ロンドンダービー。上位戦線に生き残るために必ず必要な勝利。お互いに譲れない一戦。モウリーニョとトゥヘルが勝利を得るために準備したものは何だったのか…
今回はこのビッグマッチのマッチレビューを行っていこう。
- スターティングメンバー
- トッテナムの前半の戦い
- チェルシーの振る舞いは?
- チェルシーのプレッシング
- トッテナムの修正
- チェルシーの課題
- プランと哲学がぶつかった一戦
- 蹴球塾『サッカー、一緒に考えん?』
スターティングメンバー
完全に3-4-3を信頼しなくなったモウリーニョ。おかげで盛大にプレビューの予想を外してしまった。笑
さらに、モウはチェルシー対策として4-2-2-2の布陣で挑む。
これに対してトゥヘルもソンのカウンター対策か、WBにジェームズ、CFにオドイを起用して3-4-1-2の形で臨む。
ではこの試合、お互いにどのような狙いがあったのか。
早速、解説をしていこう。
トッテナムの前半の戦い
まずはモウリーニョが打ったチェルシー対策から触れていきたい。
結論から、述べるとこの対策は嵌まらずに、後半からは準備してきた策(たぶん、プラン①)を捨て、戦い方を変えた。
では、前半はどのように戦っていたのだろうか。
トッテナムの前半のスタンスは、「CHを消すこと」・「背後のスペースを消すこと」になっていた。そのために以下のような守備を行う。
前半は上のような守備を行うために、トッテナムは4-2-2-2の形で臨んだのだろう。
だから、2トップで3バックを牽制する形を取る。とりわけ、アスピリクエタとリュディガーに対しての牽制は意識付けられているものだった。
ここに牽制をかけることで、配置的に不利に陥るWBにパスを出させないように設定していた。
さらに、中央のCHコバチッチとジョルジーニョを消すためにベルフワインとエンドンベレがSTの位置に絞り、彼らを徹底的に消した。
さらにその背後ではシソコとホイビュアがそれぞれのサイドに流れてきたマウントをマンマークする。これで、最終ラインは4vs2の形を保つことができる。
そしてチェルシーCBにロングパスを蹴らせて回収することを狙っていた。
だが、これは嵌まらずにチェルシーに突破されることになる。
アスピリクエタをソンにマークさせた理由
この理由を考察してみたい。トゥヘルが就任しての過去2戦。共にアスピリクエタサイドからの攻撃と組み立てが中心になっている。モウリーニョがここを消しにかからない訳が無い。そこで、アスピリクエタを消すタスクを担ったのがソンだ。ではなぜ、ソンだったのか。その理由は明白で、少しでも距離が出た場合でも、ヴィニシウスよりもスピードのあるソンなら、その距離をカバーすることができる。また、仮にシウバに牽制を行った場合でも、アスピリクエタへの牽制が間に合う可能性はヴィニシウスよりも圧倒的に高い。だから、モウリーニョはソンにアスピリクエタを消すためのタスクを科した。
そして失点に繋がるシーンは流れで左右入れ替わっていたソンとヴィニシウス。これでアスピリクエタを消すことができずに、背後にパスを送られてPKに繋がってしまっている。
チェルシーの振る舞いは?
チェルシーは過去2戦と変わらず、ボールを保持し、動きを加えることで、主導権を握りつつ、前進していく。ではどのように攻撃を展開していたのだろうか。
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チャンネル・ハーフスペースのラン
まずプレビューでも触れていたように、やはり狙ったのはバックラインの背後、特にハーフスペースのランニングだ。
これは立ち上がりでも見せたように、CBアスピリクエタからのパスが多くなっていた。
立ち上がりでも見せたように、アスピリクエタがボールを持てる場合はソンの牽制が遅れた場合。やはり何度もバックラインで回せば、何度かアスピリクエタがボールをフリーで持てる場面は生まれてくる。
これで、ここからまずは2トップの動きを最優先に選択していく。それが立ち上がりのヴェルナーのシュートやPK獲得のシーンに繋がっている。
ではなぜ、これが有効だったのか。これはDFの視野に大きく関係している。
このように、2トップがハーフスペースとチャンネルをランニングすると、手前をランするオドイはダイアーの視野外、アルデルヴァイレルトの視野内に入ることで、アルデルヴァイレルトを引きつけることができる。
これで大外のヴェルナーがチャンネルをランニングすることで、SBオーリエと勝負することができる。さらに、オーリエよりも前に入れるので圧倒的優位に立ってボールを受けることが可能になる。
だからこのシンプルな方法がかなり有効だった。さらに、トッテナムは最近、背後の対応が雑になっているので、追い討ちをかけることができていた。
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シウバからの縦パス
トッテナムの守備の関係上、中央CBのシウバである程度時間ができていた。モウリーニョがなぜ、彼をフリーにしたのかは定かではないが、チェルシーはシウバから簡単に前進することができていた。
散見されたのは、「3列目を飛ばしての縦パス」だ。上の図のように、マウントが斜め前にずれることで、CHを1枚引き連れて中央からどかす。これに呼応して入れ替わるように、主にCFオドイがボールを受けに開いた中央に降りる。
これで、CBシウバからボールを受けてCHでレイオフ。これで簡単に前進することができていた。もちろん、マウントがボールを受けるパターンもある。
