EURO2020も残りわずか。とうとう準決勝まで来てしまった。そして僕が応援しているチームが残っている。そのチームがイタリア代表だ。
彼らの前に立つ塞がるのは、疑いようのない強豪国のスペイン。若い力とベテランの融合が進み、アッズーリに牙を剥いた。
いくら攻撃的、アグレッシブな守備のチームに変貌したといえど、伝統、もっと根深いDNAは変わらない。美しき守備の国はボールを持たれようとも、攻め込まれようとも、最後の最後で弾き返し、PKではあったが、見事に決勝へ進出して見せた。
では今回は、この白熱の一戦で起きていたことについて解説・考察をしていこう。
- オンラインサロン:FOOTBALLのハナシ
- スターティングメンバー
- スペインの前進が凄かった件
- スペインの守備は?
- イタリアの守備修正
- 『斜め』で回避するイタリア
- これぞ白熱の一戦!
- オンラインサロン「FOOTBALLのハナシ」
- YouTube
- 使用サイト:TACTICALsita
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スターティングメンバー
スペインの前進が凄かった件
まず触れなければならないのがスペインの前進についてだ。この考察についてはYouTubeで話しをさせてもらった。ぜひYouTubeでご覧になってもらいたい。
チャンネル登録・高評価もしてもらえると嬉しい限りだ。
では電車内など、昼休憩など、「通信量」がかかってしまう場所でこの記事を読んで頂いている方のために、このブログ内での「スペインの前進が凄かった件」についてを解説していこう。
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対スペインのイタリアの守備
まずこれを考えていく際に、触れなくてはならないことはイタリアの守備についてだ。
彼らの守備はいつもと違い、明確に対スペインの守備を用意してきていた。
この図のように、イタリアはWGの立ち位置を調整してきていた。右WGのキエーザは低めの位置を取ることでIHぺドリを見れるポジションを取る。一方の左WGのインシーニェは打って変わって前に出ることでCBの牽制を行う。
これをすることで、CFインモービレと一緒にスペインCBを牽制するタスクを担っていた。
さらに、右WGが低めの位置を取る理由は、IHバレッラが明確に「スペインの心臓」であるDMFブスケツの監視役を担うためのものだった。
これで、中央を完璧に当て嵌めることはできるのだが、上の図にもあるように、SBがどうしても空いてしまっていた。
本来ならばここにSBを押し出して当て嵌めるのだが、この試合では近くにWGがいたことにより、SBまで出ることができていなかった。
これを行うことで、中央にボールを誘導して回収しようとイタリアは狙っていた。だからこそ、WGやIH(ヴェラッティ)は外切りの牽制・プレスを行うことが多かったし、現に中央にボールを誘導することができる場面も多かった。
だがこの守備はスペインのプレス回避に上を行かれることとなった。
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『縦』のプレス回避
ではどのようにスペインは前進を行なっていたのだろうか。
まず行なったことが外切りをされて背後で消されるSBが、『外切りを無効化』するために、あえて背後からプレッシングプレーヤーの視野内に入ることを選択していた。これを行うことで、現在の局面ではCBとSBでWGに対して数的優位を作り出すことができ、さらにWGの背後のスペースを作り出すことで、その先の展開に大きな影響を与えていた。
まずこれがスペインの大きなプレス回避の第一歩となっていた。
そして数的優位を作ったので、SB⇆CBのパス交換でWGを動かす。これでCBが持ち出すことができる。この持ち出しがかなり重要になり、上の図のように、縦関係になった3枚でIHに対して数的優位を作り出すことができる。
ここにオルモをCFに起用した意図があり、そしてそれが大きく機能していた。
この図のように、SBが下がって開けたスペースにIHが流れる。これを行うことでイタリアIHを外側に寄せることが可能に。これで、降りてきたCFがボールをピックアップできる菱形の頂点に立つ。このようにしてスペインは菱形を作り、DMFジョルジーニョ脇をCFオルモが下がって使うことで、バランスを保ちながら、前進をして行っていた。
もう少し詳しい解説はYouTubeで行なっているので、ぜひとも家に帰って快適なWi-Fiの下でラジオ感覚で聴いてもらいたい。
スペインの守備は?
