2022-23 トッテナムの前半戦レビュー~設計図が無ければ新築は建たない~

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始めに

 気がつけば2022-23シーズンのプレミアリーグも後半戦に差し掛かろうとしている。我らがトッテナムは現在5位。僅差ではあるもののCL圏内からは外れてしまっている。

 今シーズンはコンテ政権2年目というシーズンで有り、チームの完成が期待される年であった。また、この夏にリシャルリソン、ビスマ、ラングレなどの実績のある選手の補強も慣行。ここ数年は寂しかった夏が続いていたが、久々にワクワクするような移籍市場を過ごせたことにより、ファンの期待も高まって当然だろう。

 しかし、なかなか不安定な戦いが目立っているのは気になる部分。リーグ戦では先制点を奪われた試合が18試合中11試合と非常に多い。その中で勝ち点は拾えているのは純粋に凄いことなのだが、ビック6相手に1分3敗(延期されたシティを除いて)と、ライバルに差をつけられてしまっている。

 そんなトッテナムが前半戦を戦ってどうだったのかをこれから書いていこうと思う。所謂前半戦のレビューだ。

 今回は

  • 昨年の違いから見える今季目指していること

  • 課題となっている部分

  • 今後の展望と筆者の考え

 というように、3つの章に分けてみた。最後まで読んで頂けると嬉しいです。

昨年の違いから見える今季目指していること

ハイプレスについて

 昨シーズンまでのトッテナムと言えば、5-4-1でブロックを自陣に形成し、ローラインで守ることが多めだった。自陣を人で埋めながらコンパクトに守ることで中盤やサイドで囲い込んでボールを奪い、ロングカウンターで相手ゴールに奇襲する形がメインウェポンとなっていた。

 しかし、今シーズンは撤退するよりも前から捕まえに行く傾向がとても強い。開幕戦となったサウサンプトン戦でもハイプレスでボールを奪いに行くシーンがあった。ここは、昨年と大きく違う部分の1つだろう。

 ハイプレスに行く理由は

  • 「高い位置でボールを奪うことで、ショートカウンターを成立させる」
  • 「相手からボールを取り上げて自分たちが保持する時間を増やす」

 という2つ狙いがあるように感じる。

 1つ目の「高い位置でボールを奪うことで、ショートカウンターを成立させる」は、近年のトレンド的な部分が強い。最近は、自陣のゴール近くからビルドアップを行なうチームが増えている。それにも関わらず、ズルズル下がってブロックを組むのは非常に勿体無い。何故なら、自陣でボールを奪うよりも、高い位置でボールを奪った方が攻める方のゴールに近いからである。

 そのため、わざわざ自陣でブロックを組み、そこでボールを奪ってから長い距離を走りながら攻撃に出て行くよりも、ハイプレスを選択して高い位置でボールを奪ってチャンスを作りたいのだろう。

 ここ数試合は、プレッシングからロメロのところで迎撃出来ている印象。そこからショートカウンターを狙うシーンもチラホラ増えている。課題はその先の連携面。それについては、クルゼフスキもコメントをしていた。

web.ultra-soccer.jp

(日本語ソースでごめんなさい) 

 続いて2つ目の「相手からボールを取り上げて自分たちが保持する時間を増やす」である。これは、純粋に自分たちの攻撃の時間を長くしたいのだろう。サッカーというスポーツは、ボールを持っている方に攻撃の権限が与えられる。そのため、ボール保持を長くすることで、攻撃の時間も長くしたい考えなのだろう。

 では、何故ハイプレス行なうのか。恐らく今季のトッテナムは「先行逃げ切り」に特化したいのだろう。試合開始からハイプレスをかけるのも、高い位置からボールを奪ってチャンスに繋げたいからだし、保持の時間を長くしたいのも、攻撃の時間も増やしてゴールを奪うためである。

 実際、今季のトッテナムはリーグ戦で先制した試合は、6勝1分と負けが無い。また、クリーンシートで終えた試合がその内5試合である。先手を取れば自陣に5-4-1のブロックを築き上げて耐えながら時間を溶かせてる試合は多い。

 それだけで無く、先制点を取れれば相手も得点を奪いに前掛かりに出てくるはず。そうなれば、舞台はトッテナムの得意分野へと変わる。オープン合戦ならトッテナムの方に分があるからだ。そこで、2点目、3点目を決めて一気に差を広げるのが、今のトッテナムの「勝ちパターン」でもある。

 つまり、勝ちパターンに持って行く流れとしてまずは先制点が必要になる。そのためにはボールを奪う、保持することが大事。つまりはハイプレスをかけることだと筆者は思った。

