CL ザルツブルク vs リバプール 〜闘志を燃やすフルスロットサッカー〜

 

はじめに

ザルツブルクの戦い。それはまさに『闘志を持たす』と言う言葉がぴったりだ。1試合にかける、特にこのリバプール戦にかける思いが伝わってくる一戦だった。縦に早く、常にボールを襲う。フルスロットのサッカーはやはり見ていて面白い。そして対する相手はその先駆者とも捉えれる、ユルゲンクロップ率いる欧州王者。リバプール相手にここまで戦えるチームがザルツブルク以外に何チームあるのだろうか。彼らの戦いは世界を驚かせるのに十分だった。では今回は敗戦はしたものの、どのようにしてリバプールと互角に戦ったのか。それを紹介していこう。

 

この試合のフルスロットサッカーの全貌

ボールサイドを圧縮

やはりサッカーは守備から(個人的な見解)と改めて感じる試合だった。今回のザルツブルクリバプールのボールを奪うために守備からサッカーに入った。そうとはいっても「引いて守る」と言う守備ではなく、あくまでも「攻撃的な守備」でリバプールを苦しめた。(ザルツブルクの14番と45番の表記はSHとあったが、役割的にSHではなくCHの役割だったのでCHと表記)

(黒⇨ザルツブルク 白⇨リバプール

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まずはボールを圧縮するための準備段階。ザルツブルクも守備時にOMFが中を牽制することで中央を使わせない。これが今のスタンダードの守備なのかもしれない。OMFがDMFと近くのIHを見ながら、さらにボールと遠いCFがDMFを背後で消す。ボールサイドのCFはIHを消すことでより強固に中央を消した。CBにはプレスをかけずにSBにパスを出させる。これがザルツブルクのボールサイドを圧縮するための準備。そして次の準備がこちら。

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このようにSBにパスを出させるとCFとCHでSBにプレスを敢行。この時に必ず中央を使わせない守備を行う。これがこの試合の生命線だった。またOMFがスライドすることでボールサイドのIHをマーク。これでもしもIHにパスが出ても広い方へ逃がすことがなくなる。さらにDMFとCHもスライドスライドすることでボールサイドに人数を集め、バックラインも同様にスライドする。そしてWGへのパスコースのみに限定をする。これでWGと対峙しているSBは対応がしたすくなる。そしてボールを奪うのはこの二つのエリア。

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一つ目の奪うポイントは黒の四角のエリア。ここでCF(時にOMF)とCHでボールを奪う、ミスを誘う、捨て球を蹴らせることを選択させることができるとベスト。ここでボールを奪うことができれば、より脅威なゴールに近い状態から一気にショートカウンターを打つことができる。二つ目の奪うポイントがSBからWGへ出たパス。上の図でいうと赤の四角のエリアだ。この場所ではSB、スライドしたDMF、CHが2度追いすることで3 vs 1の状況を作り出し、『必ず』ボールを奪う。ここでWGを逃すと一気にお^分スペースまでボールを運ばれてピンチになる。ましてや相手はリバプール。スペースがあればあるほど威力を発揮する。だからこそ、ボールサイドを極端に圧縮し、スペースを与えないことでリバプールにリズムを作らせなかった。

 

リバプールの工夫①:DMFがバックラインに入る

リバプールも中央を消されることは確実に念頭にあっただろう。そこで行ったのがDMFがバックラインに入ること。これでOMFを釣り出そうとしたが、OMFは釣り出されることなく、中央を消し続けた。

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このようにDMFが降りることでCBが幅をとれ、そしてOMFの脇にIHが降りてボールを引き出すことにチャレンジしたが、OMFがきちんとIHのどちらか(主にボールに近いIH)をマークするので結局は中央を使えずにサイドにボールを出さされてボールサイドを圧縮されることになった。

 

リバプールの工夫②:CBからの背後へのボール

これはよく見かけるプレー。昨シーズンはCBのファンダイクからの一発で裏をとるロングパスが多かったが、今シーズンはCBのロブレンからのパスも多く見られる。先述したDMFがバックラインに参加することに関係するが、CBが少し押し上げられることでフリーになり、ここからのロングパスで違いを作った。SBからのボールも抑えなければならないが、CBからのロングボールに注意も必要になったザルツブルク。押さえるべきポイントが増えて苦労していた印象だ。現にこの試合も何度かCBからのロングパスでチャンスを作り出していた。

 

