2022ー23 プレミアリーグ 第20節 トッテナムvsアーセナル マッチレビュー~いつもよりマシではダメ~


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トッテナム0ー2アーセナル

得点者(TOT)
なし

得点者(ARS)
14' オウンゴール
36' 8マルティン ウーデゴール

両チームのフォーメーション

 

前書き

 現在5位に位置づけるトッテナムは、プレミア首位を走るアーセナルとのノースロンドンダービーに臨んだ。

 トッテナムは前節のパレス戦からスタメンを3人変更。クルゼフスキが怪我から復帰し、セセニョンが左WBで起用された。そしてサールがプレミア初先発をこの試合で飾ることとなった。

 対するアーセナルも前節のニューカッスル戦と同じ11人を起用している。

プレスに抗う入り方を見せるも

 今シーズンのアーセナルは、プレミアリーグの中でもトップクラスにプレッシングの精度が高い。それに対して保持面で不安を抱えるトッテナムが、どのように前進していくかがこの試合の1つの注目ポイントでもあった。

 開始早々には、トッテナムのビルドアップ隊であるスリーバックに対して、エンケティアと両WGで枚数を合わせるようなプレッシングに出て行く。そこからセセニョンにはホワイトが出て行く形で対応をしていた。

 それでも2分の場面でトッテナムがズレを生み出すことに成功する。ロメロの楔をハーフレーンで受けたソンにホワイトが絞って対応する。これにより、大外のセセニョンが浮いたという構造が生まれた。

 アーセナルの非保持は4-3-3気味でレシーバーとなるサールとホイビュアに対してはウーデゴールとジャカがマークに着く。そのため、パーティがアンカー気味になる。その脇にソンが入ることによって、ホワイトを内側に引っ張り出し、大外を空けたという流れだ。

 セセニョンを起用した意図は非保持でサカを対応するだけでは無く、彼が得意とするオフ・ザ・ボールの動きで、フォーメーションの噛合わせた上で起きるズレで優位を作りたかったからなのだろう。

 これと似たようなシーンは4分の場面でも見られている。この時はカウンターからの攻撃だったが、ソンが内側を走ることでホイワトを引きつけ、ケインから大外のセセニョンにボールが入った。この時にGKとDFの間にクロスボールを入れることが出来ていれば、得点の可能性は上がっていただろう。

 しかし、徐々にアーセナルのプレッシングに対して対抗手段が無くなっていく。7分には、マルティネッリの外切りのプレッシングを受けたロリスがキックミス。そこからボールを回収され、エンケティアに決定機を作られてしまっている。

 また、9分の場面でもゴールキックからのビルドアップを対応されてしまっていた。トッテナムからしてみれば、GKを含めて8vs6の数的優位の局面だったが、サイドに流れたホイビュアに所にパーティが着いて行って対応をされてしまっている。

 そのため10分手前ぐらいから敵陣へと前進出来ず、アーセナルにハーフコートでプレーされる展開が続いてしまった。何とか敵陣まで進出したとしても、崩せに無い展開が続いていた。

 左のワイドで幅を取るセセニョンに対してはサカが戻って来るため、アーセナルは5バック気味で守ることが多め。そのため、相手陣地深くではフォーメーションの噛合わせで生まれる優位を付けられない時間が多かった。

 一度攻撃が詰まりバックパスで仕切り直しと行きたいが、ここに対して強烈なプレッシングが来るため、結局GKまで下げてしまう展開が続いてしまった。その結果、なかなかアーセナルゴールを脅かすことが出来なかった。

構造上起こった2失点

 トッテナムは序盤はいつものようにプレッシングに出て行く時間が多かった。しかし、ジンチェンコの所から脱出されてしまうケースが多く、この試合でもハイプレスが刺さることは無かった。

 それでもこの試合でトライしていたのは、5-4-1のブロックを極力コンパクトにする形だ。

 アーセナルの保持はジャカとウーデゴールがIHっぽい振る舞いをすることが多め。ここに対し、HVが迎撃しやすいように縦の距離感を狭くするという守り方をしていた。

 狙いとしては、ここで奪ってからの素早いショートカウンターだったはず。アーセナルの陣形が整う前に高い位置で奪って、攻め立てたい狙いがあったはずだ。

 それが上手く行ったのが12分のロメロのインターセプトだろう。パーティが運んでジャカに差した所をロメロが素早い出足でボールカット。このように縦がコンパクトであれば、迎撃もしやすいし5バックの良さは活きる。

 しかし、これをやる上で欠点が2つあった。
 それは

  • パーティを自由にさせてしまっている

  • ハイラインの裏が空いている

 という2点だ。基本的に出し手に対して制限をかけられない守り方であるため、自由に蹴られてしまう。それだけで無く、「ハイライン+出し手への制限がかからない」という合わせ技であるため、一気にハイラインの裏に出来るスペースを使われる可能性は大いに孕んでいた。

 その結果が1失点目である。ケインの裏でフリーになっていたパーティにハイラインの裏にボールを蹴られると抜け出したサカが抉ってクロス。これがロリスの手を弾いてゴールに吸い込まれてしまった。

 この守り方をする上での問題をアーセナルに突きつけられたところの失点は痛かった点。一応ボックス内の埋め方を見る感じ、自分たちで弱点は理解していたと思う。そのためエリア内の枚数は足りていたからクロスのケアは出来ていたように思える。だが、オウンゴールという虚しい結果で先手を奪われてしまったのだ。

 先手を許したトッテナムは1点を返そうと攻めに出る。18分には、セセニョンのダイアゴナルの動きからソンの決定機が生まれるもラムズデールに阻まれている。

 それ以降は空回りする時間が多めだった。押し込まれた所からひっくり返そうとしてもファーストタッチが乱れたり、その次のパスが通らずアーセナルにサウンドバックにされる時間帯も多くあった。

