【新システムの行方】J1リーグ開幕戦 川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス

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激戦だった昨シーズンが、昨日のことのように感じる中、とうとう開幕したJリーグ。この開幕に心躍るフットボールファンも多いことだろう。僕もその中の1人だ。そして開幕1発目のゲームは、昨季王者のフロンターレと一昨年の王者のマリノスだ。この神奈川ダービーで幕が開けるJリーグはどれほど贅沢なことだろうか。

 

では今回は、「マリノスの新システムがなぜ上手く前進できなかったのか」をに考えていこう。

 

 

 

スターティングメンバー

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結果:2−0

スタジアム:等々力陸上競技場

【フロンターレ】

21’ 家長⚽️

43’ 家長⚽️

64’ シミッチ⇆橘田

76’ 脇坂⇆車屋

76’ ダミアン⇆小林

86’ 家長⇆知念

 

【マリノス】

HT 樺山⇆前田

HT 扇原⇆水沼

73’ ティーラトン⇆高野

73' 岩田⇆松原

88’ 和田⇆渡辺

 

前半マリノスが前進できなかった理由

巷で流れた3-3-1-3(正確には攻撃時は3-2-2-3、守備時は4-2-3-1)の新システム。このシステムは悔しいことにも、フロンターレ相手には上手く機能することはなかった。中央で掻っ攫われることが多く、それによりショートカウンターを受け続けた。

この章ではマリノスが前進できなかった理由を解説していく。

 

①:新システムの狙い

まず触れていきたいのは新システムの狙いだ。まだ明確になったわけではないのだが、この試合では少なくとも以下の2つの狙いがあった。

  1. シミッチの脇を取る
  2. SBに対して優位に立つ

この2つの状況を作り出して、前進していくことを狙った。

だからマリノスは攻撃時には、3-2-2-3の形を取っていた。

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3-2-2-3のシステム

このように、守備時の形(4-2-3-1)から変化していくので、ティーラトンが中に入り、扇原と2CHの形を取る。これで一列前に押し出されるのが和田だ。これで天野と2OMFの形を取る。

だからこそ、2つの狙いが取れる立ち位置を取ることができていた。

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狙いたかった2つの局面

このように、狙いたかったのがシミッチの脇とSB vs WGの局面だ。ことサイドでの局面はポステコグルー監督になってから行ってきたことだ。そこにアップデートを加えるべく、SBに対して2OMFがサイド(ハーフスペース)に流れることで1vs2の数的優位の状態を作り出して攻撃を仕掛けたかったのではないだろうか。

 

ではなぜ、この攻撃は上手くいかなかったのだろうか。

 

②:フロンターレの守備との噛み合わせ

まず大きく起因したのがフロンターレの守備との噛み合わせだ。ではどのようにフロンターレは守備を行っていたのだろうか。

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フロンターレの守備の立ち位置

まずはフロンターレの守備の立ち位置から触れていこう。基本的にフロンターレの守備はWGの外切りから守備が始まる。そしてこの試合だ。この試合ではWGの背後にポジションを取る選手がマリノスにはいなかった。だからこそ、WGは「背後を気にしながら」という余計な雑念が消えるので、思い切りCBに向かってプレスに行ける。これで中央に誘い込むことが可能になる。さらに、CFダミアンが中央CBをマークし、逆WGは絞ってCHを捕まえる。この時にIHが真っ直ぐティーラトンにプレスを行うことで、場所を狭くしていく。

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場所を狭くして奪う場所

上の図のように奪い所は2つ。まず1つ目の場所が中央だ。ここで奪うために6枚で『囲い』を作り出す。そしてこの囲いの中にすっぽりと入ってくれたのがマリノスのCHだ。ここでIHが真っ直ぐプレスをかけることで、ターンを難しくし、後ろ向きの選手に対して一気に圧縮してボールを回収していた。

もう1つの場所がWGの所だ。ここで優位に立って奪うことができるのはWGのプレスのおかげが大きい。WGが外からプレスをかけるので、CBの視野は狭くなっていく。これで、CB⇆WGの距離が物理的に遠い上、視野が狭いのでWGへのパスは難易度の高いもにになる。これで、SBはパスを狙いやすく、インターセプトや良い状態でWGにボールを持たせないことで、回収していた。

 

③:人を配置できなかった

ではなぜ、ガッチリとフロンターレの守備と噛み合ってしまったのか。それは、『中央にしかパスコースがなかったこと』が大きく起因している。先ほども述べたように、フロンターレの守備はWGの外切りから始まり、中央に誘導することでボールを回収してく。これに対してのマリノスの立ち位置だ。外切りのプレスに対して空いてくるのは

もちろんその背後だ。だがそこに人を配置することができなかった。

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WGの背後に人を配置できなかったマリノス

具体的には赤丸のエリアに人を配置することができていなかった。だからこそ、中央にしかパスコースがなく、そこに入ったとしても「外への逃げ道」を作り出すことができなかった。

場所を取ることに気づいた天野

だが、マリノスの選手でWGの背後、IHの脇のスペースを使うことが有効的ということに気づいた選手もいた。それがOMFに入った天野だ。彼は20分あたりから、このエリアにポジションを取るようになっていた。だが、ここにパスが出る前に潰されてしまうことが多くなっていたので、なかなかチャンスを作れなかった。だが裏を返せば、ここにボールを届けた時にマリノスはWG樺山サイドからチャンスを作り出すことができていた。

 

これらがマリノスが上手く前進できなかった主な理由だろう。

 

トランジションの懸念点

では次はこのシステムの懸念点を考えていこう。個人的にこの新システムの懸念点は『ネガティブトランジション』にあると感じた。ではなぜ、ここに懸念点があると感じたのか。

これを解説するには順を追い、マリノスの守備の局面から解説しなければならない。

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守備の立ち位置

基本的にマリノスは守備時の立ち位置は4-2-3-1 。さらにそれぞれが人を意識しながら守備を行っているように見えた。だから、フロンターレSBが上がるとWGが着いていくことが多かった。もちろんマークの受け渡しもある。IHとWGの入れ替わりは基本的にマークを受け渡すように設定されていた。だが、ここのズレと遅れを突かれて、先制点を決められてしまっている。余談になったが、ここも修正が必要な所かもしれない。

少し脱線しかけた話を戻すと、ボールを奪い、ポジティブ・トランジションの局面に移ると、以下のように振舞う。

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ポジティブ・トランジションの振る舞い

ポジティブトランジションの振る舞いの優先事項(特に前半)で見られたのは、「まずは安定性を取ろう!」ということだった。

昨季やJを制したシーズン、彼らはできる限り『早く』攻撃に出ることを行っていた。だからこそ、ハイテンポのサッカーで、ゴールを量産した。だが、今季から挑んでいるのはきっと『遅攻』ではないだろうか。だからこそ、「存在する優位性」に飛びつかず、一度落ち着くことを選択していた印象だ。

