【思惑のぶつかり合い】UEFA CL Round16 1st Leg アトレティコ・マドリード vs チェルシー

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欧州最高峰の大会。この日の注目カードだ。昨季PSGで決勝まで辿り着いたトゥヘルを招聘したチェルシーは2度目のCL制覇を目指す。一方のアトレティコマドリードは今季こそはと、堅守を継続しつつ、攻撃なスタイルを手に入れ、悲願の初優勝を目指す。

そんな「ビッグクラブ」同士の一戦は、内容の詰まった面白い試合となった。

では今回は、この試合で起きていたことを解説していこう。

 

 

 

スターティングメンバー

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スターティングメンバー

結果:0−1

【A・マドリード】

82' コレア⇆デンベレ

         サウール⇆トレイラ

      フェリックス⇆ロディ

84’ エルモソ⇆ビトロ

 

【チェルシー】

68’ ジルー⚽️

74’ マウント⇆ジエク

      コバチッチ⇆カンテ

80’ オドイ⇆ジェームズ

87’ ジルー⇆ハヴァーツ

       ヴェルナー⇆プリシッチ

 

  • スタッツ

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Flashsore引用

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場所を埋めるシメオネのプラン

『堅守』。これこそがチョロ・アトレティコのイメージだ。だが、直近の7試合はクリーンシートがない。だからこそ、シメオネは『場所を埋める』ことを選択し、まずは失点しないことを考えた。

だからこそ、6-3-1のブロックを作り出すことで守備を固める。

ではどのように守備を行っていたのか。これを解説していこう。

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守備開始の基本立ち位置

まずは基本的な守備の立ち位置から。

アトレティコは時折プレス(後述)を仕掛けることもあったが、基本的にブロックを作り出して、低い位置で守備を行った。

そのために、スアレスとフェリックス、2CHで中央を消す立ち位置を取る。この時、フェリックスにはアスピリクエタに自由を与えないように、牽制していくタスクが託されていた。

また逆STのコレアはWBアロンソの監視役を担っていたので、バックラインに吸収されることも多かった。

これを許容(このように設定した)理由は、このように考えられる。それは「ハーフスペースを使わせない」「場所を予め埋めておく」ということだ。

だから、ジルーに対してはフェリペ、マウントに対してはエルモソ、ヴェルナーに対してはジョレンテとサヴィッチがマンマーク気味に守備を行う。これで、仮に対応に出たとしても、「守備に余り」が出る(3トップに対して4枚の守備陣)ので、数的優位を保ったまま、カバーも行える。これで場所を消し、ボールを回収していく。

では、ここからどのように回収を試みたのだろうか。

  • 回収の方法

ここからは回収の方法を解説していこう。

これは右サイドと左サイドで若干の違いがあったので、順を追って解説していく。

まずは左サイド。

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左サイドの回収方法①

左サイドでは、アスピリクエタに自由にプレーをさせないために、フェリックスが牽制をかけることを先ほど説明した。

この時に、フェリックスはWBオドイを消しながら気持ち外切りのプレスを行うことが多かった。こうすることで、アスピリクエタは「安全な外へのパス」の選択肢を削がれることになる。代わりに「リスクがある中央の縦パス」の選択肢が生まれる。

このリスクのあるパスを選択させることで、最終局面の一歩、二歩手前で、アトレティコはボールを回収していく。

そのための、バックラインでのマンマーク気味の守備だ。アスピリクエタは、CHへのパスと背後のスペースを消されているため、マウントまたはジルーへの縦パスを選択することが多かった。ここに入る瞬間に、CBが対応を行うことで潰してボールを回収していた。

もちろん、WBオドイにボールが出ることもある。その場合は以下のように守備を行う。

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左サイドの回収方法②

この場合は、オドイに対してWBが対応に出る。こうなると、ハーフスペースが空いてしまい、そこを使われることが多くなるのだが、アトレティコの場合は予めハーフスペースを埋めている。さらに、ここを埋めると、クロスに対する中の人数が数的同数、または不利になるのだが、ここも6バックになっていることで、常に数的優位に立つことができる。これで、オドイにバックパスを選択させればOK、最悪、クロスを上げられても、優位に立ち跳ね返すことが可能なので、守ることができる。

これが左サイドでの守備になっていた。

 

では右サイドではどのようになっていたのだろうか。

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右サイドの回収方法

右サイドでは、ある程度リュディガーにボールを運ばれることは許容していた。だが、その先の中央へのパスコースは必ず消して守備を行うことでWBアロンソまたはヴェルナーへのパスを選択させる。ヴェルナーへのパスは、左サイド同様に、入ってくるボールを潰すことで回収する。左サイドと違うのは、WBアロンソへの対応だ。

彼に、ボールが出ると、コレアが素早くアプローチ。ここで奪えれば御の字、少なくともリュディガーへのバックパスを選択させる。

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右サイドの回収方法

これでバックパスを選択させると、プレスを行うことが多く見受けれた。CHコケがリュディガーまで出ていき、スアレスとフェリックスもプレスの準備を行う。これで、バックパスを選択させることで陣地回復を試みて、敵陣に入ると、明確にハイプレスを行うことで、何度か敵陣でボールを回収し、ショートカウンターに出ることができていた。

