コッパ・イタリア 第1戦を振り返ろう! ミラン vs ユベントス

 

 

はじめに

もう一つのコッパイタリア。先日はインテルvsナポリがサン・シーロで行われ、そして続けて同じサン・シーロでミランvsユベントスが行われた。共にリーグ戦でショッキングな敗戦を喫し、勝利を手にしたい一戦だ。個人技頼みで調子が良いとお世辞にも言えないユベントス。イブラヒモビッチというメガスターが加わって、チームに結束力が増したミラン。この対称的なチーム事情がしっかりとしあいの内容にも反映されていた。では今回はこの試合のトピックスを噛み砕いていこう。

スターティングメンバー

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これがお互いのスターティングメンバー。ホームのミランは右SB以外はミラノダービーと同じメンバー。ほぼベストメンバーと言って良いだろう。一方のユベントス。サッリ監督はまだ前線の配置とメンバーが定まらず、この試合は4-3-3を使用。クアドラードがWGに入り、ディバラがCFに入る配置を選択。結論を述べてしまえば、この試合もユベントスは『ちぐはぐ』が拭いきれなかった。では早速、この試合について解説していこう。

ミランの守備について

ミランはインテル戦と同様、このビッグゲームも守備から試合に入った。ではどのように守備を行なっていたのか。

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このようにインテル戦と似たように、『人を捕まえる』守備を実行。対ユベントスに倣って、ミランもDMFのピャニッチをSTのチャノハノールがマンマーク。これで中央からのビルドアップをさせなかった。さらにIHに対してはCHがマークを行うことで、SBにパスを選択させ、外回りのパスにさせる。そしてSBにパスが出るとSHがプレスを行い、このエリアでボールを奪う。

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SBにパスが出ると、SHがプレスを行う。これでSBはパスを出さなければならない状況に陥ることになる。そしてミランは白丸のエリアにボールを追い込み、ここでボールを奪う。しっかりと人を捕まえているので、タイミングさえ合えばパスカット、タイミングが合わない場合は前進させない守備をする事ができる。ここで時間を稼ぐことで、SHとSTで数的優位を作りだしボールを回収する算段だ。このときにバックラインはスライドして3バック化しすることでプレスを躱されたときの対応ができる。さらに逆のSHが白丸のエリア辺りにポジションをとっていることでボールを奪った時のショートカウンター要員になっている。この守備で何度もユベントスのビルドアップを引っ掛けてゴールに迫った。

自陣での守備

先程、解説したのはミランの敵陣での守備。では自陣での守備はどのように行なっていたのか。

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上の図のようにバックラインは「ペナ幅の距離」を保ちながらスライドを行う。こうする事で中央を極端に狭くし、「差し込む」縦パスを入れさせないように対処。さらにその前のセカンドライイン、CH2枚でバイタルエリアを埋める。そして最も重要な役割を担っていたのがSHだ。SHは主にIHを捕まえる。これでSB、ないしはCBは幅をとっているWG(もしくはSB)にパスを出す。ここにボールが出た瞬間、SBとSHで一気にプレスをかけることで奪い切る。『SHがIHを消しながらプレス』をかけることが上手くいっていたので、サイドを奪いどころに設定できた。これでミランはユベントスに印象的な攻撃を仕掛けさせず、完全に封じ込むことに成功した。

これらの守備に対するユベントスの対応

もちろん、ユベントスはミランの守備に対して何もしなかったわけではない。ユベントスも対処し、徐々にボールを持てるようになっていった。ではどのように対応したのか。

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このようにIH(特にラムジー)がCBからボールを引き出すために降りる事でCBからCFへの縦パスのコースを作り出す。ミランの守備戦術をしっかりと理解しているからこそできた対応だろう。これでCF(ディバラ)がライン間に降りてボールをうける事でユベントスはある程度前進ができるようになる。そうすると迷うのがミランCB。出ていけば中央を開け、WGにスペースを使われ、出て行かなければCFにフリーでボールを持たれる。これこそがユベントスの狙い、もっと言うとラムジーの狙いだったのではないろうか。

気の利くIHのラムジー

こうして時間が作れるようになり、ある程度、攻撃を仕掛けれるようになったユベントス。敵陣、アタッキングサードではIHのラムジーが絡むとチャンスが生まれていた。ユベントスで「唯一」と言っていい「気の利く」選手がラムジーだ。ではどのような所が気の利くプレーなのか。

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気の利くプレーとは、味方を観てプレーができることだ。そしてこれは1つの例だ。CFのディバラがボールを受け、SBにパスを出す。ここで多かったのがWGへのパス。(ミランの守備戦術も関係)WGはSBのプレスを嫌い、若干下がってボールを受ける。ここでIHがハーフスペースに飛び出す事でSBはIHが気になり、WGが時間を持つことができる。

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このようにスペースにフリーランするので、WGで時間ができ、そして四角のエリアにスペースができ、そこにCFが入る事ができる。現ユベントスには「フリーラン」できる選手、「気の利く」選手がラムジーしかおらず、他の選手はほとんど足元でボールをうけるので、相手を動かせず、個人技頼みの攻撃になってしまっている。

ミランの攻撃

では次は少しミランの攻撃について触れておきたい。

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これがミランの攻撃時のポジション取り。ユベントスは4-4-2で守るのだが、2トップに入るディバラとロナウドには守備のタスクが殆どなかった。だからCHが白のエリア、ユベントスのブロックの前で自由にボールを回す事ができた。そしてSHがハーフスペースに入り、SBが幅を作る。これでクロスから攻撃を仕掛ける事で後半のゴールに繋がる事になる。

後半に入ってのミランの修正

試合をコントロールして上々の前半を過ごしたミラン。唯一の懸念はボールを受けに降りるCFの存在。ピオリ監督はしっかりとここを修正していた。ではどのような修正を行なっていたのか。

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これがミランの修正だ。まずCFに対してCBがマンマークを行う。これでCFを自由にさせない事を選択。こうする事で怖いのはCBが剥がされた時にできる中央のスペース。もしもCBが剥がされた時のためにCHのベナセルが自分のマークのIHを捨ててカバーポジションを取る。そしてIHに対してはSHがプレスバックする事で自由にさせなかった。これでミランは再びボールを回収できるようになり、カウンターを仕掛け続け、先制点を奪う事に成功した。

 

10 vs 11 になってから

ミランに退場者が出てからミランは4-4-1に変更。イブラがDMFのピャニッチをマンマークし、徹底して守る事を選択。これでしっかりと守れていたのだが、最後の最後にロナウドのバイシクルシュートが不運にも手に当たり、PKで同点に追いつかれてしまった。一方のユベントス。イグアインの投入で4-1-2-1-2、いわゆる4-4-2のダイヤモンドの形にして攻撃に圧を加えるが、さほど効果はなかった。最後もロナウドの個人技で得たPKで苦し紛れの同点ゴール。この先が思いやられる展開だった。

まとめ

個人技でどうにかしようとするユベントス。チームでまとまり、タスクを全うするミラン。対極にある戦い方に呼応して試合内容も白黒はっきりした。確実にゲームをコントロールしていたのはミランであり、勝利に近付いたのもミランだった。だからこそ、勝ち切りたかったのが、ピオリ監督の本音だろう。だがミラノダービーの逆転負けからの反応はとても良いものだった。これから先、期待がもてる、そして強いミランが帰ってくる予感のする、ミラノダービー、ユベントスとの2戦だった。だが、この1stレグで失ったものは多く、次節はイブラ、テオ、レビッチ、カスティジェホを失う事に。はたしてピオリ監督はどのような戦術を持ってくるのか。楽しみなところではある。
一方のユベントス。ヴェローナ戦と同様、個人技頼みの連動性のない攻撃。表現したいスタイルが見えず、苦しんでいる印象だ。スーパースターの揃うユベントスだけに勝てないだけで騒がれる。このプレッシャーを受け止めきれず、サッリ監督は解任されてしまうのか。ナポリで見せたサッリボールの片鱗も見えないユベントス。はたしてセリエAで強さを取り戻せるのか。そして来週から再会するCLを勝つ抜くことができるのか。とても楽しみだ。

 

終わりに

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DFBポカール バイエルンミュンヘン×フランクフルト 〜数多の攻め手を持つ絶対王者〜

 

 