そして一度落ち着くと、上の図のような動きを加える。WGはできる限りSBを引っ張り、ティーラトンと和田と扇原がポジションを移動させていく。これで、攻撃の局面へ移行していく。

だから前半はGKへのバックパスをダミアンに詰められて、何度か引っ掛けられることが散見されたのではないだろうか。

ではここからは、この章の本題となる『ネガティブトランジションの懸念点』について触れていこう。

まずチラッと守備の局面。

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前半のボールの奪われ方

前半のボールの奪われ方は主に上の図のようになる。「フロンターレの守備」でも触れたように、マリノスのビルドアップとフロンターレの守備はガッチリと噛み合ってしまった。これにより、GK(またはCB)から中央/WGへのパスを奪われてしまうことが多くあった。問題はこの先だ。

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奪われたその先

奪われた瞬間。マリノスはバイタルエリアでボールを持たれることになる。だからまずゴールを守るために徹する立ち位置を取る。そうすると3バックは中央に絞る。こうなるとどこが空いてくるのか。それは大外のWGだ。ここにボールを届けられてピンチになることが多かった。ここに送られるのは、中央で奪われるのでボールホルダーにプレスが掛かりきらないこと、奪われた瞬間にどうしても意識がボールに集まること、そして4バック→3バックになっていることで、シンプルに場所を埋めきれないことがある。

ネガティブトランジションでここを使われてしまうことが個人的に感じた懸念点だ。

 

多分挑戦しているのは…

前半の振る舞いを見て感じたことは『マリノスは遅攻を試みている』ということだ。去年や一昨年の早い、ハイテンポなサッカーにローテンポのサッカーの戦い方を上積みしようとしているのではないだろうか。

まだ1試合しか見てないのでなんとも言えないのだが、ここから数試合見ていくとその魂胆が見えてくるのではないだろうか。

果たしてこれから遅攻と速攻の二刀流になれることができるのか。これからも楽しみだ。

 

後半の修正

後半になり、マリノスはオーソドックスな4-2-3-1または4-4-2の形に戻した。これは、先述したようにWGの背後、IHの脇に人を配置することで逃げ道を作り出す狙いがあった。だからこそ、フロンターレの1stプレスを剥がし、サイドで起点を作ることができるようになっていた。さらに、そこから、オナイウと前田でシミッチの脇を取ることで、中央への縦パスを引き出すことも可能に。これらで、中と外から攻撃を仕掛けれるようになっていた。

だがフロンターレのプレスバックの速さと、守備の堅さ、そこから先のロングカウンターの脅威。これらによりマリノスは攻撃の圧力を掛け切れなかったのではないだろうか。

 

前後半でかなり色合いの違った試合。このような試合はなかなか見られるものではない。開幕戦からスリリングな試合を見れたことに感謝だ。

これからのJリーグもかなり楽しみになる一戦だった。皆さんもぜひ、見返してみて欲しい。

 

ハイライト

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スタッツ

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【思惑のぶつかり合い】UEFA CL Round16 1st Leg アトレティコ・マドリード vs チェルシー

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欧州最高峰の大会。この日の注目カードだ。昨季PSGで決勝まで辿り着いたトゥヘルを招聘したチェルシーは2度目のCL制覇を目指す。一方のアトレティコマドリードは今季こそはと、堅守を継続しつつ、攻撃なスタイルを手に入れ、悲願の初優勝を目指す。

そんな「ビッグクラブ」同士の一戦は、内容の詰まった面白い試合となった。

では今回は、この試合で起きていたことを解説していこう。

 

 

 

スターティングメンバー

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スターティングメンバー

結果:0−1

【A・マドリード】

82' コレア⇆デンベレ

         サウール⇆トレイラ

      フェリックス⇆ロディ

84’ エルモソ⇆ビトロ

 

【チェルシー】

68’ ジルー⚽️

74’ マウント⇆ジエク

      コバチッチ⇆カンテ

80’ オドイ⇆ジェームズ

87’ ジルー⇆ハヴァーツ

       ヴェルナー⇆プリシッチ

 

  • スタッツ

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Flashsore引用

ライブ サッカースコア - J1 / J2 リーグ、EPL、ACL、ライブスコア&試合結果

 

場所を埋めるシメオネのプラン

『堅守』。これこそがチョロ・アトレティコのイメージだ。だが、直近の7試合はクリーンシートがない。だからこそ、シメオネは『場所を埋める』ことを選択し、まずは失点しないことを考えた。

だからこそ、6-3-1のブロックを作り出すことで守備を固める。

ではどのように守備を行っていたのか。これを解説していこう。

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守備開始の基本立ち位置

まずは基本的な守備の立ち位置から。

アトレティコは時折プレス(後述)を仕掛けることもあったが、基本的にブロックを作り出して、低い位置で守備を行った。

そのために、スアレスとフェリックス、2CHで中央を消す立ち位置を取る。この時、フェリックスにはアスピリクエタに自由を与えないように、牽制していくタスクが託されていた。

また逆STのコレアはWBアロンソの監視役を担っていたので、バックラインに吸収されることも多かった。

これを許容(このように設定した)理由は、このように考えられる。それは「ハーフスペースを使わせない」「場所を予め埋めておく」ということだ。

だから、ジルーに対してはフェリペ、マウントに対してはエルモソ、ヴェルナーに対してはジョレンテとサヴィッチがマンマーク気味に守備を行う。これで、仮に対応に出たとしても、「守備に余り」が出る(3トップに対して4枚の守備陣)ので、数的優位を保ったまま、カバーも行える。これで場所を消し、ボールを回収していく。

では、ここからどのように回収を試みたのだろうか。

  • 回収の方法

ここからは回収の方法を解説していこう。

これは右サイドと左サイドで若干の違いがあったので、順を追って解説していく。

まずは左サイド。

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左サイドの回収方法①

左サイドでは、アスピリクエタに自由にプレーをさせないために、フェリックスが牽制をかけることを先ほど説明した。

この時に、フェリックスはWBオドイを消しながら気持ち外切りのプレスを行うことが多かった。こうすることで、アスピリクエタは「安全な外へのパス」の選択肢を削がれることになる。代わりに「リスクがある中央の縦パス」の選択肢が生まれる。

このリスクのあるパスを選択させることで、最終局面の一歩、二歩手前で、アトレティコはボールを回収していく。

そのための、バックラインでのマンマーク気味の守備だ。アスピリクエタは、CHへのパスと背後のスペースを消されているため、マウントまたはジルーへの縦パスを選択することが多かった。ここに入る瞬間に、CBが対応を行うことで潰してボールを回収していた。

もちろん、WBオドイにボールが出ることもある。その場合は以下のように守備を行う。

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左サイドの回収方法②

この場合は、オドイに対してWBが対応に出る。こうなると、ハーフスペースが空いてしまい、そこを使われることが多くなるのだが、アトレティコの場合は予めハーフスペースを埋めている。さらに、ここを埋めると、クロスに対する中の人数が数的同数、または不利になるのだが、ここも6バックになっていることで、常に数的優位に立つことができる。これで、オドイにバックパスを選択させればOK、最悪、クロスを上げられても、優位に立ち跳ね返すことが可能なので、守ることができる。

