Jリーグ 川崎フロンターレ vs コンサドーレ札幌 〜前半の札幌、後半の川崎。用意してきた札幌、修正の川崎〜

 

はじめに

やっと再開したJリーグ。そして金曜開催のこの好カードの対戦。期待していたように、いや期待以上にとても面白い試合だった。試合内容はというと、前半は札幌の用意してきたサッカーが面白いようにはまり、川崎を圧倒。そして迎えた後半。後半はハーフタイムでの修正があり、川崎が札幌を圧倒した。それぞれ対照的な前半と後半をプレーした両チーム。札幌が何を準備してきて、川崎が何を修正したのかを解説していこう。

 

 

川崎フロンターレ(4-4-2)

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コンサドーレ札幌(3-4-2-1)

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前半のコンサドーレ札幌 ~用意してきたサッカー~

前半は確実に札幌のゲームだった。では何を用意してきたのか。まずは軽く紹介しよう。

  1. ロングボール
  2. WBの走りとCBの上がりとCHのバランス
  3. 5-4の守備ブロックとカウンター

これらが準備してきた戦術だろう。これらがどのように川崎を苦しめたのか。これを詳しく解説していこう。

 

  • 1. ロングボール

これはよく指摘させて頂く「斜めのロングボール」だ。ではこれがどのように川崎を苦しめたのか。川崎はハイプレスを仕掛け、ショートカウンターを仕掛ける狙いがあった。なぜ川崎がこの戦術をとったかというと前回の札幌戦で7-0の大勝をした際にこのビルドアップのボールを引っ掛け次々とゴールを奪っていった。今回もそれを狙っていたのだろう。

だが札幌はCFのジェイとSTに入った鈴木武蔵に向かってプレスを掻い潜るためにロングボールを使った。WBが高い位置を取るまでの時間を作り幅をとった。これでまず川崎のMFとSBをひっくり返した。

 

  • 2. WBの走りとCBの上がりとCHのバランス

これが今回一番効果があっただろう。ではどのような攻撃を仕掛けていたのかを説明しよう。

まず攻撃時にボールを捌くのは27番。このあたりでボールを持つ。

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そうするとWBが斜めに走りこむ。そうするとそこのスペース空くか。

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ここのスペースが空く。そしてそのスペースにCBの5番が入り込む。ここがで5番がボールを受けることに意味がある。精度と質の高いボールを蹴ることのできる5番がフリーでボールを持てること、そして何よりも「角度」をつけることができる。なぜ角度が必要かというと、斜めのクロスまたは楔のパスを入れるため。これでDFは入ってくるボールと選手を同時に見ることが難しくなる。これが一つの狙いとしてあっただろう。

そしてバランスを取るためにCHがCBの位置に落ちる。

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これでバランスをとっていた。さらに、ここからボールを配球するだけでなく、STや中に入ったWBとのコンビネーションでサイドの深いところまで突破し、クロスを上げる攻撃もいくつか見ることができた。

このポジションチェンジとWBに川崎のSBが引っ張られるのでCBへの対応が後手になり、主導権を握られていた。この攻撃がかなりはまっていたと言えるだろう。

 

  • 3. 5-4の守備ブロックとカウンター

これは川崎のパスのリズムを上げさせず、良さを消すという面で効いていた。中央を締めることで縦パスを入れさせず、攻撃の糸口を16番のドリブルだけに絞った。何度かカットインからシュートに持ち込まれることはあったが、きちんとついて行っているので精度の高いシュートを打れることはなかった。そして無理やり縦パスを通そうとすると、そこを引っ掛けてカウンター。何度かこの場面があったので、川崎は縦パスを通せなくなり、攻撃が単調になっていた。

 

後半の川崎 ~ハーフタイムでの修正~

後半に入り、川崎は見違えるように息を吹き返した。前半、シュート6本だったのに対し、後半は21本も打っている。なぜここまで変わることができたのか。これを紹介しよう。

