低調。消化不良。このような表現がこの試合に関しては合っているのではないだろうか。ここまでトゥヘルが行った6試合。その内訳は5勝1分と結果と内容の伴った良い試合だった。だが、サウサンプトン戦。動きが少なく、精彩を欠いた。
ではなぜ、この試合ではライン間をとることができなかったのか。これについて考えていきたい。
スターティングメンバー
結果:1−1
スタジアム:セント・メリーズ・スタジアム
【チェルシー】
45’ エイブラハム⇆オドイ
54’ マウント(PK)
76’ オドイ⇆ジエク
コバチッチ⇆ジョルジーニョ
【サウサンプトン 】
33’ 南野⚽️
76’ 南野⇆テラ
85’ イングス⇆アダムス
90+4’ レドモンド⇆ヌルンドゥル
使えないライン間
前半は3-4-2-1で挑んだチェルシー。過去6試合は効果的にライン間を使うことができていたのだが、この試合ではそこを使うことができなかった。ではなぜライン間を使うことができなかったのだろうか。
やはりまず関係するのがセインツの守備だ。それについて触れていこう。
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セインツの守備について
ではセインツはどのような狙いと個々のタスクがあったのだろうか。
まずチームとしてのスタンス。それは確実に「ライン間を消す」ことと「中央を消す」ことがあった。だから、この試合は「ハイプレス」を行わずにミドルブロックを形成して、中央3レーンに人を集めた。これにより、高い位置を取るWBがフリーになるが、ここはある程度捨てることを選択。ここには、SHのプレスバックと、SBのスライドでなんとかしようと言う力技に出ていたように映った。
では、このスタンスを取るために個々のタスクはどのようなものになっていたのだろうか。
個々のタスクは上記のようになっていた。南野はWBジェームズを切りながら、アスピリクエタの牽制のタスクを主に担い、2トップでCHを消しながらCBへの牽制、2CHはCHをマークする。特筆すべき点は、SBはWBを捨てて必ずSTのマンマークを行うことだ。これで徹底してライン間と中央を満足に使わせないように設定した。
だからチェルシーは特に前半、ライン間を使うことができなかった。
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引っ張れないエイブラハム
そしてもう1つ。ライン間を使えなかった大きな理由が「エイブラハムが引っ張れなかった」ことが挙げられる。
もちろん、引っ張るだけの背後のスペースがなかったことも関係しているが、それを差し引いても、ボールと関わることが少なかった。仮にジルーならば、起点になれるので、段差を作り出すことができ、「周りの選手」が背後に引っ張ることが可能になる。この起点を作るという点においても、お世辞にもエイブラハムは貢献できたとは言えなかった。
だから、DFラインを下げれず、DF-MF間にスペースを生み出すことができなかったのではないだろうか。
その結果が、前半での交代だろう。
良い選手だけに、勿体ないと感じるし、裏を返せば「スペースがない中」でのプレーを改善すれば、確実に良いストライカーになると思う。世界最高峰のチームプレーヤーが近くにいるのだから、存分に彼から「そのプレー」を学び、盗んで欲しい。そしてもう1つ上のプレーヤーに成長してもらいたい。
これもチェルシーが前半にライン間を取れなかった理由の1つだろう。
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潰された供給元
そしてもう1つがライン間に差し込む「供給元」を潰されたことが挙げられる。
これはサウサンプトンの守備のスタンス、中央を消すことに大きく起因している。この供給元を潰すために、アスピリクエタと2CH、特にコバチッチを潰しにかかった。
これで、チェルシーはサウサンプトンのプレッシングに対しては3CBと2CHで数的優位を保ち、ボールを回せるが、効果的な縦パスを供給することができずにいた。
だからこそ、次に紹介する『チャンスを作れるのはWB抜け出し』に繋がったのだと思う。
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チャンスを作れたのはWBの抜け出し
前半に唯一チャンスを作れたのがWBの抜け出しだ。元々空いているWBが抜け出すことで、サイドから崩していく場面が何度か見受けることができた。
このように、サウサンプトンの守備のタスクを裏目に取って、STが下がってSBを釣り出すことで、スペースを作り、そのスペースをWBが使うことでサイドを攻略していた。これでクロスからの攻撃を仕掛けていたが、その精度が少し低く、決定機を作り出すまでは行かなかった。
STとWBの入れ替わりが使えなかった理由
前節のニューカッスル戦で見せたSTとWBの入れ替わり。とくにヴェルナーとアロンソの入れ替わり。(この攻撃が気になる方は以下の記事をご覧になってもらえたい)
ではなぜ、この攻撃が使えなかったのか。それはSBのマンマークの守備によるものだ。これにより、入れ替わりの際の迷いによる「遅れ」と「ズレ」を生み出すことができなかったからだ。だから、ヴェルナーの単独突破が目立ち、ニューカッスル戦のようなSB vs ST+WBの形を作りせなかったのではないだろうか。
後半の修正について
では後半の修正について触れていきたい。やはりハーフタイムで交代を命じられたのはエイブラハム。彼に変わって入ったのがオドイだ。
この交代によって、3-4-1-2の形に変更。エイブラハムの交代で3-4-1-2になったのはバーンリー戦でも行った修正だ。バーンリー戦でもライン間を効果的に使えていなかったので、このようになった。そしてこの試合も同様だ。
そして、この交代によってオドイとヴェルナーが背後に抜け出すのでライン間でマウントがボールを引き出すことが可能になっていた。
さらにもう1つの修正。それがWBの位置だ。
このように、後半からはWBの立ち位置が低くなっていた。この意図として、供給源を作り出すことがあっただろう。中央を使えないのならば、外から入っていくことを狙った。だから、WBが低い位置を取って起点になると、CFオドイがサイドに流れて場所を開け、ヴェルナーが背後に引っ張る。このようにすることでマウントがライン間でボールを受けれるようになっていた。
これで、チェルシーは攻撃を仕掛けていったが最後まで逆転ゴールを奪うことができなかった。
カンテとジョルジーニョ
この試合ではカンテとコバチッチのコンビ。これまではコバチッチとジョルジーニョのコンビが多かった。個人的に思ったのは、「やはり2人とも良い選手だ」ということ。カンテのボール回収率はこの試合でも凄いものだったし、カウンタープレスを仕掛ける際はやはりジョルジーニョよりも優に勝る。だが、やはりジョルジーニョが入ってくると、動きとシンプルな叩き、コーチングでボールを動かすことができる。カンテよりもこの部分で優に勝る。現に、彼が入ってきてから、特にズマとリュディガーの持ち出しが多くなった。トゥヘル監督はコバチッチ、カンテ、ジョルジーニョと、優秀なCHを抱えている。試合によって使い分けてくると思うが、きっと悩ましいことだろう。
この試合は、消化不良とも言える内容だった。だからこそ、すぐに切り替えてミッドウィークのアトレティコ戦に備えてもらいたい。
激戦必至のこの一戦が待ち遠しいばかりだ。
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