【攻撃は最大の防御なり】J1第25節 横浜F・マリノス vs ベガルタ仙台

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今回はJ1第25節のマリノス×ベガルタの試合について考察を広げていきます。

内容は以下の通りとなっております。

 

Chapter1:ベガルタの守備プラン

Chapter2:攻撃は最大の防御なり

2−1:横のサポートの作り方

2−1−1:もう1つ奥のサポート

2−2:SBの抜け出し

2−3:マルコスのセンス

Chapter3:マリノスの攻撃がなぜ終わらないのか?

 

 

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では早速、この試合についてを考えていきましょう。

 

 

スターティングメンバー

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Chapter1:ベガルタの守備プラン

 マリノスの攻撃を受け止めるために、ベガルタ仙台もしっかりと守備プランを用意していた。ではどのような守備プランを行っていたのだろうか。

ではまずベガルタ仙台のスタンスについてを考えていこう。そのスタンスを以下の図にまとめてみたので、確認してもらいたい。

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ベガルタの守備スタンス

まずチームとして行うこと、それが「外回りにさせる」ことだ。これで中央に差し込ませずに、サイドを狭くしてボールを奪い切ることを考えた。

 

このチームのスタンツを実行するために、上の図のような個々のタスクがあった。特にSHはSBのマンマークを行う重要なタスクがあり、マリノスSBが絞ったり、幅を作ったり、チャンネルランをしたり、これらによる混乱を防ぐためにSHがマンマークを行うようになっていた。

 

さらにWGにはSBを当て嵌めることが主なタスクで、中央レーンの選手は常に数的優位を作るようになっていた。

 

1つ例を紹介しておこう。

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このように外回りにさせると自然とWGにボールが集まってくる。そこに出ていくのがSBになっていた。だがこうなると自然とチャンネルが広がる。そしてマリノスはそこを使うことが上手く、特に右サイドではSB小池がチャンネルランを行うことが多い。

もちろん、そこを使わせないためにSHがそのまま着いていくように設定されていた。だからベガルタは場所を埋めることができて、ある程度ゴールからボールと人を遠ざけることが叶っていた。

 

だが、この守備の上を行くのがマリノスのスピード感溢れる攻撃だ。ではマリノスはどのように攻撃を構築し、崩していったのだろうか。

 

Chapter2:攻撃は最大の防御なり

この試合もマリノスはゴールを量産。前節は前田がハットトリック、今節はセアラがハットトリック。対応もプレースピードも相変わらず早く、圧倒的な攻撃力を誇った。

ではこの試合、どのようにして中央を消してくるベガルタ仙台を攻略したのだろうか。

 

2−1:横のサポートの作り方

中央を消されて外回りのボールの動きになるのだが、マリノスは横のサポートで1つ内側に入っていく。

ではどのようにそこサポートを行っていたのだろか。

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SHを動かして場所を開けてサポート

まず横のサポートを効果的にするために、まず行うこと。それがSHを動かすことだ。この方法は至ってシンプルで、SBの立ち位置を決めさえすれば、ベガルタSHを動かすことができる。

だから上の図のように、若干低い位置を取ることもあった。これでSHを動かしといて、WGへボールを動かす。そいてSHの背後のスペースにOMFとCHが流れてくる ことで横のサポートを2つ作り出す。こうすることでWGは逃げ道を2つ得ることができ、さらにスライドしてくるベガルタCHに対して一瞬数的優位を作り出すことが可能になる。(SHのプレスバックがあるので、一瞬の数的優位になるが、その一瞬がとても大切)

 

このように横のサポートを作り出すことがオートマチックになっているので、プレーがスムーズになり、ここからパターン化されているワンツーでサイド奥をとることができるのだろう。

 

2−1−1:もう1つ奥のサポート

もちろんワンツーだけの抜け出しだけでなく、横のサポートの「その奥」も選択肢として用意されている。

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CFへの横パス(斜め)

このようにベガルタの横のスライドと縦のスライドが間に合うと、もちろん横のパスが詰まるのでパスを出しにくくなる。(そこに出しても取られることが少ないのもマリノスが強い理由の1つなのだが)

そこで横のパスを消されると、その奥のCFへの横パス(斜めの縦パス)を打ち込むことで、一気に2ndラインを超えることもできるように設定されている。

だからかつてはオナイウ、現在はセアラが斜めのパスを引き取ることが多くなっている。この選択肢も事前に用意することができるので、パスがいとも簡単に通るようになっているのではないだろうか。

 

2−2:SBの抜け出し

次に話していくのがSBの抜け出しだ。これも見慣れた光景で、だが対戦相手は不思議とこれを止めることができない。これには理由があり、準備の早さ(動き出しの速さ)が肝となっている。

ではこの試合はいつ、どのようにしてSBの抜け出しを促していたのだろうか。

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背後に抜け出す準備

まずSBが抜け出すための準備を解説していこう。この図のように、まずは2トップ脇にスペースを作り出すことを行う。そのために、この試合のマリノスはCHが下がることが多くなり、さらに2トップの間にCHが1枚残る。

まず、バックラインを3枚にすることで2トップを脇を持ち上がれる選手を用意する。さらにここのスペースを作り出すために、間のCHとパス交換で2トップを中央に寄せる。これで、2トップ脇にスペースを作り出す。(CFもプレスは間に合う距離だが、動かしている分だけ時間を持てる)

さらにベガルタの守備のタスクを利用して、SBが一気にMF-DFのライン間まで上がっていく。こうなるとSHがついてくるので『SHの手前』(青のエリア)になる。

これがSBの抜け出しの重要な準備となる。

ではなぜ、この準備で抜け出すことができるのだろうか。

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SBが内→外で抜け出す

Cbが持ち出したことで起こり得ること。それが視線の誘導だ。これが成立するのはCBの持ち出しがあるからだ。だから上の図のようにSHの視線を引きつけることができる。そしてこの視線を誘導した時点で、ほぼ勝負は決まっており、SBが抜け出す準備をしていて、CB→WGのパスを打ち込んだ時点でSBはライン間から抜け出しを行っている。

そしてボールを受けたWGは1タッチで背後に流すことで、SBがサイド奥をとることが可能になっている。

これで一気にスピードを上げて攻撃を仕掛け、全体を底上げすることができるようになっているのだ。

 

2−3:マルコスのセンス

次はチームとしてではなく、個人に焦点を当ててみよう。誰がどうみても非凡な選手、マルコス。彼の動きがマリノスに相乗で優位性を与えることができている。ではどのような動きが、マリノスというチームに優位性を与えているのか。

 

その動きというのが『空いた場所』をとるセンスだ。この動きがあるので、マリノスは相手よりも優位に立つことが叶う。

これだけでは理解しにくいと思うので、1つ例を挙げてみよう。

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WGでSBを動かして場所を開ける

このようにWGが下がってボールを受けにいくことでSBを動かす。この時に空いてくるのがSBの背後だ。マルコスは空いた場所を見つける眼とそこを取るセンスが非凡だ。

そしてこの動きを加えることで以下のような優位性を取ることができる。

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守備者をひっくり返す

このように、2−1の横のサポートを応用してCHでレイオフを行う。このレイオフの多さと作るスピードもマリノスに強さの1つだ。そしてこのレイオフを行うことで、空いた場所を取ったマルコスにボールを供給することで、攻撃の次のフェーズに移っていく。

この時にマルコスはSBをひっくり返すことができているので、守備者を1枚減らすことができる。この優位性をマルコスがいるのでマリノスは獲得することができるのだ。

もしもマリノスの試合を見ることがあれば、マルコスの動きとその周りのサポートを見るだけでも、面白いものになるだろう。

 

 Chapter3:マリノスの攻撃がなぜ終わらないのか?

