【J1第29節】
鹿島アントラーズ vs 柏レイソル
【結果】
1−4
【スタジアム】
県立カシマサッカースタジアム
入場者数 4,327人
【得点者】
鹿島アントラーズ:56’ OG
柏レイソル:26’ OG 75' オルンガ 83’ クリスティアーノ 90’+1 神谷
【主審】
東城 穰
【天候/気温/湿度】
雨/13°C/77%
【スタッツ】
スターティングメンバー
嵌り切らない守備
前節の仙台戦と同様の並びで試合に臨んだ鹿島アントラーズ。ベガルタ仙台には面白いようにこの並びが嵌り、圧倒的な個人技とそれを支えるプレーと守備でアウェイで勝利を掴み取り、残りのホームゲームに勢いをつけた。
だが、今節対戦した柏レイソル。彼らは定石の4-2-3-1ではなく、3-4-3でこの試合に向けて準備を行っていた。これにより、アントラーズは試合の初め、守備を嵌めきることができずに、苦しんだ。
ではなぜ、守備が嵌り切らなかったのだろうか。
4-4-2に対してレイソルが使った布陣は3-4-3。こうなると上記の図のように、2トップvs3バック、2CH vs OMF、2ST vs DMFになり、中央のラインで多くの数的不利を作り出されてしまう。だからこそ、ボールをこのように動かされることになる。
このように、一度中央のCBに縦パスを入れられると、CFが一枚外を切りながらプレスを行う。これがアントラーズのプレスのスイッチになるのだが、もちろん、レイソルはGKを使うことで難なくこのプレスを回避し、アントラーズは切ったはずのCBにボールを届けられてしまう。
そうすると、前進されたくないアントラーズはIHがCBを捕まえに前プレスを行うと同時に、連動してWBに対してSB、ボールサイドのCHとSTにそれぞれOMFとDMFがマークを行う。これでサイドを圧縮して高い位置でボールを奪回しようと試みるのだが、ここで嵌り切らず、展開される。
その空いてしまうスペースというのが、上記の赤のスペースだ。
ここを使われることで、前半の飲水タイムまで割とボールを持たれ、前進されてしまっていた。ではどのように前進されてしまっていたのか。
例えばこのように、逆IHが明確にSTを消しに行くと(DMFが流れるので、カバーの意図もあり、この動きが多かった)、逆CHがフリーになり、ボールサイドに寄せた選手が無力化されてしまう。
また逆に、IHがCHを消しに行くと、このように前進されてしまう。
このように、STがSBの背後に流れ(もちろんCFのこともあり)、CFへのパスコースを作り出すことで、STがレイオフでボールを受ける。
このように前進されてしまっていたので、アントラーズは試合開始〜飲水タイムまで割とボールを持たれてしまっていた。
だが飲水タイム後、プレスの位置を若干下げて陣形をコンパクトにすることで、逆サイドへの展開を消し、SBの背後へのパスのみに守備を絞るように修正を行った。
だからレイソルはここにボールを送ることが多くなり、CKを獲得することが多くなって行った。そしてアントラーズは皮肉なことにもこのCKから失点を喫してしまった。
こうなると前に出なければならなくなるアントラーズ。一方はブロックを形成して場所を消すことで守備を行うことにシフトするレイソル。
そして場所を消され、持たされると苦しむことが多いアントラーズ。これを計算してレイソルは守備を行う。
ではどのようなレイソルは守備の戦術を取っていたのだろうか。
良さを消すレイソルの守備
この試合、レイソルは主に3つの守備を準備していた。そしてこれをほぼ完璧に実行したことで、決定機の一歩手前で食い止めることに成功した。
ではどのような守備を用意していたのかを解説していこう。
守り方①:ミドルプレス→ショートカウンター
まず1つ目がミドルプレスからショートカウンターに出る守備だ。このミドルプレスの奪い所が明確で、アントラーズはかなり苦しんだ。
ではレイソルはどこを奪い所に設定していたのだろうか。
結論から述べると、奪い所に設定していたのは『ロングパスでのSBへのサイドチェンジ』だ。これを行うために3-4-3の布陣で臨み、守備時は5-3-2で構えた。
そして上の図のように、中央を3トップ+CHで締めること、ボールサイドSBに対してWBがマークを行うことでCBにボールを持たせる。このCBにボールを持たせることが重要で、アントラーズはボールサイドが詰まるとサイドチェンジを打ち込むことのできるCBを配置している。だからこそ、ボールを持て、割と余裕のあるCBは一気に逆サイドへサイドを変えるボールを打ち込む。
そしてこれを狙っていたのがレイソル。SBへのボールの移動中にWBが前に出てボールを回収する。これは5バックで守っているので、ボールサイドに全体を寄せられても十分に間に合う距離にある。さらに、ここでひっくり返されたとしてもCBがカバーリングをすることが可能になっている。そしてSBでボールを回収できれば、一気に手数をかけずにショートカウンターを打つことができていた。
守り方②:CFを外へ追いやる
もちろんのことながら、守り方①が中心に設定されていない。これは時と場合を見て、意表を突くような守備に設定されていた。
だから今から紹介する守り方②と③が主な守備戦術になる。
ではこのCFを外に追いやる守備はどのようになっていたのか。
アントラーズはサイドを変えることで、ショートカウンターを打たれる確率があるので、同サイドから崩しにかかることが多くなる。
