【J1第30節】
鹿島アントラーズ vs 浦和レッズ
【結果】
4−0
鹿島:11’ 50' 上田 64' エヴェラウド 81' レオシウバ
浦和:なし
【スタジアム】
県立カシマサッカースタジアム
入場者数:11,645
【天候・気温・湿度】
曇・13.3°・44%
【主審】
西村 雄一
【スタッツ】
【ハイライト】
【公式】ハイライト:鹿島アントラーズvs浦和レッズ 明治安田生命J1リーグ 第30節 2020/11/29
スターティングメンバー
アントラーズは前節のレイソル戦、場所を消され、ボールを持たされ、そして前に圧力をかけると、カウンターで仕留められた。その時の並びはダイヤモンドの4-4-2の形。嵌れば爆発的な攻撃力を発揮するこのシステムは、前節で見せたように、いわば諸刃の剣だろう。
だからこそ、この試合は「いつも通り」のフラットの4-4-2で臨んだ。これにはレッズのカウンターを警戒してのものだったのではないだろうか。そして試合をみていくうちに、フラットの4-4-2で臨んだ他の理由も見えてきた。
今回はこれに触れつつ、この試合のレビューを行っていこう。
アントラーズの攻撃が爆発した理由
場所を消され、カウンターを打たれた前節。アントラーズが一番苦しかったのことというのは、『SBで時間が作れない』ということだった。
だがこの試合はSBで起点を作り出すことができ、強みである早い攻撃を仕掛け続けることができていた。
では最初にSBで起点を作れた理由から触れていこう。
攻撃時、アントラーズはレッズ2トップに対して数的優位を作り出すために、主にCH三竿がバックラインに入り、3バック化して組み立てを行う。このようにすることで、SBがレッズSHの斜め背後にポジションを取り、SHがレッズCHの脇に立つようにオーガナイズされていた。
これを行ったことで、アントラーズは次のようにボールを運び出す。
上記のように、2トップの脇をCBが持ち運ぶことでSHを釣り出す。この時にレッズSHはその背後に立つSHのパスコースを消すようにプレスをかける。これでSHを釣り出したアントラーズは大外に立つSBへパスを送ることで、SBで起点を作り出すことが可能になる。
だからこれでSBで起点が作れる。そしてこの時に、レッズSBがアントラーズSBに対してプレスを行う。こうなると、空いてくるのがハーフスペースだ。ここに立つSHがボールを受ける、またはSBの背後に抜け出すことで、攻撃のスピードを上げてゴールに迫っていく。そしてこの時に、CFでCB、CHでCHをピン留めしていることで、ライン間かつハーフスペースでSHが浮くことができていた。
そしてこのように、ライン間かつハーフスペースでSHが前を向いてボールを持つことができるので、CBに対してSHとCFで数的優位を作り出すことが可能になる。実際に上田の2ゴール目はこのような形を生み出したことで、あのスーパーゴールを見る事ができた。
もちろん、レッズSHがプレスに来ない場合もある。その場合は以下のような場所を使う事で、攻撃のスイッチを入れていく。
まずこのように、レッズSHがプレスに来な場合の守備の仕方は、上の図のように、アントラーズSHへのパスコースを消す立ち位置をとるために中に寄るポジションをとる。
さらに場所を狭くしていくために、CHが中央のCHを捕まえ、逆CHがスライドして中央を埋める立ち位置を取っていた。
これに対してアントラーズは以下のように攻撃を仕掛けていく。
このようにSHがプレスに来ないため、時間を持つ事のできるCB。ここからミドルパスで斜めに逆SHへ打ち込む。この時に、SHがCHの脇のポジションを取っている事、さらにCHをスライドさせているから、ここでボールを受ける事が可能になっていた。
そしてここから早く仕掛ける事で、攻撃を完結させていた。
もちろん、CBからサイドを変える事のできない場合も存在する。その場合はこのように攻撃を仕掛けていく。
サイドを変えれない場合はSBへ展開する。ではなぜここでSBがフリーになれたのか。それはレッズSHを中に寄せている事ができているからだ。だからこそ、レッズSHがSBへプレスを行う事ができず、SBが大外でフリーになる事ができていた。そしてSBがフリーになることで、目線が変わり、大外から中へのパスコースを見出す事ができる。これで斜めにライン間へパスを送る事、または中央を消されているのならば、そのまま縦に持ち運ぶ事が可能になっていた。