では最後にマリノスの攻撃が続く理由についてを考えていこう。これは攻撃の時点でほぼ決まっていて、そのキーポイントとなるのが『敵陣奥深く』もっというと『サイド奥深く』だ。だからSBやWG、時にCHがサイド奥深くを取ることが多くなっている。

 

ではなぜ、これがなぜ肝となっているのか。それは『ボールを奪った選手』に焦点を当てると分かりやすい。

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ボールを奪われる場所

このようにボールを奪われる場所が敵陣サイド奥深くだとする。こうなるとまず考えられることが「セーフティなクリア」だ。これを行わせれば、自分たちのスローインにすることができる。

次に考えられることが、前線へのロングパスだ。実際にこのパスを打ち込んでひっくり返そうと考えるチームは多いだろう。だがこれは、以下の理由により難しくなる。

  1. 自陣奥深くで距離を出しにくい
  2. プレスがかかるので万全の状態でキックできない
  3. 受け手の状態は悪く、守備者の状態は良い
  4. 自陣深くに下がっているので受け手のサポートが難しい

この4つの理由により、ロングパスでの打開が難しくなっている。とくに「万全の状態で蹴れない」という理由は大きく、サッカーをやったことがある方なら分かると思うが、プレッシャーがかかると、精度は落ちていく。さらに、ここにはボールを奪われた選手と幅を作り出した選手が前向きにプレッシングを行える。

だから、圧力をかけてキックの精度を落とすことが可能になり、CHの手前、最悪CBの手前にボールを落とさせることができるので、再びボールを回収して攻撃に出ることが可能になっている。

 

そして最後に考えられるのが、ショートパスでの打開だ。これは言わずのがな、マリノスのハイプレスの餌食となる。これもサイド奥深くまで押し込んでいるので、一気に圧縮することができ、ボールを回収することができる。

 

このようにして、攻撃の時点でサイドを奥深くを取る理由があり、それが奪われたとしても再び攻撃に移れる準備、布石となっている。

ここで言うのは簡単だが、相当な運動量とスプリントが必要で、それを連戦でも難なくこなすマリノスはシンプルに末恐ろしい。

 

猛追のマリノス

特にマルコスのゴール。このゴールは衝撃だった。ハイプレスを完結させる強度を70分近くでも保てている。もちろん、選手交代でその強度を保つことができているのだが、替わって入った選手もそのプレッシングの意識と強度を持ち合わせているのだから、マリノスの選手層の厚さとしっかりとチームに落とし込んでいることが一瞬で理解できる。

今節はレオセアラのハットトリック。このストライカーが覚醒すると、もう1つ上のレベルに登るだろう。もともと、ボールを引き取る上手さを見せていたストライカーだ。ゴール量産体制に入れば、コンビネーションからでも、理不尽な形でもゴールを取ることができる。

ストライカーとはそういう生き物なのだ。

波に乗ればなんでもできてしまうのだ。

そしてそれがスタンダードになっていくのだ。

 

フロンターレの背中に手を掛けたマリノス。このまま首位の座からフロンターレを引きずり下ろすことができるのか。スリリングで魅力的なアタッキングフットボールでどこまでいけるのか、とても楽しみだ。

 

 

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【判断を強要する速さ】J1第24節 横浜F・マリノス vs 大分トリニータ

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今回はJ1第24節マリノス×トリニータのマッチレビューを行っていきます。

内容は以下のようになっています。

 

Chapter1:トリニータの守備について

1−1:敵陣の守備

1−2:自陣の守備

Chapter2:トリニータの攻撃について

Chapter3:「速さと適応」マリノスの攻撃

3−1:左のローリング

3−2:チャンネル攻略とリスク管理

 

では早速この試合について話しを進めていきましょう!

 

 

 

 

スターティングメンバー

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Chapter1:トリニータの守備について

まず触れていかなければならないのは大分トリニータの守備だろう。トリニータはマリノスの速さを止めるために、守備の変更を行い(攻撃のスタンスも変えたけど、守備の準備の方が攻撃に移る際に重要な気がした)試合を進めていた。

その守備の準備は2つあり、大きくは敵陣と自陣でやり方が変わっていた。

ではそれぞれ、どのような守備を行っていたのだろか。

 

1−2:敵陣での守備

大分トリニータは基本的に5−4−1で場所を埋めてブロックを作ることが多いのだが、この試合では前から当て嵌めて、ショートカウンターを打ち込むことを狙っていた。

ではどのようにしてハイプレスを完結させようとしていたのだろうか。

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ハイプレス時は4−2−3−1へ

まずハイプレス時は4−2−3−1もしくは4−1−2−3に変形する。こうすることで、完全にマリノスのビルドアップと当て嵌めて、後方からの組み立てに制限をかけていく。

 

実際にマリノスはこの敵陣と自陣との可変で、立ち上がりは特に混乱していた印象だ。

 

ではトリニータは前から当て嵌めてどこで、どのようにしてボールを回収しようと考えていたのだろうか。

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ハイプレスのスイッチ

ハイプレスのスイッチになるのは、基本的に『SHの外切りのプレス』になる。例えば上の図のように、CBに対してSHが外切りのプレスを行うことで、CB間のパス交換を強要させる。

これでパスを受けたCBに対してはCFがプレスをかけることで、CBをどんどん押し込んでいく。

さらに追い討ちをかけるように、SBにはSH、CHにはOMF(もしくは前に出てきたCH)が近くに立つことで、そこの選択肢を無くす。これでWGへのロングパス(上のパス)を選ばせることで、勝負を仕掛けてボールを回収する。

特に仲川 vs 三竿の所に誘導するために、SH増山がCB畠中に外切りプレスを仕掛けることが多く、CBチアゴを敵陣奥深くに押し込んでロングパスを蹴らせるように仕向けていた。

これで回収して、ショートカウンターを仕掛けてチャンスを創出しようとしていた。

 

では自陣でブロックを作る時はどのようになっていただろうか。

 

1−2:自陣での守備ブロック

敵陣のプレスが嵌らなかった時は、まず押し戻すことを考えていたトリニータ。実際にバックパスを選択させて、その間に立ち位置を整理して次の守備のフェーズに移っていた。そのフェーズというのが自陣での守備ブロックだ。

ではどのように守備ブロックを形成していたのだろうか。

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自陣での守備ブロック

自陣での守備ブロックは5−4−1のような立ち位置となる。これははっきりと表せるものではなく、その理由としてSH(WBかも)に入った香川と増山のタスクに大きく関係している。

そのタスクというのが『SBについて行け』というものだ。このタスクがあったので、SBの高さによって、フルバックの立ち位置になったり、2列目に入ったりと、基本的に外側と1つ内側のレーンのSBのマーク担当を行っていた。

 

さらに前半(同点になるまで)はボールの出ところ、特にCHに対しても制限をかけていた。だからこそ、CH1枚とCFがCHの近くに立つことが多く、CBにボールを持たせることを許容した。

これで縦パスを打ち込む場所をなくして、ミスを誘発させようと試みていた。だがこれは上手くいっていたとは言い難く、マリノスのオートマチックな判断によるプレーテンポの速さとそれに伴うローリングにより、掻い潜られていく。(Chapter3で触れる)

 

では次はトリニータの攻撃のスタンスについてを触れていこう。

 

Chapter2:トリニータの攻撃について

トリニータは攻撃に関しても元来のやり方を捨てて、勝ちに拘った。それが見ていて分かるように、下から丁寧にプレスを剥がしていくのではなく、ロングパスを連発した。なぜこれを連発したのか。

それはマリノスのハイプレスをひっくり返すことを目的としており、1stプレスプレーヤーとそれに連動して前に出てくる2ndプレスプレーヤーをひっくり返すことで、晒されたCBと勝負することを望んでいた。

