はじめに
サッカーが戻ってきて早1週間。先週はサッカーの有り難みを感じた期間となった。そして今週。今週もサッカーの有り難みを感じながらも、しっかりと分析し、サッカーを読み解いていこう。
そこで今回、ピックアップさせていただいた試合。それがヴォルフスブルク×ドルトムントの一戦だ。この一戦をピックアップした理由は2つある。まず1つ目が、先週観戦したドルトムントのサッカーに衝撃を受けたこと、2つ目がミッドウィークに開催されるデア・クラシカー、バイエルンミュンヘン×ドルトムントをより面白く観戦するため。
そしてこの試合。ドルトムントはしっかりと選手の調整をしながら勝利を掴む事ができた。
勝利を掴んだ大きな要因はフォーメーションの噛み合わせがあった。では早速、配置で優位に立つためにどのようにプレーをしていたのか。これを紹介していこう。
スターティングメンバー
では早速、配置で優位に立つ方法を紹介していこう。
ヴォルフスブルクの4-4-2守備戦術
ドルトムントが配置で優位に立てた理由はヴォルフスブルクの守備戦術に起因しているところが大きい。だからまずはヴォルフスブルクの守備戦術から解説していこう。
アタッキングサード〜ミドルサード
ヴォルフスブルクの4-4-2守備戦術は大きく分けて2つのエリアでその方法が異なっていた。
まずはアタッキングサード〜ミドルサードの守備戦術から紹介していこう。
これが基本配置。基本的にはゾーンディフェンスを敢行。2トップはCHへの中央のパスを消すためにかなり近い距離感を保ちながら、3バックを牽制。2CHには2CHがマークを行う。そしてアタッキングサード〜ミドルサードでは、大外のポジションを取っているWBに対してはSHがマークを行い、ハーフスペースに位置することの多いSTに対してはSBがマークするような決まりがあった。
これでボールを外回りにしてSTへの縦パスを奪う事を狙っていたが、ドルトムントの噛み合わせで負けていまい、上手く機能しなかった。これは後に「ドルトムントが配置で優位に立つ方法」についてで解説していこう。
ディフェンディングサード
ではディフェンディングサードではどのように守備を行っていたのか。
アタッキングサード〜ミドルサードとは一転して、どちらかというとマンマーク気味の守備を行なっていた。幅を作るWBに対してはSBがマークを行い、CFに対しては2CB。STに対してはCHがマークを行う。SHだけはゾーンディフェンスを継続し、持ち上がるCBと流れてサポートを行うCHを見るタスクが課されていたのではないだろうか。
そしてWBにボールが渡るとこのように守備を行う。
SBがWBに対応するので、SBとCBの間にスペースができる。ここをCHが縦スライドで場所を埋める事でバランスを保つ。さらに逆のCHが中央に横スライドしてここでも中央のスペースを埋める。このようにしてヴォルフスブルクはディフェンディングサードでの守備を行なっていた。これである程度上手く守れていたのだが、2失点を喫し、この守備は破られた。その1つの要因として、2トップの守備の不参加があっただろう。もしも2トップがもう少し守備へ貢献していれば、違った結果になっていたのかもしれない。
ではこの守備を念頭に置いた上で、ドルトムントが行った配置で優位に立つためのプレーを解説していこう。
ドルトムントが配置で優位に立つために
ではいかにしてドルトムントは優位に立ち、ヴォルフスブルクの守備網を突破していったのか。それには何度も触れている、『配置での優位性』が大きく関係していた。
配置での優位性①:CBでの持ち上がり
まずはビルドアップの局面。ここで優位に立つ事ができた。優位に立てた理由は2トップに対して3バックで数的優位に立つ事ができたから。
ここで時間とスペースを持てる事でボールを持ち出す事ができた。
上の図のように四角のエリアで余裕を持ってボールを持てたドルトムント。
そして次のようにボールを持ち出す事でヴォルフスブルクに後手の守備を行わせる事に成功した。
CBが持ち出した事で、まず対応に追われるのがSHだ。SHがCBにプレスに行けば、本来SHがマークするはずだったWBがふりーになるので、CBはWBにパスを供給。(この試合はこのパターンがほとんどだった。)そうするとWBがフリーになるので、ここにSBhが対応に出る事になる。だが、STが気になるので、思い切って対応に行けない状況に陥っている。
そしてドルトムントは次のいくつかのパターンで更なる前進を試みる。
このようにSBの出方によってWBは次のプレーを選択。1番わかりやすいのは、SBがプレスに出ると、その背後をSTが突くパターン。この試合はこの局面をよく見受ける事ができた。
そして次に多かったのが逆のWBへのサイドチェンジ。ここでも配置による優位性を存分に生かす事ができていた。そして3つ目のパターンがCFへの背後へのボールだ。
主にこれら3つのパターンで前進し、ゴールに迫っていた。これができたのも、攻撃の1番最初である、バックラインで優位に立つ事ができたからだ。そしてそれができたのが配置の関係があり、それに起因して相手を能動的に動かす事ができたからだ。