このいずれかのショートカウンターを仕留めることができていたならば、アトレティコはグッと勝利に近づいていただろう。

 

広げた攻撃の幅

ではどのようにチェルシーはアトレティコの守備網を掻い潜り、攻撃を仕掛けていったのだろうか。

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チェルシーが行ったこと

まずチェルシーは行ったことが、「ブロックの外に人を置く」ことだ。上の図のように、中央を消してくるアトレティコに対して、その脇にマウントとコバチッチが立つようになる。こうすることで、ヴェルナーとジルーの2トップの形になる。

ではこれを行うことの何が良かったのだろうか。

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迷うフェリックス

良かったこととして、ジョアン・フェリックスのタスク実行を迷わすことができることだ。これが、チェルシーのその先の展開に大きな影響を与えた。

ではどのような影響を与えていったのか。

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運べるアスピリクエタ

まず1つ目にアスピリクエタが運び出すことができるようになったことだ。

これはフェリックスがタスク実行か中央を消すのか、マウントを消すのか、これらの判断を迫られた結果、『曖昧な位置』で止められてしまったからだ。

これで、アスピリクエタが運び出してフェリックスを呼び込むとWBへパス。これで、オドイが縦突破、または中へのカットインができるようになる。これは、マウントが遅れてハーフスペースに入ることで、エルモソの対応を後手に回すことができたからだ。(ハーフスペース手前または背後に引っ張ることで起きた現象)

これでオドイは後出しでプレーを選択することが可能になっていた。

さらに、チェルシーはこの攻撃を見せていくことで、さらに攻撃の幅を広げる。

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クリステンセンの角度

もちろん、このままではいけないと感じるフェリックス。彼は「先が読めすぎるがゆえ」か、早く動き過ぎることがある。だからこそ、クリステンセンがボールを持つと、アスピリクエタとマウントを消すために、若干外側にポジションを取ることが多くなっていた。

こうなると、運べるクリステンセン。ここで持ち出すことで中央に差し込むための角度を作り出す。この持ち出しと同時に、コバチッチも中に入り縦パスを受ける。

これは、フェリックスが早く動き過ぎるがために中央が空いているからこそ、差し込めた縦パスだ。

だから、以下のような中央突破も見受けることができた。

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中央突破

このように、コバチッチの落としをジョルジーニョが受けワンタッチでジルーへ縦パス。これで3人目でコバチッチが受け直すことで中央を突破していく。

CHのパス交換→ワンタッチの縦パス→コバチッチが受け直すという動きは、ジルーがCFにいる時によく見受けられる攻撃だ。やはりジルーは凄い。

 

そして、中央突破を行えるようになり、アトレティコを自陣に押し込むことで、リュディガーサイドでもこのような攻撃を仕掛けれるようになる。

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リュディガーサイドの攻撃

このように、リュディガーが持ち出すまで同じ。ここから先が違う。コバチッチがブロックの外にいることで、リュディガーへのバックパスにプレスにいくはずのCHコケをピン止め。これでリュディガーが角度と時間を持ってパスを受けられる。さらに、コバチッチでコケを若干外に釣り出したことで、ジョルジーニョが空間でフリーになる。空間で受けることが上手なジョルジーニョ。ここからさらに大きな展開へ。

マウントがブロックの外から、ハーフスペースへランニングすることで、WBレマルとCBエルモソの意識を手前で引きつける。これで大外から斜めにハーフスペースの奥をオドイが狙えるようになる。

 

このように、チェルシーは攻撃の幅を広げていきアトレティコの守備を破ろうと試みた。

 

動きオープンになった後半

後半に入り、動いたのはアトレティコだ。シメオネはコレアにWBのマークのタスクに加え、持ち出すリュディガーへのプレスも託した。コレアの上下の運動量とそのタイミングはかなり難しかったはずだが、それでもほぼ完璧と言っていいほどそれを完遂していた。これを行ったことで、アトレティコは前の意識が強くなり、プレスをよりかけれるようになる。これで、攻撃に出たのだが、チェルシーに回避され、失点を喰らった。

チェルシーはアトレティコのプレスに対して、ロングパスやミドルパスで早めの攻撃を仕掛けるようになる。これは、WBが上がったスペースを早めに使うことを狙ったのだろう。だからこそ、ここでも生きたのが、CFジルーだ。実際にジルーへのパスとそのセットパスで一気に前進し、WBの背後を使いながら攻撃を仕掛けた。

これで、ジルーの決勝点に繋がるゴールも生まれている。

 

特に前半はお互いの思惑がぶつかった内容の詰まった好ゲームだった。2nd Leg はチェルシーはマウントとジョルジーニョ不在、アトレティコはトリッピアーの復帰と多分カラスコも帰ってくるだろう。

こうなると、数字の部分ではアウェイゴールを奪ったチェルシーが有利だが、アトレティコにも大きく可能性が残されている。攻撃に出るしかないアトレティコ。果たしてチェルシーはマウントとジョルジーニョの不在の戦い方、そしてどのようなゲームプランを施すのか。2nd Leg もかなり楽しみだ。

 

 

 

 

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