だがこれも上手くいったとは言い難く、マリノスのボールホルダーへのプレッシングの速さに苦しみ、ロングパスに飛距離を出すことができず、CBの手前に落ちることが多かった。こうなると、CBを晒すことが難しくなり、難なく回収されてしまう。

さらに、ボールホルダーに制限を掛けられてしまうので、精度も落ちることも大きく関係してしまっていた。

これらを加味すると、上手くいっていたとは言い難いが、それでも当初の狙いで何度かチャンスを作り出すことはできていた。

 

Chapter3:『速さと適応』マリノスの攻撃

この試合でもマリノスは速さを売りにトリニータの判断を上回り、さらにトリニータのハイプレスにも適応していく。

ではその対応はどこにあったのだろうか。

 

3−1:左側のローリング

まずは左側のローリングだ。これで迷わせるのがトリニータSHとOMF(出てくるCH)だ。

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CHとSBの入れ替わり

このようにCBに対してSHが外切りのプレスを行うと、その時点でSBとCHが入れ替わる。こうすることで、CHのマークを担当しているOMF(ST)が外までついていくか迷うことになる。これで、一瞬マーカーが外れると、CB畠中から中に入ったSBへ縦パスを打ち込む。ここに遅れて中央に残ったCHがプレスをかけてくるのだが、SB→CHのレイオフでプレスをリセットすることができていた。

そしてここからCFもしくはOMFのピックアップで、スピードを上て攻撃を行えるようになっていた。

 

また逆SBが内側に絞っているので、ここもプレス回避の出口になっていた。その方法はSBに入った時点で対角にCBにバックパスを供給することで、逆SBまで届けることができる。この方法でもプレスをリセットすることができていた。

 

3−2:チャンネル攻略とリスク管理

ハイプレスを回避できるようになったマリノス。次はチャンネル攻略を行っていく。このシーン、よく分かるのが30分の前田のゴールだ。

よく見るマリノスのチャンネル攻略のシーンなのだが、ここにはCHとCB、SBの関係が隠されている。

その関係というのがリスク管理のために2CB+CHもしくは逆SBを残した2−2のブロックを作ることにある。

このゴールのシーンではCH扇原がボールサイドまで流れてきていて、CH岩田がOMFのような振る舞いをしていた。

ここで重要なのが逆SBの和田の立ち位置だ。彼がかなり絞り込んでCHの振る舞いを見せることで、2CBとSB和田、CH扇原で2−2のブロックを形成。これでボールを奪われたとしても、圧縮が可能になって広い方へ展開されることが少なくなる。これがリスク管理の話だ。

 

ではチャンネル攻略はなぜできるのか。それはトリニータSBとSHに対して数的優位を作り出すことができるからだ。上記のように、CH扇原が3列目(ボールの出ところ)、CH岩田がOMFの振る舞い、幅をSB小池、内側にWG仲川がポジションをとる。

これでトリニータSBとSH(もっというとCB)に対してマリノスは2CHとWG、SBの数的優位の状態を作り出すことができ、必ず誰かがフリーでボールを受けれる。

これで前田のゴールはCH扇原からライン間でフリーになっていたCH岩田への縦パスを合図にスピードを上げてチャンネルを攻略していた。

 

この立ち位置の取り方もオートマチックになっているので、プレースピードが上がる要因になっている。

 

速さを見せつけるマリノス

僕的に「強い」よりも先に出てくるのが「速い」だ。判断もプレースピードも、プレッシングも、適応も。全てに置いて速い。そしてそれはがむしゃらな速さではなく、オートマチックな、適切な速さだ。このプレーテンポで試合を進められると、対戦相手は嫌でもテンポを上げられる。この試合もトリニータは息つく暇もなく、プレーと判断を強要された。

僕もプレーをしていたので、この試合のトリニータの息苦しさがとても理解できたし、マリノスと対戦するのは想像するだけでも嫌だと感じる。そのぐらい、判断を強要される速さだ。

ぜひ皆さんもこの試合を見てみて息苦しさを直に感じて欲しい。

 

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【出口はどこへ…?】Premier League開幕節 ブレントフォード vs アーセナル

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皆さん、どうも。

とうとう始まりましたね、Premier League!

早速、開幕戦のマッチレビューを行いましたので、ぜひ一読ください!

内容は以下のようになっています。

スターティングメンバー
Chapter1:ブレントフォードの守備
1−1:敵陣でのプレッシングについて
1−2:ミドルブロックについて
1−3:ディフェンディングサードでは?
Chapter2:ブレントフォードの前進vsアーセナルの守備
2−1:アーセナルの守備について
2−2:対角を使うブレントフォードの前進
Chapter3:アーセナルの修正
3−1:個人修正を加えた12:00〜の攻撃
3−2:チーム修正について

以下のリンクからどうぞご覧下さい!

 

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【お知らせ】

誠に勝手ながら、海外サッカーはnote中心で行っていきますのでnoteのフォローも宜しくお願いします。このブログでは引き続きJリーグ中心に運営していきます!

どうぞこれからも宜しくお願いします!

【再現性と創発性】J1第23節 湘南ベルマーレ vs 鹿島アントラーズ

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中断期間が明けて再開したJリーグ。各クラブ、準備する時間は十分に得ることができたはずだ。だからこそ、どのチームも再開明けの一発目に重きを置いていたはずだ。

できることならば内容を伴って勝利を得ることができればよかったのだが、内容では湘南ベルマーレが圧倒、結果は鹿島アントラーズというものになったベルマーレvsアントラーズ。

明確に再現して勝利を目指したベルマーレと、創発性、突発性を中心に勝利を目指したアントラーズ。

今回はこの試合について考察を広げていこう。

 

 

スターティングメンバー

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Chapter1:ロングパス

強風雨の中で行われた試合は、浮き玉、特にロングパスには苦戦を強いられた両者。このような状況の中でも、ロングパスをうまく使ったのは湘南ベルマーレで、苦戦を強いられたのは鹿島アントラーズという印象を僕は受けた。(それでも犬飼のスーパーミドルは追い風を利用したものだったけど。にしても凄かった!)

 

ではまずはロングパスをうまく利用した湘南ベルマーレについてを考えていこう。

1−1:ロングパスを繰り返す湘南の攻撃

湘南ベルマーレの攻撃はCFウェリントンを目掛けてロングパスを送り込んで一気にボールを前進させて、2ndボールを回収して早い攻撃に移行するというものだった。

では彼らはどこを狙って前進を行っていたのか。

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ロングパスと2nd創出

基本的にベルマーレはGK谷からCFウェリントンへのロングパスが多かった。(種類としてゴールキックやフリーキック、バックパス)

この時にCFウェリントンのボールの受ける位置は中央のレーンであり、アントラーズCB⇆CHのライン間だ。ここでロングパスを受けることが基本となる。そして2ndボールを作り出すのが、ハーフスペースだ。

ここに人を配置したかったので、この試合は3-1-4-2ではなく、3-4-2-1だったのではないだろうか。

そして以下のように2ndボールを回収していく。

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反応するのはWBとST

このようにCFウェリントンがボールを流すと、そこに反応するのがSTとWBだ。特に前向きに反応できるようにWBがロングパスの移動中に距離を斜めに詰めるという決まりが確実にあった。これでベルマーレはいくつかの下のパスを省略して、一気に鹿島陣内に入ることを狙っていた。

 

そしてここから、サイドを取って攻撃を仕掛けるように設定されていた。(この攻撃についてはChapter2で触れる)

 

このようなシーンを確認できるのが、3:30〜、11:20〜、17:53〜(プレースキック)、35:07〜もそうだろう。これらのシーンがわかりやすいと個人的には感じた。

 

では次はなぜ、アントラーズが2ndを拾えず、サイドを取られる現象が起きていたのかを考えていこう。

 

