- はじめに
- スターティングメンバー
- ハイプレスから入ったフランクフルト
- ヴォルフスブルクのビルドアップと狙う場所
- 攻撃でも手が出せないフランクフルト
- 新たにできたスペースを使うホームチーム
- 同点になってからの展開
- 勝利を掴むために行った対象的な手法
- まとめ
- 終わりに
YouTubeでも解説を行なっています。
こちらも一緒にご覧になって頂くと幸いです。
[Match Review] ブンデスリーガ ヴォルフスブルク×フランクフルト 〜流れが何度も変わった理由〜
はじめに
ホームヴォルフスブルクはこれ以上上位陣に引き離せられないために。フランクフルトは降格争いに巻き込まれないために。特にフランクフルトは中断前のヨーロッパリーグ1 st Leg 、ザルツブルク戦から勝利がない状況。3バックのシステムに戻した前節から調子を取り戻しつつあるように見えた。だからこそ、この流れを引き寄せるために勝利が必須条件だった。
そしてこの試合の内容はどうだったかというと、一言で表すならば『忙しい』というものがぴったりだった。流れを引き寄せ、明け渡し、この繰り返しだった。
ではこの忙しい試合のレビューを早速行っていこう。
スターティングメンバー
ハイプレスから入ったフランクフルト
この試合、アウェイチームはハイプレスから試合に入った。必ず早いうちに先制点を奪って試合を優位に進めるぞという意気込みを感じる事ができる試合の入り方だった。
ではどのようにしてハイプレスを仕掛け、ボールを奪い、ショートカウンターを狙っていたのか。
フランクフルトは基本的にこのようにプレスを仕掛ける。2CBに対して2トップ、CHに配してはOMFと1枚のCHが前に出る事で2列目の選手を全て捕まえる。さらにSBに対してはWBがマーク。この時の特徴として両WBがSBを捕まえる事だろう。
本来ならば逆のWBはバックラインに入って4バック化するのだが、フランクフルトの場合はそれは行わず、前に出る、これの意図として、高い位置で奪った時に、クロスの人数を揃えることにあったのではないだろうか。
そしてこのエリアでボールを奪うことでショートカウンターを仕掛けようとしているのが見えた。
このエリアで奪うことでショートカウンターを仕掛け、ゴールを狙った。このハイプレスでフランクフルトは優位にたったかのように見えたが、皮肉にもこのプレスは機能しなかった。ではなぜ機能しなかったのか。それはヴォルフスブルクのビルドアップと狙う場所に大きく起因していた。
ヴォルフスブルクのビルドアップと狙う場所
大きくこの2つによってヴォルフスブルクはフランクフルトをいなしていった。その方法は順を追って解説していこう。
ビルドアップ
まずはビルドアップ。このビルドアップがすこぶるフランクフルトのハイプレスと相性の良いものになっていた。
ヴォルフスブルクは2CB +2CBでバックラインを形成し、SBを押し上げることでSHを中に移動させることができる。だがフランクフルトは全体的に前に出てプレスにくる。
だからこそ、ヴォルフスブルクCHは斜めに降りてフリーになるように仕向ける。これがフランクフルトのハイプレスを剥がすことができた大きな要因となっていた。
それが捕まえるはずのフランクフルトCHとSBを捕まえるはずのWBの判断を迷わせることに成功したから。これで時間ができたCHは好きなように展開をしていくことができていた。
仮にCHが出てくるのならば、中央が空き、そこをSHが使う。WBが出てくるのならばその背後を使うことで、一瞬SH +SB vs CBの構図を作り出すことができる。もしもプレスに来ないのならば、ボールを持ち出し、目線と角度を変える事でまた新たな一手を生み出すことができる。このようにしてヴォルフスブルクは優位に立った。
狙う場所は?