これが左サイドでの守備になっていた。

 

では右サイドではどのようになっていたのだろうか。

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右サイドの回収方法

右サイドでは、ある程度リュディガーにボールを運ばれることは許容していた。だが、その先の中央へのパスコースは必ず消して守備を行うことでWBアロンソまたはヴェルナーへのパスを選択させる。ヴェルナーへのパスは、左サイド同様に、入ってくるボールを潰すことで回収する。左サイドと違うのは、WBアロンソへの対応だ。

彼に、ボールが出ると、コレアが素早くアプローチ。ここで奪えれば御の字、少なくともリュディガーへのバックパスを選択させる。

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右サイドの回収方法

これでバックパスを選択させると、プレスを行うことが多く見受けれた。CHコケがリュディガーまで出ていき、スアレスとフェリックスもプレスの準備を行う。これで、バックパスを選択させることで陣地回復を試みて、敵陣に入ると、明確にハイプレスを行うことで、何度か敵陣でボールを回収し、ショートカウンターに出ることができていた。

このいずれかのショートカウンターを仕留めることができていたならば、アトレティコはグッと勝利に近づいていただろう。

 

広げた攻撃の幅

ではどのようにチェルシーはアトレティコの守備網を掻い潜り、攻撃を仕掛けていったのだろうか。

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チェルシーが行ったこと

まずチェルシーは行ったことが、「ブロックの外に人を置く」ことだ。上の図のように、中央を消してくるアトレティコに対して、その脇にマウントとコバチッチが立つようになる。こうすることで、ヴェルナーとジルーの2トップの形になる。

ではこれを行うことの何が良かったのだろうか。

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迷うフェリックス

良かったこととして、ジョアン・フェリックスのタスク実行を迷わすことができることだ。これが、チェルシーのその先の展開に大きな影響を与えた。

ではどのような影響を与えていったのか。

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運べるアスピリクエタ

まず1つ目にアスピリクエタが運び出すことができるようになったことだ。

これはフェリックスがタスク実行か中央を消すのか、マウントを消すのか、これらの判断を迫られた結果、『曖昧な位置』で止められてしまったからだ。

これで、アスピリクエタが運び出してフェリックスを呼び込むとWBへパス。これで、オドイが縦突破、または中へのカットインができるようになる。これは、マウントが遅れてハーフスペースに入ることで、エルモソの対応を後手に回すことができたからだ。(ハーフスペース手前または背後に引っ張ることで起きた現象)

これでオドイは後出しでプレーを選択することが可能になっていた。

さらに、チェルシーはこの攻撃を見せていくことで、さらに攻撃の幅を広げる。

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クリステンセンの角度

もちろん、このままではいけないと感じるフェリックス。彼は「先が読めすぎるがゆえ」か、早く動き過ぎることがある。だからこそ、クリステンセンがボールを持つと、アスピリクエタとマウントを消すために、若干外側にポジションを取ることが多くなっていた。

こうなると、運べるクリステンセン。ここで持ち出すことで中央に差し込むための角度を作り出す。この持ち出しと同時に、コバチッチも中に入り縦パスを受ける。

これは、フェリックスが早く動き過ぎるがために中央が空いているからこそ、差し込めた縦パスだ。

だから、以下のような中央突破も見受けることができた。

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中央突破

このように、コバチッチの落としをジョルジーニョが受けワンタッチでジルーへ縦パス。これで3人目でコバチッチが受け直すことで中央を突破していく。

CHのパス交換→ワンタッチの縦パス→コバチッチが受け直すという動きは、ジルーがCFにいる時によく見受けられる攻撃だ。やはりジルーは凄い。

 

そして、中央突破を行えるようになり、アトレティコを自陣に押し込むことで、リュディガーサイドでもこのような攻撃を仕掛けれるようになる。

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リュディガーサイドの攻撃

このように、リュディガーが持ち出すまで同じ。ここから先が違う。コバチッチがブロックの外にいることで、リュディガーへのバックパスにプレスにいくはずのCHコケをピン止め。これでリュディガーが角度と時間を持ってパスを受けられる。さらに、コバチッチでコケを若干外に釣り出したことで、ジョルジーニョが空間でフリーになる。空間で受けることが上手なジョルジーニョ。ここからさらに大きな展開へ。

マウントがブロックの外から、ハーフスペースへランニングすることで、WBレマルとCBエルモソの意識を手前で引きつける。これで大外から斜めにハーフスペースの奥をオドイが狙えるようになる。

 

このように、チェルシーは攻撃の幅を広げていきアトレティコの守備を破ろうと試みた。

 

動きオープンになった後半

後半に入り、動いたのはアトレティコだ。シメオネはコレアにWBのマークのタスクに加え、持ち出すリュディガーへのプレスも託した。コレアの上下の運動量とそのタイミングはかなり難しかったはずだが、それでもほぼ完璧と言っていいほどそれを完遂していた。これを行ったことで、アトレティコは前の意識が強くなり、プレスをよりかけれるようになる。これで、攻撃に出たのだが、チェルシーに回避され、失点を喰らった。

チェルシーはアトレティコのプレスに対して、ロングパスやミドルパスで早めの攻撃を仕掛けるようになる。これは、WBが上がったスペースを早めに使うことを狙ったのだろう。だからこそ、ここでも生きたのが、CFジルーだ。実際にジルーへのパスとそのセットパスで一気に前進し、WBの背後を使いながら攻撃を仕掛けた。

これで、ジルーの決勝点に繋がるゴールも生まれている。

 

特に前半はお互いの思惑がぶつかった内容の詰まった好ゲームだった。2nd Leg はチェルシーはマウントとジョルジーニョ不在、アトレティコはトリッピアーの復帰と多分カラスコも帰ってくるだろう。

こうなると、数字の部分ではアウェイゴールを奪ったチェルシーが有利だが、アトレティコにも大きく可能性が残されている。攻撃に出るしかないアトレティコ。果たしてチェルシーはマウントとジョルジーニョの不在の戦い方、そしてどのようなゲームプランを施すのか。2nd Leg もかなり楽しみだ。

 

 

 

 

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【できる事を考えたが…(前半編)】Premier League 25節 アーセナル vs マンチェスター・C

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進撃を続けるマンチェスター・シティ。師弟対決となったビッグマッチは、ペップ・グアルディオラの勝利で終わった。だが、この試合でアルテが用意してきていたもの。「できる事」を考えての守備戦術だった。試合開始早々にゴールを奪われてしまったが、落ち着きを取り戻してからは、かなり堅い守備を展開していた。これに対してシティも負けじと攻撃を仕掛けていた。

では今回は、前半に起きていた事を中心に試合を読み解いていこう。

(後半のレビューはサロンで行います)

 

 