1−2:ロングパス→2ndを拾えない鹿島

CFウェリントンにロングパスを打ち込んでくる湘南に対して、アントラーズはCB犬飼を当てて対応を行う。CB林よりも空中線の強い犬飼をCFウェリントンに当てに行くのは定石だ。

だがその次の展開と周りの準備に問題があり、これが原因でボールを回収することができなくなっていた。

まずはCFにロングパスが入った時点についてを考えていこう。

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CHの押し戻しが曖昧

先ほども触れたように、CFに対して対応を行うのがCB犬飼。これに連動して当然のように他のバックラインの選手は絞ってカバーポジションを取っていく。バックラインの連動を完璧だ。

では次は中盤に目を向けていこう。まず最初の問題はここにある。アントラーズは前からプレスを嵌め込みたい(今はどこで嵌めにいくのかが曖昧)感じなので、湘南CHに対してCHレオと三竿が前に意識が向き、自然とポジションが少し高くなる。

ここに大きな原因があり、赤のエリアバックライン⇆CHのライン間が大きく開いてしまい、さらにCB犬飼⇆CHでCFウェリントンを挟み込むこともできなくなってしまっていた。まずこれがアントラーズがロングパスに対してうまく処理を行えなかった原因となる。

 

次はその先の2ndボール回収の場面に移っていこう。

この場面でも原因となるのが、押し戻しになる。結論、この押し戻しがないと、人を集めることができず、頭上を越してひっくり返されるだけになってしまうのだ。それか、そもそものボールの出ところを潰しに行かないと、ボールを回収することは難しくなる。

この試合のアントラーズのように、バックラインと2ndラインが分断されてしまうと、簡単に2ndボールを回収されてしまう。

ではどこで押し戻すべきだったのだろうか。

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押し戻しのないSH

このようにハーフスペース(厳密にはSTのところ)周辺にボールを落とされると、そこに対応にいけるのは絞ったSBのみになる。これは上の図を見てもらったらわかるように、SHの押し戻しがない分、その背後に空間ができてしまうからだ。

この空間が広ければ広いほど、STはボールを扱いやすくなり、ボールを自分のものにする確率を上げることが可能になる。

 

だからアントラーズはロングパスから2ndボールを作られた時にボールを回収できないことが多くなっていたのではないだろうか。

 

Chapter2:鹿島がサイドを取られる理由

ではアントラーズがサイドを取られてしまう理由についても考えていこう。

これは2つのパターンがある。

まず1つ目が2ndを回収されてしまった時だ。まずはこれについてを解説していこう。

2−1:WBで起点を作られる

2ndを回収されてしまう理由についてはChapter1で解説した通り。ここでは2ndを回収してからのことについてを触れていく。

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WBの外起点

先ほども触れたように、STでボールを拾われるとそこに対応を行うのがSBになる。こうなると、大外のWBが少し前に出るスペースを得ることができる。これで湘南WBはSHに対して斜め前の関係になる。

これでアントラーズはSHを完全にひっくり返されて無力化されている状態になる。だからここでWBが起点を作られてしまうのだ。そして以下のように前進されてしまう。

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2度追いをかけるSBの背後

このようにWBで起点を作られ、大きな展開をされたくないのでSBが2度追いをかけてWBに圧力をかける。当然のことながらSBとWBには距離があるので、WBにはそこまでプレッシャーを与えることは難しい。

だから、SBの背後をSTに使われてしまう。ここで問題なのがロングパスを打ち込まれた時点でCHを押し戻し切れていないので、CHのSTに対する対応は敗走の状態になる。これで不利な状況で守備対応を行わなければならくなっていた。

 

さらにこの試合で気になったのが、SBとCHのマークの受け渡しの曖昧さだ。SBは場所を空けたくないので、背後に抜けようとするSTを意識することがあり、CHと被ることが何度か見られた。仮にマークの受け渡しがスムーズになっていたならば、WBに対してはCHが出ていくことができただろう。(マリノス戦はCHが外側の対応をするように明確なものになっていた)

 

ここのマークの受け渡しも背後を取られてしまう要因の1つとなっている。

これがよくわかるのが11:20〜FKを与えてしまうシーンだ。

2−2:広がるCBのビルドアップ

アントラーズは3バック、WBを配置するチームのビルドアップに滅法弱い。良い例がサガン鳥栖との試合だ。彼らもまたCBが広がりを持つチームだ。

ベルマーレもCBが広がりを持つことで、相手を動かして背後を突くように設定されていた。

この現象がよく起きていたのが、湘南右サイドから左サイドにボールを動かされた時によく起こっていた。

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右から左に動かされた時

このように右から左に動かされる時、右SHのアラーノはCHを捕まえるタスクを課されていた。だから広がりを持つCBに対して内→外のプレスを行うことになる。このプレスを確認してSB常本はWBに対して前に出て対応を行う。

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IHに背後を使われる

このようにWBに対してSBが出ていくとその背後が空いてくる。ここを使うのがSTになるわけだが、ここでもマークの受け渡しが曖昧になっていた印象だ。ここでのマークの受け渡しというのがCHとCB間の受け渡し。

CHはマークを受け渡しCBが外に対応にいくと、縦スライドでCBが空けた場所を埋めようという動きを見せ、一方のCBはその場に留まって中を埋める動きを見せる。

この一瞬のすれ違いで背後を取られる(取られそうになる)ことになっていた。

 

これは36:27〜のシーンがよくわかるので、ぜひ確認してもらいたい。

 

アントラーズはこれら2つのパターンでサイドを取られることが多くなっていた。とりわけ2−2のパターンはこれまでも見られているものなので、そろそろ解を示して欲しいと感じている。

 

再現性を生み出せるかも?

基本的にアントラーズの攻撃は創発性・突発性が中心のものになっている。いわば再現しろ!と言われても難しいものだ。それもそれで、そこか!とかそうくるか!とか、観ていて面白いが、やはり脆さがある。トリニータ戦やこの試合の65分あたりまでは場所を埋められてしまうと、キツいものがある。ここが脆さと言えるだろう。

だが、僕がこの試合で再現性を生み出せそう!と感じたシーンがある。それが8:53〜の攻撃だ。

意図してか意図せずか、このシーンの配置はとても良かった。SB永戸の配置で2ndラインを越え、SH土居でCHを動かす。そしてSBでボールを受けるとSHアラーノ(アラーノじゃなくてOMF荒木でも代用できる)が1つ内側のレーンでボールを引き取る動きを見せる。

ここでCBを釣り出せるので、3オンラインを応用してその背後のスペースにSH土居が遅れて入ってくる。これで一気にスピードアップをして見せた。

悲しいかな、この攻撃は8:55〜のシーンしか見受けることはできなかったが、ボールと同サイドに人を集めるという基盤があるのならば、こういったシーンは意図的に作り出せそうだ。

きちんと人の配置とタイミングを合わせていけば、再現性のある攻撃を組み立てられる気がする。

思わぬ形での逆転勝利とこの再現性を生み出せるかも?というのがこの試合のアントラーズからのプレゼントだったのではないだろうか。

湘南ベルマーレからすると、手応えのある一戦だったに違いないから、悔しい敗戦になっただろう。

順位と内容。それぞれ苦しむところがある両チーム。果たしてここからそれぞれの課題を克服し、上昇していくことができるのか。これからも動向を見守っていきたい。

 

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ではまた次回の記事でお会いしましょう!

