展開するための段取りを進める。ここでWG(またはIH)がフリーになることができたのは、中盤に降りるWGに対してSBが着いていくかの判断に迷うからだ。
そしてここでWG(またはIH)がフリーになれ、前を向くとサイドを一気に展開する。
これで幅を作るWGがフリーでボールを受けて仕掛けることが可能になる。ここで幅を作るWGがアイソレーションできるのはIHとWG(+CF)でバックラインをボールサイドに寄せているから。これで主にWGオドイがフリーになることができていた。
もちろん、SBがWGに対してプレスを行う場合もある。この場合は、WGプリシッチのターン能力で剥がしていた。ここでプレスを無力化することができるプリシッチがいかに貴重な存在だということを改めて示して見せた試合だったのではないだろうか。
これでまだ22歳というのが末恐ろしい。
プリシッチの個人能力の駆使しながらサイドチェンジするパターンが2つ目の前進方法だ。
パターン③:CFが流れて起点
ではこの2つのパターンが封じられた時に使っていたのがCFがサイドに流れて起点を作る方法だ。これは世界最高峰のチームプレーヤーのジルーだからこそできた前進方法だ。
この場合は先制点直後、セビージャのプレスが強まったことでIHが3列目に降りて組み立てに参加することで起こり得たものだ。セビージャは失点直後からCB、SBにもプレスをかけ始め、チェルシーに圧をかけ始める。これで全体を押し上げることでコンパクトに保ち、中央経由の下のパスを封じて行った。これに対してチェルシーは上の図にあるように、IHがDMFの近くに降りるようになる。こうするとライン間に立つプレーヤーがいなくなるので、幅を作っていたWGが中央に入ってライン間に入るようになる。
この立ち位置、移動する時間を作り出すために、バックラインでCB→SBでボールを回す。これで最前線のプレーヤーの立ち位置を整理。そしてSBがボールを持つと幅を作るWGがボールを受けに下がり、CFが中央のレーンからハーフスペースに流れる。
これで下のパスではなく、上のパスを選択するSB。ここで高い確率でボールを収めれるジルー。これが彼が入る時のチェルシーの強みだろう。
そしてここでボールが収まると、次のように前進していく。
ジルーがボールを収めると、プリシッチがレイオフでボールを受ける、またはSBの背後にフリックしたボールに反応して背後に抜け出す。さらにWGが中央に寄っているので、釣り出されるCBの背後を突く、またはライン間でボールを受ける。
この方法は昨季後半にもみられていたもので、これで前進するとよりダイレクトにゴールに迫ることが可能になる攻撃だ。これでカウンターに近い、速い攻撃でセビージャのゴールに迫っていた。
このように主に3つの方法でチェルシーは4ゴールを奪ってセビージャを粉砕した。
明確だった守備
攻撃力に注目されがちだが、この試合でもクリーンシートを達成したチェルシー。この試合の守備も明確でしっかりと無失点で試合を終えることに成功した。ではどのようにセビージャの攻撃を止めていたのか。
まず、チェルシーもセビージャと似たように、CBにはボールを持たせて良いように設定する。この時にWGはSBを視界に入れれるポジションを取る。さらにCH、OMFに対してIH、DMFを必ず捕まえる立ち位置を取る。
これがチェルシーの守備のセットポジションとなっていた。
もちろん、セビージャCBが持ち上がることを選択。この時にIHは絶対にプレスを行わないことが明確になっていた。もちろん、WGがプレスにいくことも少なく、仮にプレスにいく場合はSBを切りながらプレスを行うこともあった。そしてこの持ち上がりに対して牽制にいくのはCFとなっていた。これで持ち上がるCBにパスコースを作りださせず、判断の選択肢を無くしていく。そして焦らすことでミスを誘い、ボールを回収することで再び攻撃に移っていた。
これに対してセビージャは次の手を打つ。これに対してチェルシーもしっかりと対応、いや準備をしていた。
このようにセビージャはCHがバックライン付近に降りて組み立てに参加する。これに対してチェルシーはIHは明確にプレスを行う。
『CHが降りてボールを受けた時にプレスのスイッチが入る』
これが明確になっていたので、チェルシーは自信を持って守備を行うことができていた。そしてCHに対してIHがプレスをかけ、外にボールを回させSBにパスを出させる。
そしてここにボールが出ると、中に絞っていたWGが中→外のプレスを行うことで縦に抜かしてSBと挟み込んで回収、またはCBにバックパスを選択させる。これでバックパスを選択させることで、全体を押し上げ、徐々に敵陣に入り込むことで、深くからロングボールを蹴らせることで、回収していた。
このように明確な守備戦術と共に、セビージャに決定機を作らせずに見事に勝利を掴み、このジルー劇場の幕を閉じることに成功した。
まとめ(雑感)
特に、ジルーとプリシッチの凄さを再確認することのできた試合。特にジルーに関しては今季の出場時間が少ない中でも、しっかりと結果を残す様は、まさにプロの鑑。このストライカーの下、エイブラハムが多くのものを吸収することができれば、これから先も安泰であろう。そしてさらにはギルモアも元気に戻ってきた。これもランパード監督にとって嬉しい知らせだろう。試合内容に結果もついてきたこの試合。見ていても楽しい試合だったし、何よりも期待が膨らむ試合だった。
ぜひ皆さんも、今季のチェルシーに注目してみて欲しい。
終わりに
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