はじめに

2年前のDFBポカール決勝。バイエルンミュンヘンはフランクフルトに敗れ、カップタイトルを逃している。そして今回のこの試合。2年前と同様の対戦カードとなり、ドイツの絶対王者はリベンジに燃えていたことだろう。結果から述べると、2-1でバイエルンが勝利を収め、レヴァークーゼンの待つ決勝へと駒を進めた。リーグ戦再開後、すぐに対戦し、また同じチームと戦う難しさはあったかもしれないが、それでも絶対王者は勝利を収めて見せた。フランクフルトが準備して来たプランも物ともしなかった。では今回はフランクフルトの準備して来たプランとバイエルンがいかにしてそれに対応したのか。これらを中心にマッチレビューを行なっていこう。

 

スターティングメンバー

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フランクフルトのゲームプラン

フランクフルトは前回のリーグ戦とは違い、3バックシステムの3-5-1-1の形。この狙いとして、『中央を固める』というものがあった。特に「前半は絶対に失点しない」という意識を感じることができた。ではどのようにして中央を固め、まずは前半を乗り切ろうとしていたのか。

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バイエルンの中盤を潰す為にフランクフルトは中盤を逆三角形の形で並べた。こうした事でCHのゴレツカ、キミッヒに対してコールとローデが、OMFのミュラーに対してはイルザンカーがマークを分かりやすく着く事ができる。「タスクを分かりやすくする」というヒュッダー監督の意図を感じる事ができた。もっというと、バイエルンの攻撃の軸となっているOMFのミュラーにはDMFのイルザンカーがマンマークを行う事でミュラーをゲームから追い出そうと試みていた。

さらにバイエルンが怖さを発揮するのはCBからのパスもある。だからこの出所を消す、または十分にプレーさせない為に2トップが牽制を行う事で中央を経由させず、ボールを外回りにさせる事に成功した。

 

だが「外回り」にさせただけになってしまい、「ボールを奪う」事まではいかなかった。さらにボールを奪えたとしても、全体が後ろに重くなっていたので、カウンターの人数も足りず、全体を押し上げる前にボールを失ってしまっていた。

だから特に前半は防戦一方となり、苦しい展開に陥ってしまっていた。

ではなぜ、フランクフルトは「ボールを奪い切る」事ができなかったのか。

それはバイエルンの攻め方に大きく関係していた。

 

バイエルンの攻め方

バイエルンはフランクフルトのゲームプランを壊す為に攻撃を仕掛け、前半の内に難なく先制点を奪う事に成功した。どこからでも攻める事ができるバイエルン。ではこの試合はどのようにボールを動かし、そして相手を動かす事でゴールまで迫っていたのか。

 

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まずは先程も紹介したフランクフルトの守備戦術。中央を閉められているので、空いてくるスペースは「サイド」になる。それがここだ。

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リーグのレヴァークーゼン戦と同様に、SBで時間を作る事ができる。バイエルンと戦うチームの多くは中央を消すので、この手のやり方にバイエルンは慣れているのだろう。そしてSBで時間とスペースを持つ事ができるもう一つの大きな理由が「WBとの距離」だ。ここの距離が長かった為、SBで時間とスペースを持つ事ができた。そしてWBが出てくると、このように攻撃を仕掛ける。

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WBがプレスに出てくるので、シンプルにその背後をSHが内⇨外の抜け出しで使う事でCBを釣り出し、クロスを入れる。このようにCBを1枚釣り出してクロスを入れる事で中の枚数を減らし、数的優位、または同数に立つ事ができる。だからこの試合のバイエルンはサイドから

クロスを入れる攻撃が多い印象になったのではないだろうか。

 

そしてこれを繰り返す事でフランクフルトの守備を変更させる事に成功する。

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それがこのような変更だ。フランクフルトは2CBへのプレスを諦め、SBへプレスを行えるように若干の守備修正を行った。それによりバックラインで数的優位、中盤で数的不利となったが、これでバイエルンは中央を割って入れるようになる。

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バックラインで数的優位に立った為、特にCBのアラバが持ち上がる場面が増えていった。

この持ち上がりにより、修正によってSBにプレスを行うはずだったフランクフルトCHはステイするのか、プレスをするのかの判断が難しくなる。

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これで、CHがプレスに来ればその背後をSHのペリシッチ、OMFのミュラーが使うことができる。

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ステイするのであれば、SBとCBで数的優位を作り出して組み立てる、または対角線のミドルパスで局面を一気に変える事が可能になった。そしてこの試合のCHはCBにプレスを行う事が多かったので、CBアラバからの縦パス、またはSB経由の崩しでフランクフルトをどんどん押し込んでいき、ゴールに向かい続けた。

 

そして先制点を奪い、リードしたまま前半を折り返した。追加点を決め切る事はできなかったが、それでも「いつでもゴールを決めれるぞ」という恐怖心を選手監督、スタッフ、そして画面越しで見ているフランクフルトサポーターに植え付けるには十分な内容だった。

 

牙を剥いたフランクフルト

前半、バイエルンに圧倒されたフランクフルト。このままズルズル防戦一方で敗戦するかに思われたが、後半に入り、絶対王者に牙を剥いた。ハーフタイムにヒュッター監督は前に出る策を授けていた。そしてこの勇気を持った策でバイエルンを苦しめることに成功する。

ではどんな策をヒュッター監督は授けたのか。

 

  • WBの位置

まずは守備の変更を施した。中央を消し、後ろを重くし(させられた)、失点しないことに注力した前半に対し、後半は「奪いに行く」守備を敢行。これを遂行する為にWBの位置を上げるように指示していた。これにより何が良くなったのか。

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このように守備のやり方を変更した。まずは必ずCFがCBにプレスをかける。この時に逆のCBを消しながらプレスを行う事でもう1枚のCFがCHを1枚牽制できるポジションを取れるようになる。そして前半はガラ空きだったSBに対してはWBが必ずマークを行う。そしてボールサイドのCHがCHを捕まえ、DMFは引き続きOMFを、残ったCHはDMFのカバーと近くのCHにボールが出ると奪えるポジションをとる。

さらに逆のWBがバックラインに入る事で4バック化し、CBのアブラハムがSHのペリシッチを、中央CBのヒューテンエッガーがCFのレヴァンドフスキをマンマークする事でボールサイドを圧縮しつつ、前半よりも高い位置でボールを奪えるようになっていた。

さらにWBが前に出たことでビルドアップの方法も必然的に変わっていった。

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このように前半は赤丸の位置にWBがいることが多かったが、後半になりWBは高い位置にポジションを移す。これでSBがWBを見る形になるので、白丸のエリアに大きなスペースができる。これは前半にはなかった縦パスのコースだ。これができた理由が先程も触れたSBがWBを見なければいけないようになったから。これで中央の四角のエリアで数的優位を作り出し、CFが流れることでCH(ここではローデ)が縦パスを受けれるようになる。
またDMFに対してCH(キミッヒ)、CH(ローデ)に対してCH(ゴレツカ)がスライドして対応を行うようであれば、一気に逆サイドへ展開をする。本来ならばこの布陣の組み合わせだと、対角線のロングパスで優位に立てるはずだったのだが、前半はそれができなかった。
その理由は後半のようにWBを高い位置に移さず、相手を動かす事ができなかったからだろう。

 

そしてこの守備とビルドアップの恩恵により、WBが高い位置に押し出されるようになる。これでボールを奪った時の攻撃の人数を揃えることができる。前半はほとんどCFのガチノビッチとA・シウバの2人で攻撃を完結させようとしていたので、上手くいかなかったが、SBの対応を行い、強制的に前にWBが出るので、2CF、WB、ボールサイドのCHが攻撃に参加することができるようになった。これでフランクフルトは圧倒的に前半よりもバイエルンのゴール前に出ていけるようになった。

 

鎌田の投入

この守備で流れを引き寄せつつあったフランクフルト。そしてこの流れを確かなものにする為のラストピースとして投入されたのが鎌田だ。彼が入った事により、攻守のリンクマンが存在するようになり、よりスムーズにボールを前進させる事ができた。ではなぜ、鎌田が入った事でこれができるようになったのか。

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まず触れるべきはバイエルンの布陣の変更だ。60分にペリシッチに変えてリュカ、コマンに変えてチアゴを投入し、4-1-4-1に変更する。これの意図として、上の図にも示したように、数的不利に陥っていた中盤を数的同数にして捕まえるようにする為だろう。だがこの変更により、能力を遺憾なく発揮できたのが65分に投入された鎌田だ。

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このように縦関係の2トップになり、STの位置に入った鎌田。彼はライン間のスペースを見つける能力がかなり高く、そこでボールを受ける事を得意としている。だからこそ「曖昧」なポジションをとる事で、CBのボアテングとDMFのチアゴを迷わせる事ができた。

