激戦だった昨シーズンが、昨日のことのように感じる中、とうとう開幕したJリーグ。この開幕に心躍るフットボールファンも多いことだろう。僕もその中の1人だ。そして開幕1発目のゲームは、昨季王者のフロンターレと一昨年の王者のマリノスだ。この神奈川ダービーで幕が開けるJリーグはどれほど贅沢なことだろうか。
では今回は、「マリノスの新システムがなぜ上手く前進できなかったのか」をに考えていこう。
- スターティングメンバー
- 前半マリノスが前進できなかった理由
- トランジションの懸念点
- 後半の修正
- ハイライト
- スタッツ
- 「サッカー、一緒に考えん?」
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スターティングメンバー
結果:2−0
スタジアム:等々力陸上競技場
【フロンターレ】
21’ 家長⚽️
43’ 家長⚽️
64’ シミッチ⇆橘田
76’ 脇坂⇆車屋
76’ ダミアン⇆小林
86’ 家長⇆知念
【マリノス】
HT 樺山⇆前田
HT 扇原⇆水沼
73’ ティーラトン⇆高野
73' 岩田⇆松原
88’ 和田⇆渡辺
前半マリノスが前進できなかった理由
巷で流れた3-3-1-3(正確には攻撃時は3-2-2-3、守備時は4-2-3-1)の新システム。このシステムは悔しいことにも、フロンターレ相手には上手く機能することはなかった。中央で掻っ攫われることが多く、それによりショートカウンターを受け続けた。
この章ではマリノスが前進できなかった理由を解説していく。
①:新システムの狙い
まず触れていきたいのは新システムの狙いだ。まだ明確になったわけではないのだが、この試合では少なくとも以下の2つの狙いがあった。
- シミッチの脇を取る
- SBに対して優位に立つ
この2つの状況を作り出して、前進していくことを狙った。
だからマリノスは攻撃時には、3-2-2-3の形を取っていた。
このように、守備時の形(4-2-3-1)から変化していくので、ティーラトンが中に入り、扇原と2CHの形を取る。これで一列前に押し出されるのが和田だ。これで天野と2OMFの形を取る。
だからこそ、2つの狙いが取れる立ち位置を取ることができていた。
このように、狙いたかったのがシミッチの脇とSB vs WGの局面だ。ことサイドでの局面はポステコグルー監督になってから行ってきたことだ。そこにアップデートを加えるべく、SBに対して2OMFがサイド(ハーフスペース)に流れることで1vs2の数的優位の状態を作り出して攻撃を仕掛けたかったのではないだろうか。
ではなぜ、この攻撃は上手くいかなかったのだろうか。
②:フロンターレの守備との噛み合わせ
まず大きく起因したのがフロンターレの守備との噛み合わせだ。ではどのようにフロンターレは守備を行っていたのだろうか。
まずはフロンターレの守備の立ち位置から触れていこう。基本的にフロンターレの守備はWGの外切りから守備が始まる。そしてこの試合だ。この試合ではWGの背後にポジションを取る選手がマリノスにはいなかった。だからこそ、WGは「背後を気にしながら」という余計な雑念が消えるので、思い切りCBに向かってプレスに行ける。これで中央に誘い込むことが可能になる。さらに、CFダミアンが中央CBをマークし、逆WGは絞ってCHを捕まえる。この時にIHが真っ直ぐティーラトンにプレスを行うことで、場所を狭くしていく。
上の図のように奪い所は2つ。まず1つ目の場所が中央だ。ここで奪うために6枚で『囲い』を作り出す。そしてこの囲いの中にすっぽりと入ってくれたのがマリノスのCHだ。ここでIHが真っ直ぐプレスをかけることで、ターンを難しくし、後ろ向きの選手に対して一気に圧縮してボールを回収していた。
もう1つの場所がWGの所だ。ここで優位に立って奪うことができるのはWGのプレスのおかげが大きい。WGが外からプレスをかけるので、CBの視野は狭くなっていく。これで、CB⇆WGの距離が物理的に遠い上、視野が狭いのでWGへのパスは難易度の高いもにになる。これで、SBはパスを狙いやすく、インターセプトや良い状態でWGにボールを持たせないことで、回収していた。
③:人を配置できなかった
ではなぜ、ガッチリとフロンターレの守備と噛み合ってしまったのか。それは、『中央にしかパスコースがなかったこと』が大きく起因している。先ほども述べたように、フロンターレの守備はWGの外切りから始まり、中央に誘導することでボールを回収してく。これに対してのマリノスの立ち位置だ。外切りのプレスに対して空いてくるのは
もちろんその背後だ。だがそこに人を配置することができなかった。
具体的には赤丸のエリアに人を配置することができていなかった。だからこそ、中央にしかパスコースがなく、そこに入ったとしても「外への逃げ道」を作り出すことができなかった。
場所を取ることに気づいた天野
