スキッベ監督によるサンフレ革命

皆さん、どうも。

いきなりですが、Jリーグ見てますか?

僕は地元のチーム、サンフレッチェ広島の試合を毎節見て楽しんでいます。

今季のサンフレはスキッベさんを招聘して、かなり魅力的なチームになりました。攻撃的でワクワクするサッカー。サンフレは今、Jリーグの中でも魅力的なチームの1つだと思います。

そこでです。ここまで16節を戦って、サンフレがどのように考えながら試合をしているのか。これを僕なりに考えてまとめてみました。

楽しく面白いサッカーをしているサンフレに興味がある方、最後まで目を通していただけると嬉しいです!

では早速、サンフレがどんなチームなのかを考えていきましょう!

 

 

【参考にさせて頂いたサイト】

・Football LAB

www.football-lab.jp

【使わせて頂いているアプリ】

・TACTICALista

tacticalista.com

 

基本フォーメーション

①:3−5−2

12節のアントラーズ戦から採用した3−5−2。実はこの形は試合当日に伝えられたとか…。本当かどうかわかりませんが、この試合から基本フォーメーションは3−5−2になっています。

②:3−4−2−1

今季もこの形で戦うと思っていましたが、3−5−2が基本になりました。これからはこの形は2ndオプションになると思われます。プレッシングが嵌まらなかったとき、前進がスムーズに行かなかったときに変更することがあります。

 

この2つのフォーメーションが今季のサンフレの基本オプションになりそうです。

 

影響と可視化と共有

まずは攻撃から考えていきます。スキッベさんは攻撃を考えていく上で、レーン云々を重要視していないと思われます。

ではスキッベさんは何を重要視しているのでしょうか。

  1. 誰が誰に影響を与えるか
  2. ベクトルの可視化
  3. プレー共有

この3つを攻撃時には特に重要視しているぽいです。これによってサンフレは「後の先」を常に取り続けます。

この過程の先で相手を押し込んでいくので、サンフレは敵陣ポゼッション率が57.7%もあり、さらにシュートに至った割合が34.6%もあります。

参考までに以下の表をご覧ください。

この数値よりも高いチームは川崎フロンターレしかいません。攻撃を完結させている割合でいくとサンフレよりも上のチームがないことも今季の戦い方を表しているのではないでしょうか。

では攻撃を完結させていく中で、どのような過程をサンフレは辿っているのでしょうか。ここからは過程についてを考えていこうと思います。

 

ビルドアップ

まずはビルドアップの局面から考えていきましょう。

持ち出しの局面において『3CBに対してのプレッシャーの掛けられ方』で立ち振る舞いが変わってきます。

3CBへの牽制が薄いとき

このようにアンカーに立つ野津田を消しながらCBに向かってくるチームに対しては3CB +DMFの菱形で土台を作り出します。1stプレッシングプレーヤーの両脇と内側にそれぞれ1枚ずつの逃げ道もしくは起点を必要最低限の人数で確保します。

 

では牽制の色が濃いときはどのようになるのでしょうか。

3CBへの牽制が濃いとき

一方で3CBに対して明確に当てにくるチームに対してはプレッシングプレーヤーの門の先でDMFとIHが降りてきてヘルプを行います。

このように3CBに対しての牽制・プレスが濃いか薄いかで土台に割く人数を決定している印象です。

これでボールを左右に動かしながら、または出し入れをしていくことで相手を動かします。そしてこれを行っていく中で必ず外側か内側で起点を作り出すことが可能になっています。

 

外起点と内起点

ではここからは外側で起点を作れる場合と内側で起点を作れる場合を見ていきましょう。

まずは以下の図をご覧ください。

外側で起点を作れる場合

このように外側で起点を作れる場合は、1stプレッシングプレーヤーが野津田を隠すために門を閉じた状況下で起こります。もしくは野津田とのやりとりを行っていく中で、1stプレッシングプレーヤーを内側に引き込みます。

これで外側のCB塩谷と佐々木が1stプレッシングプレーヤーと距離を作れるので起点を作り出すことが可能になっています。

では内側で起点を作れる場合はどのような状況になっているのでしょうか。

内側で起点を作れる場合

内側で起点を作れる場合は基本的に1stプレッシングプレーヤーを引き剥がしたときに内側で起点を作れることが多いです。

この場合は3CBで数的優位を作れているので、そのまま門を通過する縦パスと斜めに差し込めるパスが選択されることがほとんどです。

 

