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みなさん、どうも。今回はセリエA 24節のインテル×ミラン、ミラノダービーのマッチレビューを行っていきます。
スクデットの行方に直結する一戦。この試合が白熱しないわけがなく、そしてその期待通りにめちゃくちゃ面白い試合でした!
今回はミランが狙っていたプレス、インテルの剥がし方と守備、ミランの修正とそれによってインテルが押し込まれた理由についてを考えていきますので、最後まで目を通して頂けると嬉しいです!
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スターティングメンバー
ミランが行ったプレス
まず最初に仕掛けたのはミランだ。ミランはハイプレスを行うことで、インテルのビルドアップを止めに掛かることを考えた。
これはマッチプレビューでも考えていたような展開だったが、「誰を起用するか」と「どこで回収したいか」が予想とは違っていた。ではミランはどこでどのようにしてボールを回収することを考えていたのだろうか。
ハイプレスを行うときの人の捕まえ方が上の図のようになる。ポイントとなるのがSHのプレスのスタートポジションで、SHが内側から外側にプレスを行うことで、CBに外向きの選択肢を強制していた。当然、SBの予測と連動も重要になってきて、WBに間に合うようにスプリントをかけることもプレスを完結させる上で大切なファクターになっていた。
さらに中盤ではブロゾビッチを消すために、より守備的なケシエを起用。さらにボール保持ではなく、非保持(プレス)で優位に立つために、より組み立てのときに良さを発揮するクルニッチではなく、潰せて走れるベナセルを起用した。
これで立ち上がりの10分はインテルに対してかなりの制限をかけることができていた。
ではここからミランはどのようにしてボールを回収することを考えていたのだろうか。
ミランが作り出したかったのは「WBに低い位置でヘルプを行わせる」という局面だ。これを作り出すメリットとして、SBを押し出すことができる。さらにサイドにHを「流れさせる」ことで、SB–CH–CBで囲い込むことも可能になる。またWBにミドルパスを蹴らせることによって、2ndボールに反応する選手をIHの1枚にすることも可能だ。(CBにミドルパスを蹴らせた場合はWBとIHの2枚になり、拾われる可能性が上がってしまう)
予想とは違い、外から内側のパスを奪い切る(トナーりの場所)のではなく、ミドルパスを蹴らせることで、CFもしくは流れるIHでボールを回収することを狙っていた。
特に左サイドのトナーリは、前に出ていくときにブロゾビッチとバレッラを1人で消せるようなプレスの掛け方を行っていた。だからこそ、ケシエと入れ替わっている印象が強かったのかもしれない。
ミランはインテルのWBを押し下げることができた時に、かなりの確率でボールを回収することができていた。
だがこのプレッシングは縦と横の広がりを持つインテルの回避方法により、効力を失っていく。
では次はインテルの回避方法についてを考えていこう。
縦と横の広がりと中盤のヘルプ
この試合でインテルが採用したプレス回避の方法は「中央回避」だ。そのために幅を作り出し、中央を開け、ジェコのヘルプによって中盤で数的優位を作り出した。だから簡単にミランの2ndラインを越えることができていた。ではその詳細に触れていこう。
インテルはジルーとケシエに対してデフライ、ハンダノビッチ、ブロゾビッチで数的優位を維持できるように設定。この時にブロゾビッチは中央を空けるために、逃げ道を作り出す方向とは逆の立ち位置を取ることが多くなっていた。
これで幅を作り出したCbがボールを受けた際、ミランSHとOMFの門をかなり広げることができる。さらにCBがSHを釣り出し、WBでSBを止めているので、その間にIHが流れる動きを加える。これでマーカーのChを引き連れることで、さらに中央にスペースを作り出す。この3ラインの幅の作り出し方がかなり効いていた。
そしてIHが外に流れる動きを加えたと同時にCFのジェコが中盤に降りてくることで逆CHに対して数的優位を作り出すことができるようになっていた。
最前線ではラウタロ、ダンフリース、ペリシッチが最終ラインと駆け引きをすることで、ミランの最終ラインを止めていたことも忘れてはならない。