これで一瞬時間を持つ事ができる鎌田。これでWBを最大限に活かす事ができる。

SBがプレスに来ればそのまま縦にスルーパスを出し、CBがくるのならば、WBまたはCFが斜めに抜けだす。このようにして球離れが良くパスを散らし、前進していくので、フランクフルトにテンポが生まれるようになる。

実際に同点弾は鎌田の組み立て、崩しからシュート、そのこぼれをダコスタが押し込んで決まっている。

 

再びリードを奪えたバイエルン

流れは完全にフランクフルト。だがそれでも一瞬の隙を的確に突くだけの能力を有する選手が揃っている。だからこそ、押し込まれた状態でも勝ち越しゴールを奪う事に成功した。

その弱点がCBの横のスペースだ。WBが前に出た事によって生まれたこのスペース。基本的に5枚でバックラインを形成する。だが意識的に前にでるようになっていたWBはどうしても帰陣が若干遅れてしまう。そしてバイエルンはそこを突く事で決勝点を奪っている。

 

そしてハビ・マルティネスを投入し、試合を締めくくり決勝に駒を進めた。

 

まとめ

フランクフルトは前半の戦い方が悔やまれる結果となった。後半の内容は明らかにフランクフルトの試合だった。それでも勝ってしまう絶対王者のバイエルン。その強さは確実に選手の適応能力にある。しっかりと人を動かし、できるスペースを見つける事ができる。だからこそ、前半を圧倒的に支配でき、後半は流れを持って行かれても一瞬の隙を突く事ができる。

まさに最高の状態なのではないだろうか。リーグはほとんどバイエルンの優勝で決定だろう。あとはDFBポカールと再開すればCLだ。ハインケス時代以来の3冠でこの怒涛のシーズンを締めくくる事ができるのか。最後までこの王者にも注目していきたい。

 

終わりに

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開幕戦を振り返ろう! Jリーグ セレッソ大阪 vs 大分トリニータ ~中がだめなら横から差し込め~

 

はじめに

昨季の「堅い」サッカーを継続し、的確な補強と共に、今季は明確にリーグ優勝を狙うセレッソ大阪。そのために、攻撃時のさらなる連携とポジショナルプレーに磨きをかけた事だろう。そして一方の大分トリニータ。昨季はサプライズを見せて、少なからずJ1に驚きを与えた。ポゼッションサッカーを志向し、そのパス回しは緻密に練られ、オートマッチックにポジションを変えながらボールを動かす。この試合で昨季サプライズを見せたチームはJ屈指の堅守を誇るセレッソを相手に堂々の戦いを披露する。この方法が興味深いものだったので、今回は大分トリニータの攻撃と守備の戦術について紐解いていこう。

スターティングメンバーとスタッツ

スターティングメンバー

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チーム別スタッツ(Goal.com参照)
セレッソ大阪vs大分トリニータ
1-0
8‘  B・メンデス(C大阪)

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ではこれらを念頭に置いてもらった上で、この試合を紐解いていこう。

大分トリニータのプレッシング

堅守が注目されるセレッソだが、ボールを保持する事にも長けている。そこを消すためにトリニータはハイプレスを敢行。これでセレッソのボールを奪い、守備陣形が整っていない状態でショートカウンターを打ち、堅守を破るという狙いが見えた。ではどのようにハイプレスを仕掛けていたのか。

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セレッソ大阪と戦う時に気をつけなければならないのが、幅を作るSBと中に入って自由に動くSH。たった2つなのだが、ここを捉え切ることが難しいので、セレッソ大阪は昨シーズン、堅守とともに、躍進を遂げた。そしてこの試合、しっかりとそこを消しにかかった大分トリニータ。ここを消すために、まずは2CHに対してSTがそれぞれ捕まえる。さらにCBからCFへのボールはCHが完全に「立ち位置」でシャットアウト。ここでCHはもう1つ、消さなければならないパスコースがSHへのボール。ここはボールサイドのCHが気にする事で中央のパスを完全に消すことができる。またもしもSHにパスを差し込まれた時のために、CBがマークを行い、リスク管理。そして最後にSBに対してはWBがプレスをかける事で前進させない。そしてこのようにボールを奪っていく。

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このようにして中央を完全に消す事でサイドを圧縮していく。1番の理想形が、ボールホルダーのCBのところでボールを奪う事。これはパスコースを消してプレスをかけているので、CBは判断に遅れが生じ、ミスを誘い、ボールを奪うチャンスが舞い込む。これで1度ビッグチャンスを作り出している。もちろん、ここでボールを奪うことは難しいので、SBのところでボールを奪いにかかる。SBにボールが出ると、WB、ST、CHでプレス。この時に逆のSTとCHがスライドを行う事で中央を開けないようにリスク管理。これでサイドを圧縮してボールを奪うということだ。そしてボールを奪ったら、すぐに展開できるように、逆のWBが1列前にポジションを取ることでカウンターの準備。これでセレッソを苦しめ、捨て玉を蹴らせる事に成功。主にこの守備で試合を進めていった。

・高い位置からプレスをかける場合

もちろん、上記のプレスだけではない。高い位置から、いわゆるハイプレスを仕掛ける場合もある。ではトリニータはどのようにプレスをかけていたのか。

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このように各々が「人を捕まえる」事でハイプレスを完結させる。CBに対してはもちろん、CFが、SBに対してはSTがプレス、空いてしまう中央を埋めるためにCHが前に出る事でそこを埋める。もちろんこの時にSHに対してはWBがマーク(これは逆も同様)。このようにしてもバックラインでは数的優位を保てるため、このように前からプレッシングに出ることができる。これで高い位置でボールを奪う、またはクリアさせる事でボールを回収。だからセレッソ大阪の『クリア数』はトリニータの倍以上あったのだろう。

中央がだめなら横から入る

一方の攻撃。堅守を誇るセレッソ相手に堂々の戦い演じる。何度もゴール前に迫る攻撃を見せ、その迫力は見ていて興奮するものだった。だがさすがのセレッソ。瀬戸際で耐え、大分トリニータの枠内シュートをたったの2本に抑えた。ではトリニータはどのように攻撃を仕掛け続けていたのか。

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まずはビルドアップの局面。この局面でトリニータはこのような陣形に変化する。CHが1枚バックラインに参加する事で4バックに変化。この時にWBがWGの位置まで上がる事で幅を作り出す。これで幅と深さを作り出す事ができる。セレッソの4-4-2のブロックを広げるためにとても有効なポジション変化ではないだろうか。現にこの試合、この変形により、トリニータは優位に試合を進める。

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そして主にこのように前進することで、全体を押し上げる。例に倣い、4-4-2のブロック、CFの脇でボールを受け、運ぶ事でSHを誘き出す。この時にCFも牽制にくるので、赤のエリアでは数的不利に陥ってしまうが、これこそがトリニータの狙い。SHを誘き出したことでセレッソは距離を保ち、きれいにスライド。こうする事でSBが幅を作っているWBをマークすることができる。ここで開くのがSBの背後。ここをSTが「中から外」に抜け出す事で前進する。ここで最悪スローインにすることができれば、「自陣から敵陣」まで前進できる。これで徐々に押し込み、このような攻撃を展開していく。

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このようにSTが時間を作ることでCBのサポートを待ち、全体を押し上げる。ここで時間を作れる理由が2つある。1つは純粋にSTのキープ力がある事。そしてもう1つが「セレッソが速攻を止めるために時間を作る守備」をするから。自陣からミドルパスで中盤をとばして前進を試みるトリニータ。ここで時間を作るためにSBの背後を狙い続けた。こうする事で上の図のようにCBのサポートを待つ事ができ、そしてそこからサイドを変えることが可能になった。この攻撃を仕掛ける事で「目線を変える」、「マークをズラす」事に加えてプラスαでメリットがある。これを実行するためにサイドチェンジも繰り返した。

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このようにサイドを変えられ、前進されないようにするためにSHがバックラインに入る。こうする事でSHの位置を下げ、「守備をさせる」ことでカウンターの脅威を半減させる。さらにサイドを変える時のオプションが1つ増える。それが黄色のエリアにポジションをとるSTへのパス。ここにパスを出すことができるようになったので、中央からの攻撃も何度か見られるようになった。クロスからの攻撃もCF、ST、WBと人数をかける事ができるので、厚みを作ることもできた。このようにして『中央がダメなら横から』攻撃をする事で、クロス攻撃中心にセレッソゴールに迫ることに成功した。