サンフレは1stプレスラインを越えるために、

  1. 相手との距離
  2. 起点を作る場所の共有
  3. 土台に割く人数

この3つを重要視しながら前進を行っている印象を僕は受けています。ここの共有がしっかりとなされているので、安定して保持の局面も振る舞うことが可能になっているのではないでしょうか。

 

崩しの準備

では次は2ndプレスラインの越え方、崩しの局面へ移行していく局面についてを考えていきます。

 

ここの局面に触れる前に僕の考えを少し。攻撃を考えていく上で、前進⇨崩しの準備⇨崩し⇨フィニッシュワークの局面があると思っています。当然、局面を省略することも多々ありますが、基本的にこの流れで攻撃を考えているチームが多いのではないでしょうか。

攻撃の考え方がポゼッションにせよ、カウンターにせよ、攻撃はこの4つがあると僕は考えています。(もっと見方があると思うので、教えて下さい!)

 

では話しをサンフレに戻しましょう。サンフレの2ndプレスラインの越え方は「ベクトルの可視化」と「与える影響」を利用しながら崩しの準備を行っていきます。

ではその「可視化」と「影響」とはどのようなものなのでしょうか。

この考察をする前に、距離別のパスとエリア別のパス、プレーエリアについて触れておきます。

距離別のパス

まずは距離別のパスからです。サンフレはきっちりと下から作って、相手を押し込んでいくことを考えています。反対に自分達の距離感も延びてしまうロングパスは少ないのだと思います。これを頻繁に使っていくとネガトラを完結させることがかなり難しくなるので、できる限りショートパスで押し込んでいくことを考えます。

丁寧に持ち出して押し込んでいくので、サンフレは敵陣でプレーすることが多くなっていきます。

エリア別のパス

ここからわかるように、自陣高く〜敵陣浅くまでのパスの本数はかなり高くなっています。ここからわかるように、最終ラインの持ち出しがしっかりしているからこそ、このエリアでのプレーが多くなっているのだと思います。

では最後にプレーエリアです。

プレーエリア

基本的にサンフレはサイド攻撃を基本としています。相手を押し込んでいく際、サンフレはサイドから押し込んでいきます。これはGKを避けて奥を取りやすいこと、さらに奪われたときに制限をかけ易いことが挙げられます。

このように相手を押し込むために、ショートパスでサイドを取っていくことが基本になります。

これを完結させるために「可視化」と「影響」が大きく関わってきています。

 

一例を挙げますので、以下の図をご覧ください。

可視化と影響

このように外側で起点を作った場合で考えていきます。

まず考えるべきは「影響」についてです。サンフレは出し手に対しての受け手のサポートのポジショニングが絶妙です。スキッベさんはポジショニングの基準を「影響を与えれる」に設定している印象です。

さらに影響を与える際、1人ではなく基本的に2人で影響を与えれる立ち位置を取っていきます。これで局所で数的優位を作り出すことも意識付けされていると思います。

これらの基準があるからこそレーンの概念がかなり薄く、レーン上で被っていることも多々あります。そもそもレーンで考えていないので、被るという感覚が選手たちにはないのかもしれませんが。

この「影響を与えれる」という基準をもとに、サンフレは立ち位置を決めています。よって常に門の先で待つ、もしくは隣の選手とユニットを作り出して常に数的優位の状態を作り出します。

上記の図で考えると、SHに対しては満田と柏、CM対しては野津田と満田、SBに対しては柏とサントスというように、常に影響を与えれる選手を明確にしています。

 

これを常に行っていくのでベクトルの可視化が可能になります。ボールを動かしていくなかで、相手の呼び込むことができます。このベクトルの可視化を明確にして近くの選手と共有し、影響を与えていくことで後の先を取りながら2ndラインを越えていきます。

ではそのパターンを幾つか紹介していきます。

CBでSHに影響を与える場合

まずはCBでSHに対して影響を与えた場合です。ここでのSHのベクトルは前になります。これに際してWBでSBに影響を与えます。だからここでもSBのベクトルを可視化することが可能になります。この可視化によって、満田、野津田、サントスでCMのベクトルを決定させます。

これが後の先を取れる大きな要素になっています。

ではどの優先順位でサンフレはプレーしているのでしょうか。

最優先で取りに行く場所

まず率先して取っていく場所が奥です。WBでSBに影響を与えるとその背後をCFで取っていきます。こうすることで全体を押し上げて敵陣でプレーすることが可能になります。(後ほど押し込んだ状況下について触れていきます)