この駆け引きが行われていたからこそ、ミランMF–DFのライン間を広げることができ、ジェコ、チャノハノール、バレッラがボールを引き取ることができていた。そしてここでポイントを作り出すことで、幅を目一杯使って、左右に揺さぶりながら攻撃を仕掛けることが可能になっていた。
オフサイドで取り消しになったダンフリースのゴールシーンなどはとても分かり易い攻撃だ。他にも16:43〜(これはバストーニ⇨バレッラに通していればかなりチャンスだったけど、それは行わずに流れたチャノハノールへパス。ブロゾビッチは斜めに出して欲しかったっぽい)や23:20〜、30:43〜、50:20〜などをご覧になって頂けると分かり易いと思う。
特に前半はミランに対してこの方法を提示し続けたことで、試合を支配することができていた。
さらにインテルは守備の局面でも優位に立っていた印象だ。
持たせて狩る守備
インテルはボールを保持しているように映るかもしれないが、前半のポゼッション率は43.6%、もっというと、15分間では51.2%、30分で49.8%となっている。
保持することで、試合を考えていることが確かだが、守備からも試合を支配することができるのもインテルの強みだろう。特に前半はこれがミランに対して刺さっていた。(後半については後ほど触れる)
ではインテルはどのようにして守備を行っていたのだろうか。
このようにインテルはハイプレスをかけずに、ミドルプレスを行うことを選択。これを選択したのは、ハイプレスを仕掛けたときにジルーへのロングパスで逃げられてしまうことを考慮したからではないだろうか。ジルーの収まりは世界最高峰だ。だからこそ、ミドルプレスを選択したのだと僕は勝手に思っている。
ミドルプレスについて話を戻すと、基本的にCBにボールを持たせることを許容していた。もちろんトナーリは2トップで消すことを行っていた。これでCBが外側にプレー意識を持つと、IHがSBに出て行ってプレスを開始する。これでWBも前に出て、IHの背後をブロゾビッチとCBがカバーをすることで、受け手を潰す、もしくはミスを誘発することで、ボールを回収する。IHとWBが前に出ているので、奪ったボールはすぐに前方向へつけることも可能になっている。だからカウンターへ出れていた。
インテルのミドルプレスでポイントとなっていたのが、中盤の帯状の立ち位置だ。これを行っていたので、カバーと受け渡しがスムーズにいき、守備が安定していた。
当然、プレー方向を変えられることもある。その場合は以下のようになる。
この場合はCBに対してCFがプレスを行うことでプレー制限をかける。この制限がかなり重要で、これによってIHとWBの縦スライドとバックラインと中盤の横スライドの時間を稼げていた。
だからトナーリに対してチームとしてぼかす場合とマンツーマンで付く場合、SBにIHが出て行く場合とWBが出て行く場合が散見されたのだろう。この帯状のカバーリングとマンツーマンでのプレスを巻く融合させて守備を行うことで、特に前半はミドルプレスを完結させることができていた。
その結果がSHレオンやサレマーカーズに対して良い形で仕掛けさせない状況を作り出すまでに至っていたのではないだろうか。
もちろん、ミドルプレスだけで乗り切れるほどサッカーというスポーツは甘くない。
自陣で守備を行う時間もあり、その場合は以下のようになっていた。
このように自陣に入ると5−3−2を形成。3−2のブロックで外側に誘導することをまずは考える。このブロックを作り出したときは、SBに対してはIHが出て行くことが約束事になっているように僕は感じる。3−2のブロックから出て行くので、当然IHのプレスは内側から外側になる。だからこそ、SBは内側の選択肢を削られ、外の選択をすることが多くなる。これでSHに対してWBが狙って対応できるので、個人勝負に昇華した時に優位に対応することが可能になっている。
また、SBやSHから内側の選手にパスがでた場合は一気に囲い込むことでチームとして対応。これで受け手を潰し切ることでゴールから遠ざけることに成功していた。
このようにしてインテルは前半、ミランにシュート3本のみしか撃たれず、逆に自分たちは9本のシュートを放つまでに至った。
ミランの良さを消たことで、インテルはミラノダービー勝利に向けて直向きに走った。