  1. ハーフタイムでの9番⇨11番の交代
  2. SBの左右の入れ替え
  3. SBの深さとクロス
  4. 札幌のMFの脇のスペース

この4つをハーフタイムで修正してきた。ではこの詳細を説明していこう。

 

  • 1. ハーフタイムでの交代

これがこの試合のターニングポイントだ。ではなぜこの交代が必要で、この交代が札幌を苦しめたのか。これを説明する前に前半、川崎の何がいけなかったのかを説明する必要がある。

川崎は前半、「縦パス」が入らないので攻撃のスイッチが入らず、テンポが上がらなかった。良さを消され、単調な攻撃になっていたので16番のドリブルでしかチャンスを作れなかった。2トップが相手のDFラインに入りっぱなしで横並びになるため、『ライン間』でボールを受ける選手がいない。このボールを受ける動きがないため、DFが動かず、「ズレ」が生じなかった。

そこでその「ズレ」を生じさせ、『ライン間』でボールを受ける動きができる11番を入れることでこの問題を解決した。さらに11番の裏抜けでDFラインを下げ、間延びの状態を生み出し、より『ライン間』でボールを受けることが簡単になった。

これで縦パスが入るようになり、MFをひっくり返しテンポを上げてチャンスを作りまくった。

 

  • 2. SBの入れ替え

これは単純にRSBとLSBを入れ替えただけだ。このシンプルなポジションチェンジが功を奏する。前半はRSBに左利きの選手、LSBに右利きの選手が入っていた。

そうするとボールの持ち方が中向きになり、ボールのセットの仕方がDFに近くなる。これがもちろん川崎の攻撃のパターンで、ハーフスペースの攻略に繫がるのだが、この試合は違った。中央に人数がいるため、ボールをセットした時にすぐにボールに詰められ、ボールを失う、もしくはバックパスを余儀なくされた。だから悪い形でボールを奪われカウンターを食らう場面が何度かあった。

だが左右入れ替えることで、視野は180℃になるが、DFから遠い脚にボールをセットできて時間が作れた。これが次に解説する大きな布石となる。

 

  • 3. SBの深さとクロス

2.の解説の通り、DFから遠い場所にボールが置けることで時間が作れて余裕が生まれた。そしてサイドを攻略し、深い所まで突破を図った。これで札幌は全たの重心が後ろに下がり、CFも下がってくる。そうすると、川崎はCBも攻撃に参加ができて攻撃に人数をかけることができ、セカンドボールの回収も容易にできた。

そしてDFラインを下げることでGKのプレーエリアを狭め、マイナス、または大外の選手が何度もシュートを放った。実際に放った後半だけで放ったシュートは21本。前半も合わせて27本。そのうち枠内は18本。これがどれだけ有効だったかが数字からもわかる。

 

  • 4. 札幌のMFの脇のスペース

これはSBが深さを取るためにここを攻略する必要があったのだろう。その時のポジショニングが左右非対称なのも面白かった。

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左サイドはSHが幅をとる。これは16番がドリブルを得意としているためだろう。

そしてこのレーン1と2でポジションをくるくる変えながらサイドを突破。これは⇨サイドも言えることだが、⇨サイドは見てもらったらわかるように、CHが頂点になり、SBが幅をとる。SHの家長がハーフスペースでボールを受けることが上手なのでこのような位置どりになる。これで相手を引っ掻き回し、ハーフスペースを41番が突破しクロスから11番が同点弾を決めた。このSB(SH)が幅をとる修正も見事なものだった。

 

まとめ

この試合、かなり面白いものだった。コンサドーレ札幌の準備の質とそれを上回る川崎フロンターレの修正力。どちらもレベルが高いもので、前半は札幌のゲーム、後半は川崎のゲームとはっきり分かれた。正直川崎が勝ってもおかしくない内容だったが、札幌のGKが凄すぎたのもあって1ゴールに留まった。本当にレベルの高い試合で良いものを見させてもらった。

 

終わりに

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  • 最後までご朗読ありがとうございます

やっと再開したJリーグ。これからもできる限りJ1の全試合の解説をしていくので引き続きよろしくお願いします。では次回もお楽しみに!バイバイ!