ではこのようにCHで時間を作ったヴォルフスブルク。彼らはこのビルドアップを行い、明確に狙う場所を決めていた。それが「残ったCHの脇」と「CBの脇」だ。
ここを使う事でホームチームは流れを引き寄せた。(下の図参照)
ではなぜここを使う事ができたのか。これにはフランクフルトの3バックの守備の決まりにある。
中央のCBの長谷部は主にカバーの役割を担い、サイドCBが基本的に潰し役に徹する。そしてこの試合はヴォルフスブルクSHが中に入るので、そこを潰しにいくと広大なスペースがサイドにできる。この原理を利用してヴォルフスブルクはCBの脇のスペースを使い、中央CBの長谷部をサイドに引っ張り出す事で優位に立った。
そしてこれを繰り返す事で、逆サイドへのロングパスも通るようになっていった。
攻撃でも手が出せないフランクフルト
フランクフルトはこのように守備を剥がされる事で徐々にペースを落としていった。ならばと言わんばかりに攻撃を仕掛けようとするのだが、この攻撃もヴォルフスブルクの守備により封じられる。
ヴォルフスブルクはこの前のドルトムントとの一戦で3バックに時間を与えた事で敗戦を喫してしまった。
(ヴォルフスブルク×ドルトムントのレビューも読んで頂きたい。下記のリンクからご覧頂けるので気になる方はぜひ。)
ホームチームはこの噛み合わせが悪い並びを解消するために以下のような守備を行う。
このように3バックを潰すためにボールサイド(身体の向きを見て)のSHがCBを捕まえる。そして逆のSHはCHとWBを同時に見れるポジションを取り(これができるのはボールの移動の時間があるからポジションをうまく取れば1人で2人見る事が可能)、CHが1枚前に出てCHを捕まえる。もう1人のCHはOMFを捕まえるポジション。もちろんSBはWBをマークし、逆SBは絞って3バック化。ちょうどドルトムント×バイエルンのバイエルンが行った守備と似たような形となった。
この守備も嵌り、攻守ともに充実していたが、先制点を奪われる事となった。
それでも奪った先制点
フランクフルトは手詰まり感があったがそれでも先制点を奪う事ができた。
これによりフランクフルトは30分に明確に守備の戦術を変える。それがWBがCBの脇を埋める事。これをする事でヴォルフスブルクの攻撃を封じることで、3トップを生かすカウンター中心に切り替える。だがこの守備戦術にも穴があり、後半はそこを使われる事となる。
新たにできたスペースを使うホームチーム
前半のフランクフルトの守備に一時抑え込まれたホームチーム。だからハーフタイムで新たな明確な戦い方を提示する必要があった。そしてそれが見受けられる後半の立ち上がりだった。
そしてこの新たにできたスペースを使う事で攻撃を再度仕掛け、そして同点ゴールをセットプレーで生み出す。
まず新たにできたスペースというものがCHの脇のスペースだ。フランクフルトカウンターは主に3トップを前線に残す事が多く、だからここのスペースが空いていた。
そこをヴォルフスブルクはハーフタイムで見抜き突いていた。その方法が上の図で示したようになっていた。CFが1枚(主にブレカロ)がそのスペースに降りる事でそこのスペースを使って最終局面を打開しようと試みていた。そしてこの攻撃を繰り返し得たFKで同点に追いつく事に成功する。
同点になってからの展開
同点になると、フランクフルトは再び前プレスを行う。そしてそれをいなすかのようにヴォルフスブルクは先述したスペースへボールを送り続ける。フランクフルトもアンドレ・シウバを背後へ走らせるが、疲労もあり、全体が押し上がらずに両者間延びが起きて、オープンな展開となる。だがここで手を打ったフランクフルトが勝利を掴む事になる。
勝利を掴むために行った対象的な手法
ヴォルフスブルク
まずはホームチーム。展開がオープンになった事による対処法。それが基準点型ストライカーからムービングストライカーへの変更。よりスピードを増し、1発の抜け出しでゴールを奪う事を狙った。まさにオープンな展開に必要で最適な選手と思われる選手の投入だった。
フランクフルト
一方のアウェイチーム。彼らが行った事はムービングストライカーから基準点型ストライカーへの変更。背後へのボールが多くなっていたこの展開に基準点型ストライカーが入った事で彼らは一呼吸つく事ができるようになった。そしてコンパクトさを戻しつつ、CFドストに預ける事で2ndを作り出し、それを回収して攻撃を仕掛ける事を狙った。
これが大きく試合の結果を変える事となった。ヴォルフスブルクは相変わらずCBの脇のスペースを狙う事で攻撃を仕掛けたが、フランクフルトはターゲットマンができた事により、自陣低くでボールを奪った時にも逃げ道を作り出す事、クロスを狙うポイントができた。
そしてこれが鎌田の試合終了間近の決勝点を生む事となった。
まとめ
試合の流れが行ったり来たりするようなこの展開。まさに忙しい試合となった。選手達は間違いなく疲れるだろうが、観戦する側からすると、よりわかりやすく、楽しい試合だった。そしてなによりもフランクフルトはこの試合に勝てたことがとても大きな財産になるのではないだろうか。苦しい、長いトンネルから抜け出した感じがあるフランクフルト。日本人選手が2人も在籍しているこのチームの躍進をもっと見ていたい。昨シーズンの躍進も相まり、よりそのように感じさせてくれる一戦だった。
終わりに
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