だが、マリノスの選手でWGの背後、IHの脇のスペースを使うことが有効的ということに気づいた選手もいた。それがOMFに入った天野だ。彼は20分あたりから、このエリアにポジションを取るようになっていた。だが、ここにパスが出る前に潰されてしまうことが多くなっていたので、なかなかチャンスを作れなかった。だが裏を返せば、ここにボールを届けた時にマリノスはWG樺山サイドからチャンスを作り出すことができていた。
これらがマリノスが上手く前進できなかった主な理由だろう。
トランジションの懸念点
では次はこのシステムの懸念点を考えていこう。個人的にこの新システムの懸念点は『ネガティブトランジション』にあると感じた。ではなぜ、ここに懸念点があると感じたのか。
これを解説するには順を追い、マリノスの守備の局面から解説しなければならない。
基本的にマリノスは守備時の立ち位置は4-2-3-1 。さらにそれぞれが人を意識しながら守備を行っているように見えた。だから、フロンターレSBが上がるとWGが着いていくことが多かった。もちろんマークの受け渡しもある。IHとWGの入れ替わりは基本的にマークを受け渡すように設定されていた。だが、ここのズレと遅れを突かれて、先制点を決められてしまっている。余談になったが、ここも修正が必要な所かもしれない。
少し脱線しかけた話を戻すと、ボールを奪い、ポジティブ・トランジションの局面に移ると、以下のように振舞う。
ポジティブトランジションの振る舞いの優先事項(特に前半)で見られたのは、「まずは安定性を取ろう!」ということだった。
昨季やJを制したシーズン、彼らはできる限り『早く』攻撃に出ることを行っていた。だからこそ、ハイテンポのサッカーで、ゴールを量産した。だが、今季から挑んでいるのはきっと『遅攻』ではないだろうか。だからこそ、「存在する優位性」に飛びつかず、一度落ち着くことを選択していた印象だ。
そして一度落ち着くと、上の図のような動きを加える。WGはできる限りSBを引っ張り、ティーラトンと和田と扇原がポジションを移動させていく。これで、攻撃の局面へ移行していく。
だから前半はGKへのバックパスをダミアンに詰められて、何度か引っ掛けられることが散見されたのではないだろうか。
ではここからは、この章の本題となる『ネガティブトランジションの懸念点』について触れていこう。
まずチラッと守備の局面。
前半のボールの奪われ方は主に上の図のようになる。「フロンターレの守備」でも触れたように、マリノスのビルドアップとフロンターレの守備はガッチリと噛み合ってしまった。これにより、GK(またはCB)から中央/WGへのパスを奪われてしまうことが多くあった。問題はこの先だ。
奪われた瞬間。マリノスはバイタルエリアでボールを持たれることになる。だからまずゴールを守るために徹する立ち位置を取る。そうすると3バックは中央に絞る。こうなるとどこが空いてくるのか。それは大外のWGだ。ここにボールを届けられてピンチになることが多かった。ここに送られるのは、中央で奪われるのでボールホルダーにプレスが掛かりきらないこと、奪われた瞬間にどうしても意識がボールに集まること、そして4バック→3バックになっていることで、シンプルに場所を埋めきれないことがある。
ネガティブトランジションでここを使われてしまうことが個人的に感じた懸念点だ。
多分挑戦しているのは…
前半の振る舞いを見て感じたことは『マリノスは遅攻を試みている』ということだ。去年や一昨年の早い、ハイテンポなサッカーにローテンポのサッカーの戦い方を上積みしようとしているのではないだろうか。
まだ1試合しか見てないのでなんとも言えないのだが、ここから数試合見ていくとその魂胆が見えてくるのではないだろうか。
果たしてこれから遅攻と速攻の二刀流になれることができるのか。これからも楽しみだ。
後半の修正
後半になり、マリノスはオーソドックスな4-2-3-1または4-4-2の形に戻した。これは、先述したようにWGの背後、IHの脇に人を配置することで逃げ道を作り出す狙いがあった。だからこそ、フロンターレの1stプレスを剥がし、サイドで起点を作ることができるようになっていた。さらに、そこから、オナイウと前田でシミッチの脇を取ることで、中央への縦パスを引き出すことも可能に。これらで、中と外から攻撃を仕掛けれるようになっていた。
だがフロンターレのプレスバックの速さと、守備の堅さ、そこから先のロングカウンターの脅威。これらによりマリノスは攻撃の圧力を掛け切れなかったのではないだろうか。
前後半でかなり色合いの違った試合。このような試合はなかなか見られるものではない。開幕戦からスリリングな試合を見れたことに感謝だ。
これからのJリーグもかなり楽しみになる一戦だった。皆さんもぜひ、見返してみて欲しい。
ハイライト
スタッツ
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