【2020/11/30 Premier League 第10節】
チェルシー vs トッテナム
監督
チェルシー:ランパード
トッテナム:モウリーニョ
スタジアム:スタンフォード・ブリッジ
結果:0−0
主審:Paul Tierney
スターティングメンバー
場所を消すモウ・トッテナム
スタンフォード・ブリッジに乗り込んだ際の勝率が非常に低いモウリーニョ。かつて要塞を築いたこのスタジアムで勝利を掴むために、前節のシティ戦と似たように、スペースを消すことで守備ブロックを敷いて戦った。
(参考までに、シティ戦のレビューをどうぞ)
ではチェルシー相手にはどのように守備を行っていたのだろうか。
まず行うのは、『中央にボールを入れさせない』ことだ。これを行うことで、シティ戦と同様に、外にボールを回させることを狙った。これを遂行するため、選手個々人が担っていたタスクが次になる。まず、CFとOMF(主にOMF)でDMFを消すことを行う。またこの時に、CBチアゴシウバにはボールを持たれないように、彼が持ったら牽制し、相棒のズマにボールを持たせるように仕向けた。
さらに中央に位置するIHに対してはCHが気に掛けることで縦パスを容易に入れさせないようにしていた。またSHが最初は中でポジションを取ることでIHを背後で消すことで、外の選手にパスを出させる。
これでサイドにパスを出させると、SHがSBに対して内→外のプレスをかける。この時にチェルシーはSBのパスコースを作り出すためにハーフスペースに立っていたWGが幅を作り出す。それと同時にIHがハーフスペースにポジション取る。
これに対してモウリーニョが用意していたことは、まず場所、SBとCBの間のスペースを消すことだ。そのためにCHが縦スライドを行い、ポケットを最優先で消すことでSBが幅を作るWGに対して迷いなくプレスを行うことができる。さらにOMFも縦スライドを行うことで、サイドを圧縮する。
これでボールを奪う、またはチェルシーに攻撃をやり直させることを選択させ、焦らしてミスを誘ってボールを回収していた。
これがモウリーニョがこの試合に用意してきた守備戦術だ。
ではこれに対してチェルシーはどこに活路を見出していたのだろうか。
チェルシーが活路を見出した場所
チェルシーはモウ・トッテナムが行う場所を消す守備に手を焼いていた。だが、ランパードの愛弟子のマウントにより、活路を見出していく。ではどのようにしてスペースを作っていっていたのだろうか。
チェルシーが活路を見出すために、行ったこととはIH(主にマウント)がバックラインに下がることで組み立てをし、さらにSHのプレスを呼び込むことだ。この時にIHがバックラインに入ったことでSBをさらに高い位置へ押し上げ、トッテナムSBを動かす。もちろん、これでWGがハーフスペースに立つことでポケットを最優先で埋めるCHを下げることができる。
そしてこれらを行ったことで、以下の展開に持ち込める。
このようにCHをバックラインに押し下げたことで中央にスペースを作り出すことができる。そしてここへCFが降りてボールを引き出すことで一列高い位置で起点を作り出すことができるようになっていた。
そしてここでCBが着いてこなければ、CFがターンできるので、WGが斜めにランニングして背後を突くことができる。また着いてきたとしても、DMFや再びIHがサポートを行うことでWGが背後へ抜け出すことも可能になっていた。
もちろん、中央へWGが抜け出すので、以下のように展開することも多くなっていた。
このように、WGが背後に引っ張ることでトッテナムSBの立ち位置も中に寄せる。これで大外に位置するSBがフリーでボールを受けることが可能になる。(もちろん、ワンツーでIHが受け直すこともある)これでここからクロスを上げて攻撃を仕掛けてゴールを狙っていた。
チェルシーは『トッテナムCHがポケットを最優先で消す』タスクを利用して、CHのギャップを広げ、中央にスペースを作り出すことで活路を見出していた。
攻撃に拍車をかける修正