まとめ

このようにして堅守を誇るセレッソを追い込んだのだが、蓋を開ければ勝利を手にしたのはホームチーム。昨シーズンからしっかりと整理されたゾーンディフェンスで守備を固め、前半のうちにセットプレーで奪った先制点を守り抜いた。セレッソにはそうするだけの力があるだけに、うまく守り、うまく攻めたトリニータは悔しい結果だっただろう。それでもこの試合の守備から攻撃、そしてその先まで見据えたトリニータのゲームプランはとても面白く、これからのシーズンに期待が大いに持てるものだった。J1定着のために、着々と力をつける大分トリニータ。ACL出場権争いに絡むかもしれない今シーズン。とても白熱したリーグ戦となりそうだ。

 

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開幕戦を振りかえろう!Jリーグ 横浜FM vs ガンバ大阪

 

はじめに

Jリーグに旋風を巻き起こした、昨季のマリノス。今季も超流動的なサッカーを披露し、リーグ連覇を目論む。そんなマリノスはホームでの開幕戦。迎え入れるのはタレントを従えているガンバ大阪。宇佐美、井手口、アデミウソン、倉田などなど、強烈な『個』を持っているチームだ。そんなチーム相手を開幕戦で叩き、幸先の良いスタートを切りたかったマリノスだが、結果から述べるとまさかの敗戦。ガンバの用意した「対マリノス」プレッシングに屈する形となった。では今回はいかにしてガンバがマリノスを打ち破ったのか。そしてマリノスはどのように修正を施し、一矢報いたのか。これを解説していこう。

スターティングメンバー

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マリノスは昨季と同様に4-2-3-1を使用。CBの畠中が怪我で代わりに伊藤が先発、さらに新加入のオナイウも先発に名を連ねた。一方のガンバ大阪。昨季とは違い、この試合は4-1-4-1の布陣。これこそがガンバが勝利を掴むために準備してきた戦術を実行するフォーメーションだった。では早速、解説に入っていこう。

ガンバ大阪:「対マリノス」プレッシングの仕組み

このプレッシングにより、ガンバはJリーグ王者を苦しめ、そして先制点を奪い、試合を優位に進める事に成功した。この準備してきたプレッシングこそ『可変アンチフットボールプレス』だ。ではどのような狙いを持ってプレッシングをかけていたのか。

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まず明確な狙いとしてあったのはCBへのプレスについて。上の図は15番の伊藤がボールを持った時の場合。この場合は「CBにボールを持たせる」事を選択。だからこのようなプレッシングの形になる。まずCFは近くのCHを牽制。もう1枚のCHはIHが牽制を行う。さらにSBへのパスコースは開けて置き、ここにボールが出るとプレスを開始。その時にIHがカバーポジションを取っているので、SHは迷いなくプレスをかけることができる。(赤線の丸)さらに左WGに対してはSBが、逆のSBに対してはSHがマークを行う。この時にバックラインは3バックのような形でブロックをしく。その理由が左SBにある。左SBはマリノスWG、仲川のマンマークを行い、「アンチフットボール」を実施。大袈裟とも言えるこのマンマークにより、仲川はボールを受けれる機会が圧倒的に減り、ゲームから消すことに成功。そしてSBにパスが出ると一気にプレッシングを開始する。

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このようにSBにボールが入ると、SHとCFでプレスを開始。この時にIHは(こっちのサイドだと21番の矢島)がボールを引き出しに来るCHを牽制。さらにWGへの逃げ道はSBがマークをしてパスカットを狙う事で潰す。また逆のSHは絞っているSBを背後で消しながら上の図の位置に移動する。こうする事で四角にエリアに押し込むことができる。そしてこのプレスが実際に先制点を呼び込んでいる。

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先制点はこのように一気にゴール前まで圧縮する事で生まれたものだった。「マリノスのサッカー」を逆手に取った良い守備だった。
そしてもう1つ。CBの伊藤にボールを持たせる意図がある。それが逆のSB、松原のポジショニングを中に移動させる事。こうする事でどのように嵌めていったのか。

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このように左CBでボールを持たせていたことにより、マリノスは逆のSBが中央に入り、パスコースを作り出し、プレスラインを突破しようと試みる。だがガンバはここをしっかりと締めているので、CBの伊藤はSBにパスを出すか、相棒のチアゴにパスを出すか、高リスクを犯して縦パスを入れるか、ロングボールを蹴るかの選択を迫られる。ここでロングボールはマリノスのプレースタイル的に優先順位が低く、縦パスを入れるのにはリスクが高すぎる。さらにSBへのパスは失点シーンのように一気にボールサイドを圧縮されてしまうので出し難い。だからCBへの横パスを選択する。ガンバはCBのチアゴにボールが出ると上の図でも表したようにCFがプレスをかける。そしてCH、SBにはそれぞれがマーク。そうするとここでマリノスSBを中央に動かしたことが効いてくる。

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このようにSBを中に移動させたことで本来ならば赤のエリアにポジションを取っているはずのSBがいないので、1つ目の「逃げ道」がなくなる。だがここの逃げ道が無い事はマリノスに取ってさほど問題ではない。その理由がWGの仲川へのパスコースを開け、そしてそこで勝負することができるからだ。だがここにはSB藤春が徹底的にマンマークを行なっているので、ここへのパスも潰されてしまう。このようにしてガンバはマリノスの選択肢を潰し、リスクの高いプレーを選択させることでボールを引っ掛ける確率を上げて、ショートカウンターを仕掛けることに成功した。
このように「ハイプレス」をかける場合は3-1-4-1+1のような形で守備を行う。
では構えた時はどのようになるのか。

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ミドルゾーンではこのように4-4-2で構える。この時もハイプレス時と同様にCBの伊藤にはボールをある程度持たせてもOKで、一方のチアゴは持たせたらダメというスタンスは変わらない。こうすることでCFの守備のタスクが、CBチアゴとCHの喜田へのプレスに絞られ、1 vs 2にすることができる。もしもこれが1 vs 3だと消耗も激しく、カウンターに出る体力がなくなってしまうので、このような方法を選択したのだろう。さらに、CBの畠中と違い、「前に運ぶ」事があまり得意ではない選手なのも大いに関係しているだろう。
後ろは4-4のブロックをコンパクトに敷くことでライン間にスペースをなくし、中央に差し込ませないような守備を実行。このときもSBの藤春はWGの仲川をマンマークすることで試合に参加させない。これがミドルゾーンでの守備。
そして最後、ファイナルサードではどのように守っていたのか。

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このように5-4-1のブロックを敷き、徹底的にスペースを消しにかかる。これでゴール前を固めて守備にはいる。この時にマリノスSBのティーラトンが高い位置を取るとSHがWBの位置に入り、WGの遠藤(幅を取った選手)をマークし、中に入った選手(主にハーフスペース)をSBがマークするという戦術。またこのゾーンでも引き続きSBの藤春はWGの仲川を徹底してマーク。このようにして「中央を締める+スペースを消す」事でマリノスにテンポを上げさせずに効率よく守備を行うことに成功した。

ロングボール多用の意図

補足として少しガンバの攻撃について触れておこう。ガンバはハイプレスをかけてくるマリノスに対して、ビルドアップを放棄して「ロングボール」を多用。これには主に2つの意図がある。
まず1つ目にマリノスの「即時奪還」を回避するため。マリノスはボールの動かし方、いわゆるボール保持の局面を注目されがちだが、1番怖いのは、「ネガティヴトランジション」の局面。ここを物理的に回避するためにビルドアップを捨てて、徹底してロングボールを使用。その時に必ず、「SBの背後」にボールを落とすことでCBを釣り出し、優位に立とうとした。
次にハイプレスの回復だ。リバプールも行うハイプレスの回復。(リバプールとは少し意味合いが異なるが)ガンバ大阪もなるべく高い位置でボールを奪いたいと考えてロングボールを使用。先程も少し触れたが、SBの背後に落とす事でCBを釣り出し、プレスをかける事でバックパスを選択させる。このようにして時間を稼ぎ、全体を押し上げてハイプレスの準備を行うという意図があったのではないだろうか。
このように、ロングボールを使用し、中盤を飛ばす事でマリノスの超ハイラインの弱点を突き、追加点も奪っている。

マリノスの修正①

前半はガンバの守備戦術に押さえ込まれたマリノス。だがJリーグ王者がこのまま黙ったままな訳がなかった。「観る」ことができるマリノスは、後半開始からこのようにビルドアップを変更。

