【J1リーグ第28節】
ベガルタ仙台 vs 鹿島アントラーズ
【結果】
1−3
【スタジアム】
ユアティックスタジアム仙台
【得点者】
ベガルタ仙台:76’長沢
鹿島アントラーズ:47’エヴェラウド 57’アラーノ 62’上田
【スタッツ等】
スターティングメンバー
この試合、アントラーズは圧倒的な個人能力を生かしての攻撃に取り組んだ。そのために、いつものフラットな4-4-2ではなく、中盤がダイヤモンド型の4-4-2でこの試合に臨んだ。(離脱者が多いことも起因していると思う)
そして見事にこの並びと戦い方が嵌り、自信を取り戻しつつあるベガルタ仙台を圧倒して、勝利を掴み取った。
ではこの試合、目立ちに目立った2トップ、エヴェラウドと上田をどのように生かして攻撃を仕掛けていたのかを振り返って行きたい。
ベガルタの守備の仕方
まずはアントラーズの攻撃に触れる前に、ベガルタ仙台の守備に着いて少しだけ触れておこう。
ベガルタ仙台は高い位置を取るSBに対してWGが下がって対応する形をとっていた。さらに4バックで2トップに対応する形をとり、(CFがサイドに流れるとSBが対応)IHとDMFでそれぞれ中盤の選手をマークする形を取っていた。
このようにすることで、守備を固め、5バック、時に6バックになることを厭わなかった。だからアントラーズは最終ラインで数的優位を作り出すことができ、逆に最前線で数的不利の状況に陥っていた。
これでベガルタ仙台はアントラーズの攻撃を耐え凌ぐことで、カウンターを狙っていた。だが忘れてはならないのが、何度もアントラーズに決定機を作られていたことだ。
ではアントラーズはどのように決定機を作り出していたのだろうか。
アントラーズの攻撃方法
①:SB(WG)の手前のスペースの活用
まずシンプルなクロス攻撃。これがこの試合の主な攻撃方法で、そして圧倒的な個の力を生かす攻撃となっていた。
この図のように、SBでWG、IHでSB、降りてくるOMFでIHをピン留めすることでCBが運び出すスペースを作り出す。これで、一度大外のSBにパスを供給することで、ベガルタ仙台の目線を外向きに変える。
仮にここの持ち運びでベガルタ仙台IHがCBに出てきたのならば、CBはOMFへ縦パスを差し込むことで、中央を突破する攻撃を選択していた。
だがやはり中央を使われたくないベガルタ仙台は、IHが出ずに、外へボールを供給させる。
これに対してアントラーズは次のように攻撃を仕掛けていく。
このように大外でボールを受けたSBは、ボールをセットすることでCB、またはOMF(IH)のサポートを使う。ここで上の図の白のスペースができるのは、SBがWGを押し込んでいること、OMFがIHをピン留めしているから、ここにスペースができている。
そしてセットされたボールをシンプルにCBまたはIH、OMFがダイレクトでクロスを上げることで、中の2トップに勝負させる。中では数的同数または数的不利の状況だが、一度目線を変えたこと、さらに個人能力の高さでこの不利な状況を物ともせずに、クロスからの攻撃を完結させていた。
このように目線を変えながら、SBの手前のスペースを活用して攻撃を仕掛ける攻撃を多く見受けることができた。
②:アーリークロス
もちろん、サイドへのパスを狙われていて、そこにパスを出せない状況も生まれてくる。その場合はアーリークロスを選択。ではどこからアーリークロスを供給していたのか。
これも①の時と似たような形で、SBでWGを押し込むところから始まる。そしてこの先のデザインの仕方が違い、ここではIHが上の図の白のエリアに降りてくる。こうすることで、主にIHのマークを行っていたSBが着いていけない状況を作り出す。
これでCBがIHにパスを出して1列前のIHからアーリークロスを供給するか、ベガルタ仙台IHがそこをケアするのならば、CBからシンプルにクロスを供給していた。
もちろん、この場合もベガルタIHがかなり外側に出てくるようであれば、中央への下のパスで攻撃を仕掛けていたことも忘れてはならない。
これが外へのパスを狙われた時の攻撃で、この攻撃も圧倒的な2トップの能力を生かしての、シンプルかつ強力な方法となっていた。
③:2nd奪回→二次攻撃
2つのクロス攻撃を多用したのにはもちろんのことながら、意図がある。これらのクロス攻撃を全て完結することができれば問題はないのだが、それはいくらなんでも不可能だ。だから、2トップを生かして、優位な2ndボールを作り出し、それを回収することで二次攻撃に繋げていた。
ではなぜ、2ndボールを回収することができたのか。
まず見て頂きたいのが以下の2つの図だ。
この2つの図はそれぞれ、①・②のクロス攻撃が跳ね返された時の様子を表している。大体入ってくるクロスを跳ね返されると、どちらのパターンも白のエリア付近のボールが落ちる。
ここでIHとDMFで2ndボールを回収することで、アントラーズは波状攻撃を仕掛けていた。
