はじめに
2年前のDFBポカール決勝。バイエルンミュンヘンはフランクフルトに敗れ、カップタイトルを逃している。そして今回のこの試合。2年前と同様の対戦カードとなり、ドイツの絶対王者はリベンジに燃えていたことだろう。結果から述べると、2-1でバイエルンが勝利を収め、レヴァークーゼンの待つ決勝へと駒を進めた。リーグ戦再開後、すぐに対戦し、また同じチームと戦う難しさはあったかもしれないが、それでも絶対王者は勝利を収めて見せた。フランクフルトが準備して来たプランも物ともしなかった。では今回はフランクフルトの準備して来たプランとバイエルンがいかにしてそれに対応したのか。これらを中心にマッチレビューを行なっていこう。
スターティングメンバー
フランクフルトのゲームプラン
フランクフルトは前回のリーグ戦とは違い、3バックシステムの3-5-1-1の形。この狙いとして、『中央を固める』というものがあった。特に「前半は絶対に失点しない」という意識を感じることができた。ではどのようにして中央を固め、まずは前半を乗り切ろうとしていたのか。
バイエルンの中盤を潰す為にフランクフルトは中盤を逆三角形の形で並べた。こうした事でCHのゴレツカ、キミッヒに対してコールとローデが、OMFのミュラーに対してはイルザンカーがマークを分かりやすく着く事ができる。「タスクを分かりやすくする」というヒュッダー監督の意図を感じる事ができた。もっというと、バイエルンの攻撃の軸となっているOMFのミュラーにはDMFのイルザンカーがマンマークを行う事でミュラーをゲームから追い出そうと試みていた。
さらにバイエルンが怖さを発揮するのはCBからのパスもある。だからこの出所を消す、または十分にプレーさせない為に2トップが牽制を行う事で中央を経由させず、ボールを外回りにさせる事に成功した。
だが「外回り」にさせただけになってしまい、「ボールを奪う」事まではいかなかった。さらにボールを奪えたとしても、全体が後ろに重くなっていたので、カウンターの人数も足りず、全体を押し上げる前にボールを失ってしまっていた。
だから特に前半は防戦一方となり、苦しい展開に陥ってしまっていた。
ではなぜ、フランクフルトは「ボールを奪い切る」事ができなかったのか。
それはバイエルンの攻め方に大きく関係していた。
バイエルンの攻め方
バイエルンはフランクフルトのゲームプランを壊す為に攻撃を仕掛け、前半の内に難なく先制点を奪う事に成功した。どこからでも攻める事ができるバイエルン。ではこの試合はどのようにボールを動かし、そして相手を動かす事でゴールまで迫っていたのか。
まずは先程も紹介したフランクフルトの守備戦術。中央を閉められているので、空いてくるスペースは「サイド」になる。それがここだ。
リーグのレヴァークーゼン戦と同様に、SBで時間を作る事ができる。バイエルンと戦うチームの多くは中央を消すので、この手のやり方にバイエルンは慣れているのだろう。そしてSBで時間とスペースを持つ事ができるもう一つの大きな理由が「WBとの距離」だ。ここの距離が長かった為、SBで時間とスペースを持つ事ができた。そしてWBが出てくると、このように攻撃を仕掛ける。
WBがプレスに出てくるので、シンプルにその背後をSHが内⇨外の抜け出しで使う事でCBを釣り出し、クロスを入れる。このようにCBを1枚釣り出してクロスを入れる事で中の枚数を減らし、数的優位、または同数に立つ事ができる。だからこの試合のバイエルンはサイドから
クロスを入れる攻撃が多い印象になったのではないだろうか。
そしてこれを繰り返す事でフランクフルトの守備を変更させる事に成功する。
それがこのような変更だ。フランクフルトは2CBへのプレスを諦め、SBへプレスを行えるように若干の守備修正を行った。それによりバックラインで数的優位、中盤で数的不利となったが、これでバイエルンは中央を割って入れるようになる。
バックラインで数的優位に立った為、特にCBのアラバが持ち上がる場面が増えていった。
この持ち上がりにより、修正によってSBにプレスを行うはずだったフランクフルトCHはステイするのか、プレスをするのかの判断が難しくなる。
これで、CHがプレスに来ればその背後をSHのペリシッチ、OMFのミュラーが使うことができる。
ステイするのであれば、SBとCBで数的優位を作り出して組み立てる、または対角線のミドルパスで局面を一気に変える事が可能になった。そしてこの試合のCHはCBにプレスを行う事が多かったので、CBアラバからの縦パス、またはSB経由の崩しでフランクフルトをどんどん押し込んでいき、ゴールに向かい続けた。
そして先制点を奪い、リードしたまま前半を折り返した。追加点を決め切る事はできなかったが、それでも「いつでもゴールを決めれるぞ」という恐怖心を選手監督、スタッフ、そして画面越しで見ているフランクフルトサポーターに植え付けるには十分な内容だった。
牙を剥いたフランクフルト
前半、バイエルンに圧倒されたフランクフルト。このままズルズル防戦一方で敗戦するかに思われたが、後半に入り、絶対王者に牙を剥いた。ハーフタイムにヒュッター監督は前に出る策を授けていた。そしてこの勇気を持った策でバイエルンを苦しめることに成功する。
ではどんな策をヒュッター監督は授けたのか。
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WBの位置
