Bundesliga [Match Review]ドルトムント×バイエルンミュンヘン ~最適解を見つけ出すバイエルン~

 

 

はじめに

デアクラシカー。今シーズンのブンデスリーガの行方を決めるであろう一戦。だからこそ、超満員のジグナル・イドゥナ・パルクでの試合を観たかった。だがこんな状況だから致し方ないが、ドルトムントにとって、ホームスタジアムのサポーターの後押しがない事はかなりの不利な要素となったことだろう。

このような状況なので無観客で行われたビッグマッチ。試合内容は静かなスタジアムとは対照的に熱く、戦術的な展開となった。ドルトムントの流動的な攻撃に対し、王者のバイエルンはしっかりと準備を施し、圧倒的な攻撃力を誇るドルトムントをほぼ完璧に押さえ込んだ。

さらには攻撃。いくつかの攻撃戦術で最適解を導き出し、見事にドルトムントの守備を掻い潜っていった。今回はこの試合巧者の王者がどのように守備を行い、攻撃の最適解を見出していったのか。これを中心にマッチレビューをしていこう。

 

スターティングメンバー

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バイエルンの守備戦術

まずはバイエルンの守備戦術から紹介していこう。

マッチプレビューでも書いたように、バイエルンが懸念すべきはドルトムントの流動的な攻撃によるSBの背後のスペースを使われること。そして4-4-2で守備をするときの配置での噛み合わせだ。バイエルンはしっかりとここの対策を行い、見事ドルトムントを押さえ込んだ。

ではバイエルンはどのように守備を行っていたのか。

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バイエルンが用意してきた守備戦術は3バック化だ。

これにより、割と高い位置からプレスを掛けることでドルトムント3バックを潰しにかかった。その方法が上の図に示したものだ。

ドルトムントCBがボールを持つと、OMFまたはCFがプレスを行う。そしてOMF、CF、ボールサイドのSHが3バックを捕まえる。そうすることで、3バックの時間をスペースを奪う。

これに連動して、SBがWBを捕まえれるポジションをとり、同様にボールサイドのCHがドルトムントCHを捕まえれるポジションを取る。そして逆サイドのSHが思いっきり横スライドを行い、逆のCHを捕まえる。

このようにする事でバックラインは3バック化し、CHが中央に1枚残る。これでドルトムント3トップに対してバイエルンは2CB +SB +CHで数的優位を作り出す事ができる。そしてSTに対しては残ったCH、またはCBが入ってくる縦パスに対して対処を行う。

バイエルンはこのようにしてボールサイドを圧縮し、逆サイドを捨てる事で守備を行っていた。

この守備が終始、嵌りに嵌り切り、ドルトムントは数回のチャンスしか得る事ができなかった。

ドルトムントがチャンスになる場合

ではドルトムントは全くもってバイエルンの守備を突破できなかったのかというとそうではない。もちろん、特に前半は突破できる事が何度かあった。ではどのような場合になるとドルトムントはバイエルンの守備を掻い潜る事ができていたのか。

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まず1つ目が上の図のような状況を作り出した時。それがST、WB、CHのローリングだ。

このローリングにより、STのブラントがフリーになってボールを受ける事が多くなっていた。ここでふりーになれるのはCBのボアテングと残ったCHがSTのブラントに対しての距離が長くなるので、プレスが遅れるから。そしてここからブラントが逆サイドのWBへサイドを変える長いパスを送る事で早い攻撃が仕掛けれるようになっていた。

 

そしてもう1つがこちら。

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バックラインでのパス交換でバイエルンSHのスライドが間に合わなかった時。これにより、出てくるのが中央に残るはずのCHだ。ここで前に出る事によって、ドルトムントはSTがライン間でフリーになれる。そしてそこへ縦パスを打ち込む事で早い攻撃を仕掛ける事ができていた。

これら2つの方法でドルトムントはバイエルンの守備を掻い潜る事ができていた。

 

