ただ強い。トゥヘルになって13試合無敗。そしてこの試合でもクリーンシートを達成し、11試合で無失点だ。この試合でなんとしてもゴールが必要だったアトレティコはハイプレスを敢行したが、それを完璧に回避してアトレティコのプレッシングを止めて見せた。
では今回はどのようにしてチェルシーはアトレティコのプレスを止めたのか。
これについて考えていこう。
- はじめに
- スターティングメンバー
- スタッツ
- 1st Legのレビュー
- アトレティコのプレスについて
- チェルシーのプレス回避
- 補足:守備について
- 躍動した選手たち
- オンラインサロン「サッカー、一緒に考えん?」
- Instagram:簡易レビューの更新
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はじめに
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スタッツ
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1st Legのレビュー
アトレティコのプレスについて
チェルシーのプレス回避に触れていく前に、当然だがアトレティコのプレスについて触れていかなければならない。
彼らは3-4-2-1ではなく、4-4-2でプレスを行うことでハイプレスからのショートカウンターを狙った。ではどのようにプレッシングを行っていたのだろうか。
まずこちらがアトレティコのプレス開始時のプレスの形になる。配置的には4-4-1-1の形に。CFスアレスは主にズマを見る形を取り、J・フェリックスはカンテとコバチッチを捕まえれる立ち位置に。さらに、SHは最初はWBを捕まえる。そしてCHはSTをマークして、CFに対してはCBで数的優位を保つ。
これがアトレティコのプレス開始時の形となる。
そして外のCBにパスが出て、SHがプレスを行うとこれが全体のプレスのスイッチとなる。SHがCBまで出ることでWBに対してSBがプレスを行う。さらに、CFと逆SHもCBを捕まえ、ボールサイドCHにはSTがマーク。これでCBの選択肢を消してサイドを圧縮していく。
そしてアトレティコはサイドを圧縮して上の図の白いエリアでボールを回収しようと試みていた。だがこのハイプレスはチェルシーに回避されることになる。
チェルシーのプレス回避
ではここから順にチェルシーのプレス回避の方法について解説していく。
①:ヴェルナーを走らせる
まず一番最初に行ったプレス回避というのが、『ヴェルナーを背後へ走らせる』というものだ。
このようにアトレティコのプレスの関係上、SBの背後に広大なスペースができる。だからこそ、ここにCBはボールを落とすことを選択した。そして広大なスペースを使うのがスピードスターのヴェルナーだ。スペースがある状態でのヴェルナーがやはり脅威だ。だからこそ、トゥヘルはヴェルナーを最前線で起用したのだろう。
さらに、シンプルなロングパスを使うのには他の理由もある。その理由というのが「陣地回復」だ。仮にヴェルナーへのパスが通らなくても、アトレティコの選手がスローインに逃げるのならば、一気に敵陣まで前進することができる。これも立派な前進方法だし、リスタートになるので配置を整えつつ、プレスを止めることが可能になる。
だからこそ、チェルシーはまず初めにSBの背後を使う攻撃を仕掛けた。
②:ハヴァーツへのミドルパス
次に行ったのがハヴァーツへのミドルパスだ。これはヴェルナーへのロングパスと似ているが、少し色合いが違ってくる。
このようにハヴァーツへのミドルパスの場合はSTのJ・フェリックスをひっくり返すことを狙い、そしてCHで数的優位を作り出しているので、その優位性を利用して2nd回収の確率を上げる前進方法だ。①のヴェルナーを走らせる方法は「陣地回復」と「全体をひっくり返す」ことを狙い、②の方法は「中盤をひっくり返す」ことと「2nd回収」を狙った。
③:CHの数的優位を利用
次に行ったことがCHの数的優位を利用することだ。
シンプルだが、このようにCBからカンテまたはコバチッチにパスを供給することで前進を試みた。これはカンテとコバチッチのボールの引き出し方が上手だからこそできたものだ。