スターティングメンバー

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引用:ライブ サッカースコア - J1 / J2 リーグ、EPL、ACL、ライブスコア&試合結果

 

前半のスタッツ

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前半のスタッツ

引用:ライブ サッカースコア - J1 / J2 リーグ、EPL、ACL、ライブスコア&試合結果

 

 

用意した守備戦術

アルテタはマンチェスター・シティから勝ち点を奪うために「できる事」を考慮しながら、ゲームプランを立てていた。

ではどのような守備戦術を用意していたのだろうか。

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立ち位置とタスク

まずは守備開始時の立ち位置と個々のタスクから触れていこう。

守備開始のエリアは、アタッキングサードから行うことが多かった。この時の個々のタスクはオーバメヤンが左寄りで、ペペがジンチェンコを背後で消しながらディアスにプレスを行うことが多かった。

2列目では、中に入るカンセロに対してはサカがマンマークを行い、IHにはそれぞれCHが人を意識して守備を行っていた。

最終ラインでは幅を作り出すWGに対してはSBがマークを行い、B・シウバに対しては基本的に2CBで数的優位を作り出すことで守備を行う。

だがこの守備はシティの前進(後述)によってほぼ機能不全に陥ってしまい、自陣で守備を行うことが多くなってしまっていた。

では自陣で守備を行う場合はどのような形になっていたのだろうか。

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自陣での守備

自陣ではこのように、ジャカがバックラインに入ることが多くなっていた。これは、エバートンの守備戦術と似ていた。(気になる方は以下のリンクからどうぞ)

 

www.soccer-bunseki.com

 アーセナルもエバートンと同様に、CHがハーフスペースを埋める役割を果たす。これを行うことで、IHがハーフスペースを使えないように設定。

さらに、SHぺぺはCBへの外切りのタスクからSBを消すタスクへ変更され、CBマリはCFのマンマークのタスクへ変更される。もちろん、エルネニーと両SBのタスクは継続だ。

ここがエバートンと少し違うところで、エバートンの場合は『降りるCF』の対応が曖昧で、バイタルエリアを開けてしまっていたが、アーセナルは『マリ(場合によってはホールディング)が降りるCFへ着いていく』タスクがあったので、エバートンほど、中央(バイタルエリア)を使われる場面は少なかった。

わかりやすく、以下の図がエバートンと違うところだ。

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エバートンと違うところ


このようにCFが降りたとしても、CBマリ(ホールディング)が必ず着いていき対応を行う。この守備が行えたのも、CBで必ず余りを作り出すことができていたからだ。これで、仮に潰しきれなかったとしても、最悪「数的同数」で守備を行うことができていた。

 

このように、自陣に入るとタスクの変更を行うことで安定して守備を行うことができていた。だからこそ、試合開始直後の失点がかなり悔やまれるのではないだろうか。

 

  • 「後ろが重い」という懸念点

自陣での守備は安定したのだが、「攻撃に移る」段階で課題が残った。もちろん、シティのネガトラが尋常じゃないほど早いことも関係していたが、やはり、「CHがバックラインに吸収される」ことにより、空いてしまうバイタルエリア。ここを埋めるために、ウーデゴールが下がってくることも多かった。時折、オーバメヤンも下がって守備を行うことも見受けられた。こうなると、ボールを奪った時点で、「自陣深く」に人数がいるので、前進するためのパスコースがない。だから、カウンターに出ることがかなり難しくなっていたのではないだろうか。

だが、それでもいくつかチャンスを作り出すことができたのは、勇気を持ってパスを繋いだからだ。特にバックパスを受けた時のレノの落ち着き具合は常人の域を出ているように個人的には感じた。

 

動いて配置で殴るシティ

ではシティはどのように「元同僚」のアルテタが準備していきたプランを破壊していったのだろうか。

まずはビルドアップの局面から考えていきたい。

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配置で殴るために

シティはこのように、『配置で殴る』ために上の図のような立ち位置を取ることが多かった。SBカンセロはいつもの如く、中に入ることでSHを中に寄せる。これを行うことでCBストーンズが幅を作り出せるので、オーバメヤンかた距離を作ることが可能になり、縦関係にあるIHデブライネと一緒に、CHジャカの迷いを生み出すことができていた。

さらに、オーバメヤンはストーンズを意識する守備を行っていたので、ディアスがフリーでボールを持てることが多くなる。また、SHペペのプレスから逃げるためにジンチェンコが少し低い位置を取って3バックのような形になる。これで直接ディアスから逃げる場面と、エデルソンからぺぺの頭上を越してプレスを回避する場面も見受けれた。

極め付けはCBの持ち上がりでアーセナルを撤退させることに成功していた。

以下の図がその方法だ。

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回避と運び

では前進し、アーセナルを撤退させてからはどのように崩していったのだろうか。

まず1つ目が『サイドチェンジ』だ。

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サイドチェンジが打てた仕組み

これがサイドチェンジが打てた仕組みになる。

CBが運ぶことでカンセロのマークを行っているサカを釣り出すことができる。こうなると、カンセロがフリーになってしまうので、CHジャカが気になって前に出てくる。これが、カンセロが中に入ったメリットの1つだ。こうなると次にフリーになるのが、「化物」デブライネ。彼をフリーにしたくないので、WGのマークを行っていたSBがハーフスペースまで絞る。こうなると、WGマフレズがフリーな状態に。

さらに、バックラインではディアスがフリーになれる。これは、先ほども触れたがぺぺがジンチェンコを最初に消してそこからプレスを行うので、到底間に合う訳が無い。これで、ディアス→マフレズのパスコースが創出される。

現に、立ち上がりはこの攻撃を多発させて、スターリングのゴールを生み出した。

 

そして2つ目が入れ替わりだ。

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ポジションの入れ替わり①

このように、CBが持ち上がることでSHを釣り出し、玉突きでCHを釣り出す。これでデブライネのマークが緩くなる。さらに、WGでSBをピン止めすることでサイドに流れるデブライネがフリーになれる。さらに、この動きと同時にCFが下がることでCBを釣り出し、その背後にスペースを作り出す。これで大外からWGスターリングが斜めのランニングをいれることで簡単にスペースを使うことが可能になっていた。

さらにもう1つの入れ替わりがこちら。

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ポジションの入れ替わり②

これが主なもう1つのポジションの入れ替わりだ。

CFシウバが下がると同時にIHが前に出る。この入れ替わりはシンプルなのだが、その効果は絶大だ。シウバが下がる動きに対してCBが必ず着いていくタスクがあったアーセナル。だが、IHが前に出てくることで、場所を開けてしまうことになるので、そのプレスは難しくなる。仮にここで、前に出てしまうとIHに簡単に背後を取られてしまう。さらに、マークを行っているCHは「敗走」している状態なので、かなり不利な状態での対応になる。

だからこそ、CBはCFに着いていくことができず、降りたCFはフリーでボールを受けることができていた。

そして中央に全体を寄せた状態から外に展開することで、攻撃を仕掛けていった。

 