注目すべきバイエルンの意識

ここで少し補足を加えておく。バイエルンは何度か守備を剥がされた事で意識が変わった。それがCHの意識だ。CHが前に出る事で、ライン間を使われるのならば、『あえて前に出ない』という意識に変わっていた。こうすることで、ドルトムントの良さが発揮される「CHが引き付けて、ライン間でポジションを取るSTへの縦パス」をある程度封じる事に成功していた。

監督からの指示があったのか、選手個人の判断だったのか。ここは定かではないが、このちょっとした意識の修正により、バイエルンの守備は安定へ向かっていった。

 

最適解を見つけるまでのバイエルン

ではバイエルンがいかにして最適解を見つけていったのか。特に前半はこの作業に時間を費やしていた。ではこの最適解を見つけるまでにバイエルンがどのようにプレーをしていたのかを紹介していこう。

2つのビルドアップのパターン

前半の30分辺りまで2つのビルドアップを試していた。そしてこの後からしっかりと最適解を見つけ出し、攻撃を組み立ててキミッヒの決勝点を生み出している。

ではこの最適解を見つけるまでどのようなパターンを試していたのか。

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まず1つ目が上の図のような形。CHが横並びになる事で3トップに対して数的優位を作り出し、SBを押し上げ、CFとOMF降りてきてが主に中央の受け手を担う。そしてCFとOMFが中央を開けるので、そこへ必要があればSHが入り込むという方法だ。

そしてもう1つがこちら。

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このように3バック化しCHが縦の関係性になる。こうすることにより、左SBと右SHが幅を作り、CH(主にゴレツカ)とOMFが縦パスの受け手を担う。これでCFのレヴァンドフスキはバックラインと駆け引きしながらゴールを虎視眈々と狙う事が可能になる。

さらに左SHが自由に動けるようになるので、中央に入ってきてボールを引き出す事も多くなっていた。

 

これら2つのパターンを試しながら、バイエルンは最適解を見つけ出した。そしてバイエルンが選んだのは2つ目のビルドアップ。3バック化のものだ。ではなぜ、3バック化の方が良かったのか。

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まず1つ目にSTの横、WBの前で時間が作れるから。これは3トップに対して3バック化した事で得られたスペースだ。ここのスペースを使えるので、3バック化を採用。ではCHが並ぶとなぜここが使えなかったのか。

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このようにCFとOMFが下がって組み立てに参加するので、バックラインの背後を使う選手がいなくなる。だからドルトムントCBが躊躇なく前に出て対応が可能になる。

さらに幅を取るSBに対してはWBが対応できる。それはSHに対してCbがマークを行えるから。だから時間ができる場所がこの場合だとなかった。

そして2つ目がこちら。

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このような互換性も保つことができる。ドルトムントCHが出てくればSHがその背後のスペースに入り、ボールを受ける。この時にCBが出てくるならば、CFまたはOMFがその背後を突くことでゴールに迫る。

 

このように常に先手を打つことができるので、こちらのビルドアップを採用したのではないだろうか。

 

生命線であるCHのライン

そして生命線であるCHのライン。ここを最大限に活かすことができるのも3バック化だった。ここのCHと絞るSBが2nd回収とカウンターの芽を摘む事でバイエルンは常に攻撃を仕掛けることができる。ではなぜ3バック化が良かったのか。それが下の図のような理由がある。

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このようにボールが敵陣に入ると、逆SBが中央に入り、CHと同じ高さのラインを取る。

こうすることでカウンターの対処を行う。そして3バックだと中央に入るまでの距離が極端に短くなる。(黒線)

もしもSBが幅を作る場合だと、サイドから長い距離を移動しなければならない。仮にこの移動中にボールを奪われるようなことがあれば、バランスが崩れているのでピンチに繋がってしまう。さらにSBが絞るまでCHが攻撃に参加できないので、攻撃の厚みがなくなる。

だが3バックだとSBは1列前に出るだけでよく、さらにCHが縦関係なので常時攻撃に参加する事ができる。そしてこのようにした事により、高い位置でカウンターの芽を摘み、ゴレツカの美しいゴールが生まれる事となった。

 