だからまずはSBで幅を作ることでWBを釣り出し、その背後にスペースを創出。さらにこの時にOMFが縦パスを引き出すためにボールを受けに降りる。これでSBの背後(上の図の白のスペース)にCFが抜けだすことで、アントラーズは深い位置をとる。
そしてこれがレイソルの狙った守備だ。
このようにCF(主にエヴェラウド)がサイドに流れると、CB、CH、WBの3人もしくはWB、CBの2枚でボールホルダーに圧をかけて奪い切る。仮にここでクロスを挙げられたとしても、中に圧倒的な高さと強さを誇るCFエヴェラウドがいないので、警戒するのはCF上田のみでよくなると同時にクロスの人数も減らすことができる。
このようにCFを外に追いやり、クロスのターゲットではなく、クロスの配給役に回すことで、守備を行っていた。
守り方③:横パスをインターセプト
そしてもう1つの守り方がSBへのサイドチェンジをインターセプトする守備だ。
このように、アントラーズはボールサイドが詰まると、CH経由でサイドチェンジを行う。この守備の仕方が守り方①と違うのは、CBからのサイドチェンジではなく、IHにサイドチェンジを奪うことだ。もちろん、守備をする高さの違いもある。
上の図のように、アントラーズはサイドチェンジをする際、IHが中央に引っ張ることでSBへのパスコースを開ける。そしてこれを狙っているのがWBだ。ここでボールをひっかけることで、ロングカウンターに移行していた。
このように3つの守備を行うことで、アントラーズが攻め込むための場所を消し、さらにSBに起点を作らさないことで、ベガルタ仙台がやられたクロス攻撃を食い止め、さらにCFを外に追いやることに成功。
そして焦らすことで、横パスを奪う、または進入してくるIHを潰すことでボールを回収していた。
さらにはこの先もデザインされていて、この試合でも披露した脅威のロングカウンターでアントラーズを4発粉砕して見せた。
ではレイソルがどのようにロングカウンターをデザインしていたのかを解説していこう。
デザイン済の脅威のロングカウンター
先述した守り方②と③の時にこのロングカウンターは発動する。
まず念頭に置いて欲しいのがこれらの図だ。
このようにどちらも共通しているのが『CFへのミドル/ロングパス』と『SBの背後のスペースを使う』ことだ。
アントラーズは両SBが高い位置を取ることで、幅を作り、攻撃に厚みを加えていく。さらにこれを行うことで、ネガトラでボールを回収する確率を上げている。だが、この試合のレイソルのように、プレスが掛かりきらず、ミドルパスまたはロングパスで回避されると一気にピンチになる。だがそれでも跳ね返せることができるのは、アントラーズCBが純粋に対人に強いから。
だが、この試合に対峙したのは、化物オルンガ。レイソルは徹底的にパスを送ることでポストプレーを促し、その周辺の広大なスペースをSTの江坂とクリスティアーノが使うことで、一気にロングカウンターを発動。実際にこれで3ゴールを奪い、圧倒的な速さと強さを改めに見せつけた。
そしてこのロングカウンターを狙う場所は必ず、SBの背後のスペースだった。(上の図
の赤のスペース)ここを使うことで、CBを釣り出し、中央で1vs1の状況を作り出して、攻撃を仕掛けていた。
アントラーズの修正と博打
もちろんのことながら、アントラーズは修正を行い、さらには勝つための博打に打って出た。
まずその修正とは、CFエヴェラウドがサイドに流れるのではなく、OMF土居、またはIHアラーノがサイドを深くを取るように指示したことだ。これを行うことで、エヴェラウドと上田が中央に位置し、クロスを待つことができる。だからこそ、同点弾のOGはエヴェラウドがクロスに合わせ、その背後の上田、そしてアラーノが反応することで生まれたものだった。これがアントラーズの修正だ。
そしてさらにゴールを奪い、逆転勝利を掴むために、遠藤、伊藤、広瀬を投入。これでライン間プレーヤーを増やし、中央を中心に崩していくことを狙った。ではこれのどこが博打だったかというと、中央を固め、ロングカウンターを狙うレイソルの守備網に自ら飛び込むことだ。そしてザーゴ監督が考えたであろうもう1つのことは、たとえ奪われてもネガティブトランジションで奪い切れば問題ないということだろう。
だからこそ、彼らが入り、中央に差し込むことが多くなり、もちろん、ネガトラ→二次攻撃の場面を見られるようになった。だが、博打に負け、数回のロングカウンターでゴールを奪われてしまい、敗戦を喫してしまった。
まとめ(雑感)
この試合はレイソルの準備してきたプランがかなり秀逸で、アントラーズに勝つためのものだった。アントラーズの良さを消し、そして自分たちの強みである、ロングカウンターを発動する。まさにしてやったりのゲーム運びだった。だが仮にここに荒木や和泉のような単独で剥がせる選手がいたら、またゲームの形相は変わっていたかもしれない。ザーゴ監督も決して受けに回るのではなく、勝ちに行く采配で敗戦を喫したので、後ろ向きには捉えてないはずだ。(もちろん、敗戦したことはかなりの痛手だが…)
果たしてアントラーズは残りのホームゲームを勝ちきることができるのか。そして掲げる目標を達成することができるのか。シーズン佳境の彼らの激しさとしたたかさ、そして強さを最後まで見届けたい。
終わりに
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