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マリノスはこのように修正する事で赤丸の2選手のエラーを狙った。まず、CH(主に扇原)が1列前に出る事でCF宇佐美のマークのタスクを「なくす」事に成功。さらにCHが前に出た事でIHの矢島がマークを実施し、違うタスクを選択させる。またこの時にSBのティーラトンがCBの近くに入る事でCHの役割を補完する。ここで着いてくるのはもちろんSH。こうするとCF宇佐美は立ち位置が曖昧になる。まずはこれを狙った。もしもここでCBの伊藤にプレスをかけてくるとCBのチアゴが完全にフリーでボールを持て、運ぶことができる。またにボールが出た時のためにSBが気持ち外目のポジションをとることでパスコースを創出。
そしてOMFマルコスジュニオールがサイドに流れる事でフリーになれる。ここでフリーになれるのは、SBが中に絞った事、さらにWGがSBをピン留めしているから。ここでDMFの遠藤は中央を開けて着いていくかの判断が非常に難しい状況に陥る。だからこそここでOMFのマルコスジュにオールがフリーでボールを受け、展開することができるようになる。これでガンバのハイプレスを当面は攻略し、徐々にテンポが上がる。

マリノスの修正②

この修正でマリノスは前でボールを持てるようになる。もちろん若干の修正をかけたガンバだが、その修正に追い討ちをかけるようにさらなる修正をかける。

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まずこれがガンバの修正。IHがOMFを捕まえ、DMFが1列前でCHを捕まえる。この修正をみてポステコグルー監督はこのような修正にでた。

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CHの喜田に替えてCFのエリキを投入する事で並びを4-3-3に変更。こうする事でDMFの脇に2枚のIHがポジションをとる事になる。こうする事で「スペースを見つける」事のマルコスジュニオールが自由に動けるようになる。例えば上の図のようにサイドに流れた時、エリキがDMFをピン留めしているので、ガンバIHが流れるOMFを捕まえれなくなり、(DMFが前に出てCHを捕まえれなくなるから)四角のエリアで数的優位をつくれるように。さらにはガンバのラインの背後から顔を出すので、守備者はどうしても対応がワンテンポ遅れてしまう。このようにしてマルコスジュニオールが自由に動き、スペースでボールを引き取る事で押し込んでいく。

マリノスの修正③

そしれ押し込んだマリノスはファイナルサードでもポジショニングの修正を施す。

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このようにWGの遠藤がハーフスペースにポジションをとり、SBが幅を作ることが多くなる。さらにマルコスジュニオールがSHとIHの間にポジションを取ることで、CBが持ち上がれるスペースと時間を確保。これで四角のエリアで数的優位を作り出し、DFを動かしクロスから攻撃、さらには中央へ差し込めるようになり、実際にこれで反撃の1点を返すことに成功した。だが惜しいシーンを何度も作り出したが、同点、逆転まで持っていく事は出来なかった。

まとめ

マリノスを抑えたガンバ大阪。そのために準備してきた「可変アンチフットボールプレス」。これでマリノスの良いところを消し、弱みを出すことに成功。また攻撃面でもマリノスの強みを徹底的に消す作業。実に理に適ったゲームプランだったのではないだろうか。そしてマリノス相手に下がることなく、戦い、勝利を得たのはとても興味深いものだった。一方のマリノス。前半はプレッシングに苦しみ、良さを出せなかったが、それでも後半から修正し、対応していく光景を見て、「今年のマリノスも強い」と痛感させられた。昨季から「観る」ことに長けているマリノス。相手の弱みを短時間で見つけ、的確につく事のできるチームなかなかないのではないだろうか。負けはしてしまったが、レベルの高さを証明した。そしてこの試合、両チームともハイレベルで面白い試合だった。このレベルの戦いを自国リーグで観戦できることに素直に感謝したい。これからのシーズンがさらに楽しみになる一戦だった。

 

終わりに

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ブンデスリーガ レヴァークーゼン×バイエルン・ミュンヘン 〜対応型の王者〜

 

はじめに

先日行われた天王山に勝利したバイエルンミュンヘン。これでリーグテーブル、独走体制に入った。この王者を止めるべく今回立ちはだかるのが、ボス監督の下、アタッキングフットボールを志向するレヴァークーゼン。彼らがここでドイツ王者を叩く事ができればまた優勝争いが面白くなる。だが、ドイツ王者は先制点を決められたにもかかわらず、「普段通り」の戦いぶりを発揮し、逆転勝利を手に入れた。その戦い方はまさに万能と言ってよいものだ。またしても強さが理解できる一戦となった。では今回はこの一戦のマッチレビューをしていこう。

 

スターティングメンバー

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対バイエルンのゲームプラン

レヴァークーゼンはしっかりと「対バイエルン」のゲームプランを立ててこの試合に臨んでいた。その結果が上で紹介したスターティングメンバーになっていた。ではレヴァークーゼンはどのように戦う事でバイエルンから勝ち点を奪おうとしていたのか。

 

攻撃面

まずは攻撃面から。ざっくりまずは説明すると、ホームチームは「サイドチェンジ」で優位に立とうと試みていた。ではその準備を手順を解説していこう。

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まずはビルドアップから。1番の特徴として挙げられるのがCHが縦関係になる事だ。これによりCBが持ち運べるスペースを生む事ができていた。現にこの試合はタプソバがボールを持ち出して局面を変えようと試みているプレーが多く観られた。基本的にこのような配置で前進をしようとしていたが、後に解説するバイエルンの守備により、前進することは難しくなっていた。だが以下のような状況に持ち込むことができると一気にチャンスを作り出せていた。

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レヴァークーゼンが攻撃を仕掛けることができる条件は限られていたが、それでもこのような状況に持ち込むことができればレヴァークーゼンは大きなチャンスを得ることができていた。それがOMFが1列前に出てCBを捕まえに来た時だ。この場合になると、バイエルンCHがホームチームのCHを捕まえる為に前に出てくる。そしてその背後をGK経由のロングパスを使い中盤を飛ばして前進。そうすることで、レヴァークーゼンはボールを収め / 2ndを拾い、広いスペースへサイドチェンジを行って攻撃を完結させることでゴールに迫った。

そしてここで面白いのが、このサイドチェンジのパスを受けるのがWBではなく、STが多かったということ。

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このようにしたことでサイドチェンジした側のバイエルンSBの対応を難しくさせると同時に、WBがハーフスペースを突くことで中のパスコースを作り出していた。これは最近よく観られるもので、ドルトムントなどが「STが幅、WBがハーフスペース」という方法を使っている。これの有効的なところが『ポジションを変えながらSBの背後を突ける』というものだろう。SBの同時に見るものが増えるので、このような攻撃を仕掛ける事が最近多くなっているのではないだろうか。

 

特にレヴァークーゼン左サイドからの攻撃が多くなっていたが、そこからクロスを送っても、SBのデイビスの圧倒的な身体能力により、クロスは封じられてしまっていた。

それでも明確に狙いが分かり、とても面白いアイディアだと感じた。

 

守備面

では守備についてはどのように行っていたのか。これも結論から述べると、『中央を使わせない』と『CB、特にアラバを自由にさせない』という事だ。ではこれを行うため、どのように守備を行っていたのか。

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このようにバックラインに対しては3トップが基本的にプレスを行う。CBがボールを持つと、CFがCHののパスコースを消しながらプレッシャーを行う。その時にバイエルンSBがパスコースを作るために下がり目のポジションを取るのでそこをSTがマークを行う。もちろんのことながら、CHは中央にパスを差し込ませないためにCHを捕まえておく。そしてSBにパスが出ると、STとWBが前に出てボールを奪いに行く事で高い位置で回収、またはスローインを得る事ができる。

このようにしてボールを外回りにさせること、そのために縦パスの上手なアラバに十分なスペースと時間を与えないことでホームチームはバイエルンを抑えていた。

だがこの守備も万能型のバイエルンにより、突破されてしまい、逆転負けを喫する事になってしまった。

 

対応型の王者

ではバイエルンはレヴァークーゼンの攻撃と守備に対してどのように適応していったのか。

この適応能力こそ、バイエルンが強く、そして万能と言われる所以でないだろうか。

では早速、その対応を解説していこう。

 

バイエルンの守備

まずはバイエルンの守備から。バイエルンは試合開始〜15分辺りまでレヴァークーゼンのサイドチェンジに苦しめられた。だがこの期間に修正を加えつつ、対応していったので、バイエルンは前半の内に逆転に成功。ではどのように守備を行っていったのか。

