【UCL Final】チャンピオンズリーグ決勝 PSG×バイエルン・ミュンヘン 〜歴史の次のページへ〜

 

はじめに

今シーズンラストマッチに相応しい試合だった。決勝は慎重な入りになる事が多い中で、フランスとドイツの王者はスリリングでスペクタルな試合を演じてくれた。このような決勝は中々見られるものではない。お互いに良さを出し合い、しのぎを削った。そしてこの最高峰の大会の王者に輝いたバイエルン。敗れたPSGの大エース、ネイマールの涙に心を打たれるもの人も多かったに違いない。では今回はサッカーの歴史のページをめくった感じのあるこの一戦のレビューを行っていこう。

(バイエルンの試合をきちんと見れていないので、PSG視点になる事を許してほしい)

 

スターティングメンバー

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仕掛けたPSGのハイプレス

この試合のPSGは準決勝のライプツィヒ戦と同様に、ハイプレスを仕掛ける事でバイエルンに圧をかけていった。ではどのように圧を仕掛け、そしてどこでボールを奪おうと試みていたのか。

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まずは前の3枚のプレッシングについて。この試合もネイマールが積極的にプレスを行い、プレッシング開始のスイッチとなっていた。そのネイマールはチアゴを消しつつ、ボアテングを牽制する。さらにその時にチアゴを消しつつ、牽制を行う事がタスクとしてあった。両WGの役割は左右でそのタスクは全く違っていた。まずはディマリアのタスクから。ディマリアはCBアラバを自由にさせないように、SBデイビスを切りながらプレスを行う。これでアラバからの縦パスを封じる狙いがあった。また逆のムバッペは中盤のラインまで下がる事で、ファンタジスタの色が強い、SBキミッヒを消す作業を行う。トゥヘル監督は3トップに、チアゴ、アラバ、キミッヒを消すタスクを与えていた。

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これでアラバに圧がかかると、ネイマールがCBとGKへプレスに行ける立ち位置を取る。この時にチアゴを外してしまうので、そこを自由にさせないためにDMFのマルキーニョスが前に出て対応を行う。もちろん、そのスペースを埋めるためにIHエレーラが少し中に絞る事でカバーポジションを取り、OMFミュラーへの対応を行う。このようにして前進させずに、中盤でボールを引っ掛けてショートカウンターを打つ事を試みる。実際に1度、2度、アラバのパスミスを誘い、決定的な場面を作り出す事ができていた。

 

  • デイビスで奪うのか否か

ここで疑問だったのは、空いてしまったSBデイビス。PSGはデイビスで奪うのか、その次のプレーで奪うのか、それとも空けたがゆえに使われてしまったのか、微妙なラインだが、ここを使われる事でプレスを回避されていた。

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その回避のされ方がGkノイアーからのディマリアの頭上を越すミドルパスだ。IHエレーラはカバーポジションをとっているので、デイビスとの距離が遠く、プレスに遅れる、またはプレスに行けない状況に。これでデイビスがフリーでボールを持つ事ができる。さらにSBケーラーはWGのコマンを捕まえる役割があるため、プレスに行く事ができない。

このようにPSGはプレスを回避された事で徐々にハイプレスをバイエルンに止められていく。

PSGが苦労したサイドの動き

バイエルンにこのような回避をされたので、PSGはもちろん対応を行う。

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このように中寄りのポジションを取っていたエレーラは少し外寄りのポジションを取る事でSBとの距離を詰め、プレスに行ける距離間を保つようになる。これをする事で、中央が空いてしまうが、そこは逆IHのパレデスがスライドして埋める。これで何度かデイビスのところで奪う事、ミスを誘発する事ができたが、それでもミュラー、デイビス、コマンの動きに苦労していた。

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それがシンプルだがこのような動きだ。『自由度』が高く尚且つ『質』の高い動きをするミュラー。彼が大外に流れ、コマンと入れ替わる。こうする事で、SBケーラーはWGとOMFが自分の目の前にいるので、数的不利に陥り、マークが一瞬狂ってしまう。さらに中央でレヴァンドフスキが構えている事で、2CBをピン留め。これで中に入ってくる選手がプレスに行けない状態になっていた。だからSBデイビスはコマンorミュラーに縦パスをつけることが可能になっていた。この入れ替わりにPSGはかなり苦労し、そしてハイプレスを止めなければならない状況に追い込まれた。

 

ハイプレスを止められてからのPSG

ハイプレスを止めれてからのPSG。もちろん彼らは自陣にブロックを作って守備を行うこともできる。とりわけ、中盤と最終ラインのバランスは最上級のものだ。ではどのように守備を行っていたのか。