このようにして試合を進めながら最適解を見つけ、その理由がはっきりとわかるバイエルンミュンヘン。強さを継続して発揮できる理由の1つがわかる一戦だったのではないだろうか。

 

後半のドルトムントの意図

ドルトムントは前半にゴールを奪わたので、同点、そして逆転まで持っていかないと優勝は限りなく難しいものになってしまう。だからこそ、ハーフタイムで2枚のカードを切ってきた。

それがブラントに変えてサンチョ、ディレイニーに変えてジャンという選択だ。

サンチョ投入の意図はシンプルに単独で運ぶためのものだろう。この交代により、攻守のリンクマンの役割を担っていたブラントがいなくなる。だからその役割を担わせるため、ダフートが上がれるように、CHにジャンを投入したのだろう。

ではどのようにしてこれを遂行しようとしていたのか。

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ドルトムントは後半から左サイドを中心に攻めるようになっていた。その理由がWBのゲレイロがSTの位置に入り、STのアザールが幅を作るようになったから。この入れ替わりにより、アザールがフリーでボールを受けれるようになる。

そしてアザールがボールを受けると、SBの背後にゲレイロが抜け出す事で、ダフートが遅れてハーフスペースでボールを受けれるようになっていた。だから後半はダフートがゴール前でプレーする姿が多く見受けれた。もちろんゲレイロが前に出ると、空いてしまう背後のスペース。ここをジャンがカバーする事で、リスク管理を行う。だからこそ、ジャンの投入があったのだろう。

そしてもう1つが守備戦術の変更だ。ドルトムントは後半からこのように守備を行う。

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このように縦関係になったCHを高い位置から捕まえる事を選択。キミッヒに対してダフートがマークを行う事が多く、ジャンがその後ろの広大なスペースのカバー役を担った。

このようにしてリスクを冒して逆転勝利を窺ったが、この修正は上手くいかず、ストライカーを怪我で失い、悔しい敗戦を喫してしまった。

 

バイエルンの後半

一方のバイエルン。ドルトムントが前に出てくるので、後方でボールを回しながら、カウンターの機を伺った。さらにドルトムントCHが1枚前に出てくるので、その背後のライン間のスペースをCBのボアテングの縦パスで効果的に使った。

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このようにサンチョの守備が緩いので、アラバは簡単に縦パスを打ち込む事ができるようになっていた。さらにCHジャンしかライン間のスペースにいないので、SH、CF、CH、OMFとフリーになれる選手が多く存在した。だからこそ、バイエルンは攻撃を簡単に仕掛け、完結する事ができていた。

さらに守備に至っては、前半と同様にCHのラインで徹底的にカウンターの芽を摘む事でドルトムントに早い攻撃を仕掛けさせず、80分辺りから徹底して背後のスペースを消す事でキミッヒのゴールを守り切り、この天王山を勝利で締め括った。

 

まとめ

深夜のビッグゲームだったが、試合内容がとても色濃く、激しい試合だったので、目が冴えに冴えまくった。そしてその要因がバイエルンの適応能力だ。試合を進めながら最適解を見つけ出すその様は王者の風格が漂い、強い理由が簡単に理解できるものだった。

もちろんドルトムントもあらゆる事を試し、なんとかライバルに追いつこうと試みていたが、その上を行かれてしまった。ドルトムントが悔しいのは、後半頭から入ったサンチョがトップフォームではなかったことだろう。中断前と比べると明確にキレがなく、身体が重そうだった。攻守共にもう少し彼の貢献があれば、もしかしたら試合の顔は変わっていたかもしれない。(だがこれもサッカーの一部なので仕方ないが)

このデアクラシカーはゴール数こそ少なかったが、内容が詰まった良い試合だった。

時間が許すのなら、皆さんもこの試合を見返してみてはどうだろうか。

YouTubeの方でも解説を加えていこうと考えているので、チャンネル登録をして待って頂けると幸いだ。

 

終わりに

最後までお付き合い頂きありがとうございます。この場を借りまして、SNSなどの紹介をさせて頂きます。

 

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