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まず先ほども解説した、バイエルンが守備を破られるパターン。これはOMFのミュラーが前に出ることで後ろも連動して前がかりになり、CHの背後、いわゆるライン間をロングパスで使われるという状況に陥るのでピンチになることが多くなっていた。だからバイエルンはこのように守備の修正を加える。

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このように並び的には4-1-4-1のような形にすることで、ライン間に人を配置しつつ、ファーストプレスライン(前側の4枚)を突破されないように修正をする。この時の注意点として、SHがCBにプレスを行う時は「外切り」をすること。こうすることで、次のような展開に持っていくことができる。

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一見するとボールホルダーのCBは中央への縦パスのコースがあるように映るが、STに対してはCB、CHに対してはOMF、ロングパス / ミドルパスを打とうといてもライン間にはCHがいるので、パスコースがない状態になっている。さらにこの判断に迷っているとCFが詰めてくるので、GKへのバックパスの選択肢も消されることとなる。

そしてバイエルンは赤のエリアでボールを難なく奪うことに成功し、そしてショートカウンターを仕掛ける事が多くなっていた。

これでレヴァークーゼンは前進できない状況に陥ってしまう。そしてボールが奪われるので、パスコースを作る役割としてWBがこの位置(下の図)に降りてくるようになる。

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WBが下がるようになるとバイエルンはしめたもので、バックラインに人を残しつつ、ボールを高い位置で奪えるようになる。これができるのも先ほどと同様にSHが外を切りつつ、CBを牽制し、CFのプレスがCBまで届く位置になると、WBを完全に消して機を見て一気に襲い掛かれるから。さらにWBが下がった事により、苦しめられていたサイドチェンジを封じる事ができる。これはロングパス / ミドルパスを打った時に(そもそもCHがいるので打っても効果は薄い)前に出ていく選手が少なくなっているので、SBが対応しやすくなっている。

だからバイエルンは15分あたりからボールを高い位置で奪い始めるようになっていた。

 

ビルドアップの変更

次にビルドアップの変更だ。これはドルトムント戦ととても似ている形になっていた。それがCHの縦関係の構図だ。だがここからのボールの進め方がこの試合では違っていた。

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まずCBの間にCH(主にキミッヒ)が降りる事でボールを引き出す。これにより、CBが広がり、そしてSBを押し上げる事ができる。ここまではよく見受ける事ができるものだ。

そしてここからが他のチームと違うところで、GKへのバックパスからSBへのパスで時間を作る事に成功する。これはマン・シティやバルセロナのようにGKのキック技術が高いのでできるものだ。ほとんどのチームは降りて来たCHからのパスが多くなるのだが、ここのプレスがキツイとその精度は下がってしまう。だがバイエルンはそれを剥がす術をGKで持っている。さらにはこのような前進方法も存在した。

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CHのキミッヒが開けたスペースに相棒のゴレツカが入るのではなく、SHのコマンが

入る事でボールを引き出す。これができるのは、赤丸で示した2人にあの深い位置までつ着いていくべきなのか、それとも留まるべきなのか、という迷いが生じるから。もしも着いてくれば先に説明したGKからSBへのパス、着いてこなければ今解説したSHへのパスを選択する事で前進をする。

 

このようにした事でレヴァークーゼンは下がざるを得ない状況になり、バイエルンはバックラインで時間ができるようになる。

 

バックラインで時間ができたバイエルン

バイエルンは主に2つの前進方法でセンターライン手前でバックラインが時間を持つ事ができるようになる。だが、レヴァークーゼンはCB、特にアラバからの縦パスを出させない為に、全体がコンパクトになっていた。そこで時間が少し持てたのがもう片方のCB、ボアテングだ。そしてそのボアテングからのミドルパスでバイエルンはチャンスを多く作った。

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このようにCBのアラバがボールを持つと、CHのキミッヒを消しているポジションからCFはプレスをかけるので、空くのは当然CBのボアテング。ここで面白いのが、バイエルン右サイドはSHが幅を作り、SBが中を取る事が多い事。こうする事で、STがCBにプレスを行いにくい状況を作り出す。さらにSHが張っているので、WBをピン留めする事も可能になる。

これで空くのがハーフスペース。ここを敢えて開けているOMFのミュラーが飛び出す事で一気にチャンスを作り出す。もちろんCF、斜めにSHが抜け出す事もあった。これでバイエルンはコンパクトな陣形を保つレヴァークーゼンの守備の背後を徹底的に突き続ける事で前半で3ゴールを挙げる事ができた。

 

実際に同点弾はハイプレスからのネガトラ⇨ショートカウンター、逆転弾はCKからのカウンター、追加点はボアテングからの背後のパス、というように手数を掛けずに早い攻撃でゴールを奪っている。

 

補足:ハーフタイムでのフォーメーション変更

前半の内に逆転を許してしまったレヴァークーゼン。その要因ははっきりとしていた。

それが守備の対応とビルドアップの局面だ。これをもう一度取り戻す為に、4-2-3-1の布陣に変更。これでどのように修正を加えようとしたのか。

 

ビルドアップの局面

まずはビルドアップの局面。3バックの時はCHが縦関係になる事が多かったが、4バックになると横並びになっていた。これにはどのような意図があったのか。

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それにはこのような意図があった。それが4-1-4-1のような布陣になるがゆえのCHの脇のスペースを使おうと試みた。これで後半の立ち上がりは攻撃が活性化されたが、バイエルンのハイプレスにバックラインが対応し切れずにパスミスが多くなっていたので、なかなか上手く前進する事ができなくなっていた。それを鑑みて、デミルバイをCHに、OMFにパウリーニョを投入して打開を計ったが、上手く機能はしなかった。

だが誤解の無いように断っておくと、全く機能しなかった訳ではなく、「バックラインがハイプレスを剥がした」場合は、ディアビを中心に早い攻撃を仕掛け、攻撃を完結させることはできていた。だからこう少し、バックラインが安定していれば、修正が嵌り、もっと違う結果になっていたのではないかと考えている。

 

守備面の意図

では守備面ではどのように修正の意図があったのか。それは縦関係になるバイエルンCHをOMFが捕まえるというものだ。

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バイエルンが3バック化するので、CF、SHでその3枚を捕まえる。そしてOMFを作った事で、縦関係になったCHを捕まえる事が可能になる。これによりCHが2枚、中央に残る事ができる。こうした事でボールサイドのCHが下がってボールを受けるSHとGKからのミドルパスで時間ができるSBにプレスを行う事ができる。仮に抜かれたとしても、バックラインには4枚いるので、対応はできるという算段だ。

 

これら2つが布陣を変更した意図だったのではないだろうか。

 

まとめ

バイエルンはレヴァークーゼンに2点目を奪われることになってしまったが、それでも危なげなく、勝利を収めることができていた。さらにはチアゴの試運転などもでき、少なくない収穫があったのではないだろうか。このように危なげなく、試合を締め括れるのも選手個々人の技術の高さもさることながら、しっかりと相手の穴を突くことができる眼を持っているからこそできることであろう。さらにはパスの出所とそのパスを受ける受け手も多くいるので、バイエルンを止める術が中々見つからないのではないだろうか。

果たしてこのままバイエルンの優勝で今シーズンのブンデスリーガは終わるのか。それともどこかがこの王者を叩き、優勝争いを熾烈なものとさせるのか。今までサッカーがなかった分、いつも以上にシーズン終盤戦、気持ちが昂っている。これから先の試合もしっかりと注目していきたい。

 

終わりに

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③:ディベート
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Relive アーセナル vs トッテナム 〜異次元の適応能力〜

 

 

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はじめに

正式のプレミアリーグのカムバックが公表された今シーズン。リーグ再開のこの時期まで、DAZNではありがたい事に『Relive』というコンテンツがあった。そこで数多くの名試合を改めて観戦させてもらった。そしてつい先日に再放送されたこノースロンドンダービー。

この試合はReliveの中でも興奮する試合の1つ、そして何度でも見返す事ができる、「これぞ良試合」と言い切ってよいものだろう。

今回は覚めぬ興奮と熱狂の上に、戦術を上乗せして再び見返してもらいたいので、この試合のマッチレビューを書かせて頂く。

最後までお付き合い頂けると幸いだ。では早速マッチレビューを行っていこう。

 