次は次点で選択する場所です。

次点で選択する場所

この場合は野津田でCMを呼び込んだ場合です。野津田でCMで影響を与えることで、満田がフリーになることができます。これでライン間で満田が前を向くことで、2ndラインを越えて早い攻撃を仕掛けていきます。

これも相手に影響を与えてベクトルの可視化を共有しているからこそできる突破方法ではないでしょうか。

では同サイドを潰された場合はどのように振る舞うことが多いのでしょうか。

以下の図をご覧ください。

レイオフと逆サイド

同サイドを潰される場合は基本的に前方向の選手を全て捕まえられた時が多いです。だからこの場合はWBでSB、IHでCMを呼び込みます。さらに奥に抜けるCFは早めにCBがスライドを行って場所を埋めつつ対応できるポジションを取ることがほとんどです。

これを行われるとサンフレは同サイドでの前進は難しくなるのですが、この場合の影響は局所ではなく、もっと広域のものになります。

人を捕まえに動いているので、全体のベクトルがボールサイド方向になり、そのサイドに寄ることになります。だからこそ、逆サイドが空いてきます。

局所に目を向けると、満田でCMに影響を与えているのでCMの影響は野津田まで届きません。これで満田⇨野津田のレイオフが可能になります。

ここの野津田のサポートの上手さは一級品だと見ていていつも感じるところです。これで野津田から一気に逆サイドのWB、もしくは全体のベクトルをボール方向にしていることが関係しているので、逆IHがフリーになります。ここを経由して崩しの準備を行っていきます。

 

基本的に守備側は中央を経由されたくないので、外側のCB塩谷と佐々木が起点になることが多いです。さらに彼らは差し込むパスがとても上手いので、ここで殆どの場合サイドプレーヤーのベクトルを明確化することが可能になっている印象です。

だからこそ、前述したパターンを多く見受けることができるのだと思います。

 

もちろんCB佐々木、塩谷に対して牽制を行わないチームもあります。この場合は以下のように振る舞います。

外側のCB(ここでは佐々木)にプレッシャーがないため、ボールホルダーは持ち出すことが可能になります。

これを行っていくことで守備者のベクトルを強引に生み出します。上記の図のように佐々木がドリブルで持ち出すことでSHのプレスを呼び込みます。これでベクトルの可視化をします。これと同時に外側と内側のパスコースを満田と柏で作り出すことで、前述した方法と同様の攻撃を組み立てる事が可能になっています。

 

では参考に左、中央、右のデータも見ておきましょう。

まずは左サイドから。

基本的に左からの作りが多いので、こちらのサイドはロングパスが少ない印象です。柏と佐々木と満田を中心に、コンビネーションと柏のドリブルを駆使しながら崩しの準備を行っていきます。

では次は中央です。

こちらも左とほぼ変わらないですが、やはり中央ではロングボールを使うことが少し増えます。これはゲーゲンプレスを考えているので、このパスの選択が増えているのだと思います。(後に考察)

さらに中央はほとんどの場合、閉じられているので上のパスが必然的に増えているのでしょう。

 

では最後に右サイドです。

今季のサンフレの特徴の1つが右サイドです。前述したように、左サイドで作って右サイドに展開、そしてそこから藤井の縦の仕掛けという攻撃が多いように感じます。もちろん、右サイドで作っていく時は藤井の走力とドリブルを中心に準備をしていきます。

だからこそ、右サイドの藤井のスタッツは以下のようになっています。

藤井のスタッツ

右サイドのドリブル率が多くなっているのは藤井のスタッツにも表れています。彼が縦突破を図る場面は今季多く見られますし、そのために藤井がオープンスペースで勝負する場面を多く見られます。

だからこそのサンフレの右サイドのスタッツと藤井のスタッツなのでしょう。

 

このようにサンフレは2ndラインを越えるために、相手のベクトルの可視化と相手に影響を与えれるポジショニングをする事で、ボール保持の局面、持ち出し、崩しの準備の局面でも安定して試合を進めることができるようになっています。

 

何度も触れますが相手に影響を与える立ち位置を取るために5レーンを基準にする立ち位置の決定ではなく、相手を基準に立ち位置を取っています。

 

同サイドに人が集まっても、抜け出す人、受ける人、止める人と動きとポジショニングが被らないなは「立ち位置の決定」を「相手基準で影響を与えれるもの」に明確にしているからだと僕は思っています。

 

ここまでが2ndラインの越え方と崩しの準備です。

ではフィニッシュワークではどのようにプレーするのでしょうか。

 