このようにして入れ替わり、立ち替わり、「縦パスを引き出す選手」が変わることで、トッテナムCHを混乱させた。
さらに、CFが降りることでバックラインの背後にスペースを作り出す。
このように、レイオフしたCHからバックラインの背後にボールを供給する。この時に抜け出すのがマウント。彼はフリーランニングも上手い。かつてのランパードを彷彿刺さる。これでマウントが背後に引っ張ることで、アルデルヴァイレルトのカバーポジションの取り直しを促す。こうすると手前のヴェルナーが空くので、そこにパスを打ち込むことで、違った角度から攻撃を仕掛けていく。
このようにして、チェルシーは主に攻撃を仕掛けていた。
もちろん、ソンのプレスが間に合わない場合はアスピリクエタが持ち上がることで、攻撃を組み立てていく。これは、以下の記事で解説しているので、ここでは割愛させてもらう。気になる方はこの記事を読んでみて欲しい。
このようにして、前半はチェルシーはトッテナムをほぼ圧倒していた。
チェルシーのプレッシング
特に前半。チェルシーはプレッシングでも優位に立つ。過去2戦からはあまり見られなかった守備の局面。プレッシングの一部をこの試合から見受けることができた。ではどのようにプレッシングを行っていたのだろうか。
このように、プレッシングを行う場合はWBが割と高い位置を取っていた。このポジションを取ることで、CHとの立ち位置で縦パスを消すことができていた。
さらに、バックラインでは常に数的優位を保つ。唯一数的不利になるOMFのところはCBの立ち位置とボールの持ち方により、捕まえる選手を決定している印象を受けた。この頭の良さもマウントは持ち合わせているのではないだろうか。もちろん、CHコバチッチやジョルジーニョが1列前に出てヘルプを行うこともあった。
これで、後ろから繋ぐトッテナムに対してプレッシングを行っていく。
このようにCBにパスが出ると、CFが外を切りながらプレスを行う。これで逆CBにパスを選択させる。これがとても重要になっており、このパス交換の間にWBがバックラインに帰る時間を作り出す。
逆CBにパスが出ると、ここでもCFがプレスを行う。この時のCFの振る舞いは「中央を消すプレス」になっている。
このプレスがスイッチになり、WBがSB、OMFがボールサイドCH、CBアスピリクエタがSTを捕まえ、ボールサイドCHは+1の局面を作り出す選手、カバーの役割を果たす。
これで、CBの視野をサイドのみ(赤のエリア)にして、ボールを回収してショートカウンターを仕掛けていく。
このようにして、チェルシーは何度かショートカウンターを仕掛けていた。
トッテナムの修正
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守備の修正
前半、嵌まらなかった守備戦術。これを放っておく監督ではない。だからこそ、後半からのトッテナムの振る舞いは前半と比べ、大きく変わった。
ではどのように変わったのか。
前半と大きく変わったこと。それは配置とプレスの意識だ。配置を変えたことで、3バックにもプレスを行えるようになり、CHに対してはソンとヘルプにCHのどちらかが行うようになる。さらに、WBにはSBが対応にいくことで、前進を阻む。このようにして前から圧力を強めることで、チェルシーに満足のいくビルドアアップをさせなかった。
そして敵陣で奪って早めに攻め切ることを狙っていた。
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攻撃の修正
もちろん、攻撃でも修正を加えていた。明らかに後半の方がロングパスが多くなっていた。これはシンプルにヴィニシウスを使って前進していこうというスタンスを取ったからだ。実際にこれを行ったことで、トッテナムは攻撃に迫力が出た。ヴィニシウスが作った2ndボールを回収しにいくことで、攻撃を仕掛けていた。
チェルシーの課題
過去2戦はプレッシングを行うチームではなかった。だがこの試合でトッテナムが行ったハイプレス。このプレスを躱せていたかというと少し怪しいと感じた。もちろん、回避できていたと言えばできていた。その方法はコバチッチやジョルジーニョ、マウントのターンの巧さで回避していた。いわゆる個の力だ。これはビッグクラブの持ち得る特権だから、良いと言えば良い。だがこの課題は昨季からあるものだ。昨季は個での打開がきつくなったと同時に調子を落とした。(そして昨季は解決策としてジルーへのロングパスを組み込んだ)今季の絶不調もそれだ。
だから、仮にチームとしての回避方法が見つからなければ、ランパードと同じ轍を歩むことになるだろう。
果たしてトゥヘルはこの方法を見つけ出すのか。いやきっと見つけ出すだろう。これから楽しみだ。
プランと哲学がぶつかった一戦
特にビッグクラブと対戦する時にプランを用意するモウリーニョ。そして落とし込みつつあるトゥヘルの哲学。このぶつかり合いがこの試合の1番の見所だったのではないだろうか。だからこそ、前半の戦いから、後半のプレミアらしい、スピード感のある戦いに偏移して行った。そして勝ったのがトゥヘルだった。まだまだ落とし込めていないものはあるかもしれないが、これだけの短期間でここまでの変化が見えるのだから、これからに期待を抱かない訳にはいかない。守備でもクリーンシートを続けている。被シュートも圧倒的に減った。これからいかにして進化していくのか。
しっかりと追い続けていきたい。
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