 「そんなんサッカーで勝つための基本的なことやろw」と思う方も多いと思うが、実際コンテが選び取っているであろう策はこれである。当たり前の戦い方で勝ち点を重ねたいのだろう。

セットプレーの改革

 トッテナムは、今シーズンから新たにセットプレーコーチとして、「ジャンニ・ヴィオ」を招聘した。彼の影響もあってからシーズンの序盤からセットプレーでの得点が増えていった。それに加え、ペリシッチという新たなキッカーの存在も大きいだろう。

 そんなセットプレー改革を行なったトッテナムだが、そもそもセットプレーを獲得するのには、”基本的”にボールを持たなければいけない。勿論ディフェンスをしている際にファウルを貰うこともあるが、セットプレーを多く与えられる場面はボールを保持している際だろう。

 これが上記の話しと繋がってくる。今季のトッテナムは先制点を取るために、ボールを奪う、保持することが大事である。そのためのハイプレスだと書いた。

 ボールを握ることで攻めの試行回数は増えるはずだし、敵陣に押し込む形を多く作れれば、上記で書いたセットプレーの理論的にフリーキックやコーナーキックを取ることが出来る。そこで1点を奪えれば、チームとして掲げる「勝ちパターン」に必要なゴールを奪うことが出来る。

 つまりは攻撃の時間を増やすことで巡ってくるセットプレーでも、得点を取るための確率を上げたいのだろう。

 ここまでのハイプレス、ボールの奪い方、セットプレーに関することを簡単に図でまとめてみた。

クソ作図(作成時間5分)

 これは、上記の画像で言う赤色の部分を細分化したものである。めっちゃクソ作図でスマン。ただ、伝えたいことが何となく伝われば良いかなと思う。

3-5-2について

 最後の昨年と違う点は、3-5-2を取り入れた部分であろう。正直ここは、怪我人との兼ね合いが強かった気がする。

 特にクルゼフスキとリシャルリソンがほぼ同時期に怪我したことが大きかった。この頃はヒルもコンテに信用されている感じも無かったので、シャドーを務める選手が居なかった事から3-4-2-1では無く、3-5-2にしたと考えられる。

 なので、意図的だった訳では無くオプションとして使っていたと推測出来る。実際、ブライトン戦や、後半途中から変えたレスター戦を除けばプレッシングの形すらも落として込めて居なかったので、苦肉の策だったのだろう。これについて後術する。

 ちなみに保持はIHのオフ・ザ・ボール動きでビルドアップの出口を無理矢理生み出す形を採用。ベンタンクールが死ぬほどハーフレーンを走ってWBが引きつけた相手選手の裏でボールを受けるという「ボールよりも人が動く」ことで解決していた。まぁ前進の仕方は3-4-2-1よりも3-5-2の方がスムーズなような気がする。中盤がマンツーマンに合わなければの話しだが…。

課題となっている部分

プレスとビルドアップの設計図が無い

 さて、昨年と違う所の次は今現状ぶち当たっている壁についてである。

 ここについては沢山の人が触れているようにプレスとビルドアップの設計図が定まって無い点である。

 ハイプレスでボールを奪いに行くのは上記で書いたような理由だと思う。問題は「何処でボールを奪うのか」である。それがチームとして共有されていないのが気になる点だ。

 例えばマンチェスターユナイテッド戦。この試合は、不慣れな3-5-2という条件付きではあるが、相手のSBをどうやって止めるかがチームに落とし込まれて無かった。

 アンカーのビスマが相手のアンカーまで出て行くことによって、中盤に大きな空洞が生まれる。そこでブルーノが浮くシーンが多々見られた。また、ユナイテッドのSBにも規制がかからないため、そこからブルーノのパスを入れらまくり、簡単に中盤で加速されてひっくり返されてしまっていた。

 その反省を活かすべく、続くニューカッスル戦ではIHがSBまで出て行く形で試合に臨んだ。しかし、ニューカッスルのIHに対し、トッテナムのHVが出て行くことで、その裏を使われて失点してしまった。これは、下記記事でも書いたが、前線のインテンシティが足りなかったのが原因として挙げられる。ハイプレスに出るなら簡単に蹴らせてはいけない。

 それに加え、DFラインが広い範囲をカバー出来る能力を持っていない。そのため、蹴られた先でボールを回収することが出来ないのが現状である。続くリヴァプール戦でもアリソンのロングボールをダイアーが処理を誤り失点している。

 こうなると、相手にもっと苦し紛れな蹴らせ方をさせなければならない。そのためには前線のインテンシティの高さがより不可欠になるだろう。

 3-4-2-1にした際もプレッシングの強度が足りない試合があった。アーセナルとのノースロンドンダービーも簡単に剥がされ、早々に撤退。そこからサウンドバックになってしまい、先制点を献上している。