まずは守備の変更を施した。中央を消し、後ろを重くし(させられた)、失点しないことに注力した前半に対し、後半は「奪いに行く」守備を敢行。これを遂行する為にWBの位置を上げるように指示していた。これにより何が良くなったのか。
このように守備のやり方を変更した。まずは必ずCFがCBにプレスをかける。この時に逆のCBを消しながらプレスを行う事でもう1枚のCFがCHを1枚牽制できるポジションを取れるようになる。そして前半はガラ空きだったSBに対してはWBが必ずマークを行う。そしてボールサイドのCHがCHを捕まえ、DMFは引き続きOMFを、残ったCHはDMFのカバーと近くのCHにボールが出ると奪えるポジションをとる。
さらに逆のWBがバックラインに入る事で4バック化し、CBのアブラハムがSHのペリシッチを、中央CBのヒューテンエッガーがCFのレヴァンドフスキをマンマークする事でボールサイドを圧縮しつつ、前半よりも高い位置でボールを奪えるようになっていた。
さらにWBが前に出たことでビルドアップの方法も必然的に変わっていった。
このように前半は赤丸の位置にWBがいることが多かったが、後半になりWBは高い位置にポジションを移す。これでSBがWBを見る形になるので、白丸のエリアに大きなスペースができる。これは前半にはなかった縦パスのコースだ。これができた理由が先程も触れたSBがWBを見なければいけないようになったから。これで中央の四角のエリアで数的優位を作り出し、CFが流れることでCH(ここではローデ)が縦パスを受けれるようになる。
またDMFに対してCH(キミッヒ)、CH(ローデ)に対してCH(ゴレツカ)がスライドして対応を行うようであれば、一気に逆サイドへ展開をする。本来ならばこの布陣の組み合わせだと、対角線のロングパスで優位に立てるはずだったのだが、前半はそれができなかった。
その理由は後半のようにWBを高い位置に移さず、相手を動かす事ができなかったからだろう。
そしてこの守備とビルドアップの恩恵により、WBが高い位置に押し出されるようになる。これでボールを奪った時の攻撃の人数を揃えることができる。前半はほとんどCFのガチノビッチとA・シウバの2人で攻撃を完結させようとしていたので、上手くいかなかったが、SBの対応を行い、強制的に前にWBが出るので、2CF、WB、ボールサイドのCHが攻撃に参加することができるようになった。これでフランクフルトは圧倒的に前半よりもバイエルンのゴール前に出ていけるようになった。
鎌田の投入
この守備で流れを引き寄せつつあったフランクフルト。そしてこの流れを確かなものにする為のラストピースとして投入されたのが鎌田だ。彼が入った事により、攻守のリンクマンが存在するようになり、よりスムーズにボールを前進させる事ができた。ではなぜ、鎌田が入った事でこれができるようになったのか。
まず触れるべきはバイエルンの布陣の変更だ。60分にペリシッチに変えてリュカ、コマンに変えてチアゴを投入し、4-1-4-1に変更する。これの意図として、上の図にも示したように、数的不利に陥っていた中盤を数的同数にして捕まえるようにする為だろう。だがこの変更により、能力を遺憾なく発揮できたのが65分に投入された鎌田だ。
このように縦関係の2トップになり、STの位置に入った鎌田。彼はライン間のスペースを見つける能力がかなり高く、そこでボールを受ける事を得意としている。だからこそ「曖昧」なポジションをとる事で、CBのボアテングとDMFのチアゴを迷わせる事ができた。
これで一瞬時間を持つ事ができる鎌田。これでWBを最大限に活かす事ができる。
SBがプレスに来ればそのまま縦にスルーパスを出し、CBがくるのならば、WBまたはCFが斜めに抜けだす。このようにして球離れが良くパスを散らし、前進していくので、フランクフルトにテンポが生まれるようになる。
実際に同点弾は鎌田の組み立て、崩しからシュート、そのこぼれをダコスタが押し込んで決まっている。
再びリードを奪えたバイエルン
流れは完全にフランクフルト。だがそれでも一瞬の隙を的確に突くだけの能力を有する選手が揃っている。だからこそ、押し込まれた状態でも勝ち越しゴールを奪う事に成功した。
その弱点がCBの横のスペースだ。WBが前に出た事によって生まれたこのスペース。基本的に5枚でバックラインを形成する。だが意識的に前にでるようになっていたWBはどうしても帰陣が若干遅れてしまう。そしてバイエルンはそこを突く事で決勝点を奪っている。
そしてハビ・マルティネスを投入し、試合を締めくくり決勝に駒を進めた。
まとめ
フランクフルトは前半の戦い方が悔やまれる結果となった。後半の内容は明らかにフランクフルトの試合だった。それでも勝ってしまう絶対王者のバイエルン。その強さは確実に選手の適応能力にある。しっかりと人を動かし、できるスペースを見つける事ができる。だからこそ、前半を圧倒的に支配でき、後半は流れを持って行かれても一瞬の隙を突く事ができる。
まさに最高の状態なのではないだろうか。リーグはほとんどバイエルンの優勝で決定だろう。あとはDFBポカールと再開すればCLだ。ハインケス時代以来の3冠でこの怒涛のシーズンを締めくくる事ができるのか。最後までこの王者にも注目していきたい。
終わりに
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