 

【狙いと挑戦】コミュニティー・シールド レスターvs マンチェスター・C

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この試合が行われると「あぁ、今季がとうとう始まるんだな!」と思う方が多いだろう。

昨季のリーグ王者とFA杯王者が戦う、今季一発目の試合。それがこのコミュニティー・シールドだ。

今回、対戦することとなったレスターとマンチェスター・シティ。ユーロやオリンピックの影響もあり、ベストメンバーを揃えることのできないシティ。それに対してメンバーがほとんど揃っているレスター。

ベストメンバーか否かの差はあれど、試合内容はとても興味深く、挑戦と狙いがよく分かる一戦となった。

 

では早速、この試合について考えていこう。

 

 

スターティングメンバー

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Chapter 1:レスターの戦い方

まずは見事に勝利を収めたレスターの戦い方についてを考えていこう。

彼らは攻守ともに明確な狙いをもってこの試合に臨む。

 

1-1:攻撃の狙い

まずは攻撃時の方法から考えていきたい。そこでまず触れなければならないのが、攻撃時の可変についてだ。まずは以下の図に可変した時の配置を表してみた。

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攻撃時の可変

レスターはこのように変形することで、シティの守備を掻い潜っていく。それができるようになっていたのが、SHペレスが内側に入ることでDMFの脇をOMFマディソンと取ることができるようになっていたから。

さらに、シティのプレス人数に対してSBバートランドが下り目の位置に止まることで、数的優位を作り出してプレスの逃げ道を作り出していた。

これでまずは「配置的な優位性」を取ることを考えていた印象だ。ではここからどのように前進していたのだろうか。

まず話していきたいのが、レスターが最も行いたかった前進方法から。

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動かすためのCBとGKのパス回し

まず最初の段階で行うのが「2トップを動かす」ということだ。上の図のように、GKとCBのパス回しを行なって、シティの4-4-2の「2」の選手を動かしていく。

これを行うことで、以下の場所に最終的にスペースを作り出すことを狙っていた。

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DMFの脇にスペースを!

シティの守備スタンスも大きく関係しているのだが、GKまでボールを戻すとシティのFWはそこまでプレスを行うようになっていた。

例えば上の図のように、FW(押し出されたIH)がGKまで外切りのプレスを行うと、押し出されたFW側のWGが内側に絞ることでCHをマークし、IHも前に出てCHを捕まえる。これで、前にシティの選手を釣り出す。

この誘い出しにより、その背後のDMFの脇にSHペレスとOMFマディソンがポジションを取ることが可能になる。ここにGKシュマイケルからミドルパスを打ち込むことで、一気にシティの選手をひっくり返す狙いがあった。

そしてここから、左SHバーンズの推進力を生かす攻撃を中心にゴールまで迫っていた。だからこの攻撃に関連して、CFヴァーディーが右抜けをすることが多かった。

 

空いている場所を使いながら、右から左に持っていく攻撃が最も行いたかった攻撃だろう。

だが『右に持っていく』ことを潰された時にレスターは次点を用意していた。この試合でより多く見受けれたのがこの方法だ。

ではどのようにプレスを回避していたのだろうか。

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右を消された時

右側を消される場合も同様に、GKとCBでボールを回していく。だがここで立ち位置が違うのが、両SBの立ち位置だ。特に左SBバートランドは下り目に止まるのではなく、少し高めの位置にポジションを移す。

これを行うことでCBソユンチュが広がりを持つことができるので、プレッシングプレーヤーと距離を確保することが可能になっていた。

だが、シティはIHとWGで中央を消しているのでボールを引き取ったCBソユンチュは外側の選択肢またはロングパスの選択肢の2つに絞られる。

ここでロングパスを蹴らされてしまうと、シティの守備の勝ちで、実際にシティはソユンチュにロングパスを蹴らせることでボールを回収していた。

ではソユンチュが外側を選択した場合はどのようにプレスを回避することができるのだろうか。

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バートランドでのプレス回避

ここで肝となってくるのがSBバートランドだ。昨季、チェルシーにチルウェルを引き抜かれたレスター。上手くやりくりをして彼らはシーズンを戦ったが、やはり「左SB」に苦しんだ。そして今季、獲得したのがバートランド。彼の個人のプレス回避の能力もまた非凡。

だからこそ、CBソユンチュからボールを受け、WGマフレズのプレスを呼び込んでCHウンディティへ斜めのパスを差し込むことでシティのプレスをリセットして見せた。

もちろん、この時にSHバーンズがSBを、OMFマディソンがDMFをピン止めしていることを忘れてはならない。このピン止めがあるからこそ、中央でボールを引き取った時にスペースが生まれていたのだ。

この方法で、レスターは残っているシティのバックラインと勝負をしていた。

 

1-2:守備の方法

では次は守備の方法を考えていこう。これはシティの振る舞い(次項のシティの挑戦で詳しく解説)に大きく関係しているのだが、ここではレスターの守備を中心に考えていこう。

 

まずネガトラの部分から考えていきたい。可変に関係して攻撃参加の多かった右SBのペレイラ。攻撃が終わると、彼を押し戻す時間を稼がなければならない。だからこそボールを失った瞬間に、近くのCFとSHとOMFの誰かでボールホルダーに対してプレスを行い、余った選手でまずは近くのパスコースを消すことが決まりとしてあった。

このようにしてまずはSBペレイラを押し戻す時間を稼ぐ。そして以下のようなミドルブロックを基盤としてシティの攻撃を受け止めていた。

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中央を消していく守備

基盤となっているのは「中央消し」だ。そのためにまずはCFとOMFでDMFを消す立ち位置をとる。まず試合最初に行なっていた立ち位置は「横並び」となっていた。

さらにSHはSBを気にするタスクがあり、特に左SHバーンズはSBカンセロのマークの意識がより強くなっていた。これで、IHにはCHがマークを行うことで、外側に誘導。そして作り出しているのが、SB vs WGの1vs1の状況だ。(暗示的にはWG vs SB+カバーリングCBの数的優位)

外側のWGもしくは無理やり打ち込んでくる中央へのパスを奪うことをレスターは基盤として考えていた。

だが、実際にはそう上手く行かなかった。それはシティの動かし方に大きく関係している。

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三角形の数的不利

まずレスターが苦しかったのが、トライアングルでの数的不利だ。上の図のようにCFとOMFのところとCHのところで2つのトライアングルの数的不利を作られてしまう。

さらに、ここでSB(特にメンディ)がかなり中央に絞り込むようになっていたので、SHもそれにつられて中に入り込むようになっていた。

もちろんレスターは能動的に守備を行うチームなので、準備が整うと守備を開始していく。だが以下のようにその守備を攻略されてしまっていた。

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CHの脇を使われる

このようにCBに対してCFとOMFが牽制に行くと、DMFを消すためにCHが一枚前に出るように設定されていた。これで残ったCHに対して2枚のIHになるので、数的不利な状況になる。これに追い討ちをかけるように、IHがCHの外側に流れることでボールを引き取って前進されてしまっていた。

だがここでIHが流れるタイミングが早いと、IHは後ろ向きのボールの引き受けになるので、CHがそのまま流れて潰すことも可能な場面もあった。

 

もちろん、守備の修正も行なっていく。まず前半のうちに行なった守備の修正というのが、CFとOMFの縦関係に立ち位置にすることだ。DMFフェルナンジーニョ番を明確に付けるためにこのような修正を行う。これを確認できたのが23:16秒のことだ。これで、CHがDMFまで出ていくという状況を未然に防ぐことで、CHの横のカバーを明確にした。

 

さらにハーフタイムでの修正。これは絞るSBの対応の変更が見受けられた。どのように変更したかというと、SBに対してCHが縦スライドで対応を行うというものだ。

これは横の距離よりも縦の距離の方が近いので、この方法を採用したのではないだろうか。当然のことながら、これに関係してSHのタスクも変わり、サイドに流れるIHをマークするタスクに変わっていた。もちろん、流れの中で修正後の前半のような形もあり。後半から新たにCHの縦スライドの守備が見受けられるように。これは45:46秒で確認できる。

 

このようにしてレスターはシティの攻撃のスピードを吸収しながらサイドでボールを回収することを考えた。そして入ってくるボールを跳ね返し、早い攻撃も仕掛けることも行なっていた。

修正・対応を見せながら見事にシティの攻撃を0に抑えて見せた。

 

Chapter2:シティの挑戦とは?