 前線からの強度がまず足りていないことから始まり、そこでパスコースを切って奪いたい場所へ誘導出来ていないも辛い部分である。それに加え、大きく蹴られたら蹴られたでDFラインがたまにポカしてしまう。これが目立たないミスなら良いが、失点や勝敗に直結しているので、目を背けることは出来ない。

 続くビルドアップも同じである。誰が何処に立ってどのようにボールを動かしたいのかが見えてこない。つまり折角ボールを奪っても押し込めないのである。

 そうなるとただ攻めあぐねる時間帯が続いてしまう。ここ数試合は相手のブロックの外で回すことが多いし、中央でズレを作ることも出来ない。そなるとサイドから攻めるが、中央に相手を寄せられて無い影響で、相手のスライドが間に合いサイドで同数になってしまう。

 ここは設計図の無さも相まって、ビルドアップ能力が決して高く無いDFラインの選手たちにも大きな皺寄せが来てしまっている。

 後ろで貯金が作れない分、落ちてくるケインやクルゼフスキにボールを当ててキープすることで貯金を作っていた。

 しかし、前線の貯金作り隊を潰せば問題無いというのをトゥヘルのチェルシーに開幕から2節目にして証明されてしまっている。

 ここ数試合はラングレがシンプルに蹴り出すシーンも増えたので、ビルドアップは半ば放棄なのかもしれない。ぶっちゃけ長いボール使った方が押し込めそうな感じはするし、押し込めれば上記で書いたクソ作図の右側通りになるので、今後はそうなっていくのかなと思っている。

プレス回避とネガトラ

 続いてDFラインにプレス回避とネガトラが乏しい点である。ぶっちゃけ今季のトッテナムが失点するときの主な原因はこの2つだったりする。

 ビルドアップ隊にビルドアップの能力がそもそも備わっていないので、相手が猛スピードでプレスに来た際に細かいパスワークでプレス回避することが出来ずに、バックパスからサイドに蹴り出してそこで捕まってしまうシーンを何度も見ている。

 特に選択肢を失ったダイアーが慌ててロリスにバックパスした結果こうなることが多い。これだけで簡単に相手ボールになってしまうため、非常に勿体無い。また、保持の時間を長くして攻撃の回数も増やしたいチームにとっては致命的な行為だ。

 また、自陣でボールを奪いそこからカウンターに繋げようとしてボールを失いひっくり返される場面もしばしば見られる。ここのネガティブ・トランジションも気になる点だ。

 カラバオカップのフォレスト戦とホームのリーズ戦はセルフジャッジからカウンターを受けて失点している。ここで集中力が切れてしまい、そのまま運ばれて失点するのはあまりにも勿体無いと感じる。ポジトラはとても良いので、ネガトラの精度を上げれば安い失点は減っていくはずだ。

今後の展望と筆者の考え

 最初に書いたようにチームの完成が期待されるシーズンだったが、前半戦が終わっての感想は「まだ建て壊している最中」というところだろうか。新築が建つのにはまだまだ時間がかかりそうな予感。

 そもそも設計図が出来てないので、新築完成どころの話しでは無い。その設計図とは、さっき言ったようにビルドアップであったりハイプレスの在り方だ。

 ただ、癖のある選手も多いし、個人戦術の面で矯正が必要な選手もいる。リザーブに関しては、スタメン組と能力にかなりの差があるので、なかなかコンテの期待に応えることが出来ずベンチを温める日々が続いてしまっている。そして、選手が伸びないのはその選手自身にも問題があるのかもしれない。

 そうなると今のトッテナムは、中2~3日で次々来る試合の合間で、「ビルドアップ」、「ハイプレス」、「一部のスタメンとリザーブの個人育成」という3輪を回さなければならない。当然この間には移動も発生することを考えれば、あまりにも時間が無さ過ぎる。

 だから補強することで、基礎技術を持った選手たちを獲得できれば、個人育成は省けるため「3輪」から「2輪」ぐらいまで減らせる。だからコンテは、能力を持った選手の獲得を望んでいるのだろう。

 勿論これは筆者が持つ1つの考えに過ぎない。実際練習を見ていないのでただの憶測であるし、真実かどうかは分からない。それでも、こういう背景もあるかもしれないなという感じで受け取って頂ければ有り難い。

 個人的な結論としては、能力を持った選手の補強することで、練習で落とし込む項目を減らしつつ、余った時間で設計図作りを行なって貰えればなと思う。

 

(編集者:川崎人)

 

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