そして迎えた後半。インテルはミランの修正によって大きく押し込まれることになってしまう。
ミランの修正とその影響
ミランからすると先制点を奪われ、ボールはある程度保持できるが、上手く攻撃も組み立てることができない前半だった。
そこでピオリ監督はハーフタイムでサレマーカーズに変えてメシアス、続けて58分にはケシエに変えてディアスを送り込む。彼らの投入がミランに流れを引き寄せた。
さらに、持ち出しの時点の修正を行う。
ミランが行った修正は持ち出しの変更だ。前半はトナーリとSBが内側に入る形が多く、これを行うことで外側でSHに仕掛けさせることを考えていた。だがこれはインテルの受け渡しとカバーリングによって効力を失っていた。
だから、後半からは2CBと2CHでビルドアップの基盤を作る。これを行ったことで、インテルIHからCHとSBが距離を作り出すことができた。さらにディアスの投入により、ブロゾビッチ周辺のスペースで上手くボールを引き取ることができるようになった。
ここに打ち込むことができるようになったのは、IHを能動的にブロックから引き摺り出すことができ、さらに距離を確保したので、段差を作り出すことができたから。だからこそ、ライン間にパスを打ち込める回数が劇的に増えた。
さらにこれを繰り返すことで、インテルを自陣深くまで押し込むことができた。だから前半はCFジェコが降りていく動きにCBがついて行けなかったが、後半はジェコに対してCBが出ていって対応することが基本となっていた。さらに押し込んだことでWBを低い位置に追いやることにも成功した。こうすることで、本来行いたかったハイプレスを遂行することができ、プレッシングも見事に息を吹き返した。
この押し込むための修正とそれを行うための選手の入れ替えが見事に機能し、逆転まで持って行くことができた。
ミランの修正による影響
ではインテルはミランの修正によってどのような影響を受けたのだろうか。
まずは守備。前半は能動的に誘導していくことで、個人と組織の行き来を上手く行っていた。だがボールホルダーとの距離を作られたことで、IHがブロックから引き摺り出されることになった。こうなると、遅れと2ndラインに段差が生じてしまう。最初の内はIHが出て行くことを行っていたのだが、徐々に出て行くことを止めて、スペースを埋めることを選択して行く。こうなると、徐々に全体が下がっていき、押し込まれた状態になっていく。
こうなるとそうなるか。それは広がりを使えなくなってしまう。前半はWBが最終ラインと駆け引きをすることで、降りてヘルプを行うジェコでポイントを作れるようになっていた。だが、WBがかなり低い位置まで下がっているので、高い位置まで出て行くのに時間がかかる。そしてミランのハイプレスの狙いとがっちり嵌ってしまうので、抜け出すことも難しくなっていく。
逃げ場としてあるジェコへのミドルパスにはCBが出てきて対応されるので、徐々にキツくなっていく。IHが長い距離を走ること、ジェコが収めることができれば、カウンターに出れていたが、その回数は前半と比べてかなり減っていた印象だ。
だからより守備的で機動力のあるビダルを投入したこと、さらにより力強く、守備にも走れるサンチェスを投入したことにも頷ける。交代が嵌まらなかった結果になってしまったが、ミランの修正による影響が大きかったことも忘れてはならないのではないだろうか。押し込まれることの少なかったインテルだからこその課題なのかもしれない。
白熱のミラノダービー
ミランの逆転で幕を閉じたミラノダービー。立ち上がりから情熱を感じ、かなりインテンシティの高い試合で興奮した。お互いの狙いが明確で、この試合に賭ける熱さも伝わってきて、最高のダービーになったのではないだろうか。もちろん戦術的にも面白かったし、優勝争いもかなり激化した。カルチョの完全復活にはインテルのミランの完全復活は必須事項だろう。これからのミラノのチームが再び世界を席巻する日が近いのかもしれない。
とても面白い試合だったので、ぜひ皆さんも見返してみてほしい。
最後までありがとうございます!
今回の記事はここまでとなります。ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
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