この試合で起きていたことは、まさにグアルディオラの新たな挑戦と言えるだろう。SBをかなり中に絞らせることDMFを横に動かさずに縦の動きを加えさせることIHの立ち位置を外寄りのハーフスペースにすることWGに明確に幅を取らせ続けることをこの試合で行なった。

ではこの挑戦にはどのような考えと狙いがあったのだろうか。それについて考えを広げていきたい。

まずはこの試合のシティの基本的な立ち位置についてを確認していこう。

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この試合のシティの基本の立ち位置

Chapter1でも少し触れたが、シティの基本的な立ち位置はこのようになる。特に左SBのメンディが中に絞ってプレーすることが多くなっており、DMFフェルナンジーニョとダブルボランチのような振る舞いをしていた。右SBカンセロはまず初めはバックライン付近にポジションを取ることが多く、内側に絞ることはメンディよりも少ない印象を受けた。

さらにIHがCHの外側に立つことが多くなり(これはレスターとの兼ね合いかも?)、CFトーレスがライン間をうろつくようになっていた。

ではこのような立ち位置をとる狙いを考えていこう。

 

2-1:SBのインナーラップの促し

まず個人的に考えたのがSBのインナーラップの促しだ。より走れるSBが中をランニングすることで、外側の選手を対峙する選手に対して優位に立たせることができる。(選択肢を増やし、DFに見るものを増やさせるから)

この立ち位置にすることで、SBメンディのランニングの強度と迫力を存分に生かすことが可能になる。

ではなぜそれが可能になるのだろうか。

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動かして中にスペースを作り出す

このようにIHが外側に流れることでCHを外側に引っ張り出すことが可能になる。これはSBが中に絞っているので、大外のレーンにスペースがあるからIHが外側に流れることができる。

ここで注意すべきなのが、WGが下がってここを使うことは少ないということだ。(多分キャラクターによるけど)

仮にここでWGが下がってくると、SBを引き連れてきてしまうのでレスターのプレスの前へのベクトル強めてしまう。そもそもサイドにIHが流れなければ、CHを中央から動かすことができないので、ここでWGが下がることが少なくなっていた。(後にWGが下がるパターンも解説)

 

WGが下がってこない理由は他にもある。それがSBのピン止めだ。仮にここでWGが1つ内側のレーンに入っていると、SBからCBにマークを受け渡されるので、SBがサイドに流れるIHにプレスを行えるようになる。だからこそ、WGが幅を作ってSBをピン止めすることが大切になってくる。

 

これで中央にスペースを作り出す。

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選択肢を増やせる

このようにSBが初めから中に絞ってポジションをとっていることで、SBメンディはそのまま中を駆け上がることができる。ここで3列目から遅れて入ってくるので、守備者はかなり捕まえにくい。さらにメンディの走力と迫力を持って、サポートを行うことができるように設定されている。

グラルディオラは外側でメンディの走力を生かすことを昨季考え、今季はもしかすると、「内側のランニング」で彼を生かそうとしているのかもしれない。この試合でも何度か見せたこのランニングは、個人的には効果的に映った。

 

2-2:IHのサイドの抜け出し

次に考えていきたいのがIHの背後の抜け出しだ。これは1−1で考えたことと相反するじゃあないか!と思う方もいるかもしれない。だが、これには条件がある。それがWGで時間を作れることという条件だ。

この配置からのこの攻撃方法を見ると、イングランド最高額でグリーリッシュを獲得した理由が分かる。

 

グリーリッシュはボールを持って時間を作ることのできる稀有な選手だ。スピードでぶっちぎるタイプの選手ではなく、合気道のように相手の逆を突き、緩急でスルスルと尚且つパワフルに前進していく。

そして何度もいうが、キープする、時間を作るボールの持ち方ができるので、この項の方法を採用することができる。

だから以下のような攻撃を仕掛けることが可能になる。

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WG→IHの抜け出し

このようにWGが下がってボールを引き取ることで、SBを釣り出して背後にスペースを作り出す。そこにIHが抜け出すという簡単な方法だが、これには「WGがキープできる」という条件が必須となる。

例えば2シーズンの優勝時のマリノス。彼らはSBが内側に絞ることでWGへのパスコースを創出。そしてボールを引き取るのが仲川や遠藤。少しシティと意味合いは違うが、ドリブルの上手い選手に勝負させるという方法で圧倒的な攻撃力を誇った。(当然、他にも要因はたくさんある)

この試合のWGグリーリッシュ。彼が投入されてからこの方法は多く見受けれた。これはグリーリッシュの時間を作れるという能力があり、IHにベルナルド・シウバというフリーランの上手な選手がいたことで、この攻撃が多く見受けることができたのだろう。

条件付きにはなるが、この攻撃方法も明確に挑戦していたことだろう。

(もちろん、グリーリッシュが入った後も1−1の攻撃も仕掛けていた)

 

2−3:バックスからの縦パス

そしてこれも挑戦していたことだ。ここで重要となってくるのが、DMFの縦の動きとCFの降りてくる動きだ。ここにこの試合、DMFを横に動かすことが少なかった理由が詰まっていると個人的には考えている。

ではなぜ、CBから縦パスを打ち込むためにこれらの動きが必要だったのか。

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DMFの縦と連動

DMFが縦に動くことでCHの絞りを食い止める。これがDMFの縦の動きが必要な理由だ。こうすることでバックラインから一気にCFへの縦パスのコースが開くようになる。これはもちろん、IHがサイドに流れることも必須になる。

こうすることで、CFがボールをピックアップすることが可能になっていた。

仮にシティがケインを獲得するのならば、このパターンの精度ももっと上がってくるのは間違いない。ケインはトッテナムで、下がって起点の役割もになっていたので、難なくこのパターンに馴染むだろう。

さらに得点能力も申し分ないのだから、仮にシティがケインを獲得するとなると、末恐ろしいチームになってしまう…

 

2−4:IHのサポートの役割

もちろん、SBが内側に絞ることでIHのサポートの役割も果たすことができる。2−1や2−3のようにIHがサイドに流れてボールをピックアップした時。ここで前を向くことが難しいようであれば、中に絞ったSBが逃げ道になり得る。このパターンは左サイド(メンディ側)ではなく、右サイド(カンセロ側)でよく見受けられたパターンで、カンセロのサポート能力が高いということが改めて証明される試合だった。

 

2−5:ネガトラのカウンター対策

SBが中に絞ることの理由はもちろん守備にもある。SBが内側に絞ることで、予め中央を埋めることが可能になるのはいうまでもないだろう。中央にポジションを取っていることで、カウンターを打つチームは一度外に展開しないといけない状況に陥る。これがグアルディオラがきっと考えていることで、ダイレクトに縦にプレーさせるのではなく、横に一度プレーさせることで、被カウンター時のスピードを落とさせようという狙いがあるように僕は感じた。

横にプレーさせることで、味方が帰陣する時間を稼ぐことができる。これが被カウンター時に大切な事項の1つとなる。

さらに、この狙いに気づけたのが、バックラインのスタンスが「まずは背後を早めに埋める」というものだったからだ。個人的な印象だと、昨シーズンのシティは前に出て潰すことが多いように感じた。その駆け引きの上手いディアスがいたからこそ、完結できてしまったのではないのだろうか。

だから今季は「できてしまった」部分を改善すべく、このような立ち位置とスタンスを採用しているのかもしれない。

 

2−5−1:SBが中に入るジレンマ

これにはジレンマが存在する。そのジレンマというのが一気にSBの背後、CBの脇のスペースにボールを落とされた時とこの試合のレスターのように、SHやWGに圧倒的なスピードを持つ選手がいた時だ。

スピードのある選手が1つ内側から外側に抜け出された時にSBもCBも背走してしまうこと、CBが外側の対応にいくとSBが斜めにカバーポジションに戻らないといけないので、マークの受け渡しとズレが生じる可能性が高くなってしまうということが挙げられる。

このジレンマはこの試合でよく見受けられたことだが、メンディとウォーカーというアスリート能力が高い選手がいるともしかすると、解決するかもしれない。

リーグが開幕し、シーズンが進んでいくにつれて、このジレンマ解消方法は見えてくるのかもしれない。

 

リーグ開幕が楽しみだ!