ではスペインの守備はどうだったのだろうか。彼らもまた、ハイプレスを仕掛けることイタリアのボール保持の局面を難しくすることを狙った。そしてそれはうまく嵌っていた印象だ。
スペインのハイプレスは上の図のようになっていた。CBに対しては基本的に左WGのオヤルサバルとCFオルモで捕まえにいく。DMFに対してはIHぺドリ、IHコケはそのままIHヴェラッティ、WGトーレスはSBを捕まえていた。
さらに飛び出してくるIHバレッラの担当はある程度のところまでDMFブスケツが行い、このある程度というのが、DFラインを跨ぐまでという意味で、バレッラがFCライン付近までいくと、マークを受け渡すという明確な決まりがあった。
これでSBアスピリクエタがSBエメルソンを見て、2CBでWGインシーニェとCFインモービレをマーク。
このようにして前からはっきりと当て嵌めることで、イタリアの場所を狭くしていき、満足にボールを繋がせなかった。
これで特に前半はボールを回収し、そして前進を行い、攻撃を仕掛け続けた。
しかし、スペインは最後の局面、アタッキングサードの攻撃は選手個々人の発想頼みになっていたので、純粋なイタリアバックスとの勝負になり、なかなかそこを越えることができなかった。
イタリアの守備修正
ではイタリアの守備修正について触れていこう。前半、偽9番にやられまくったイタリア。守備大国がこのまま修正せず、やられ続ける訳がない。
この修正の布石は35分あたりのボヌッチの対応にあった。この場面では降りていくCFに対して、CBのボヌッチがついていくことで、偽9番のシステムを攻略して見せた。
きっとマンチーニ監督はこれを題材に、修正を考案した。その修正が以下になる。
このように、イタリアはWG立ち位置とDMFブスケツを捕まえる人の修正を加える。上の図のように、WGがSBを見れる立ち位置をとることで、前半に穴となってしまっていた外切りの背後をなくした。
さらに、これを行うのでIHバレッラによる「ブスケツ番」ができなくなってしまう。そこで行なったのがDMFジョルジーニョを前まで出して、ブスケツ番を代わりに遂行させた。これでIHにはIHを当て嵌めることが可能になる。
こうするとDMFジョルジーニョが出ていくので、CB-MFのライン間が空いてきて、そこをCFオルモに使われるのだが、ここには明確にCBキエッリーニ、もしくはボヌッチがついていくことで、ライン間を潰すように設定した。
これでイタリアは「いつも通り」に外側にボールを誘導して、ゴールからボールと人を遠ざけ、そして場所を狭くしていくことで守備を行えるようになった。
字面に起こすと何の変哲もないことのように感じるかもしれないが、ピッチ上では多大な影響を与えていたことは間違いない。
そしてそれを難なく行う選手と監督、スタッフ陣を末恐ろしく思う。
『斜め』で回避するイタリア
そしてこの試合、最後に触れたいトピックスはイタリアのプレス回避についてだ。
まず、前半で見せたプレス回避。これがよくわかるシーンは43分あたりのものだ。
まず考えるべき場所はSBアスピリクエタのところ。ここが唯一数的優位に立てている場所となる。(それでもアスピリクエタなのである程度守られてしまうことになっていたが…)
この数的優位を生かして、イタリアは前進を試みていた。ではどのようにここを使うことで、前進を行なっていたのだろうか。
このように、SBエメルソンが1つ高い位置まで上がることで、SBアスピリクエタを押し下げると同時にピン止めを行う。
これを行うと、次にIHヴェラッティがサイドに流れる。こうすることで、ある程度人を捕まえて守備を行うスペインは、IHコケがサイドに釣られる。
こうすると、WGインシーニェが3列目付近まで下がってボールをピックアップすることが可能になる。これはCBが深い位置までついていくのかの判断を迷わせることができるので、このような方法が効いてくる。
これでCBもしくはGKからボールをピックアップすることで、WGインシーニェが起点となり得る。だからSBエメルソンがラストパスを受けたり、ラストパスを供給するシーンを見受けることができたのだ。
さらにもう1つ。これも中央を開けて一気に早い攻撃に移る方法だ。これは66分30秒あたりからのシーンを見てもらえるとよく分かる。
この図のように、DMFを動かすことでCFが中央でボールをピックアップすることができるように設定していた。この方法はスペインの偽9番と若干似ているところがある。だが、イタリアの場合は、WGがハーフスペースに入ること、さらにもう1枚、逆IHがバックライン付近までCFと入れ替わるように入っていくことが決まりとしてある。
ここがスペインと違うところで、イタリアの場合はスペインのように『縦』ではなく『斜め』から中央を使うことで、スペインのハイプレスを回避し、早い攻撃でゴールまで迫っていた。
これぞ白熱の一戦!
まさに白熱の一戦。戦術的な部分も、気持ちの込もったプレーも見れて、朝から幸せな気分になった。いろいろな駆け引きがあり、そして1プレー毎の気持ちのこもった熱いプレー。こんな試合を見せられて興奮しない人はいるのだろうか、いやきっといない!
僕は少なくとも朝から『良いものを見た!』と興奮が抑えきれなかったし、おかげで仕事も楽々乗り切ることができた。
今大会、僕はイタリアを応援していることも関係しているが、クリアをする度に称え合うイタリアの選手たち。この光景を見て、僕は美しいとまで感じた。これが守備の国なのかと。伝統、いやDNAはこういうものなのか、と。あと1つの勝利でこの美しい物語を締め括ることができる。
果たしてEURO 2020を制することができるのか。最高峰の大会が終わりに近づいていると思うと少し寂しいが、決勝も最高の試合となるだろう。
マイチームが悔しくも敗退してしまっている方、ぜひ一緒に進化したイタリアを応援しようじゃないか!!!!
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ではまた次回の記事でお会いしましょう!