補足:前節と違うCBフンメルスの役割
前節のフンメルスの役割はDMFのポジションまで上がり、CHを動かし、パスコースを作る事だった。これが必要だった理由はシャルケが3トップで、数的同数だったから。だからフンメルスは1列前にポジションを取る事が多くなっていた。
では今節はどうだったのか。今節の役割は外のCBにサポートとそのカバーだ。ヴォルフスブルクは2トップなので、ポジションを変えずとも数的優位に立つ事ができている。だからリスクをかけて中央を開け、1列前にポジションを取る必要がない。
このようにシンプルだが相手が2トップか3トップかでフンメルスの役割は少しずつ変わるのではないだろうか。
まだ2試合しかきちんと観れていないので明確ではないが、この2試合を見る限りではこのような決まり事があるように思えた。
ちなみにこれが前節のマッチレビューだ。興味がある方はぜひご覧になってもらいたい。
配置での優位性②:CHの関係性(ビルドアップ)
次の配置で優位性を取れた理由。それがCHのところだ。もちろん、わかりやすくWBが浮く事でCHが優位に立てていたことも忘れてはいならない。
ではどようにしてビルドアップの局面においてCHが優位に立て、どのような影響を与えていたのか。
まずはポジショニング。上の図のようにボールサイドのCHが2トップの脇にポジションを取り、逆のCHは2トップの間にポジションを取る。こうする事で何が良かったのか。
このようにCFをピン留めする事により、CBが持ちだせるスペースと時間を作り出す。さらに、CFがCBに対して守備がしにくくなったので、SHに対して2vs1を作り出す事ができる。だからCBは安心してボールを持ち出す事ができていた。
さらに、このような影響も与えていた。
このようにCFがプレスを行うとCBは中央にパスを送る。元々、ヴォルフスブルクは外側のボール回しをさせたかったのだが、CFがプレスを行った事により、中央にパスを打つこまれてしまう。そしてボールをうけたCHはフリックしてライン間のSTへボールを預ける。これで一気にスピードを上げて攻撃を仕掛ける事ができていた。
これができる場合はヴォルフスブルクCHが前に出てきた場合。もしもヴォルフスブルクCHが前に出てこない場合はターンする事で多くの選択肢を持つ事ができていた。
このようにWBが大外にいる事でCHが周りに与える影響が顕著に観られていた。
配置での優位性③:CHの飛び出し
そして最後は崩しの局面だ。先程紹介したディフェンディングサードでのヴォルフスブルクの守備。この守備を破るためにCHの飛び出しが必要だった。現にこの試合の先制点はCHの飛び出しから生まれたものとなった。ではなぜ、CHが飛び出す事で優位に立つ事ができたのか。
まず先程も説明したように、ヴォルフスブルクの守備はこのようになっていた。この局面での守備の人数は『同数』となっている。
だがここにCHが加わる事で、ドルトムントは『数的優位』に立つ事ができる。
このようにWBがボールを持った時点でSTが外に流れて場所を空ける。そしてそこにCHが入る事でこの局面で数的優位を作り出す。
このようにこの局面で数的優位を作り出せる理由は先程も少しふれたヴォルフスブルクのCFの守備の不参加があったから。配置の噛み合わせが最悪とも言える4-4-2と3-4-3。ここを埋める仕事は少なくともCFが行わなければならない。ヴォルフスブルクはこれを行わなかったので、ドルトムントにこのような状況を作られてしまっていた。
そしてドルトムントは空いたスペースに入ってきたCHにパスをする事でバイタルエリアで時間を持って前を向く事ができ、チャンスを作り出す事ができいた。
これらのように主に3つの優位性を保つためにドルトムントはプレーをしていた。
前節もそうだったが、相手をしっかりと観て、動かす事でこの試合も勝利できていた。
まとめ
ミッドウィーク開催のデア・クラシカーに向けて勢いのつく2連勝。内容ともに充実したものになったのではないだろうか。
そしてこの試合で、改めて気付けた4-4-2と3-4-3の噛み合わせの関係。「4-4-2はバランスの取れた守備を行う事ができる」とよく耳にするが、その絶対条件として『CFの守備参加』が絶対条件にある。圧倒的な堅守を誇るシメオネ率いるアトレティコマドリード。誰も予想していなかった優勝を果たしたミラクルレスター。ともに4-4-2を採用するチーム。そして共通点として、『CFの守備』が義務付けられている。だからどんなチームが相手でも守備が機能していた。
だがこの試合のヴォルフスブルクは2トップの守備参加が義務付けられていないように見えた。だから局所、局所で数的不利に陥り、後手の対応に追われていたのではないだろうか。
改めてフォーメーションの噛み合わせと4-4-2の守備の必須条件に気付く事ができた良い試合だった。
終わりに
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