このようにしてアントラーズはレッズの守備の穴をついていく事で攻撃を仕掛け続けていた。
レッズが守れなかった理由
ではなぜ、レッズは守れなかったのか。それは「間延び」が起きてしまっていたからだ。
レッズの試合をそれほど見てないので、詳しくは触れる事ができないが、少なくとも、自分が見た試合、マリノスに大敗を喫してしまったものと同様に、この試合でも間延びが起き、ライン間、特にFW-MF間に広大なスペースができてしまっていた。
これにはプレスのかけ方に問題があるように感じた。この試合では3バックに対して2トップ+SHでプレスを行い、中央、セカンドラインに残るのが2CHのみとなっていた。だからこそ、中央で数的優位を作られる、さらにバックラインの押し上げもそれほどないので、ライン間に大きなスペースが生まれてしまう現象が多く起きていた。
前と後ろのプレスの意思統一ができてない事が大きな要因となり、2CHだけではカバー仕切れない広大なスペースが生まれてしまい、簡単に、よりダイレクトにゴール前に迫られる事となっていた。
このように守のであれば、守備のエキスパートのカンテを連れてくる他、改善策が内容に感じる。
お手本になるライン間の差し込み方
この試合で見せたアントラーズのライン間への差し込み方。ライン間に差し込む方法は縦パスだけではなく、外からの「斜めのパス」でもライン間に差し込む事が可能というお手本のようなプレーが多く見受けれた。
中央が狭い場合で縦パスを打ち込む場合は、段差を作るか、上のパスでラインを越してライン間を使うことが多くなる。だが、この試合でアントラーズが見せたように、中央が狭い場合は、外から斜めにパスを差し込むことでライン間を使うことができる。実際にプレーをした際、縦の視界よりも、横の視界の方が、よりクリアにライン間を見ることができる。
実際にピッチに立つとわかるのだが、ボールを持った選手はこのような視界になるので、サイドから斜めのパスを差し込む方が、より簡単にライン間、中央に差し込むことが容易だ。もちろん、サイドから差し込む分、相手選手のスライドと身体の反転の域が小さくなるので、対応が間に合う可能性が高くなるというデメリットもあるが、より簡単にライン間に差し込むことができるのが、斜めのパスだ。
反対に、縦パスを打ち込むと、相手選手をひっくり返すことができ、さらには反転の域が大きいので、対応が間に合う可能性は限りなく低くすることができ、無力化できるメリットがある。その分、縦パスを通しにくい、または引っかかった時にカウンターを打たれるという小さくないデメリットがある。
このように、この試合でのアントラーズのライン間の使いから、特に斜めのパスはかなりお手本となるものだった。
まとめ(雑感)
やはり、アントラーズはサイドで起点を作るとその強さを遺憾無く発揮することが可能なチームだ。斜めのパスでライン間を使っての攻撃、それが厳しいようだと、2トップへのアーリークロスからのカウンタープレス。もちろん、ボールを動かすことも可能だ。逆に言えば、前節のレイソル戦のように、場所を埋められ、特にSBを消された時にどのように対応していくのか。ここの対策を考えれば、より勝利を重ねることが可能になるのではないだろうか。まだ成長の余地を残しているアントラーズ。末恐ろしい。
一方の浦和レッズ。前からプレスを行うのか、それとも一度撤退するのか。ここの意思統一がなされてないので、致命的なスペースが多く生まれてしまっている印象だ。質の高い選手は揃っているだけに、少し勿体無いと感じてしまうチームの1つだ。
果たして来季は誰が指揮を取るのか。Twitterなどでよく見かける、ロティーナ監督を招聘すれば…という呟き。仮にレッズに彼が来れば、かなりのチームになるのではないだろうか。果たして誰が来季指揮を取るのか。ここも楽しみだ。
終わりに
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