狙いと挑戦が見え、その中でもインテンシティの高い試合で、とてもエキサイティングな試合となったコミュニティー・シールド。しっかりと今季最初のタイトルを獲得したレスター。一方でタイトルは逃してしまったが、挑戦し、新たなフットボールを見出そうとしているシティ。

より一層、リーグの開幕が楽しみになる一戦だった。時間がある方、ぜひともこの試合を確認してみてほしい。

 

最後までご朗読ありがとうございました。

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ではまた次回の記事でお会いしましょう!

 

【スペイン戦の守備考察】オリンピック 準決勝 日本 vs スペイン

 

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悔しい結果となった先日の準決勝。スペイン戦の日本代表、いやこの大会の日本代表の『勝利』にこだわる執念、全てを賭け、全てを出し切るその姿に、心を打たれる方は多いのではないだろうか。少なくとも僕は、全力で勝利を掴みにいくその姿に心を動かされた。

 

『どんな形であろうと勝利を掴みにいく』という勝利の飢えをチームに根づかした森保監督。とやかく言われることが多い監督だが、僕はとても良い監督だと思う。

その中でも森保監督が根づかした守備。スペイン戦こそ負けはしたものの、これまでの日本代表の中で歴代屈指の守備の堅さを誇っているのだろう。

サンフレッチェ広島がリーグを制したときも、サンフレの守備は森保監督の手により、激変し、元々あったロマン満載のアタッキングフットボールに安定感が加わった。その結果がリーグ優勝だ。

 

そんな「守備の監督」がスペイン戦でどのような守備プランを用意し、勝利に拘ったのか。

今回はこれについてを考察していこう。

 

 

 

日本代表の守備考察

早速、スペイン戦の守備の考察を行なっていこう。

日本は基本的に人を意識した守備を行っていた。高い位置からは基本的にプレスは行わず、ミドルブロックを基本としていた。こうすることでスペインにボールを持たせて、カウンターで仕留めるというプランを組む。

 

唯一、高い位置からプレスをかける条件が敵陣リスタートの局面だけだ。このときだけ、明確に高い位置からプレッシングを行い、ボールを奪いに行っていた。

 

チームとして奪いところとして設定していたのが、CBからのIHもしくはCFへの縦パスだ。これを設定した理由として、CBにボールを持ち出させ、縦パスを打たせることで持ち出したCBの背後をダイレクトに突くためにこのように設定していた。

 

ではこのチームとしての狙いを実行するために、個人守備の決まりはどのようになっていたのだろうか。 

 

  • 敵陣ではOMF久保はDMFを手前に置き監視する。CBが自陣に持ち出してくるとDMFを背中で消しながらCBに牽制。自陣深くではCF林と横並びで2トップの立ち位置へ。

 

  • CF林は2CBへ牽制を行う。牽制する際、片側CBを消しながら牽制を行うことを基本とする。(ガルシアにプレスをかけ、トーレスに持たせるように誘導しているようににも映った)

 

  • SH旗手と堂安の守備時の立ち位置は内側に絞ってハーフスペース。こうすることで中央への縦パスを消すことをまずは試みる。さらにCHやOMFが場所を開けたときにそこのカバーを行う役割を果たす。外側に誘導してSBにボールが出るとそこにプレスをかけるタスクもあり。自陣でブロックを作ったときは、SBが外側に対応にいくとそこのヘルプとカバーを行う。CHが前に出ると内側のカバーも担当。

 

  • CHは基本的にIHのマーク担当。かなり人を意識する。

 

  • SBは基本的にWGのマーク担当。ここも人を意識。1つ内側のレーンに入るWGも担当。ハーフスペースでIHと入れ替わるとマークが変わる。この場合はSHに大外のSBの対応を任せる。

 

  • CBはCFの対応を基本とする。チャレンジ&カバーの関係を常に維持。さらにCHの背後の対応も行う。外側に対応に行ったときのSBのカバーは基本的に行わない。中央3レーンをきっちり締める。この試合の肝となる重要なタスクはCBガルシアとトーレスの縦パスを奪うこと。

 

これが個人のタスクとなる。ではここから先は具体的にその現象を考察していこう。

 

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左側の守備

まずは左側の守備から考えていこう。上の図のように、決まりに則りSHが1つ内側に絞り、IHの縦パス(中央への縦パス)をまずは消す。さらにOMFはDMFを手前に添えるように立ち位置をとる。当然、IHにはCHがマークを行う。

このようにすることで、左側では基本的に外誘導を行うようになっていた。

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誘導して奪う場所

そして外誘導してボールを受けたSBに対してここに内側から外に向かってSHがプレスを行う。これでIHの縦パスの選択肢を消す。もちろん、リスク管理のためにCHがスライドをし、逆SHもかなり内側に絞ってくる。このときに忘れてはいけないのがIHのマークを引き続き行うということ。

これでスペインSBに対して縦の選択肢を残してWGに縦パスを出させる。ここの対応を行うのがSBだ。このSBで1vs1を作り出す守備は大会中、ずっと行なっていることで、この試合も例外なくこの守備を行なっていた。SBの圧倒的な対人能力があるからこそできる芸当だ。

 

これが基本的な左側の守備だ。

もちろん、スペインSBがWGに対して縦パスを打ち込まない場合もある。というよりも左側は縦パスを打ち込まないことの方が多かった印象だ。

ではスペインはどうするのか。当然、CBに戻してやり直す、角度を変えることを選択する。

この場合の日本代表の守備はどのようになっていたのだろうか。

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重要なのはCFの守備

SB→CBのバックパスを選択させたときに最も重要になるのはCFの守備だ。スペインCBはSBからのバックパスを受けるために、サイドに流れるか少し深い位置まで自陣に下がる。こうすることでスペインCBはCF林の守備範囲から外れて、ボールを引き取ることが可能になる。これでCBガルシアは『再び縦パスを打つ』準備が整う。

 

これに対してCF林はまず縦パスのコースを消す立ち位置をとる。(CBに明確にプレッシャーを与えることもあり)

こうすることで、CBガルシアからCBトーレスに横パスを出させることを選択させるように誘導。

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横パスを打たせて陣形回復

横パスの誘導が重要なものとなっており、この一本のパスの時間の間に左側に寄った全体の配置を戻すことを行う。

これで日本は陣形をリセットすることができ、再び良い状態から守備を行うことが可能になっていた。

だがここで1つ、懸念すべき点がCBトーレスにフリーになってしまっているということだ。だが日本代表、森保監督の考えは、ここでフリーに持たれることを許容していた。

 

ではここからは右側の守備を考えていこう。

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敵陣で持たれる分はプレスをかけない

まずプレスを行うときと行わないときの線引きから。基本的に上の図ように敵陣でCBトーレスがボールを保持している状況のときはプレスをかけない。そもそもここにCFのプレスは間に合わないし、無理にプレスをかけて再び左側に持っていかれてしまうと後ろの選手たちは戻した陣形をもう1度左側に寄せなくてはならなくなる。