スターティングメンバー

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アーセナルペース 〜先制点を奪うまで〜

まずこの試合のペースを握ったのはホームのアーセナルだった。アーセナルはサポーターの後押しとこのペースを逃さず、先制点を奪う事に成功する。

ではなぜアーセナルは試合開始から流れを掴む事ができていたのか。

  • 必然的に空くスペースを使う

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ホームチームがペースを掴み得るきっかけとなった大きな要因はトッテナムの守備とその時の噛み合わせだ。アーセナルは3-4-3でトッテナムは4-4-2のダイヤモンド型。ここでの噛み合わせで空くのがCBとWBだ。そしてアーセナルがWBで時間を作れたのも、トッテナムの守備にも起因している。それが上の図だ。

トッテナムが3バックに対して2トップでプレスを仕掛けてくる。だからまず時間を作れる場所がバックラインだ。ここでまずは時間を作る。さらにトッテナムの守備はOMFがCHを1枚捕まえ、IHが1枚前に出てきてもう1枚のCHを捕まえる。こうする事でアウェイチームはボールを外回りにさせようと試みていた。

 

だが外回りにさせたものの、うまく外で奪う事ができなかった。その理由がここにあった。

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それがSTの存在だ。この存在により、SBがWBにプレスに行く事ができなくなっていた。

だからホームチームはWBで時間を作る事が可能になり、当然の如く、開いたスペースを使って攻撃を完結させる事で優位に立った。

 

さらにもう一つ 。アーセナルが流れを離さなかった理由があった。それが守備だ。

 

  • ハイプレス

もう一つ、アーセナルが流れを掴み、離さなかった理由は守備、ハイプレスによるところが大きい。ではどのようにしてアーセナルはハイプレスを行っていたのか。

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 このようにCBに対してはSTがプレスを行う。そしてDMFに対してはCFのオーバメヤンがマーク。これで中央のパスを遮断する。さらにボールを受けに降りてくるIHに対してはCH、主にトレイラが前に出て対応。その時にもう1枚のCH、ジャカはOMFのアリを捕まえつつ、カバーポジションを取る。そしてSBに対してはしっかりとWBが出ていく事で近くのパスコースも無くす。こうした事でバックラインで数的優位を作り出し、主に5番のソクラテスがトッテナムエースのケインをマンマークする事で仕事をさせなかった。

これでアーセナルはこのあたりでボールを奪う事に成功する。(下の図)

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この上のエリアでボールを奪えるのでショートカウンターを仕掛ける事ができる。これでアーセナルはボールを奪い続け、トッテナムゴールに迫り、先制点を奪う事に成功した。

 

だが、先制点を奪ってからトッテナムはビルドアップの方法を変える事でアーセナルから流れを奪い、逆転する事に成功する。

 

先制点を取られてからのトッテナム

トッテナムはアーセナルの戦術と勢いに成す術がなく、そのまま先制点を奪われ、劣勢に立たされた。だが当時のトッテナムは試合の中で若干の変化を加えつつ、『適応』していく事に長けていた。そしてこの試合も同様に適応し、試合の流れを掴んでいく。ではどのように変化し、適応していったのか。

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まず行ったのがDMFのポジショニング。上の図のようにDMFのダイアーがバックラインに入るようになっていた。こうすると何が良かったのかというと、CFのオーバメヤンのポジションを1つ前に移す事ができる。だから四角のエリアにIHのエリクセンが入ってくる事ができ、アーセナルCHのトレイラを釣り出す事が可能になる。

そしてこうした事によりボールの動かし方も変わり、ショートパスからロングパス中心のビルドアップに変更。

このビルドアップに変更したのもこのような動きを加える事ができたから。

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最初に解説したようにDMFがバックラインに入り、IHが中央にズレた事によりできるスペースは四角のエリアになる。ここにCFがロングパスを受けに降りる事でCBのソクラテスを中央から釣り出す事ができる。

そしてこれでケインが作ったこぼれ球をCFまたはOMFが回収する事で早い攻撃を完結させる。この方法がとても功を奏したのはアーセナルがハイプレスで前に出てきていたから。だからそのハイプレスをひっくり返すためにトッテナムはこのような準備を行った。そして現にこの攻撃で逆転に成功した。

 

アーセナルの後半の修正

アーセナルは流れをライバルに渡してしまうと同時に、逆転も許してしまう。

だが当時の監督、エメリはしっかりとハーフタイムに再び流れを引き寄せるための修正を行う。それがST、イウォビとムヒタリアンを替え、CFのラカゼットとOMFのラムジーを投入し、システムを3-4-1-2に変更する。これの変更点は2つあった。それを今から解説していこう。

 

1つ目の意図:守備の修正

アーセナルが前半に流れを持っていかれた大きな理由は守備が機能しなくなってしまったから。そしてその原因は3バック化するために降りるDMFとその開いたスペースに入るIHによるものだ。これを解決するためにエメリ監督はこのように修正を施した。

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このように、3バックに対して2トップでプレスをかける。そうすると、OMFが中央に残る事ができ、降りてくるIHを捕まえる事ができる。そしてそれにより、CHのトレイラも1列下がってポジションを取る事ができる。これで、CFのケインが降りてきた時にソクラテスではなく、トレイラが競りに行く事ができ、バックラインに人数を残す事ができる。

このようにした事でトッテナムの攻撃を抑えることに成功した。

 

2つ目の意図:2列目からの飛び出し

次にこの意図が確実にあった。トッテナムもロングパス中心の戦い方になり、ハイプレスを仕掛けれるようになっていた。だからアーセナルもこのハイプレスを回避するために行わなければならないことがあった。それがトッテナムがそうしたように、アーセナルも「中盤を越す」必要があった。だからラムジーを投入したことに大きな意味があった。

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まずはトッテナムのハイプレスから触れていこう。このようにWBで時間を作られることを嫌ったアウェイチームはIHがWBまで出てプレスを行う事でサイドを圧縮してボールを回収する事に努めた。

そこでアーセナルは先ほども触れたように、ラカゼットとラムジーを投入。そしてこのようにハイプレスを回避していく。

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このようにボールの収まりがより良いラカゼットがボールを受けに降りる / 流れる事でCBまたはSBを動かす。これで空くのがSBとCBの間のスペース。ここにラムジーが抜け出す事で一気にチャンスを作り出す。実際にこの攻撃により同点弾、そして逆転弾をあげる事ができた。

 

トッテナムはロングパスとケインのフィジカルでハイプレスを回避したが、アーセナルは動かしてスペースを作り出し、そしてそのスペースを使う事でハイプレスを回避した。

このハイプレスの回避の仕方も対象的でとても見応えのあるものになった。

 

トッテナムの対応

トッテナムはアーセナルのハイプレスの回避方法を潰すために3-4-3に変更する。これに変更した大きな理由がミラーゲームにする事で「人を当てれる」から。

これにより2列目の飛び出しとパスの出所を抑えようと試みた。だがこれはアーセナルのアクシデントにより嵌り切る前にこの修正は無意味なものとなってしまう。

 

アーセナルがアクシデントで手に入れたもの

アーセナルはトッテナムが3-4-3のミラーゲームに持っていこうとし、順応しようしていたところでムスタフィの怪我により、入って来たのがCHのゲンドゥージ。

彼の投入により、アーセナルは並びが4-4-2のダイヤモンド型に変わる。これでトレイラとゲンドゥージが高い位置にポジションを取れるようになったので、攻撃に人数をかける事ができるようになった。そしてその結果がトレイラのゴールに繋がった。

怪我でのこのポジション変更が功を奏し、アーセナルはトッテナムに止めを刺した。

 

まとめ

1度観戦したはずの試合。だがこの試合は何度見ても内容ともにとても興奮できる試合だ。アーセナルとトッテナムの対応の掛け合いは異常と言ってもよいだろう。そのぐらい、試合中に何度もポジション修正と戦い方の修正が入っていた。そしてなによりも、解任されてしまったが、エメリ監督もまた世界有数の監督の1人という事を再認識できる内容だった。的確に、かつ迅速に対応していくその様は見事だった。ぜひもう一度この試合を皆さんにも観て頂きたい。

 

終わりに

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では次回の記事でお会いしましょう!