フィニッシュワーク

では最後にフィニッシュワークについてを考えていきましょう。

まずは色んなデータから。

攻撃回数、シュート回数、チャンス構築率はいずれもトップ3に入っています。攻撃をしっかりと組み立てて、シュートまで持っていけるだけの攻撃力があるという裏付けになると思います。

前項でも考えた通り、準備の段階でサイドを取りながらコンビネーションとドリブルで攻撃を組み立てていくので、当然クロスの回数が多くなっていきます。

参考までに以下のデータをご覧ください。

ドリブル回数が1位、クロスも3位、ファイナルサード侵入回数も1位です。だからこそ、攻撃を完結させれる回数は多くなっていきます。

ではどのようにしてサンフレは攻撃を完結させていくのでしょうか。以下の図をご覧ください。

サイドを攻略していく際の人数は基本的に4人になります。準備の段階で相手を押し込んでいるので、外側のCBの佐々木や塩谷がしっかりとサポートに入ることも可能になります。これでやり直し、もしくは必要ならばオーバーラップでサポートを行うことも可能になっています。

そしてこれでサイド奥を取っていきます。ここを取る方法がIH満田のチャンネルランとWBのドリブルの2つになっています。これで相手をさらに寄せといてクロスを供給していきます。だからこそ、ここを取る必要があるのだと僕は考えています。

当然、WBがボールを持った際にIHのチャンネルランを囮にしてカットインから攻撃を完結させるパターンも存在します。

これでクロスを中心に攻撃を仕掛けます。このときのターゲットは常に4枚を揃えます。センターとファーサイドを2トップ、大外を逆WB、マイナスとこぼれ球を逆のIHが担当しています。

サンフレは基本的にニアサイドにクロスを供給することが少なく、人も送り込みません。これはサイド奥を取ったときにドリブルで抉っていくスペースを消さないという理由があるのではないでしょうか。

 

当然、同サイドから攻撃を仕掛けれない場合もあります。その場合は逆サイドに展開をして再び攻撃を仕掛けていきます。

その場合は以下のようになっています。

逆CBの攻撃参加

このようにやり直しを選択した場合は逆CBに届けて再び攻撃を仕掛けていきます。この時に関係を築くのがWBとIH、そして2トップの一角となります。

狙う場所は同じで再びクロスから攻撃の完結を考えていきます。そしてこの場合のみ、CBがクロスに入っていくことがあります。

これはクロスに対する人数を揃えるためにCBが入っていくように設定されています。この時に入っていく場所は基本的にファーサイドになっています。

攻撃センスがある塩谷と佐々木、さらにフィジカルも申し分のない彼らがチームにいることはとても大きなことだと思います。

そしてここに入っていけるのは、サイドを取っていく中で相手を敵陣に押し込むことができているからです。だから守備を1枚減らしても攻撃に出ることができているのだと思います。

 

このようにしてサンフレは縦を意識しながらも、きっちり保持の局面でも振る舞えることができるので、ゴールに迫ることができています。

 

では次は守備についてを考えていきましょう。

 

奪いにいく守備

さすがはドイツ人監督。構えて待つ守備ではなく、しっかりと奪いにいく守備、攻撃的な守備を行います。

だから基本的にサンフレはハイプレス、もしくはゲーゲンプレスが基本になります。

ここで少しハイプレスとゲーゲンプレスの違いをザッと触れておきます。

ハイプレスはボールが完全に相手にある状況から守備が始まります。だから自分達から仕掛けるセットした状態から守備を行っていきます。ゆえに時間軸は非保持になります。

一方のゲーゲンプレスの時間軸はトランジションになります。いわゆるネガティブ・トランジションです。攻撃のときにも守備のことを考えながら、ボールを奪われてしまう場所、ミスが出てしまう場所に人を送り込むことを行います。

どちらもセットされていない状態なので、ここの準備が大切になってきます。

 

ではこれを念頭に置いた上で、サンフレの守備についてを考えていきます。

いくつかパターンがあるのでまずはこちらに触れていきます。

プレスのパターン

このプレスのパターンは3つあります。早速その3つのパターンを紹介していきます。

以下の図をご覧ください。

vs2CHの場合

まずはvs2CHの場合です。この場合は3−5−2の形のまま進んでいきます。特に中央を完全に消しながら外側に誘導して時間とスペースを消すことを考えています。さらにSBにはWBがSHをぼかしながら向かっていきます。この時に2トップに対して数的優位を保っているのでSHにはCBが対応するように設定。これでボールを奪うことを行います。