だからこそ、敵陣でボールを持たれてしまうことは許容していた。

ではCBにプレスを開始するのはどのタイミングなのだろうか。

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持ち出し自陣に入ったときにプレス

このようにCBトーレスが敵陣から自陣にボールを持ち出したときにCBにプレスをかけていく。ここにプレスをかけるのが、OMF久保に設定されていた。久保はDMFの背中で消しながらプレスを行う。

ここで久保が出ていくことで、4−4のブロックは崩さず、しっかりと陣形を維持することが可能になっていた。

そして以下のような状況に持ち込んで、ボールを回収してカウンターに移行する。

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勝負する所は中央

勝負する所は中央に設定されていた印象だ。リスクがあるかもしれないが、そのリスクを可能な限り軽減して中央で勝負をしていた。

そのリスクの軽減というのが、CBからのラインを越えた縦パスIHをブロック外に追い出すということだ。これがこの試合の日本代表の守備の生命線となっていた。

 

まずCBからのラインを越えた縦パス。

これはシンプルに距離が長くなるので、その精度はやはり落ちてくる。さらに4−4のブロックの隙間を通さないといけないので、かなりのパススピードが必要で、受け手の止める技術も必要で、ボールを止めるのも難しくなる。(それを高精度で行うスペインは恐ろしかったし、世界とのレベルの差を目の当たりにした)

 

次にIHをブロックの外に追い出すこと。

これは縦パスを入れられた時点での、サポート、特にレイオフを消すことを考えていたのだろう。さらに受け手(CFやWG)との距離を作り出すことでネガトラの強度を少しでも落とすことができる。

 

これでCBで勝負を仕掛けてボールを回収できるように設定していた。一見、危険なパスに見えたが、見返していくとCBに縦パスを打たせることを誘導しているように僕には映った。

 

そして持ち運ばせたCBの背後にボールを落とし、そこにCF林が走り込むことで一気にカウンターへ。

 

日本代表はこのようにして守備を考えていたのではないだろうか。

 

ではここからはスペインの修正による日本代表が受けた影響を考えてみよう。

 

スペインの修正による影響

こちらはYouTubeで考察させて頂いた。こちらもご覧になってもらえると幸いだ。

 

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頑張れ、日本!

悔しい。この試合が終わって本気で感じたことだ。多くの方はこのように感じただろう。疲弊していたスペイン代表とはいえ、最後まで戦い、決勝に手をかけた日本代表。

 

『日本は守れる』

 

この試合で僕はこう確信した。もちろん、この戦い方が好きじゃない方もいるかもしれない。岡田監督の時と変わらないじゃないかと思う方もいるかもしれない。

でも僕はこのチームが好きだ。世界と戦うために、守備は絶対に必要だ。

現に結果を残してきたチームは守備が基盤にあった。だからこそ、日本もこれが必要なのではないだろうか。

アジアではこのような戦い方とはいかないが、引いた相手にもしっかりとゴールを奪っているのも事実。

ここから果たしてどのような進化を遂げていくのか。そして来年のW杯はどのような結果になるのか。

結果は悔しいが、その先の多くのものが見えた一戦だったように感じる。

 

そして、困難に本気で立ち向かう姿。本気で闘う姿。

間違いなく、僕は彼らの姿に心を打たれた。

 

なんとしてもこのチームにメダルを獲ってもらいたい。頑張れ、日本!!!!

 

 

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日本代表のプレス回避について少し考えてみる

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スペインへの挑戦権を得るために。メダルへの挑戦権を得るために。僕らに希望と興奮を与えてくれている日本代表。

今回はニュージーランド戦でのプレス回避についてを考えていこう。

 

 

はじめに

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プレス回避について

この試合で先発メンバーに名を連ねたのが左SBの旗手と左SH相馬だ。ここにこの試合の肝があったのではないだろうか。

だからこそ、日本はニュージーランドの前プレスを回避することができていたのだろう。何回も触れるがこの手助けをしていたのが旗手と相馬だ。

ではどのようにしてプレスを回避していたのだろうか。

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ニュージーランドは5-1-2-2の守備

まずは触れていきたいのがニュージーランドの守備だ。彼らは前から当て嵌める時の守備は5-1-2-2のようになっていた。彼らはCF、絞るSHに対して5枚でバックラインを揃え、CHがトップ下を基本的にマークを見るようなタスクがあったように映った。

さらにIHがCHがマークを行い、CBに対してはCFがプレスを行うようになっていた。

 

このようにしてニュージーランドは前プレを完結させようとしていたのではないだろうか。そしてこれでボールを奪うことができると、CFのウッドに対しての早い段階のロングパスで攻撃を完結できることが可能になる。

 

これに対して日本代表は以下のようにプレスを回避していく。

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空いているのはSB

まず空いてい場所、それがSBのところになる。ここでプレスを回避することができることを見越して、SBに旗手を送り出したのではないだろうか。彼のボールを受ける場所とタイミングでニュージーランドの前プレをリセットすることができる。

またここにスペースができたの理由が、前にSH相馬と堂安がいることだ。特にSH相馬に幅を作らせることでWBをピン止めし、1つ内側のCBを「浮かす」ことを狙う。

逆サイドでは堂安が内側に絞ることでこちらのサイドはWBとCBをピン止め。これでSB橋岡がフリーになるようになっていた。

(もちろん、相馬が起用されたのはプレスバックの強度を高めるための起用もある)

 

これで以下のように前進していく。

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対角のパスを打つスペースを作る

このようにCB間でのパス交換で2トップを釣り出し、さらにIHのスライドを強要させる。この時のIHの立ち位置はSBとCHを見れる立ち位置を取るようになる。さらに1アンカー化するCHに対してはIHが絞ってマークを行うようになっていた。

だからニュージーランドの守備が5-1-2-2のように見えたと個人的には思っている。

これで上の図のように逆サイドのスペースを作り出していた。

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ボールを引き取るSB

このようにしてCBから対角のパスを打ち込むことで日本はニュージーランドの前プレをリセットしていた。

プレスを受けながらも対角にパスを出せるCB吉田と冨安、さらに高精度のキック技術のあるGK、特にボールを引き取ることが上手な旗手がプレスリセットの役割を果たしていた印象だ。このようにして日本はプレスを回避していた。

 

だが、日本はSBのプレスリセットを使えなくなってから、少し苦戦していた。

ではなぜそれができなくなってしまったのか。

それは負傷交代によるシステム変更が大きく起因している。

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システム変更による4-4-2ダイヤモンド型

このようにニュージーランドはシステムを変更する。その変更がダイヤモンド型の4-4-2だ。これで得られたメリットがバックラインで4vs3の+1の数的優位だ。これで1つ前のラインで数的優位を作り出すことができるようになっていた。

こうなると日本は何が苦しかったのか。

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SBで逃げれなくなる日本

このように、ボールサイドIHがSBの対応を明確に行えるようになり、さらに逆OHとOMFでCHをマークできるようになる。この時に逆IHが背後で対角のパスを消されるようになっていたので、日本はプレス回避もしくはプレスリセットを行うことが難しくなっていた。

この状況を作られたときに、もう少し上手く対応することができれば、また違った試合展開に持ち込むことができただろう。もちろん、ここの対応を監督1人に背負わせることは違うと思うし、どこか答えを出して欲しい感じでもあった。

 

まとめ

とにかく勝ってよかった。PK戦は見ているこっちまで緊張したし、勝ったときは嬉しかった。一喜一憂できる代表戦はやっぱり楽しい。次はスペイン戦。まぎれもない強豪国だ。果たして森保監督と選手たちはどのような準備を行い、どのように闘うのか。真っ向から立ち向かうのか、それともメキシコ戦のように、カウンターを中心に闘うのか。何はともあれ、かなり楽しみだ!

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