- スターティングメンバー
- 前から潰したいミラン
- 可変と非対称の前進
- 押し込むと3バックへ可変
- ピルロのサッカーに魅了され…
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【セリエA 16節】
ACミラン vs ユベントス
サンシーロ
結果:1−3
【ミラン】
41’ カラブリア
【ユベントス】
18’ 62' キエーザ
76’ マケニー
ここまで無敗を続けていたミラン。若手を中心に、長い、長い低迷期を抜け、スクデットに手が届く位置まで上り詰めた。そして迎えるのはイタリアの絶対王者、ユベントス。もう1つのミラノのチームが躓いたこと、そして絶対王者を叩くことで、首位を固めて行きたかったミラン。だが、結果は1−3の敗戦で、初黒星。多くの主力を欠くこと、そして『神』不在がビッグマッチで大きく響いた。では今回はこの試合、ユベントスの戦い方を中心に、レビューを行っていこう。
最後までお付き合い頂けると幸いだ。
スターティングメンバー
前から潰したいミラン
ミランは前からの圧力を強めることで、ユベントスに満足なビルドアップをさせないこと、そしてその先のショートカウンターを打つことで、重要なこの一戦を進めていこうという算段に見えた。
ではどのように守備を行っていたのだろろうか。
まず触れていきたいのが、ユベントスのビルドアップ時の形について。(これは後ほど詳しく解説)
彼らはビルドアップ時、4-3-3のような形に可変することで、人とボールを動かし、前進をしていた。
これに対し、ミランはほぼマンツーマンで守備を行っていた。だからこそ、1トップで数的不利に陥ってしまうCBにも牽制を行う。その牽制を行うのが右SHだ。
上の図のように、SHがSBを消しながらプレスをかけることで、CBを捕まえれるポジションをとる。これで、GKに選択する時間をかけさせることで、SBをSBの高さまで上げる時間を稼ぐ。そしてこの時に、バックスは3バックのような形をとる。さらに、中に入るSHラムジーに対しては、CHが対応。もちろん、ユベントスCHにはそれぞれ、OMFとCHがマンツーマンで守備を行っていた。
そしてこのように、SBへのパス、開くCFへのパス、下がるSHへのパス、SH(もしくはCH)からのサイドチェンジのパスを回収すること、またはそれぞれの赤のエリアでミスを誘うことでボールを回収し、ショートカウンターへ移行していた。
このようにしてミランはできる限り、敵陣で守備を完結させるプランを武器に、ユベントスから勝ち点3を奪おうとしていた。
これに対してユベントスはしっかりと、ビルドアップを行い、ミランゴールに迫っていく。個人的にピルロ監督が作り上げているチームに魅力を感じる1つの理由がここにはある。
可変と非対称の前進
現役時代。ピルロ監督はその戦術眼と技術の高さでイタリア最高峰のMFの1人として君臨した。その高いサッカーIQと現役時代の経験を生かし、ユベントスをより魅力的なチームに作り上げようとしている。この試合を観戦し、今季ここまで、ユベントスの試合を見てこなかったことに、少なくない後悔が生まれた。
ではどのように、ピルロ監督はビルドアップを行い、攻撃を組み立てていたのだろうか。
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左サイドでの組み立て
どちらかというと、左サイドではより直線的な組み立てを行うことで、ミランゴールに迫っていた。これには左SHにラムジーが起用されていることが大きく関係している。
だからこそ左サイドでは以下のような配置になり、組み立てを行われていた。
このように、ビルドアップ時に4-3-3に可変するユベントス。その際、WGの位置に入って幅を作り出すのが、CFロナウドとSHのキエーザだ。彼かが幅を作り出すことで、この試合は特にミランRCBを外に釣り出すことができていた。
そして上の図のように、ボールを外回りに動かすことで、ハーフスペースに空間を作り出す。また、ストライカーの位置に留まるディバラがSTのような役割を担うことで、縦パスを引き出す動きを加える。これで、CHとCBをその場に止めることが可能に。
