Jリーグ 鹿島アントラーズ×横浜FC  〜雨の中の逆転劇。その理由を考える〜

 

 

皆さん、ご機嫌よう。

一番初めに自己紹介から。下記のリンクからご覧ください!

 

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では早速、分析レビューを行っていきましょう!

 

 

はじめに

7連勝からの2連敗。しかもノーゴールで2失点ずつ喫しての敗戦。シュートは打てているのだが、ゴールが入らない。苦しい状況で迎えたホーム戦。その対戦相手は横浜FCだ。しっかりと後方から繋いでくるアウェイチームに苦戦を強いられ、前半のうちに2失点。さらにこの試合もシュートを打てども入らない展開が続いた。しかし、後半に入り、修正を行い、そして鹿島の伝統を見せつけ、見事に逆転勝利を掴んで見せた。降り注ぐ雨の中での逆転劇にサポーターも興奮したに違いない。では今回は、アントラーズがなぜ苦しみ、そして後半から一気に押し込む事ができたのか。これらをまとめ、解説していこう。

 

スターティングメンバー

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後手を踏み続けた守備

この試合の前半、アントラーズは守備で苦戦し、何度も横浜FCにプレスを回避されていた。だからボールを回収する事がままならず、流れを掴む事ができずにいた。

ではなぜ後手を踏み続けてしまったのか。

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まずこの図がアントラーズの基本的なハイプレスの形。CBに対してCFが、CHに対してはシルバが、縦関係になっているもう1枚のCHに対しては三竿がマークをする形を取る。さらにSHはまずSBをマークする事を優先していた。

だから横浜FC、SHが中に絞ると、SHが浮いた状態になっていた。

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だから三竿に所で数的不利になってしまい、このようにボールを動かされる事でファーストプレスを簡単に突破されてしまっていた。

さらにこのようなパターンも見受けれた。

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このようにCHが下がってCH三竿を釣り出す事でSHをフリーにする。これでアントラーズは前半、かなり前進されてしまう。

この現象が起因したのは、アントラーズSHが「SBを消す事」を優先し、「中に絞らない」からだ。だから中央の三竿の所で数的不利を作りだされ、簡単にプレスを回避されてしまっていた。

もちろんこれに対して、アントラーズは修正を加える。

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上の図のようにSHが中に絞る事で中央の人数を合わせる。これで中央を経由してプレスを回避される可能性を限りなく少なくなっていたが、そうするとSBで逃げられてしまう。だからアントラーズはここにSBを当てに行く。

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そうするとSBの背後をCFに使われてしまう。大分トリニータ戦、ガンバ大阪戦共に、ここを使われる事でピンチに陥る事が多くなっていた。さらにSB永戸とSBマギーニョの距離が遠いため、マギーニョが割と時間を持ってボールを保持する事もできていた。だからそこからSB永戸の背後に流し込まれてピンチになる現象も起きていた。

 

このようにSBの背後を使われると全体が背走してしまい、さらにボールを回収したとしても自陣奥深くでの回収となってしまう。横浜FCはこれを狙い、ここからサイドを圧縮してボールを再び前向きで回収する事で、ショートカウンターでチャンスを作り出していた。そして何度か決定的な場面を作り出し、アントラーズを脅かしていた。このチャンスが一つでも決まっていたら、アントラーズの敗戦は濃厚だったのではないだろうか。

 

アントラーズはこのようにして捕まえに行く場所、行く場所、全てひっくり返されて後手の守備を踏んでしまっていた。開始早々の失点と、追加点で早くボールを回収したい事、さらにSHがまずSBを消す立ち位置を選択していた事で、後手の守備に回ってしまっていた。

 

停滞しかけた攻撃

一方の攻撃の方はどうだったのか。前半の攻撃ははっきりといって停滞しかけていた。早い攻撃も仕掛けられず、さらには上手く幅、ライン間共に使えない状況が続いていた。ではなぜ、停滞しかけていたのか。

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アントラーズは中央が詰まると、大きくサイドを変えて攻撃を構築し直す事が多い。その時に重要となってくるのが中央に入るSHの立ち位置だ。SHの立ち位置でSBをピン留めする事で大外で幅を作り出すSBが時間を持つ事ができる。

上の図のようにアラーノサイドだとアラーノがライン間かつハーフスペースにポジションをしっかり取るので横浜FCSBをピン留めする事ができる。だからサイドを換えた際に、SBの小泉が大外で時間を持てていた。

さらにアラーノのポジションが良いので、縦パスも引き出せており、右サイドからの攻撃の停滞間はあまりなかった。

だがこの試合の問題点は左サイドにあった。これがアントラーズの攻撃が停滞しかけていた要因となっていた。

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このように右サイドにボールがある際、SHの和泉が決まってCHの脇に立つ事が多くなっていた。(もしかしたらこのようなタスクがあったのかもしれない)

だから横浜FCはSH和泉に対してCHとSHで挟み込む事ができ、またCHが1枚プレスに出たとしても、スライドする事でそのスペースを埋めつつ、SH和泉を捕まえることも可能になる。さらにCFエヴェラウドに対してCB2枚で迷いなく対応する事ができる。