 ここは純粋に受け手と出し手の精度もあったし、アーセナルの素早いカウンタープレスやセカンド回収によって起こったと感じた。

 それだけで無くアーセナルの守備も修正をしていた。前半の頭で見せたソン→セセニョンのラインに対し、サリバがソンを監視することで解決。ホワイトはそのまま大外のセセニョンを見れば良いため、前半頭のようなルートを確保出来なかった。

 そうなると縦に攻め急ぐしか無いトッテナム。しかしそれだけでは正直すぎてしまう。相手が一番警戒してるのは真ん中からの攻撃だし、そんな一番通らなさそうな所に縦パス入れても引っ掛かるだけだ。ここでは、外を経由するなどの気転を利かせるべきだった。急がば回れである。

 それに加え縦に縦に急ぎすぎてもひっくり返されてしまうだけである。それが起ったのが2失点目のシーンだった。

 ロリスのキックを回収されると、パーティに3人が剥がされて逆にカウンターを受ける。最後はウーデゴールに見事なシュートを決められ2失点目を喫した。

 その後トッテナムに訪れたチャンスは前半のアディショナルタイム。ホイビュアのプレスからボールを奪ってそのままクロス。これにケインが合わせるがGKに阻まれた。

 前半の最後に見せた前から奪いに行くこのプレーが後半から見られることとなる。

時間限定のハイプレス

 後半に入ってから、トッテナムは前半よりもアグレッシブな入りを見せる。この後半からギアが上がるのは最近のトッテナムの流れであり、ここで1点を取れた試合はモノに出来ている。

 保持ではWBを経由しながらアーセナルの4バックに生まれるギャップを突いたりと、徐々に試合の流れを掌握して行った。

 そしてハイプレスに完全シフト。ケインが頑張って走ってプレッシャーをかけることでアーセナルにボールを蹴らせ、セカンドボールを素早し出足で回収していた。

 しかし得点が奪えない。50分のケインのシュートや52分のケインとのワンツーで抜け出したセセニョンのシュートもプレッシングからの素早いセカンド回収で作ったチャンスだったが、ラムズデールの牙城を崩すことが出来なかった。

 またこの試合で気になったのはクルゼフスキのところ。怪我明けということもあり、キックの精度が冴え渡らないシーンが多め。いつもであれば、無慈悲に沈めるカットインからのインスイングシュートを放つ場面が多くあったが、この試合は枠を捉えられなかった。

 後半の序盤にパワーを振り絞ってハイプレスに出たトッテナム。これを「前半の頭からやって欲しい」という意見もあったが、1試合を通してハイプレス出来ないチームが、前半の頭にパワーを出しても最後まで持たない筆者は思う。

 それに初手からフルスロットルで行っても、今のアーセナルなら早い段階で慣れてしまうはずだ。ここは、ワールドカップで日本代表が、ドイツやスペイン相手に後半からスイッチを入れたのと同じ作戦である。それにより、相手をバタつかせる作用もあったし効果的だったと筆者は感じた。

 なので、前半は死んだふりをしつつ、後半頭から奇襲をかけるこのパターンが、現状のベストなのでは無いかと思う。

 それでもこの時間帯で得点を奪えなかったのは響いた。やはり押し込んでからの崩しの精度は課題。両シャドーがボールサイドによってオーバーロードを作ったりしていたが、全く持って効果的では無かった。

 保持での陣形が乱れればアーセナルのカウンターアタックも刺さってくる。そのカウンターからピンチを招き、エンケティアに試合を決められそうな決定機を作られたが、ロリスのビッグセーブで難を逃れた。

 トッテナムは途中交代でもう一度ギアを入れ直そうとする。しかし、ビスマとペリシッチを入れたタイミングで4-4-2に変更。恐らく攻撃に出たかったと思うが、ここでバランスが崩れてしまったように感じる。

 アーセナルもティアニーを左SHに入れてプレス隊として起用させたり、パワープレーに出るトッテナムに対して冨安を入れてケアするなど、試合巧者っぷりを見せつけた。

 トッテナムもパワープレーの際に殆どの選手がゴール前に張り付いてロングボールを待機していたがそれではダメである。

 アーセナルのDF陣はボールホルダーにしっかり寄せていたため、数人の連携から剥がさないとクロスは飛んでこない。1vs1で剥がしてクロスまで上げてくれ!はあまりにも無責任過ぎるし、そうなるとジリ貧になってしまうだけだ。

 後半は内容的に盛り返すことは出来たが、結果は0-2で敗戦。13ー14シーズン以来のシーズンダブルとなってしまった。

雑感

 試合終わっての率直な感想は「まぁいつもよりはマシだったな」という感じであった。首位を走る相手に対し、後半の頭に見せた奇襲でバタつかせることに成功。そこから再三チャンスを作れていたし、ここ数試合の無気力な試合に比べれば内容的に盛り返せたのはOKなのかなと思ってしまった。

 しかし、そう思う時点でもはや負け組に両足を突っ込んでしまっているのだ。相手はライバルチームである。幾ら実力差があるとは言えど、ここで満足したら成長する事は無いであろう。

 何故アーセナルとこんなに差を付けられてしまったのか。チームは何を目標に何処を目指すのかをもう一度考えられる試合となったと思う。

 この試合を見て首脳陣を何を思ったのか。今後の「クラブの方針」に向けての良いカンフル剤になればと思う。このままでは本当にダメである。

 最後に、サールは良かったと思います。以上。

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今回はおやすみ。

 

(編集者:川崎人)

 

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