では次はvsアンカーがいる場合です。これは2つのパターンがあります。

IHが外側に向かっていく形

このようにアンカーを2トップで消しながらボールサイドのCFがCBに向かっていきます。この時にSBにボールを誘導し、そこにはIHが出ていくこように設定されています。これで野津田がIHがマークしていた選手を捕まえ、WBはWGを意識します。WBがSBまで出ていくタイミングはSBの時間を明確に奪えた場合に出ていくことが多いです。ここの線引きも明確になっている印象です。

さらに3CBは数的優位を保てているので、ここでもサイドの対応に出れるようになっています。

さらにもう1つが3–4–2–1でプレスをかけていくパターンです。

STがCBに向かっていく形

この場合はスキッベさんが来日してからの守備になります。3−4−2−1でプレスをかける場合はCFがアンカー番、STが外を切りながらCBに向かっていきます。こうすることで2CHが捕まえている場所に誘導することが可能になります。

基本的にこの3つのパターンでサンフレはプレスを完結させていきます。

 

ではどこに誘導して回収しているのでしょうか。そしてどのようなことを中心に守備を行っているのかを考えていきます。

 

誘導と回収

プレスのパターンでも少し触れたように、基本的に誘導する場所はサイドになります。ここに誘導するのは、時間とスペースを奪い易いからです。

以下の図をご覧ください。

閉じ込める2つのライン

先ほども触れたように、誘導する場所はサイドになります。ここにはWBとIHが出ていくことが多いです。これを行う中で、最終ラインの横スライドが重要になり、これを行うことで、サイドプレーヤーとの距離を縮めることが可能になっています。

これで上の図のように、WB−IH–CFの1つ目のライン、CB–DMF–IH–CFの2つ目のラインを形成します。これを作り出すことで、下のパスでの脱出を限りなく困難なものにしています。スキッベさんが来日してからここの圧縮の仕方がかなり洗練されました。

そして奪い所①がSB、次点がSB⇨サイドプレーヤー、3番目が形成した2ラインを越える上のパスになります。

さらにハイプレスを仕掛けていく上で大切なのがコンパクトさです。以下の表をご覧ください。

 

これがサンフレのコンパクトネスの基準となりそうです。この距離感を維持していくことで、出てくるパスを狙って回収することがで、さらに自分が良い状態で守備に入ることが可能になっています。

ここの個人守備への入り方と昇華の仕方は見ものだと僕は思います。

ではこのハイプレスはどのぐらい成功しているのでしょうか。それが以下の表になります。

サンフレのハイプレスの成功率はリーグ随一です。だからこそ守備から攻撃にスムーズに移行することができ、ショートカウンターを繰り出すことが可能になっています。

 

これがハイプレスの局面です。では次はネガティブトランジションの局面についても考えていきましょう。

 

ネガティブ・トランジション

今季のサンフレの最大の特徴はここにあります。それがネガトラの局面です。ここを完結させることができるのはきちんと保持から相手を押し込み、整えた状態で攻撃を行うことができているからです。

だからこそのショートカウンターを発動することが可能になっています。ちなみにショートカウンターの発動率はリーグ1位です。

今季のサンフレのショートカウンターは猛威を振るっています。

ではなぜゲーゲンプレスが嵌り切るのかを考えてみようと思います。

これは何度も触れていますが、攻撃時のポジショニングと押し込みに大きく関係しています。攻撃を組み立てていく際に、「影響」と「可視化」の話しをしました。これを基準に「数的優位を作りながら影響を与えれる立ち位置を取る」ことで攻撃を考えていくことも話しをさせて頂きました。

これを考えていくと、守備に切り替わる瞬間に一気に圧縮できるように設定されています。

以下の図をご覧ください。

このように常に相手を基準(味方も当然見ている)に優位に影響を与えれる場所を取ると攻撃時に「囲い込み」が完成します。だからこそ、差し込んだときにボールを回収されたとしても、すぐにボールホルダーとボールにアタックすることが可能になっています。

ゲーゲンプレスを完結させる上で、最も大切となるのは「ボールホルダーへのアタック」と「近くを捕まえる」こと「相手よりも人数をかける」だと思っています。

これを行うことで相手の時間を奪うことができます。よく言われる「時間を奪う」とは相手の「判断する時間」と「探す時間」を主に奪っています。

 

影響を与えれる立ち位置を取るので味方との距離も相手との距離もサポートに行ける、プレスに行ける距離を作り出すことができるようになっています。

これらから分かるようにサンフレはハイプレスショートカウンター型よりも保持型ゲーゲンプレスのチームだと思っています。

 

