はじめに
昨季の「堅い」サッカーを継続し、的確な補強と共に、今季は明確にリーグ優勝を狙うセレッソ大阪。そのために、攻撃時のさらなる連携とポジショナルプレーに磨きをかけた事だろう。そして一方の大分トリニータ。昨季はサプライズを見せて、少なからずJ1に驚きを与えた。ポゼッションサッカーを志向し、そのパス回しは緻密に練られ、オートマッチックにポジションを変えながらボールを動かす。この試合で昨季サプライズを見せたチームはJ屈指の堅守を誇るセレッソを相手に堂々の戦いを披露する。この方法が興味深いものだったので、今回は大分トリニータの攻撃と守備の戦術について紐解いていこう。
スターティングメンバーとスタッツ
スターティングメンバー
チーム別スタッツ(Goal.com参照)
セレッソ大阪vs大分トリニータ
1-0
8‘ B・メンデス(C大阪)
ではこれらを念頭に置いてもらった上で、この試合を紐解いていこう。
大分トリニータのプレッシング
堅守が注目されるセレッソだが、ボールを保持する事にも長けている。そこを消すためにトリニータはハイプレスを敢行。これでセレッソのボールを奪い、守備陣形が整っていない状態でショートカウンターを打ち、堅守を破るという狙いが見えた。ではどのようにハイプレスを仕掛けていたのか。
セレッソ大阪と戦う時に気をつけなければならないのが、幅を作るSBと中に入って自由に動くSH。たった2つなのだが、ここを捉え切ることが難しいので、セレッソ大阪は昨シーズン、堅守とともに、躍進を遂げた。そしてこの試合、しっかりとそこを消しにかかった大分トリニータ。ここを消すために、まずは2CHに対してSTがそれぞれ捕まえる。さらにCBからCFへのボールはCHが完全に「立ち位置」でシャットアウト。ここでCHはもう1つ、消さなければならないパスコースがSHへのボール。ここはボールサイドのCHが気にする事で中央のパスを完全に消すことができる。またもしもSHにパスを差し込まれた時のために、CBがマークを行い、リスク管理。そして最後にSBに対してはWBがプレスをかける事で前進させない。そしてこのようにボールを奪っていく。
このようにして中央を完全に消す事でサイドを圧縮していく。1番の理想形が、ボールホルダーのCBのところでボールを奪う事。これはパスコースを消してプレスをかけているので、CBは判断に遅れが生じ、ミスを誘い、ボールを奪うチャンスが舞い込む。これで1度ビッグチャンスを作り出している。もちろん、ここでボールを奪うことは難しいので、SBのところでボールを奪いにかかる。SBにボールが出ると、WB、ST、CHでプレス。この時に逆のSTとCHがスライドを行う事で中央を開けないようにリスク管理。これでサイドを圧縮してボールを奪うということだ。そしてボールを奪ったら、すぐに展開できるように、逆のWBが1列前にポジションを取ることでカウンターの準備。これでセレッソを苦しめ、捨て玉を蹴らせる事に成功。主にこの守備で試合を進めていった。
・高い位置からプレスをかける場合
もちろん、上記のプレスだけではない。高い位置から、いわゆるハイプレスを仕掛ける場合もある。ではトリニータはどのようにプレスをかけていたのか。
このように各々が「人を捕まえる」事でハイプレスを完結させる。CBに対してはもちろん、CFが、SBに対してはSTがプレス、空いてしまう中央を埋めるためにCHが前に出る事でそこを埋める。もちろんこの時にSHに対してはWBがマーク(これは逆も同様)。このようにしてもバックラインでは数的優位を保てるため、このように前からプレッシングに出ることができる。これで高い位置でボールを奪う、またはクリアさせる事でボールを回収。だからセレッソ大阪の『クリア数』はトリニータの倍以上あったのだろう。
中央がだめなら横から入る
一方の攻撃。堅守を誇るセレッソ相手に堂々の戦い演じる。何度もゴール前に迫る攻撃を見せ、その迫力は見ていて興奮するものだった。だがさすがのセレッソ。瀬戸際で耐え、大分トリニータの枠内シュートをたったの2本に抑えた。ではトリニータはどのように攻撃を仕掛け続けていたのか。
まずはビルドアップの局面。この局面でトリニータはこのような陣形に変化する。CHが1枚バックラインに参加する事で4バックに変化。この時にWBがWGの位置まで上がる事で幅を作り出す。これで幅と深さを作り出す事ができる。セレッソの4-4-2のブロックを広げるためにとても有効なポジション変化ではないだろうか。現にこの試合、この変形により、トリニータは優位に試合を進める。
そして主にこのように前進することで、全体を押し上げる。例に倣い、4-4-2のブロック、CFの脇でボールを受け、運ぶ事でSHを誘き出す。この時にCFも牽制にくるので、赤のエリアでは数的不利に陥ってしまうが、これこそがトリニータの狙い。SHを誘き出したことでセレッソは距離を保ち、きれいにスライド。こうする事でSBが幅を作っているWBをマークすることができる。ここで開くのがSBの背後。ここをSTが「中から外」に抜け出す事で前進する。ここで最悪スローインにすることができれば、「自陣から敵陣」まで前進できる。これで徐々に押し込み、このような攻撃を展開していく。
このようにSTが時間を作ることでCBのサポートを待ち、全体を押し上げる。ここで時間を作れる理由が2つある。1つは純粋にSTのキープ力がある事。そしてもう1つが「セレッソが速攻を止めるために時間を作る守備」をするから。自陣からミドルパスで中盤をとばして前進を試みるトリニータ。ここで時間を作るためにSBの背後を狙い続けた。こうする事で上の図のようにCBのサポートを待つ事ができ、そしてそこからサイドを変えることが可能になった。この攻撃を仕掛ける事で「目線を変える」、「マークをズラす」事に加えてプラスαでメリットがある。これを実行するためにサイドチェンジも繰り返した。
このようにサイドを変えられ、前進されないようにするためにSHがバックラインに入る。こうする事でSHの位置を下げ、「守備をさせる」ことでカウンターの脅威を半減させる。さらにサイドを変える時のオプションが1つ増える。それが黄色のエリアにポジションをとるSTへのパス。ここにパスを出すことができるようになったので、中央からの攻撃も何度か見られるようになった。クロスからの攻撃もCF、ST、WBと人数をかける事ができるので、厚みを作ることもできた。このようにして『中央がダメなら横から』攻撃をする事で、クロス攻撃中心にセレッソゴールに迫ることに成功した。
まとめ
このようにして堅守を誇るセレッソを追い込んだのだが、蓋を開ければ勝利を手にしたのはホームチーム。昨シーズンからしっかりと整理されたゾーンディフェンスで守備を固め、前半のうちにセットプレーで奪った先制点を守り抜いた。セレッソにはそうするだけの力があるだけに、うまく守り、うまく攻めたトリニータは悔しい結果だっただろう。それでもこの試合の守備から攻撃、そしてその先まで見据えたトリニータのゲームプランはとても面白く、これからのシーズンに期待が大いに持てるものだった。J1定着のために、着々と力をつける大分トリニータ。ACL出場権争いに絡むかもしれない今シーズン。とても白熱したリーグ戦となりそうだ。
終わりに
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