はじめに
「ボールを握り、カウンターを封じる」試合前にこのようなニュアンスをインタビューで答えていた風間監督。だがこの試合の失点は全てカウンターによるもの。さらには幾度となくFC東京の武器であるカウンターでピンチを招いた。ではなぜボールを握るチーム、マリノスやフロンターレなどより数多くのカウンターを食らってしまうのか。その理由がこの試合ではっきりした(自分の中で)のでそれを紹介していこう。
グランパスがカウンターを受ける理由
この試合も何度もカウンターを食らった。特に中央を突破されてのカウンター。これはポゼッションサッカーを志向するマリノスやフロンターレではあまり観られない状況だ。この中央をあっさり突破されてカウンターを受けるシーンを象徴しているのがPKを与えてしまったシーンと80分54秒のシーン。名古屋グランパスがカウンターを受ける理由が詰まったシーンだ。ではPKを与えてしまったシーンを題材に、グランパスがカウンターを受ける理由を解説していこう。
サンプル動画
風間グランパスの永遠の課題。FC東京の最大の武器。#Jリーグ #FC東京 #fctokyo #名古屋グランパス #グランパス #カウンター pic.twitter.com/DPnlyQUZOh
— サッカー戦術分析 〜Sixth Sense〜 (@jHgW2UrDVwTxdFs) August 31, 2019
2つのギャップを通される縦パス
これが最大の理由。これを改善しないといつまでもカウンターを受けてしまうことになるのではないだろうか。
これが二つのギャップを通される場面。まず一つ目のギャップを通されることで、赤丸の2人は一気に無力化される。さらにはこの赤丸より前にいる選手も無力化。そしてライン間でフリーかつ、前向きでボールを受けられることで、CHはアタックするかステイするか迷ってしまう。そしてその判断に迷っている間に二つ目のギャップを通されてしまう。そうすると両CHも無力化される。さらにFC東京の選手は前向きにプレーできるので圧倒的に有利な状況。これが数多くの、そして中央を突破されカウンターを受ける原因だ。ではなぜこのような状況が起きてしまうのか。
ギャップを通される状況が起きてしまう訳
ギャップを通されると一気にひっくり返されてピンチになることは理解している人は多いと思う。問題は『簡単にギャップを通されてしまう状況』だ。ではなぜこのような状況を引き起こしてしまっているのか。それらを紹介していこう。
ボールホルダーへのプレス(ネガトラとプレスバック)
まず一つ目に挙げられるのがこれだ。題材のPKを与えられるシーンのボールを奪われて一つ目のギャップを通されてしまったシーン。ここで一つ目の課題が浮き彫りになっている。
ギャップを通されているので状況、体勢的には不利な状態だが局所的には3v2になっている。だがSTとCBはCFへのプレスに行かず、ただゆっくりと戻っている事でCH vs CF2枚という形になってしまっている。ここでSTまたはCBのどちらかがプレスに行く事で、プレー時間と質を少なくとも少しは奪うことができる。プレスバックできない距離ではないにも関わらず、プレスバックをサボることで、ボールホルダーは時間と質を確保できている。
もしもここでプレッシャーを与えることができていれば、このような状況を作り出すことができるのではないだろうか。
STとCHでプレスをかけることで、中央へのパスを遮断。そうすることでCFの選択肢をドリブルorスペースへのパスに絞ることができるのではないだろうか。ボールホルダーがドリブルを選択するならそのままSTとCHで潰せば良いし、CFがスペースへ抜け出したならCBが「遅らす」対応をすることで味方が帰陣する時間を稼ぐことができる。
いわゆる『ネガティヴ・トランジション』の意識の低さと遅さが相まってギャップを通される状況を生み出してしまっているのではないだろうか。
スライドと中央
二つ目の原因が『スライド』。攻撃的な選手が多い名古屋グランパスにおいてここも大きな課題になっている。
黒丸のところでボールを奪われた瞬間にCHはスライドをして中央への縦パスを消すことをしなければならない。そうすることで一本横パスが入る可能性が高くなり帰陣する時間を生み出すことができる。もちろん、ここでのFC東京SHのポジショニングは秀逸で誰が見るのかをはっきりさせることは難しい状況だったが、少なくともこのような対応はできたのではないだろうか。