さらにランパードはハーフタイムでさらに攻撃のさらに圧力をかけるために、修正を加えていた。その修正が以下のものになっていた。
ランパードが行った修正は、CBズマがボールを持ち出すことを意識させることだ。これを行ったことで、「SBのマークのタスクがある」SHに対してSBのマークかCBへのプレスを行うか、この判断を迫らせることに成功していた。
そしてこれで次のような展開に持ち込める。
まずSHがCBにプレスを行う場合。この場合はSHがSBを消すために外切りのプレスを行う。これをSHに選択されると、持ち出したCBズマはハーフスペースに入るWGへの縦パスを選択。これで中→外のボールの動かし方でSBをフリーにすることができる。そしてここから高精度クロスを供給することができていた。
ではSHがIHを消しながらプレスを行った場合はどのようになっていたのか。
この場合はシンプルにSBへパスを供給することで大外でフリーになることが可能になる。これでSBジェームズがトッテナムSBレギロンと1vs1を仕掛けることができる。ここで若干優位に立っていたのがジェームズで、彼の推進力を生かしてチェルシーはクロスまで持っていくことが多くできていた。
では最後にSHの本来のタスク「SBのマーク」を選択した場合はどのようになっていたのだろうか。
この場合はIHとWGの入れ替わりで対応する。IHがハーフスペースに入ることでCHを押し下げ、WGが中央に入りOMFのような立ち位置を取る。これでWGのマークを行っていたSBが中まで着いていくのか迷わすことができ、瞬間でフリーになることができていた。そしてそこへ縦パスを打ち込むことで、中央から突破を試みることも後半からより増えていた。
このようにしてチェルシーは修正を加えたことで攻撃に拍車がかかったが、さすがはモウリーニョのチーム。最後まで大崩れすることなく、しっかりと集中力を保って攻撃を跳ね返すことで、圧倒的ば攻撃力を誇るチェルシーを見事無失点で抑えた。
補足:トッテナムのビルドアップについて
では最後に補足になるが、トッテナムのビルドアップについて触れていこう。
トッテナムが行ったビルドアップはこのようなものだった。CHホイビュルクがCBの間に降りることで3バックを形成することが多く見受けられた。これを行うことで、攻撃的な両SBを押し上げ、チェルシーWGの斜め後ろにポジションを取らせる。さらにOMFに入っているエンドンベレがCHの位置に降りることで、中央に残るCHシソコと一緒にチェルシーIHの意識を引きつける。
さらにと違ったのが、CFケインがOMFの空けたスペースに入ってくることが少なかったことだ。これにはDMFカンテの存在もあっただろが、CFが降りることで両SHが中に入ることを防ぎ、そのSHにピン留めさせることに狙いがあったからだろう。
これでトッテナムはSBで時間を作れるようになる。
このように、WGとCFのプレスを呼び込むと、一気にWGの背後に立つSBへパスを供給。CHでIHを引き付けている、SHでSBをピン留めしているので、SBがフリーになることができていた。そしてここから十八番となった早い攻撃を仕掛けることで、チェルシーゴールに迫ることを狙った。
だがこれは、チェルシーIHのプレスの速さ、またはチェルシーSBのプレスとCBのスライドの速さにより潰されてしまうことも少なくなかった。
まとめ(雑感)
場所を消すことでカウンターを狙い、勝利を掴みにかかったモウ・トッテナム。それに対して、攻撃的なサッカーを展開し、人とボールを動かしながら、スペースを作り出し、よりダイレクトにゴールに迫り勝利を狙った。だが、どちらも譲らず、ドローゲーム。その内容は、まさに両監督、両チームの色がよく出た、良試合となっていた。場所を消し、場所を取る。この試合の醍醐味はここにあった気がする。是非皆さんもこの試合の場所の埋め方と取り方の掛け合いを、もう一度見てみて欲しい。
終わりに
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