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自陣に入った時はまず、CBにボールを持たせる。そしてボアテング(途中からジューレ)が持つとネイマールがプレス。これでチアゴが空くので、ハイプレス時同様にマルキーニョが捕まえる。これでボアテングはアラバにパスを出す選択を取る可能性が高くなる。そしてアラバにパスが出ると、ディマリアが前に出て牽制を行う。

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そしてこのように、マルキーニョス、ディマリア、ネイマールでサイドを変えさせるパスを封じることで、SBのデイビスにパスを出させる。ここにパスが出るとIHのエレーラがプレスを行う。

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エレーラがSBにプレスをかけたことでマルキーニョスが中央に戻るだけの時間を作り出す。これで再び4-4(4-3)ブロックを作り出し、バイエルンのサイドからのクロスを徹底して跳ね返し、その跳ね返したボールを拾ってカウンターに出た。

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このように中央にバイエルンは中央に差し込めないので、外回りの攻撃になる。(それでも圧倒的な質があるのだが…)そうするとWGからの攻撃が中心になるので、そのクロスをバックス+マルキーニョスで確実に跳ね返すことで、エレーラとパレデスで2ndボールを回収。そして先ほども触れたカウンターに出るためにディマリアとネイマールが前線に残っていたのではないだろうか。

 

カウンターとムバッペがブロックに入った理由

バイエルンの圧倒的なトランジションとその強度により、ボールサイドを狭くされてボールも持つことが難しくなっていたPSGだが、それでもバイエルンの圧に飲まれなかたのは、最高峰のカウンターを持っていたから。そのカウンターを打つために守備時、ディマリアとネイマールが残り、ムバッペが下がった。このスピードスターのムバッペが下がった理由はもちろんある。それはディマリアよりも純粋なスピードがあるからだ。カウンターに出る際、4-4のブロックに参加すると、どうしても長い距離を走らなければならなくなる。そしてその長い距離の間に、バイエルンの選手よりも先にサポートを行うことができるのならば、それは大変なメリットだ。だから誰よりも早いであろう、ムバッペが「背後」から出てくることで、カウンターのスピードを止めずにフィニッシュまで持ち込むことができる。そしてこの試合、何度もカウンターを発動させたが、バイエルンも帰陣が早く、そして守護神ノイアーに幾度となく阻まれて、ゴールを破ることができなかった。

 

勝負を分けたのは…

そして皮肉にも勝負を分けたのは、50分あたりのディマリアとムバッペのポジションチェンジだ。この狙いにはデイビスの背後を狙うことで攻撃に優位性を生み出すこと、そして苦労していたコマンとデイビスのサイドの攻撃を止めようという意図があったのではないだろうか。だが、両WGの立ち位置を入れ替えたことで、ムバッペが完全にキミッヒが躍動し始める。前半は彼がそれほど中央で攻撃に絡むこと、2ndを回収することが少なかったが、ディマリアがカウンターのために残るので、キミッヒが中央でプレーに絡むことが多くなる。

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そしてその理由がこれだ。例の如く、チアゴを捕まえにいくマルキーニョス。ここでサイドに捌かれた時にプレスに行かなければならないのがIHなのだが、逆サイドと違うのが中央にCHゴレツカがいることだ。逆サイドだと、CHチアゴが下がっているので、IHが迷いなくプレスを行うことができるのだが、キミッヒサイドだと、それが難しくなる。だからマルキーニョスが戻る時間を稼ぐことができないと同時に、キミッヒがハーフスペースでボールを持てるようになり、ニャブリへのスルーパス、レヴァンドフスキ、ミュラー、コマンへのクロスをあげれるようになる。さらに、はじき返された2ndボールを回収できるポジションを取ることができるので、2次攻撃にも繋げることが可能になった。実際にハーフスペースでボールを受け、その後の攻撃の2ndを回収したことで、コマンの決勝ゴールをアシストした。

攻撃に出ていくためにポジションを変えたことが裏目に出てしまい、涙を飲むことになってしまった。

 

まとめ

戦術的なものはもちろん、それ以上に驚いたのが選手個々人の身体能力、フィジカルパフォーマンスの高さだ。何度もカウンターに出ては戻る。ストップとターンも異常に早く、これがトップのパフォーマンスなのか、、、と驚きを隠すことができなかった。とりわけバイエルンは試合を通してハイプレスを敢行し切った。試合を通してこの強度が落ちないこと、これにもPSGは苦労していた。完全にバイエルンが走り勝ったと言っても良いのではないだろうか。もちろん、その中で技術、戦術もハイレベルだったため、このようなスリリングな試合になったのだろう。そしてこの走れるこのチームは、CL全勝優勝という偉業も成し遂げていた。振り返れば勝つべくして勝ったとバイエルン。今シーズン、ラストマッチを飾るには有り余るほど価値のある試合だったのではないだろうか。このサッカーの歴史をめくったこの一戦をぜひ見返してみてほしい。

 

 

終わりに

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