前半は特に、シティの配置と動きがフル稼働で見れた内容だったのではないだろうか。

 

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現実的なアルテタ監督

特にどちらのファンでもサポーターでもないので、第三者からの目線で言わせてもらう。「アーセナルは悪くはなかった」と個人的には感じた。もちろん、最初の失点はいただけないかもしれない。だが、それ以降の戦い振りは堅実で現実的だったのではないだろうか。今までの守備の方法からガラッと変えることで、現実的に戦い、堅い守備を披露。シティの戦力差と所属している選手のことを考えて、プランを組んでいた。これは今のアーセナルに必要なことではないだろうか。

悪くなかったアーセナル。次はELベンフィカ戦、2nd legだ。少し難しい戦いになるかもしれないが、Premier Leagueファンとして、勝利で次のラウンドに進んでもらいたい。

にしても、ペップシティは強いなぁ…

 

 

 

 

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【ライン間を取れなかった理由】Premier League Match 25 サウサンプトン vs チェルシー

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低調。消化不良。このような表現がこの試合に関しては合っているのではないだろうか。ここまでトゥヘルが行った6試合。その内訳は5勝1分と結果と内容の伴った良い試合だった。だが、サウサンプトン戦。動きが少なく、精彩を欠いた。

ではなぜ、この試合ではライン間をとることができなかったのか。これについて考えていきたい。

 

 

スターティングメンバー

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結果:1−1

スタジアム:セント・メリーズ・スタジアム

 

【チェルシー】

45’ エイブラハム⇆オドイ

54’ マウント(PK)

76’ オドイ⇆ジエク

      コバチッチ⇆ジョルジーニョ

 

【サウサンプトン 】

33’ 南野⚽️

76’ 南野⇆テラ

85’ イングス⇆アダムス

90+4’ レドモンド⇆ヌルンドゥル

 

使えないライン間

前半は3-4-2-1で挑んだチェルシー。過去6試合は効果的にライン間を使うことができていたのだが、この試合ではそこを使うことができなかった。ではなぜライン間を使うことができなかったのだろうか。

やはりまず関係するのがセインツの守備だ。それについて触れていこう。

  • セインツの守備について

ではセインツはどのような狙いと個々のタスクがあったのだろうか。

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まずチームとしてのスタンス。それは確実に「ライン間を消す」ことと「中央を消す」ことがあった。だから、この試合は「ハイプレス」を行わずにミドルブロックを形成して、中央3レーンに人を集めた。これにより、高い位置を取るWBがフリーになるが、ここはある程度捨てることを選択。ここには、SHのプレスバックと、SBのスライドでなんとかしようと言う力技に出ていたように映った。

では、このスタンスを取るために個々のタスクはどのようなものになっていたのだろうか。

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個々のタスクは上記のようになっていた。南野はWBジェームズを切りながら、アスピリクエタの牽制のタスクを主に担い、2トップでCHを消しながらCBへの牽制、2CHはCHをマークする。特筆すべき点は、SBはWBを捨てて必ずSTのマンマークを行うことだ。これで徹底してライン間と中央を満足に使わせないように設定した。

だからチェルシーは特に前半、ライン間を使うことができなかった。

 

  • 引っ張れないエイブラハム

そしてもう1つ。ライン間を使えなかった大きな理由が「エイブラハムが引っ張れなかった」ことが挙げられる。

もちろん、引っ張るだけの背後のスペースがなかったことも関係しているが、それを差し引いても、ボールと関わることが少なかった。仮にジルーならば、起点になれるので、段差を作り出すことができ、「周りの選手」が背後に引っ張ることが可能になる。この起点を作るという点においても、お世辞にもエイブラハムは貢献できたとは言えなかった。

だから、DFラインを下げれず、DF-MF間にスペースを生み出すことができなかったのではないだろうか。

その結果が、前半での交代だろう。

良い選手だけに、勿体ないと感じるし、裏を返せば「スペースがない中」でのプレーを改善すれば、確実に良いストライカーになると思う。世界最高峰のチームプレーヤーが近くにいるのだから、存分に彼から「そのプレー」を学び、盗んで欲しい。そしてもう1つ上のプレーヤーに成長してもらいたい。

 

これもチェルシーが前半にライン間を取れなかった理由の1つだろう。

 

  • 潰された供給元

そしてもう1つがライン間に差し込む「供給元」を潰されたことが挙げられる。

これはサウサンプトンの守備のスタンス、中央を消すことに大きく起因している。この供給元を潰すために、アスピリクエタと2CH、特にコバチッチを潰しにかかった。

これで、チェルシーはサウサンプトンのプレッシングに対しては3CBと2CHで数的優位を保ち、ボールを回せるが、効果的な縦パスを供給することができずにいた。

だからこそ、次に紹介する『チャンスを作れるのはWB抜け出し』に繋がったのだと思う。

 

  • チャンスを作れたのはWBの抜け出し

前半に唯一チャンスを作れたのがWBの抜け出しだ。元々空いているWBが抜け出すことで、サイドから崩していく場面が何度か見受けることができた。

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このように、サウサンプトンの守備のタスクを裏目に取って、STが下がってSBを釣り出すことで、スペースを作り、そのスペースをWBが使うことでサイドを攻略していた。これでクロスからの攻撃を仕掛けていたが、その精度が少し低く、決定機を作り出すまでは行かなかった。

 

STとWBの入れ替わりが使えなかった理由

前節のニューカッスル戦で見せたSTとWBの入れ替わり。とくにヴェルナーとアロンソの入れ替わり。(この攻撃が気になる方は以下の記事をご覧になってもらえたい)

 

www.soccer-bunseki.com

 

ではなぜ、この攻撃が使えなかったのか。それはSBのマンマークの守備によるものだ。これにより、入れ替わりの際の迷いによる「遅れ」と「ズレ」を生み出すことができなかったからだ。だから、ヴェルナーの単独突破が目立ち、ニューカッスル戦のようなSB vs ST+WBの形を作りせなかったのではないだろうか。

 

後半の修正について

では後半の修正について触れていきたい。やはりハーフタイムで交代を命じられたのはエイブラハム。彼に変わって入ったのがオドイだ。

この交代によって、3-4-1-2の形に変更。エイブラハムの交代で3-4-1-2になったのはバーンリー戦でも行った修正だ。バーンリー戦でもライン間を効果的に使えていなかったので、このようになった。そしてこの試合も同様だ。

そして、この交代によってオドイとヴェルナーが背後に抜け出すのでライン間でマウントがボールを引き出すことが可能になっていた。

さらにもう1つの修正。それがWBの位置だ。

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このように、後半からはWBの立ち位置が低くなっていた。この意図として、供給源を作り出すことがあっただろう。中央を使えないのならば、外から入っていくことを狙った。だから、WBが低い位置を取って起点になると、CFオドイがサイドに流れて場所を開け、ヴェルナーが背後に引っ張る。このようにすることでマウントがライン間でボールを受けれるようになっていた。