リバプールの工夫③:CFの組み立て参加

これは主に後半からの修正。リバプールはビルドアップの時にCFのフィルミーノが下がって組み立てに参加することが多くなった。

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このようにDMFがバックラインに入ることが少なくなり、その代わりにOMFの脇にIHとDMFがポジションをとる。これだけだとどちらかにOMFがマークをつき、CHが牽制をすればいいのだが、その一列前のDMFのところでも似たような状況を作られる。DMFの脇にIHとCFがポジションをとることでCHとDMFに若干の迷いが生じる。さらにCFが下がることで開けたスペースにWGが入り込むことでザルツブルクのSBを中に寄せ、SBにスペースと時間を与えることに成功。これでCBがSBにパスを出し、ザルツブルクはここで前半と同様にボールサイドを圧縮しようとするが迷いが若干あるので、SBに前半よりも時間ができる。前半には全くと言っていいほどなかったSBからのサイドチェンジが後半から徐々に見受けれるようになり、プレッシングが嵌らなくなっていった。実際にリバプールの先制点はSBからのサイドチェンジから生まれたゴールだ。

 

とにかく早く背後⇨2nd回収

1番早い背後

とにかく早く背後へ。リバプール相手にこのサッカーをして互角に戦うことができるチームはザルツブルクぐらいなのではないだろうか。前半に至ってはザルツブルクペースといっても過言ではなかった。ではどのように背後を狙い、2ndボールを回収していったのか。

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まずは奪ったボールをシンプルに背後に送るパターン。これは完全にリバプールの守備陣形が整う前に攻め込む、攻撃を完結させる意図があった。その狙う場所としてSBの背後、またはCBの間。ここを狙うことで、リバプールの中盤を一気にひっくり返すことができる。SBの背後を狙った場合はCHとDMFが2nd回収、サポート、飛び出しの役割を、CBの間を狙った場合はOMFが2nd回収、サポート、飛び出しの役割を担う。とにかく早く、リバプールの守備陣形が整う前に攻撃を仕掛けることで何度もチャンスを作り出すことに成功した。

2番目に早い背後

次に早い背後へのボールはこのような形になっていた。

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このように奪ったボールをCB(DMFの場合もあり)に一度預けることでポジションを取り直す時間を作る。そしてそこからCBとSBの間、CBの間を狙い、ロングパスを送る。またDMFとボールと逆のCHがCFの脇に降りる事でCFがCBにプレスを行うことの牽制。そしてここで重要な役割を担っているのが、OMFとOMFのラインまで上がったCH。リバプールのCBはファンダイクとロブレン。圧倒的にフィジカルが強く、空中戦に勝つ事は難しい。そこで弾かれたボールを拾うためにOMFとCHがいる。ここでボールを拾う事で二次攻撃につなげ、ゴールを脅かした。ここでも共通しているのが、リバプールの守備陣形が揃う前に攻撃を完結させるということだ。

遅攻に近い速攻

先述した攻撃ができない場合がもちろんある。ここでとる攻撃の方法が『遅攻に近い速攻』。どのような意味かというとこれも「縦に早い」ビルドアップという意味だ。ではどのように縦に早く、攻撃のスイッチを入れていたのか。

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まず最初の準備としてCFの近くにDMFとCHがポジショニング。SBは幅をとる。こうすることでリバプールのプレスにスイッチを入れる。WGは外切りで、IHはCHを牽制。こうすると、DMFのところで2 vs 1の状況を作り出すことに成功する。そしてこのようなパスを供給する。

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DMFの脇にポジションをとったCHとOMFが幅れることでどちらかがフリーになれる。ここにDMF経由、CBから直接パスを送ることで一気にスピードが上がる。この試合、OMFの南野がフリーでボールを受けて運ぶ場面が多かったのもこのような攻撃、4-2-2-2のような形とる事でDMFを狙ったからだろう。

 

これらの攻撃で特に前半は圧倒的にチャンスを作り出したザルツブルク。前半に幾度となくあった決定機を決めきることができればまた違った結果になり、もしかしたらCLから去ることはなかったのかもしれない。

 

まとめ

ボール中心にポジションをとり、距離を保ち、そしてボールサイドを圧縮する。奪ったボールはとにかく早く、背後へ送る。全体の押し上げも早く、コンパクトだから2ndボールを拾え、2次攻撃につなげれる。この後先考えずに、全開で挑んだザルツブルク。後半のリバプールの工夫と体力の消耗で徐々にプレスに遅れが生じ、嵌らなくなり敗戦してしまった。だがその戦い振りはまさに戦士のようだった。何度も言うが、リバプールの土俵とも言える、『早いサッカー』でここまで互角に戦えるチームはザルツブルクぐらいなのではないだろうか。激しく、熱く、そして緻密に練られたプレッシング。観ている者を熱くさせるサッカーに世界中の人々は少なからず感動すら覚えたのではないだろうか。CLから姿を消すことになってしまったが、ELでもモチベーションを落とさずに闘ってもらいたい。リバプールと同様、とても熱く、激しく、応援したくなるチームだ。

 

終わりに

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