UCL ライプツィヒ×PSG 〜「手前」と「奥」とハイプレス〜

 

 

はじめに

これぞ師弟対決。共にプロキャリアに早く見切りをつけ、そして欧州の舞台で手腕を振るう名監督に成り上がった。生粋の知将2人、トゥヘルとナーゲルスマン。この両者が率いるチーム。これがぶつかるのだから、面白くないわけがない。そして軍配が上がったのは地力の差でも圧倒的に勝るPSGだった。その地力の差だけではなく、試合の内容に目を向けると、トッテナム、アトレティコを倒して勝ち進んできたライプツィヒに『何もさせない』ほどの圧倒的なものだった。特に前半。彼らのハイプレスと攻撃により、ライプツィヒはなす術なく、2失点。あまりにも重くのしかかるこの2失点を取り返そうと、後半から修正して攻撃に出るが、それを折込済みのようなカウンターでの逆襲。トゥヘル監督は思い通りの試合運びだったのではないだろうか。では今回は、PSGのハイプレスとその攻撃について触れていこう。

 

スターティングメンバー

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「手前」と「奥」を使う攻撃

この試合、特に前半はボールを保持し、動かし、ライプツィヒのラインを突破し、そして強力な3トップを生かして攻撃を仕掛けていく。そのためにPSGはこのような仕組みで戦っていた。

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まず攻撃を仕掛ける時の準備。彼らが攻撃を仕掛ける時は、IHのパレデスがCBのヘルプを行い、DMFとCB +IHでスクエアを作り出す。これでCFポウルセンに対して数的優位を作り出し、その脇でボールを受けれるように仕組む。これを行うので、SBが前に出て幅を作ることができ、両WGが中にポジションを取れるようになる。これがこの試合、特に重要になっていた。さらにもう1枚のIH、エレーラは最初にライン間に隠れておく事で、ライプツィヒ中盤の選手に捕まらないようなポジションを取っていた。

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そしてパレデスまたはチアゴ・シウバがボールを受けると(主にパレデスが受けていた)ライプツィヒのIHのプレスを呼び込める。この時に同時にエレーラがライプツィヒ中盤の視界に入るように降りる事でDMFカンプルの意識を前に向ける。さらにライプツィヒSHが中央のケアのために中に寄せる事ができる。これで中盤に段差を作り出す。

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そして作り出した段差の背後に必ずネイマールが顔を出す。ここへのパスが最優先事項となり、ライン間で前を向く事ができれば、ネイマールは言葉通り、『なんでも』できる、やってのけてしまう。だからここへのパスが最優先事項となっていた。さらに次のパスがSBへのパス。ここで時間がもてたのは、SHを中に寄せる事ができていたから。そしてここからネイマールへの縦パス、またはムバッペの抜け出しへのパス、縦パスを選択する。これで攻撃を仕掛け、完結させていた。もちろん、このような攻撃のパターンもある。

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ライン間でネイマールに受けられたくないので、CBが対応にいく事が多くなる。こうなると、中に入ったムバッペがそのできたスペースへフリーラン。爆発的な一瞬のスピードがあるので、ムバッペは距離がなくともトップスピードに入れる。そしてここへフライスルーパスを送る事でチャンスを作り出す。

 

このようにして『手前』と『奥』を使い分ける事でライプツィヒに後手の守備を踏ませ、対応を難しくさせる事に成功した。そしてメガスターのネイマールとムバッペ、いぶし銀のディマリアの変幻自在のトリデンテにボールを効果的に届けて攻撃を完結させた。

 

『全員』でのハイプレス

そしてこの試合、何よりも驚いた事。それが『全員』でのハイプレスだ。なぜこれに驚いたのか。それは『全員』だからだ。前半限定だとはいえ、ネイマールにもプレスのタスクを授けた。そして彼も積極的にプレスを行い、そのスイッチと成り得た。バルセロナでのメッシ、ユベントス、レアル時代でのロナウド、チェルシー 時代のアザール。彼らは攻撃に専念するために「例外」として守備タスクの除外を許された。そして彼らと肩を並べるネイマール。彼も守備のタスクの除外を許される選手だろう。だがこの試合は自らがプレスのスイッチ役となった。ではどのようにPSGは守備を行い、そしてボールを回収していったのか。

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まずこれがハイプレスを仕掛ける時の配置だ。ライプツィヒは4バックで試合に臨んでいたが、攻撃時、主だってビルドアップ時は3バックになる事が多かった。これをトゥヘル監督は予想したのか、その3バックした形に対して3トップを当てる。ネイマールのタスクがDMFカンプルを消しながらのプレス、ディマリアはSBアンへリーニョを消しながらのプレス、ムバッペは3バック化するために降りてくるSBムキエレを捕まえるタスクを持っていた。さらにIHオルモとザビッツァーに対してはエレーラとパレデスがマンマーク。CFポウルセンにはマルキーニョスとCBで挟み込んでロングパスへの対応を行う。

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そしてGKからCBにパスが出ると一気に『場所』を狭くする。まずディマリアがSBを消しながらCBにプレスをかけ、ネイマールが逆サイドとGKを消す立ち位置を取り、中盤3枚が一気にスライドして場所を消す。ここが重要でエレーラが仮にSBに展開された時のためにオルモとアンへリーニョの間に立ち、オルモをマルキーニョス、カンプルをパレデスが捕まえる。これでCBを縦パスを入れても奪われ、GKへのバックパスはネイマールに狙われている状況に追い込む事ができる。

実際にこのプレスで何度もボールを奪い、ネイマールのハンドになってしまったシーンや2点目のシーンなど、多くのチャンスをこのプレスから生み出す事ができていた。

前半限定のものとなったが、『全員』でのプレスを遂行させ、結果に結びつけるトゥヘル監督。さすがの手腕だった。

 

後半に入ってからの展開

後半に入ってからは一変してPSGは「カウンター」を狙う事にシフトチェンジ。だから4-4-2

のブロックを引くようになり、そしてムバッペとネイマールの2枚のみでカウンターを完結させる場面が多くみられた。3-5-2のような形にしてボールを握れるようになったライプツィヒだが、実は握らされたのかもしれない。そう感じるほど、PSGは難なく守備を固め、カウンターに打って出ていた。そして3点目を奪い、決勝進出を決める事に成功した。

 

まとめ

今回は前半のPSGのプレスと攻撃についてさらっとまとめる形にした。文字と画像に書き起こさないつもりだったが、特にPSGの前半は圧倒的なもので、ライプツィヒに何もさせなかった。その攻撃の仕組みと守備の仕組みをこのレビューにまとめてみて、トゥヘル監督のプランの組み立て方と、PSGの選手達の技術の高さ、頭の良さ目の当たりにできた。決勝はバイエルンとの一戦だ。チーム全体の雰囲気と状態の良さがUCLの2試合から感じる事ができ、兼ねてからの野望であるヨーロッパチャンピオンまであと一歩と迫った。王者になるにはかなり高い壁を越える必要があるが、彼らならこの壁を簡単に飛び越えるかもしれない。そう感じることのできる一戦だった。

 

P.S.

仮にPSGがUCLを制したとしたら、ムバッペは21歳で中心選手として、W杯とUCLのタイトルを手にするのか。恐ろしいな…

 

終わりに

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