これで、チェルシーは攻撃を仕掛けていったが最後まで逆転ゴールを奪うことができなかった。

 

カンテとジョルジーニョ

この試合ではカンテとコバチッチのコンビ。これまではコバチッチとジョルジーニョのコンビが多かった。個人的に思ったのは、「やはり2人とも良い選手だ」ということ。カンテのボール回収率はこの試合でも凄いものだったし、カウンタープレスを仕掛ける際はやはりジョルジーニョよりも優に勝る。だが、やはりジョルジーニョが入ってくると、動きとシンプルな叩き、コーチングでボールを動かすことができる。カンテよりもこの部分で優に勝る。現に、彼が入ってきてから、特にズマとリュディガーの持ち出しが多くなった。トゥヘル監督はコバチッチ、カンテ、ジョルジーニョと、優秀なCHを抱えている。試合によって使い分けてくると思うが、きっと悩ましいことだろう。

 

この試合は、消化不良とも言える内容だった。だからこそ、すぐに切り替えてミッドウィークのアトレティコ戦に備えてもらいたい。

激戦必至のこの一戦が待ち遠しいばかりだ。

 

 

 

 

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【予想の範疇を越える】UEFAヨーロッパリーグ Round32 1st leg ベンフィカ vs アーセナル

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 帰ってきたヨーロッパのコンペティション。ここからは真の強豪同士の凌ぎを削る戦いになる。今回レビューを行わせてもらう一戦は、ベンフィカvsアーセナル。

言わずと知れたビッグクラブの一戦は、「お互いの予想の範疇を超えた」ものになった。では早速、この一戦のレビューを行っていこう。

 

(各種SNSのフォローと拡散、サロン参加のご検討をお願いします!詳細は目次の「サッカー、一緒に考えん?」からどうぞ!)

 

 

スターティングメンバー

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 結果:1−1

スタジアム:スタディオ・オリンピコ

【アーセナル】

57’ サカ⚽️

64’ セドリック⇆ティアニー

77’ オーバメヤン⇆ペペ

       スミスロウ⇆マルティネッリ

90’ セバージョス⇆エルネニー

       ウーデゴール⇆ウィリアン

 

【ベンフィカ】

HT ヴァルトシュミット⇆シルバ

55’ ピッツィ(PK)

64’ セフェロヴィッチ⇆Nunez

       ピッツィ⇆エヴェルトン

77’ ターラブト⇆ガブリエウ

85' ヴェリッシモ⇆Chiquinho

 

ベンフィカの守備

まずはベンフィカの守備から触れていこう。申し訳ないが、定期的にベンフィカの試合を見れていないので、基本的なものがどのようなスタンスかはわからない。だからこの試合のスタンスについて、しっかり触れていく。

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ベンフィカの守備のスタンスは「中央消しの外に誘導」と「前進を簡単に許さない」ということ。だから、上の図のような立ち位置をとる。CBには2トップ、CHに2IH、OMFにはDMF、3トップには3CBといった形で「マークの担当」を明確にした。

ではSBはどうするのか。これは、あえて空けておく。これには2つの理由があっただろう。

  1. SBに誘導しやすくするため
  2. WBをバックラインまで下げて数的優位を保つため

この2つがSBを空けた理由で、WBがバックラインまで下がっていた理由だろう。

これで、SBに誘導すると以下のように守備を行う。

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このように、GK→CB→SBのボールの移動中にWBがSBへプレスを行う準備をする。これで、SBに対してプレッシャーを与えることでボールを回収する。この時にそれぞれがマンマークを行えているので、サイドに閉じ込めることで逃げ道を無くせる。これで最悪、前進させずにバックパスを選択させることで、徐々にアーセナルに圧力を与え、場所を狭くして行った。

 

補足:レノの視点

ちなみに、バックパスを選択させ、GKまで下げさせた時のレノの視野はこのようになっていたはずだ。

(黄色がアーセナル)

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かなり狭くなっていることがわかる。これで中央に差し込め!というのは、かなり勇気のいることだ。だからこそ、レノは出し所がなくてロングパスを選択することも少なくなかった。

 

アーセナルの剥がし方

アーセナルは正直、苦戦していた。プレスをかけられ、上手く剥がすことができなかったが、次第にベンフィカの出方を見極め、2つの方法でプレスを回避していく。

①IHの背後での回避

まずはIHの背後を使っての回避方法だ。同じくマンマークの極地にいる直近のリーグ戦でのリーズでは、ジャカが下がることが少なかったが、この試合では、下がって3バックの形を取るようになる。(近々この方法の使い分けの基準を見つけたい)

気になる方は、参考までにリーズとのレビューをどうぞ。

 

www.soccer-bunseki.com

 

では、ジャカが下がることで何が起こり得たのだろうか。

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このように、ジャカが下がったことでベンフィカIHを釣り出すことができる。これでIHの背後にスペースを作り出せる。ここで、IHの背後、DMFの脇のスペースをスミスロウが使うことで、ボールを引き出す。ここで、重要なのがウーデゴールは中央に残ること。これをすることで、DMFをピン止めし、CBを釣り出すことができる。

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CBを釣り出すので、背後にスペースを作り出すことができる。だからSBにパスを落とした時に、ベンフィカWBはスペースの管理のため、前に出ることができない。これでSBがフリーになり、ボールを持てる。そしてスミスロウが再び動き出すことで背後を取ることができていた。(もちろん、オーバメヤンやウーデゴールが取ることもある)

これが1つ目の回避方法だ。

 

②SBでの回避 

次にSBの回避から。これはベンフィカのWBとの距離を考慮しての方法だ。

ではどのように回避していたのだろうか。

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この場合はGK経由でサイドを変えた時に回避できる方法だ。SBからGKへのバックパスの間に、CBが広がり、CHが降りてくるスペースを作る。ここにGKから縦パスを送り、外のSBへ逃げる方法だ。この方法ができたのも、ベンフィカのマンマークでの守備と、サイドを変えることでのスライドの距離を作ったことに関係している。

さらに、極め付けにSHが外に流れることでWBをピン止めする。これで本来プレスにくるはずのWBを止めれるので、SBで時間ができる。

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これで、このようなワンツーの抜け出し方でアーセナルは「中から前進」することができていた。

アーセナルはこの2つの方法で攻撃を仕掛けて行ったが、オーバメヤンの決定機逸脱や、ベンフィカの身体の張った守備により、ゴールを中々奪えない時間が多かった。

 

予想の範疇を超えた個人技

ベンフィカがきっと感じたであろうこと。「こいつら、技術たけぇ…」ということだろう。だからこそ、マークがついていてもターンされること、消していたはずのパスコースにパスを通されたり、とアーセナルは個人技で圧倒していた感じはあった。

CLのライプツィヒvsリバプールでも、ライプツィヒは面食らったはずだ。「こいつらのプレー強度、高過ぎんか!?」という感じに。

改めて思うのは、このプレー強度と技術で毎週試合の行われるPremier Leagueは魔境ということだ。

ヨーロッパのコンペティションではこのような気付きもあるので、見ていて楽しい。

これから、欧州サッカーが佳境に入っていく。どのような結末になるのか、楽しみだ!