これで、幅を作るロナウドで時間を作り出して、3列目からラムジーを飛び出させる。このフリーランこそが、ラムジー最大の魅力で、ピルロ監督は彼を最大限に生かす攻撃を組み立てていた。さらに、このようなより直線的な攻撃を仕掛けることで、ロナウドが遅れてゴール前に入れるので、マークに捕まりにくく、彼の得点能力を生かすことも可能になるのではないだろうか。残念ながらこの試合ではこのような見えなかったが、今述べた展開を自分は想像できた。
だからこそ、何度か左サイドではSBとCFが幅を作り出し、CHが3列目まで下がって、最前線へ飛び出す組み立てを見受けることができていた。
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右サイドでの組み立て
では右サイドはどうなっていたのだろうか。
このサイドから攻撃を仕掛ける時は、ロナウドをストライカーの位置に添え、その得点力を生かす攻撃の組み立てを行っていた。
このように、右サイドでボールを回す場合は、SBはあまり高い位置で幅を作らず、一列前のSHにスペースを残しておくことが多くなっていた。こうすることでSBが仮にボールを受けると角度を作ることができ、CHへの縦パスとCFへの縦パスを通すことが簡単になる。さらに、ミランSHがSBを気にするポジションをとるので、ギャップを作り出すことができ、CBからの縦パスを入れ込むことも可能になる。
この縦パスを引き出すために、CFディバラがハーフスペースに流る動きを加える。これと同時にロナウドが中央のストライカーの位置へ、SHラムジーはハーフスペースに入る。
これでボールサイドに人を集めることで、数的優位を作り出して前進を試みる。
そして縦パスを受けた選手が前を向く、またはレイオフでCHが前を向くと、背後のスペースへロナウド、キエーザ、ラムジーがお互いの動きを見ながらフリーラン。これで攻撃を仕掛けていく。もちろん、幅を作ったキエーザがボールを受ければ、そこから彼の単独突破からの攻撃も1つの武器となっていた。
このようにして、ユベントスは可変し、非対称な前進を行うことで、ミランを混乱に陥れることに成功していた。
押し込むと3バックへ可変
そしてユベントスは敵陣に入り込むと3バックへ可変する。
このように3バックに可変した際は、CBとRSBで3バックを形成。その代わりにLSBが高い位置で幅を作り、推進力のあるキエーザも幅を作り出す。ロナウドは基本的にペナ幅でプレーを行い、フィニッシャーの色を濃くする。そしてディバラ、ラムジー、ラビオがフリーマンになり、ボールを引き出しながらズレを作り、中央を割っていく。この一連の流れの中で、幅を作るキエーザが突如として中に入ってくるので、ミランはより混乱に陥っていた。
このようにして、ユベントスは押し込んだ状態になると3バックの形で、より自由度高く、前線の能力を生かして攻撃を完結させていた。
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この攻撃の弱点は?
だが、この攻撃を仕掛けた時の弱点について触れていこう。この試合で奪われた同点ゴール。ここにユベントスの弱点が詰まっている。前に人数をかけることで、ライン間に潜り込み、ゴールを目指すユベントス。その手前でよく関わるのがラビオとラムジー、そしてベンタンクールだ。失点シーンにも見られたように、ライン間に入り込む前で引っ掛けられ、サイドにボールを展開されてしまうと、一気に中央が広がってしまう。もちろん、3バックの脇のスペースを使われてしまうので、簡単に起点を作られてしまうことが多くなる。だからこそ、カウンターを発動されて実際に失点をしてしまった。
仮に、ユベントスと闘うチームが『ライン間に入り込む手前で奪う現象を作り出す』ことを狙ってプランを作り出すことができるのならば、ユベントスは苦しむのではないだろうか。
ピルロのサッカーに魅了され…
ミランに取っては痛い敗戦。2位のインテルを突き放すことができるチャンスだったが、王者を前に、完敗を喫してしまった。もちろん、離脱者が多いことや、圧倒的な戦力差がある。だが、ピルロ監督が作っているユベントスというチームのサッカーがとても良いものなので、このような結果になったのではないだろうか。
先ほども少し述べたが、今季ここまで彼らの試合を見てなかったことを後悔するぐらい、ユベントスのサッカーは面白いと感じた。ビッグゲームだし、ぜひ皆さんもこの試合を見てみて欲しい。個人的には、これから彼らの試合をしっかりとチェックしていくつもりだ。
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