ではなぜここでボールを回収できる確率が高かったのか。
その理由は、まず1つ目にシンプルなクロス攻撃を繰り返すことで、ベガルタ仙台を押し下げたからだ。このようになったことで、背後に重くなったベガルタはボールが落ちるであろうエリアに人を配置することができなくなっていた。
そして2つ目に押し込んだことで中盤(特にIH)ないしバックラインを押し上げることができたからだ。これでベガルタとは対象的に、ボールが落ちるであろうエリアに人を配置することができていた。
だからこそ、アントラーズはボールを回収し続け、波状攻撃を仕掛けていた。
④:IHが持ち運ぶ→奥を取ってクロス
これは先制点のシーンがわかりやすいだろう。ベガルタ仙台はSBがサイドに釣り出されると、IHが『ポケット(SBとCBの間のスペース)』を埋める作業を行っていた。
だからアントラーズIHがボールをフリーで持ち運ぶことができる。
この図のようにベガルタWGのプレスバックが間に合わず、高い位置を取るアントラーズSBに対してベガルタSBが対応を行う。こうなると先ほども触れたポケットをIHが埋める作業を行う。これでアントラーズIHが持ち運ぶ時間とスペースが出来上がる。
これを行うことで、ボールサイドの選手の目線を集めることができる。
そして目線を集めることでSBが大外から深くを取ることができ、クロスを供給。これで中で待つCFを使い、攻撃を完結させていた。
この攻撃の回数は少なかったが、それでもゴールに結びついていたので、結果論になるが、有効的だった。
⑤:CFが流れて起点→カウンター
アントラーズ2トップは強いだけではなく、器用でもあることを再確認させるプレー。エヴェラウドと上田は中央でどっしりと構えるだけではなく、サイドに流れて起点を作り出すことも可能なプレーヤーだ。アントラーズはこの2人の能力を存分に使っていた。
このパターンを見受けることができるのは、上の図のようにベガルタのプレスを呼び込んだ時、またはベガルタの攻撃を跳ね返し、2ndを回収した時に多くみることができた。このカウンターはアントラーズの列記とした武器の1つと言えるだろう。
そしてバックラインでボールを回しながら、ベガルタ仙台SBのプレスを呼び込む。
この呼び込んだ段階で、CFがSBの背後に流れる。
そしてこのように一気にバックラインからSBの背後にボールを流し込むことで、CFに起点を作らせる、または勝負させることでカウンターを仕掛けて、攻撃を完結させる。
または、このようなパターンもある。
上の図のように、サイドでボールを回収し、そしてそこから一気に中央の2トップへのロングパス。ここでどちらかがフリックまたはキープすることで、IHアラーノのロングランを促す。そして一気にここでもカウンターを仕掛けることで、攻撃を完結させる。
少数でもカウンターを完結させるだけのクオリティーがあり、さらに、下のパスではなく上のパスを使って一気に前進できるので、よりスピーディーに、相手の守備陣形が整う前に攻撃を完結することが可能になっていた。
補足:アントラーズの守備について
では補足としてアントラーズの守備について触れておこう。
アントラーズは基本的にハイプレスを仕掛けることで敵陣でボールを回収することを狙っていたが、それを試合を通して行うことが不可能なので、上の図のように、若干引き込む形を取ることもあった。
2トップとOMFでCBとDMFを消すことでSBにボールを持たせる。そしてハーフウェイライン付近まで運ばせ、そこを超えるとIHがサイドに出てプレスをかける。これがスイッチとなり、SBがWGを、DMFがIHのカバーを行うことでボールサイドを圧縮して守備を行っていた。
もちろん、これはSBの背後を突かれてクロスを上げられること、またはサイドを変えられてピンチになることが何度か見受けられていたので、後半からこのように修正を加えていた。
このようにSBに対してCFが2度追いをかけることで、IHが中央へのパスを消し、DMFが中央を埋めることでバランスを崩さずに守備を行うことができるようになっていた。
そしてSBのミスパスを誘うことで、ボールを回収することができていた。
まとめ(雑感)
この試合をご覧になった方の多くが『上田とエヴェラウドやべえ』と感じたであろう。自分もこのように感じ、そしてアントラーズはずるいなと感じるほどの圧倒的な個人能力だった。ここに器用さを兼ね備えているのだから、もはや手のつけようがなくなってくる。そしてこのエースを生かすために、裏付けされた攻撃。元々質の高い選手が、献身的に動くのだから、それは強いに決まっている。改めて、鹿島アントラーズの強さを確認できる試合だった。
皆さんもこの試合を見返して、アントラーズの2トップのやばさを確認してもらいたい。
終わりに
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