 

 

 

 

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【こじ開ける道】Premier League 16節 エバートン vs マンチェスター・C

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止まらないペップ・シティ。百戦錬磨の老将アンチェロッティでもこのチームを止めることができなかった。エバートンも策を講じたが、それでも悠々とその上を超えていく。どうしたらペップ・シティは負けるのか。そんな議論を肴に一晩中、酒を飲めるだろう。

では今回はどのようにペップ・シティがゴールをこじ開け他のか。これについて解説していこう。

 

 

 

スターティングメンバー

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結果:1−3

スタジアム:グディソン・パーク

 

【マン・シティ】

32’フォーデン⚽️

63’マフレズ⚽️

77’B・シウバ⚽️

80’スターリング⇆デブライネ

90+1’ロドリ⇆フェルナンジーニョ

 

【エバートン】

18’ミナ⇆コールマン

37’リシャルシソン⚽️

69’イウォビ⇆キング

      デイビス⇆ハメス

 

最優先を場所を埋める守備

アンチェロッティはシティの快進撃を止めるために、「最優先で場所を埋める」ことを選択する。これはまずは失点しないというプランの下、設計されていたものだろう。そして機を見て前プレを行うことで、カウンタープレスでゴールを奪うことを目論んでいた。

だからこそ、同点ゴールは見事にプレスが嵌って、狙い通りの攻撃を仕掛けることができていた。

ではどのように守備を行うことで、自陣まで引き込み、ブロックを形成していたのだろうか。そして自陣でどのように守り、どのようにプレスをかけていたのだろうか。

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このようにエバートンは前進に時間をかけさせるために、『ロドリとカンセロ消し』を行う。ここを消すのが、リシャルリソンとシグルズソンだ。さらに、3バックの形になることが多かったシティ。この時に注意しなければならないのが、特に配給の上手なラポルトだ。彼も消したいので、SHのイウォビが牽制を行える立ち位置をとる。

さらに、極め付けはIHへの対応。彼らはCHドゥクレとデイビスがマンマークを行うことで徹底して消しにかかった。これでビルドアップに時間をかけさせる。(シティは特にこれを嫌がらないから、ストレスを与えれるかは別の話)

もちろん、最終ラインでは常に3トップに対して常に「+1」の状況を生み出すことができていた。

これで、自陣に引き込むと以下のように守備ブロックを形成する。

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このように、自陣に引き込む(入られる)とボールサイドのCHがハーフスペースを最優先で埋める作業を行う。これで、「手前」にいることになるIHに対して前向きの対応をすることが可能に。

さらに、逆CHが若干中央寄りの立ち位置に修正を加え、SHがIHを捕まえる。このようにして守備を行っていた。

これができたのも、走力とカバーエリアの広いドゥクレとデイビスだからこそ、行えたプランだろう。

 

カウンタープレスに出る時の設計図

防戦一方では勝ち目がないのがサッカー。もちろん、虎視淡々のゴールを奪うためのチャンスを狙っていたエバートン。それは失点直後のプレスからのゴールでその狙いが明らかになった。ではどのようにプレスを行い、どこでボールを回収しようとしていたのだろうか。

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狙ったのはIHへの縦パスだ。ここにパスを出させるためにSHは外切りのプレスを行う。特にこれを行ったのはラポルトサイドだ。彼は球出しがとても上手いので、外切りのプレスをかけた時に「IHへのパスコース」を見つけることができる。だからこそ、ラポルトサイドでこのプレスを行うことが多かった。

そしてIHフォーデンと勝負を仕掛ける。ここの力勝負なら勝てると見込んだので、CHドゥクレに徹底してマンマークを行わせたのではないだろうか。

 

シティがこじ開けた道

ではどのようにしてシティは道をこじ開け、ゴールを奪ったのだろうか。

まずシティが見出したのが、ジェズスへの縦パスだ。

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このように、ジェズスがバックラインからの縦パスを引き出すことで前進を行う。この状況を作り出すために、必要なのがIHの動きだ。ボールサイドのIHは外に流れてCHを引き連れて中央のスペースを作り出す。逆IHは前に出ることでここでも中央を開ける。

さらに、極め付けはSBカンセロが最前線まで飛び出していく動きだ。これを行うことで、2つのメリットが生まれる。1つ目のメリットがリシャルリソンのタスク過少化だ。これで、リシャルリソンの立ち位置を曖昧にさせる、またはプレスを呼び込むことで段差を作り出して、縦パスのコースを創出する。

2つ目のメリットがカンセロが背後に抜ける動きを見せることで、エバートン最終ラインを止めることができるというメリットだ。これで、ジェズスがフリーな状態でボールを受けることが可能になっていた。

そしてこれで前進を行って、バイタルエリアを使いながら、攻略していった。

 

簡単にバイタルを使えた理由

では簡単にシティがバイタルを使えた理由を解説していこう。

この理由は明白で、「CHがIHのマーク」と「ハーフスペースを埋める」というタスクが関係している。

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このように、ボールサイドのCHがハーフスペースを埋めること、逆IHをマンマークすることで、バイタルへ進出するDMFがフリーでパスを受けることが可能になる。

さらにこのような展開も見受けることができた。

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このようにシンプルにCBが持ち運ぶパターンだ。(逆サイドだったらウォーカーが持ち運ぶ)これはロドリをシグルズソン(またはリシャルリソン)が消した場合に行われたことだ。これで、SHに対して数的優位を作り出すことができ、簡単に攻略することができていた。

 

変わらず強いシティ

ジェズスの引き出す動きとそこを開ける動き。多くの連動性があり、誰がどのポジションで出場したとしても「変わらず強い」シティ。リーグ戦の行方を決定付けるであろう連戦。これでリバプール、トッテナムとエバートンを下した。次はアーセナルだ。果たしてここでも完勝を収めることができるのだろうか。皮肉なことにも負けるイメージの少ない今のペップシティ。そして悲願のCLにも手が届くだけの勢いだ。ここにデブライネとアグエロも戻ってくる。4冠の準備は整っている。これからもしっかりと彼らの試合も追い続けたい。

 

 

 

 

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【合理的な前進と攻撃】Premier League 24 チェルシーvs ニューカッスル

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トゥヘルがチェルシーにきてからというもの。クラブの空気感もよくなったように感じ、それに影響していか、試合の内容も格段とよくなった。整理され、タスクが明確になった中、ホームでのニューカッスル戦も勝利し、トップ4に食い込んだ。彼らが見せた内容は、しっかりと空いている場所から攻撃を仕掛けるという、基本中の基本。その攻撃の質が限りなく高い。では今回は、チェルシーがどのように空いてる場所から攻撃を仕掛けたのか。これを解説していこう。

 