このようになると、サイドを換えた際に下の図の状況に陥ってしまう。

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このようにSB永戸に対してSBマギーニョが対応に行きやすくなる。これは先ほども触れたSH和泉の立ち位置に問題があり、仮にアラーノのようにライン間かつハーフスペースに立つことができていれば、SBマギーニョをピン留めすることが可能なので、SB永戸にマギーニョは自信を持ってプレスに行くことができないはずだ。

だが左サイドではそのような状況を作り出すことができていなかったので、ここからまたバックパスを選択する羽目になり、攻撃が停滞してしまっていた。

 

これらのように前半は攻守において、かなり苦戦を強いられていたアントラーズ。だがハーフタイムでの修正により、後半から内容がガラッと変わっていく。

 

ハーフタイム加えた守備の修正

まずザーゴ監督が修正したのは守備だ。ハイプレス時の立ち位置を変えることで横浜FCのビルドアップを止めにかかった。ではどのように守備を修正したのか。

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これが修正後の配置。最前線での数的不利を許容することで、CHに対してST土居がマークを行うことができる。

さらに懸念点だった絞るSHと縦関係になっているCHを三竿とシルバで捕まえることができるように。さらに両SHが中→外でSBにプレスをかけることでその背後のSBとCHが「次のパス」を狙いやすくなるようになる。

またSHがCFのヘルプに行くと同時に、SBがSBを捕まえる時間ができるので、ここでもしっかりと対応できるようになっていた。

このちょっとした修正でアントラーズは見事にボールを回収できるようになり、この回収が逆転の狼煙になっていた。

 

ターニングポイントの4-3-3

そしてボールを完全に狙った形で回収できるようになると、ザーゴ監督は56分に3枚替えを行い、配置を4-3-3に変更。

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上田、荒木、白崎を投入することで三竿のワンアンカーに変更する。これで一気に攻撃に速さと厚みを加えることができた。

ではなぜこのように変更することで速さと厚みを加えることができたのか。

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このように4-3-3にしたことで、ハーフスペースに人を配置しつつ、WGでSBをピン留めすることができる。これでまずボールホルダーにプレスをかける守備を行っていた横浜FCのSHを釣り出すことができる。そうすると幅を作るSBがフリーでボールを持つことができる。

そして以下のように動きを加えることで横浜FCの守備陣形を動かし、そして混乱い陥れる。

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このようにSBがボールを持つことでCHを釣り出すことができるようになる。これはアーリークロスでエヴェラウドのヘディングという武器を持ち合わせているため、横浜FCはSBに時間を与えたくなかったため、ここまでプレスをかけていたのだろう。

そうすると、IHに入ったアラーノに対してCBが対応、その背後にCF上田が抜け出すことでもう1枚のCBを釣り出すことができる。こうなると手薄になる中央を埋めるため、CHが中を埋めるために縦スライドでバックラインに入る。これで逆IHの白崎が中央でボールを受けるスペースが生まれる。このように動くことでボールを以下のように動かすことが可能になっていた。

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一番多く見受けることができたのがIH経由でWGが抜け出すパターン。次に中央の白崎へのパス、そして抜け出すCF上田へのスルーパス。この3つのパターン中心に攻撃を仕掛ける。さらにエヴェラウドを左WGに配置することで右からのクロスをSBマギーニョと勝負させることができる。こうすると、圧倒的な質的優位に立てるので、かなりの確率で競り勝ち、折り返し、またはシュートまで持っていくことが可能に。さらに横浜FCのCHをバックラインに下げさせることに成功しているので、マイナスのスペースに折り返すことでフリーな状態でシュートを打ち込むことができる。

 

現にこの形に替えた直後にマイナスのクロスにエヴェラウドが合わせて反撃の一撃を叩き込んだ。そしてここから横浜FCを押し込み、ほぼワンサイドゲームに持ち込むことで逆転勝利をもぎ取ることに成功した。

 

まとめ

前半と後半でガラッと変わったこの試合。その背景には明確な修正があった。もちろん、『鹿島アントラーズ』という受け継がれる伝統も相まって、逆転劇を演じることができた。前半の上手く行っていなかった部分を的確に修正して見せたザーゴ監督の手腕は見事だった。逆転勝利をもぎ取るべくして、もぎ取ったと感じられる一戦だった。

一方の横浜FC。前半の早い時間帯での2ゴール。アントラーズを後手に踏ます、恐れないビルドアップ。見事な戦いぶりだったが、あと一歩足りなかった。前半であったいくつかの決定機を決めきっていれば勝利を掴めたかもしれない。かなり内容共に結果の出ていた前半だったので、悔やまれる結果となってしまった。だが裏を返せば、J1のチームとも渡り合えるということだ。この敗戦を糧にさらに大きなチームになるのではないだろうか。駆け引きともに、かなり面白い試合だったので、ぜひ皆さんもこの試合を見返してみて欲しい。

 

 

終わりに

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