 

 

 

 

 

 

Bundesliga ヴォルフスブルク×フランクフルト 〜『忙しい』展開のゲーム〜

 

 

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YouTubeでも解説を行なっています。

こちらも一緒にご覧になって頂くと幸いです。


[Match Review] ブンデスリーガ ヴォルフスブルク×フランクフルト 〜流れが何度も変わった理由〜

 

はじめに

ホームヴォルフスブルクはこれ以上上位陣に引き離せられないために。フランクフルトは降格争いに巻き込まれないために。特にフランクフルトは中断前のヨーロッパリーグ1 st Leg 、ザルツブルク戦から勝利がない状況。3バックのシステムに戻した前節から調子を取り戻しつつあるように見えた。だからこそ、この流れを引き寄せるために勝利が必須条件だった。

そしてこの試合の内容はどうだったかというと、一言で表すならば『忙しい』というものがぴったりだった。流れを引き寄せ、明け渡し、この繰り返しだった。

ではこの忙しい試合のレビューを早速行っていこう。

 

スターティングメンバー

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ハイプレスから入ったフランクフルト

この試合、アウェイチームはハイプレスから試合に入った。必ず早いうちに先制点を奪って試合を優位に進めるぞという意気込みを感じる事ができる試合の入り方だった。

ではどのようにしてハイプレスを仕掛け、ボールを奪い、ショートカウンターを狙っていたのか。

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フランクフルトは基本的にこのようにプレスを仕掛ける。2CBに対して2トップ、CHに配してはOMFと1枚のCHが前に出る事で2列目の選手を全て捕まえる。さらにSBに対してはWBがマーク。この時の特徴として両WBがSBを捕まえる事だろう。

本来ならば逆のWBはバックラインに入って4バック化するのだが、フランクフルトの場合はそれは行わず、前に出る、これの意図として、高い位置で奪った時に、クロスの人数を揃えることにあったのではないだろうか。

 

そしてこのエリアでボールを奪うことでショートカウンターを仕掛けようとしているのが見えた。

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このエリアで奪うことでショートカウンターを仕掛け、ゴールを狙った。このハイプレスでフランクフルトは優位にたったかのように見えたが、皮肉にもこのプレスは機能しなかった。ではなぜ機能しなかったのか。それはヴォルフスブルクのビルドアップと狙う場所に大きく起因していた。

 

ヴォルフスブルクのビルドアップと狙う場所

大きくこの2つによってヴォルフスブルクはフランクフルトをいなしていった。その方法は順を追って解説していこう。

ビルドアップ

まずはビルドアップ。このビルドアップがすこぶるフランクフルトのハイプレスと相性の良いものになっていた。

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ヴォルフスブルクは2CB +2CBでバックラインを形成し、SBを押し上げることでSHを中に移動させることができる。だがフランクフルトは全体的に前に出てプレスにくる。

だからこそ、ヴォルフスブルクCHは斜めに降りてフリーになるように仕向ける。これがフランクフルトのハイプレスを剥がすことができた大きな要因となっていた。

それが捕まえるはずのフランクフルトCHとSBを捕まえるはずのWBの判断を迷わせることに成功したから。これで時間ができたCHは好きなように展開をしていくことができていた。

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仮にCHが出てくるのならば、中央が空き、そこをSHが使う。WBが出てくるのならばその背後を使うことで、一瞬SH +SB vs CBの構図を作り出すことができる。もしもプレスに来ないのならば、ボールを持ち出し、目線と角度を変える事でまた新たな一手を生み出すことができる。このようにしてヴォルフスブルクは優位に立った。

 

狙う場所は?

ではこのようにCHで時間を作ったヴォルフスブルク。彼らはこのビルドアップを行い、明確に狙う場所を決めていた。それが「残ったCHの脇」と「CBの脇」だ。

ここを使う事でホームチームは流れを引き寄せた。(下の図参照)

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ではなぜここを使う事ができたのか。これにはフランクフルトの3バックの守備の決まりにある。

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中央のCBの長谷部は主にカバーの役割を担い、サイドCBが基本的に潰し役に徹する。そしてこの試合はヴォルフスブルクSHが中に入るので、そこを潰しにいくと広大なスペースがサイドにできる。この原理を利用してヴォルフスブルクはCBの脇のスペースを使い、中央CBの長谷部をサイドに引っ張り出す事で優位に立った。

そしてこれを繰り返す事で、逆サイドへのロングパスも通るようになっていった。

 

攻撃でも手が出せないフランクフルト

フランクフルトはこのように守備を剥がされる事で徐々にペースを落としていった。ならばと言わんばかりに攻撃を仕掛けようとするのだが、この攻撃もヴォルフスブルクの守備により封じられる。

ヴォルフスブルクはこの前のドルトムントとの一戦で3バックに時間を与えた事で敗戦を喫してしまった。

(ヴォルフスブルク×ドルトムントのレビューも読んで頂きたい。下記のリンクからご覧頂けるので気になる方はぜひ。)

www.soccer-bunseki.com

ホームチームはこの噛み合わせが悪い並びを解消するために以下のような守備を行う。

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このように3バックを潰すためにボールサイド(身体の向きを見て)のSHがCBを捕まえる。そして逆のSHはCHとWBを同時に見れるポジションを取り(これができるのはボールの移動の時間があるからポジションをうまく取れば1人で2人見る事が可能)、CHが1枚前に出てCHを捕まえる。もう1人のCHはOMFを捕まえるポジション。もちろんSBはWBをマークし、逆SBは絞って3バック化。ちょうどドルトムント×バイエルンのバイエルンが行った守備と似たような形となった。

この守備も嵌り、攻守ともに充実していたが、先制点を奪われる事となった。

それでも奪った先制点

フランクフルトは手詰まり感があったがそれでも先制点を奪う事ができた。

これによりフランクフルトは30分に明確に守備の戦術を変える。それがWBがCBの脇を埋める事。これをする事でヴォルフスブルクの攻撃を封じることで、3トップを生かすカウンター中心に切り替える。だがこの守備戦術にも穴があり、後半はそこを使われる事となる。

 

新たにできたスペースを使うホームチーム

前半のフランクフルトの守備に一時抑え込まれたホームチーム。だからハーフタイムで新たな明確な戦い方を提示する必要があった。そしてそれが見受けられる後半の立ち上がりだった。

そしてこの新たにできたスペースを使う事で攻撃を再度仕掛け、そして同点ゴールをセットプレーで生み出す。

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まず新たにできたスペースというものがCHの脇のスペースだ。フランクフルトカウンターは主に3トップを前線に残す事が多く、だからここのスペースが空いていた。

そこをヴォルフスブルクはハーフタイムで見抜き突いていた。その方法が上の図で示したようになっていた。CFが1枚(主にブレカロ)がそのスペースに降りる事でそこのスペースを使って最終局面を打開しようと試みていた。そしてこの攻撃を繰り返し得たFKで同点に追いつく事に成功する。

 

同点になってからの展開

同点になると、フランクフルトは再び前プレスを行う。そしてそれをいなすかのようにヴォルフスブルクは先述したスペースへボールを送り続ける。フランクフルトもアンドレ・シウバを背後へ走らせるが、疲労もあり、全体が押し上がらずに両者間延びが起きて、オープンな展開となる。だがここで手を打ったフランクフルトが勝利を掴む事になる。

 

勝利を掴むために行った対象的な手法

ヴォルフスブルク

まずはホームチーム。展開がオープンになった事による対処法。それが基準点型ストライカーからムービングストライカーへの変更。よりスピードを増し、1発の抜け出しでゴールを奪う事を狙った。まさにオープンな展開に必要で最適な選手と思われる選手の投入だった。

 

フランクフルト

一方のアウェイチーム。彼らが行った事はムービングストライカーから基準点型ストライカーへの変更。背後へのボールが多くなっていたこの展開に基準点型ストライカーが入った事で彼らは一呼吸つく事ができるようになった。そしてコンパクトさを戻しつつ、CFドストに預ける事で2ndを作り出し、それを回収して攻撃を仕掛ける事を狙った。

これが大きく試合の結果を変える事となった。ヴォルフスブルクは相変わらずCBの脇のスペースを狙う事で攻撃を仕掛けたが、フランクフルトはターゲットマンができた事により、自陣低くでボールを奪った時にも逃げ道を作り出す事、クロスを狙うポイントができた。

そしてこれが鎌田の試合終了間近の決勝点を生む事となった。

 

まとめ

試合の流れが行ったり来たりするようなこの展開。まさに忙しい試合となった。選手達は間違いなく疲れるだろうが、観戦する側からすると、よりわかりやすく、楽しい試合だった。そしてなによりもフランクフルトはこの試合に勝てたことがとても大きな財産になるのではないだろうか。苦しい、長いトンネルから抜け出した感じがあるフランクフルト。日本人選手が2人も在籍しているこのチームの躍進をもっと見ていたい。昨シーズンの躍進も相まり、よりそのように感じさせてくれる一戦だった。

 

終わりに

最後までお付き合い頂きありがとうございます。この場を借りまして、SNSなどの紹介をさせて頂きます。

 

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②:アウトプット
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③:ディベート
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