そしてこれを行ったことでアトレティコのプレスのかけ方を変更させることに成功する。
アトレティコのプレス修正
では少しアトレティコのプレス修正について触れていこう。
アトレティコはチェルシーにCHを使われて展開されるので、上の図のようにSHが中にし絞ることでCHを捕まえれる立ち位置を取るようになる。だから途中からJ・フェリックスがカンテをマンマーク気味になることが多くなっていた。
だが、この方法もチェルシーに回避されることとなる。
④:SHの背後でフリーになれるCH
チェルシーはアトレティコの修正に対しても焦らずに回避していく。
ではどのように回避を行っていたのだろうか。
まず上の図のようにアトレティコのSHの立ち位置が変わったので、それに関係してSHのプレスの角度と向きも変わってくる。どのように変わったかというと、CHを消しているので内側からCBへのプレスになる。こうなるとWBを消しながらプレスにいけないので、SBはいつどのタイミングでWBまで出て良いのかが難しくなる。この判断の迷いの分、WBがフリーになれる。
そしてWBにボールが入るとCHは横のサポートを行う。これでSTの背後でどフリーになれる。(上の図の白のエリア)
さらにSTでCHをピン止めしていることも大きく関係しており、これでCHが展開を行える場面が散見された。
だからこそハヴァーツがCHの脇のスペースでボールを受けれるようになっていた。
上の図のように、CHコケが中央をカバーするのか、カンテにプレスに行くのか、この判断を迫れることになる。こうなるとSTハヴァーツへのマークは緩くなり、その一瞬を逃さずにハヴァーツがCH脇でボールを受けることが多くなっていた。
これで、目線を変えて早い攻撃を仕掛けることが多くなっていた。
このようにしてチェルシーは1つずつプレスを回避していくことでアトレティコのプレスを見事に止めてみせた。何度も触れるが、「自分がどこにいるべきか」を明確にしたことで、本来の能力を遺憾無く発揮できるようになったチェルシーの選手。この整理こそがトゥヘルの一番の功績なのかもしれない。
補足:守備について
補足として守備についても触れておこう。チェルシーは基本的に2CBにヴェルナーとハヴァーツ、ジエクがコケ、コバチッチとカンテでサウールと中央のカバーを行う。
これで、J・フェリックスまたはスアレスの縦パスをアスピリクエタとリュディガー徹底して潰すことで、ボールを回収していた。だからこそ、(特にスアレス)2トップがチェルシーバックライン付近で良い状態でボールを受けることが難しくなっていた。
特にリュディガーのパフォーマンスは圧巻で、ほぼスアレスに1vs1で勝っていた。
躍動した選手たち
この試合のマンオブザマッチにも選ばれたカンテ。最も良い時を彷彿させるプレーで、画面から消えることの方が少なかったのではないだろうか。ピッチのどこにでもいる状態で、「2人いるのでは?」と久しぶりに感じさせてくれた。ボール奪取、インターセプト、読みも鋭いことはもちろんのこと、パスもドリブルも案外上手い。まさに万能のカンテ。これに無尽蔵のスタミナがあるのだから末恐ろしい。
そしてもう1人。若き才能ハヴァーツだ。彼もまた攻撃面において万能の能力を持っている。そしてそのレベルが全てトップレベルに達する。スピードもあり、パスも出せ、フィニッシュにも絡める。さらに組み立て、ターゲットマンの役割もこなせる。そしてなんと言ってもポジショニングだ。彼の立ち位置を見ているだけで、勉強になる。いつどのタイミングでどの場所にいることが効果的なのか、これを完全に熟知している。まだ21歳。彼もまた末恐ろしい選手だ。
マウントもいて、プリシッチ、オドイ、とチェルシーの未来はかなり明るい。果たしてこれからどのように進化を遂げていくのか。期待せずにはいられない。
そしてラウンド8でポルトとの対戦が決まった。難敵であることは間違いないが、なんとしても突破し、あわよくば再びビッグイヤーをスタンフォードブリッジへ持ち帰ってもらいたい。
そしてそれが可能と思わせてくれる圧巻のパフォーマンスだったのではないだろうか。
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