スターティングメンバー

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スタジアム:スタンフォード・ブリッジ

結果:2−0

【チェルシー】

20’エイブラハム⇆ジルー

31’ ジルー⚽️

39’ ヴェルナー⚽️

70’ マウント⇆カンテ

78’ オドイ⇆ジェームズ

 

【ニューカッスル】

64’ゲイル⇆ジョエリントン

72’サン=マクシマン⇆フレーザー

79’ウィロック⇆キャロル

 

ニューカッスルの守備について

まずはこの試合のニューカッスルの守備について触れていきたい。彼らはチェルシーを食い止めるために、以下のような守備戦術を採用していた。

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ニューカッスルは基本的にミドルブロック・ミドルプレスを採用。これで守備を行うために、立ち位置としては4-2-4のブロックを形成。機動力のあるアルミロンとウィロックがCHを捕まえ、SHのゲイルとサン=マクシマンが外のCBを牽制できる立ち位置を取る。これで、満足にバックラインでパスをまわさせない意図が見えた。さらに、セカンドラインでは、STへの縦パスを消す立ち位置をCHが取り、CFには2CB、SBはSTを意識するポジショニングを取っていた。これで徹底的に中央を消すことで、ゴールから遠ざけて守備を行おうという意図が見えた。

 

これに対してチェルシーは次のように攻撃を仕掛けていた。

 

合理的な前進と攻撃

チェルシーはすぐに空いている場所を見つけ、攻撃を仕掛けていく。ではどのように攻撃を仕掛けていたのだろうか。

パターン①

まず1つ目のパターンはシンプルに幅を作るWBを使う前進だ。

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これができるのも、STでCHとSBをピン止めしているから。さらに、ニューカッスルの守備戦術に関係して、CBクリステンセンが存分に時間を持つことができ、簡単に持ち出すことができたから、可能になった攻撃だ。

 

パターン②

パターン②はジルーとマウントが入れ替わる方法だ。

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このパターンもクリステンセンが持ち運ぶことが起点になる。この持ち運んでいる時間に、マウントとジルーが入れ替わることでマーカーを一瞬混乱に陥れることが可能になる。これでジルーがボールを引き出し、次のように攻撃を仕掛けていく。

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このように、マウントとのフリック+ワンツーでジルーがフリーになることが散見された。この時にフリックの時点でCBを釣り出せるので、その背後のスペースにヴェルナーが抜け出す。ヴェルナーが抜け出して引っ張ることで、大外のアロンソがどフリーになることが多くなっていた。

このようにして、チャンスを作り出していた。

 

 

パターン③

3つ目はヴェルナーとアロンソの入れ替わりだ。この試合では、この攻撃を多く見受けることができた。

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例外なくここでも、クリステンセンが持ち運ぶことから始まる。この持ち運びの時間でアロンソとヴェルナーが入れ替わる。こうすることで、ボールの気になるCHは、背後で消したはずSTへのパスコースが消せなくなる。

これで大外に広がったヴェルナーへパスを届けることで、攻撃を仕掛けていく。

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このように、ヴェルナーが縦に仕掛けることでSBを釣り出す。この時にアロンソが中にいることで(インナーラップをすること)2vs1の状況を作り出せる。現にこの形で先制点を奪っているし、嬉しいヴェルナーのゴールに繋がるCKも逆サイドで似たような形からCKを奪っている。

 

補足:使うのはCHの脇

後半からプレスに出てきたニューカッスル。プレスの修正としてクリステンセンへのプレスとWBを消しながらの外切りプレスを行うようになっていた。

これに対して、チェルシーが行ったプレス回避。それは『STがCHの脇のスペースを使う』ことでプレスを回避していく。

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このように、クリステンセンにもプレスを行うようになったニューカッスル。だから、セカンドラインの捕まえ方(CHの捕まえ方)が変わり、ヘイデンを中央に残してウィロックとシェルヴィでCHを捕まえるようになっていた。これで、逆STへのパスでチェルシーはプレスを回避することが多くなっていた。

もちろん、この時にコバチッチとジョルジーニョにボールを入れながら、相手を動かして、パスコースを作り出すことで、このパスを打ち込むことができていた。これで一気にスピードを上げて攻撃を仕掛けるようになっていた。

だから後半はオープンな展開が散見されたのではないだろうか。

 

「アロンソで広げる」から考える

「アロンソで広げる」と表現したが、大枠は「幅を作り出す選手で広げる」ことに注目して考えてみたい。

トゥヘル・チェルシーになって大きく変わったことに1つ。それが「必ず幅を作る選手を配置する」ことだ。

これを行うことで、ろくに左サイドではヴェルナーが水を得て、気持ちよく自由に泳いでいるし、右サイドではオドイが覚醒し、1つ上のステージへ突入した。

ではなぜ、幅を作ると良いのだろうか。今回はヴェルナーとアロンソに焦点を当てて考えてみたい。

題材として挙げたいのが25:00~くらいからの攻撃。この攻撃は先に説明したパターン②の方法でヴェルナーのフィニッシュまで持っていった。これが決まっていれば、選手監督共々、かなり気持ちよかっただろう。

ではこの攻撃から考えていきたい。

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この広げることに必要なこと。それは中に引っ張ることだ。トゥヘルになってからというもの、中に引っ張ることと外に広げることがきちんとセットで行われるようになっている。だからこそ、上の図で示したようにバックスの視野を変え、動かすことができる。

そして幅を作り出すアロンソがどフリーになれることが多くなっているのだ。

(逆はハーフスペースをマウントやアスピリクエタが抜け出し、引っ張ることでオドイが前向きでボールを受けられることができている)

 

ここでフリーになると、もちろん相手も対応を行う。

この対応の瞬間こそ、ヴェルナーがフリーになり、シュートチャンスを得られる仕組みになっていると個人的には考えている。(もっというと、これは全ての選手に当てはまると思う)

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このように、ボールが大外に出たことで、バックス特にボールサイドのSBとCBの目線の振り幅は大きくなる。(上の図の波線のyような動きになる)これで、ヴェルナーはバックスの視界の外に動き直すことで、隠れることができる。

ここからアロンソのクロスを待つことで、一瞬フリーになれてシュートまで持っていくことができるということだ。

 

トゥヘルはヴェルナーを生かすために、「ヴェルナーに抜け出させること」と「アロンソに幅を作らせること」をセットで組み込んだ。

もちろん、ヴェルナーが抜け出した際に、そこへボールを届けることも可能だし、使わず、外に広げることも可能だ。

外に広げた場合は、ヴェルナーが動き直して次の攻撃に絡むことができる。これで、ヴェルナーは生き生きとプレーできるようになっているのではないだろうか。(もちろん、他の要因もあるが…)

そして、広げることの意味は「ギャップを作り出す」ことも含め、重要なのは「目線を変えて、ターゲットを視野外に移す」ことなのだと考えることもできる。

それに気づくことにできる、チェルシーの攻撃だった。

 

 

 

 

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