またボールホルダーに近いCHもまず中央へのパスコースを消すべきだった。そうすれば外に追いやることができるので、ゴールから遠ざけることができる。
このような状況を作り出すことができればある程度は守れるのではないだろうか。
外に追いやるための『スライド』が名古屋グランパスはないように見える。どこがゴールへの最短距離かを理解し、そこを埋めるべきではないだろうか。これも確実にギャップを通される状況を生み出してしまう原因の一つだ。
攻撃時のポジショニング
これは名古屋グランパスの良さでもあり、弱点でもある。だがサッカーというスポーツは攻撃と守備は表裏一体。攻撃している時も守備のことを考えなくてはならない。この『攻撃時のバランス』が悪いこともカウンターを受ける原因になっている。現にボールを握るマンCはカウンターを受けうことは極めて少ない。これは攻撃時のバランスがとれ、守備のことも考えているポジションだからだ。ではどのようにバランスが悪いのか。
ボールを奪われる前のポジショニングを考えた時に、まず改善すべき点がボールとは逆サイドのWBのポジショニング。ここで大外にポジションを取る必要はなく、内側に絞っておくべきだろう。その理由がボールホルダーにプレッシャーがかかっている状況で、サイドを変えることができないから。サイドを変えるとしても一度バックパスを挟み、サイドを変える。だから目一杯幅を取る必要はなく、ボールを奪われた時のために絞ってスペースを埋め、カバーに行けるポジションを取っておく必要がある。
次にSTのサポートの距離。WBが抜け出した際、良い距離感で三角形を作るためにはもう少し寄る必要があった。これはWBのサポートを兼ねながらボールを奪われた時にすぐにプレスに行ける距離感を作るため。これを行うことで素早くボールを取り返すことができ、再び攻撃に移ることができる。
このように修正することでCHがもう少し絞れ、中央への パスコースを消すことができ、ボールを奪われた際にカウンターを受けにくくなる。さらにST、WB、CBですぐにプレッシングを行うことができるので、ボールを取り返す可能性は高くなる。(ネガトラの意識が必要)このように攻撃時のポジショニングをもう少しだけ修正できればカウンターを受けた時に違ったリアクションを起こせるのではないだろうか。
個人の守備力
個人の守備能力にも問題があるのではないだろうか。最初にも指摘した切り替えの遅さや、プレッシャーがかかっていないプレス、パスコースを限定しない立ち方。これらの意識改革は必須ではないだろうか。FC東京の守備はしっかりとパスコースの限定ができ、そして相手から時間とスペースをしっかりと奪っている。だからこそしっかり守ることができ、堅守を誇る。マリノスやフロンターレも切り替えが早く、プレッシングの強度が高い。グランパスはここを改善しない限り、カウンターを受け続けるのではないだろうか。
攻撃について(補足)
この試合の攻撃にも問題があったのではないだろうか。中央突破のこだわりが強過ぎるあまり、幅を使うことをしない。そうすると視線は変わらず、スライドの距離も短いので動かされない。だからこそ守りやすい。ましてや堅守のFC東京相手に中央突破だけで攻め込むのは無理があったのではないだろうか。太田という良いクロッサーがいるだけにもっと幅を使ってせめても良いと感じた。実際にFC東京のホームで勝利を収めたサンフレは幅を使い相手を動かし勝利を収めている。詳細が気になる方はこちらをご覧になってもらいたい。
もっとどこから攻めるのか、中央を突破するためにシンプルに幅を使うこともしても良いのではない方個人的に感じた。
まとめ
圧倒的攻撃型の名古屋グランパス。失点してもそれ以上にゴールを奪うことができれば勝つことができるのだが、中央突破の意識が強すぎて対戦相手は守りやすい状況になっている。このまま失点を増やし続け、崩壊していくのか、それとも立て直し復活を果たすのか。何れにせよバランスが必要なことは明らかだろう。
終わりに
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