ミドル〜ディフェンディングサード

当然、全てハイプレス・ゲーゲンプレスが完結するほどサッカーというスポーツは甘くありません。

その場合はミドルブロック、ローブロックを作っていきます。またハイプレスだけではなく、ミドルブロックを作って守備を行うことも選択することもあります。

ではサンフレはどのようにミドル〜ディフェンディングサードを振る舞っているのでしょうか。

ミドルブロックのときは以下のように振る舞います。

基本的ミドルブロックは5−3−2で外誘導を促します。この時に3−2のブロックは中央を通されないことを最優先に考えます。ここの段階ではまだ「ボールを奪いに行く」ことを行いません。これがハイプレスもしくはゲーゲンプレスを行う場合と違う振る舞いです。さらにMF–DFのライン間に立つ選手の担当もはっきりしています。ライン間の担当は絶対にCBです。ラインを越えて降りた場合のみ、MFに受け渡しを行います。

これで外誘導にさせたときに、ボールを奪いにいきます。ここのスイッチが明確になっていることもかなり良い部分だと思っています。

ではどのように奪いにいくのでしょうか。

このようにサイド(ほぼSB)にパスが出るとそこにIHを押し出します。この時にCBにはCF、逆CFが絞ってDMFを担当します。これでSBに対して「やり直し」の選択を消し、「前向き」の選択をさせるように促していきます。

これでその先のプレーでボールを回収することが可能になっていきます。ボールを奪える理由として、「プレーを予測し易い」状況下まで昇華できているからです。だからこそ、個人守備の入り口の時点で有利な状態で守備を行うことが可能になっています。これでサンフレはボールを奪って攻撃へ移行することも可能になっています。

これはローブロックを形成した時も同様です。以下の図をご覧ください。

この局面でもやはり外循環にさせます。だから相手に持たれるのは基本的に外側になります。外側から入ってくるパスを奪うことを徹底します。さらにアーリークロスの跳ね返しもしっかりと考えます。佐々木、荒木、塩谷の空中戦は無類の強さがあるので、クロスから叩き込まれることは少ないです。だからこそ、跳ね返して2ndボールの回収が重要になり、ここはバイタルを閉める役割がある野津田、森島、満田のタスクとなっています。

 

一方で少ない失点はどのように生まれているかをデータで見ていきましょう。

これが失点パターンです。こぼれ球からの失点が多いのはクロスの跳ね返しがうまくいかなかった、もしくはセカンドボールを回収しきれなかったときに失点していることが裏付けされると思います。

各々のパスからの失点が少ないのは担当が明確で潰し切れる強さがあるからでしょう。

ロングパスからの失点がないのも頷けます。これは確実に3CBの強さ、さらにボールホルダーにしっかりと制限をかけれている証拠です。ここからもハイプレス・ゲーゲンプレスが完結していることが予測できそうです。

ドリブルからの失点がないのも、サンフレの対人が強いこと、また個人守備への昇華が上手いことを表しているのではないでしょうか。

 

このようにしてサンフレはハイプレス・ゲーゲンプレス・ミドルブロック・ローブロックで振る舞い、失点を防いでいます。この結果が失点の少なさに繋がっているのだと思います。

 

プレスを回避されてしまうパターン

では最後にプレスを回避されてしまうパターンを考えていきます。これは外から横に付けられたときに回避されることが多いです。

以下の図をご覧ください。

ほとんどの場合がSB⇨DMFのパターンです。これはCFの縦スライドが遅れた時に起こり得ることです。とりわけサントスが早くCBに出てしまう、もしくは縦スライドをしないことがよくあることです。一方のベンカリファはしっかりとここを行ってくれます。サントスのここの成長があるともっと堅いチーム、ハイプレスが決まるチームになるのではないでしょうか。

 

サンフレがおもろいぞ!

まだシーズン途中ですが、ここまでのサンフレの試合を見てきて僕が見つけれたことを精一杯紹介させて頂きました。もちろん、まだまだわからないことは多いですが、だからこそ、めちゃくちゃ期待でき、楽しみなのです。未完でこの戦い振りなので、完成に近づくにつれてどのようになっていくのか、とても楽しみです。

早く強く、スリリングで安定して。とても楽しく面白い、そしてぶち熱いサンフレの試合をぜひみなさんもご覧になってもらえると嬉しいです!

 

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最後までお付き合い頂きありがとうございました。

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ではまた次の記事もお楽しみに!