2022ー23 FAカップ 4回戦 プレストンvsトッテナム 備忘録記事

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プレストン0-3トッテナム

得点者(TOT)
50' 7ソン フンミン
69' 7ソン フンミン
87' 16アルノー ダンジュマ

得点者(PNE)
なし

 

 

両チームのフォーメーション

ハイライト

 FAカップ4回戦。トッテナムはチャンピオンズシップに所属するプレストンのホームに乗り込んでの一戦になった。

 トッテナムは前節のフラム戦から7人のスタメン変更を行なった。病欠の疑いがあったケインはベンチからのスタート。また、リシャルリソンが軽度の負傷を負ったため、この試合はメンバー外。代わりにペリシッチがCFとして出場した。そして、この冬にビジャレアルから加入したダンジュマがベンチ入りを果たした。

 試合は、5-3-2でブロックを組むプレストンに対して、トッテナムがボールを保持する入りとなる。

 この試合でトッテナムが良かったのは、相手の2トップ間にCHのベンタンクールかビスマがしっかり立ち続けていたこと。これにより、プレストンの2トップが中を閉めながら守るため、サイドに大きく開いたHVが余裕を持ってボールを運べていた。

 この運んだHVに対して相手のIHが出てくるのだが、その裏にシャドーの選手が落ちてきて前進するメカニズムになっていた。

 また、プレストンのライン間が結構空くこともシャドーが受けやすかった部分に影響していた。プレストンの陣形が全体的に縦に間延びすることが多かったため、間受けする選手が前を向けたり、フリーでボールを収めることが出来ていた。

 それだけで無く、スリーセンターのスライドも甘いためその脇にHVが侵入できる機会が多め。特に左のラングレが運ぶ回数が多かったし、右のタンガンガもオフ・ザ・ボールの動きでトライアングルを形成する役割を担うなど非常に良かった。

 対するプレストンは2トップに長いボールを蹴ることが多め。特に28番のキャノンを裏に走らせる回数が多かったように感じた。ただ、個での勝負になると常にトッテナムDF陣に軍配が上がっていたため、なかなか前進出来ない時間が続いてしまっていた。

 という訳で試合は終始トッテナムペース。中央から崩す場面も多く、前半から立て続けにプレストンゴールに迫っていく。しかし、得点を奪うことは出来ず前半を0-0で折り返す。

 後半も以前としてトッテナムペースで続いていく。そんな後半の立ち上がりの5分に試合が動く。トッテナムが自陣深くでボールを奪うと、ビスマのパスを受けたドハティが運び右サイドから押し込み返す。その流れからタンガンガからのパスを受けたソンがエリアの外から左足を振り抜いて先制点を決める。

 得点シーンでもあったように、後半はソンが右に流れる回数が多めであった。そこから左サイドにサイドチェンジしてラングレが受ける形が後半はかなり多かったし、相手のスライドが間に合わない展開となっていた。

 ただ、広い方にボールを動かしても左サイドはラングレとセセニョンの関係で崩さなければいけない!みたいな状況は個人的には気になった。

 この相手のレベルになるとそれでも攻撃は作れているし、65分にはラングレのアーリークロスからペリシッチが頭で合わせるシーンも見られている。ただ、これは力量の差があってこそだと思うので、プレミアとかではあんまりやって欲しくないパターンかもしれない。

 2点目のシーンみたいにソンが左から真ん中ぐらいまで移動して、降りてくるCFが潰れた裏で受けるとかならOKである。常に右サイドに出張し続けるという意図してないオーバーロードの形成は、逆に自分たちを苦しめるはず。なので、立ち位置は守ってほしいところ。

 トッテナムは、ここで新加入のダンジュマを投入。個人的にダンジュマの良かった点は動き直しの部分だと感じた。ボールを受けるためのポジション取りや、相手DFの死角に消える動きはかなり評価出来るはず。また、この相手であればボールを収めることが出来ていた。

 そんな中で迎えた87分。ヒルのパスをサイドに開いて受けたクルゼフスキのマイナスの折り返しをダンジュマが決めて3点目。ここも、相手の死角からDFの前に入ってボールを受けていた。

 ダンジュマの挨拶代わりとなるゴールで試合を決定付けたトッテナムがこのまま勝利を収めた。

雑感

 力関係的に勝てて当然なゲームだったのかなと思う。プレストンの攻撃も2トップに預けるところから攻撃をスタートさせるのだが、そこにボールが収まらない時点でかなり苦しそうであった。

 逆にトッテナムので言えば、前線にボールを預けた際に潰されるシーンが少なかったし、個々の部分で相手を剥がせたり出来ていた。あれだけ何枚も剥がせれば楽だし、攻撃もスムーズにいける。前半は得点こそ入らなかったが、まぁいつかは点が入るだろうと楽観視出来る試合だったように思える。

 そしてダンジュマのプレーも少ない時間だが見られたのは良かった。プレスの部分などはもう少し見てみたいが、オフ・ザ・ボールのところはかなり良さげに見える。

 最後に悲しい話しをするとドハティとヒルがこの試合が最後の試合になってしまった。ヒルはドライローンでの移籍であるが、ドハティは契約解除からのアトレティコに加入という流れだ。この試合でも良かっただけに、チームを去ってしまうのは寂しい。アトレティコで活躍することを願っている。

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今回はおやすみ。

 

(編集者:川崎人)

 

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当てるパスの乱発とレイオフを駆使してローマを引き摺り出したナポリ【セリエA 20節 ナポリ vs ローマ】

ゴール。フットボールというスポーツにおいてゴールという瞬間の熱が熱中を生み出し熱狂を呼ぶことは間違いないです。だからこそゴールに向かう情熱が異常なチームが好きです。それが耐え忍んで一刺しのカウンターであれ、ゴールのために守備をする熱が伝わった途端にそのチームが面白くなります。

まさにナポリとローマはこれを体現してくれたと思います。

本当に見応えのある一戦でした。少し時間が経ってしまいましたが、今回はこの試合について考えていきますので、最後まで目を通して頂けると嬉しいです!

動画でも解説してますので、YouTubeでもご覧ください!

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CBの視野を利用するプレス

まず考えていきたいのがモウ・ローマのプレッシング。彼らはCBの視野に影響を与えることでプレスを完結させることを考慮していたと思います。

ではどのようにプレスを完結させていたのかを考えていきましょう。こちらをご覧ください。

プレス開始の基本的な配置は5−2−1−2となっていました。これは過去YouTubeのショート動画でも解説していますので、こちらをご覧になってもらうとイメージが付きやすいと思います。

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この動画は2ボランチになってますが、基本的に中盤を捕まえていくことに変わりはありません。対ナポリだとペッレグリーニがDMFロボツカを捕まえること、クリスタンテとマティッチがそれぞれアンギサとジエリンスキをマンツーマンで捕まえることで、外側へ誘導を行っていきます。やはり中央を経由させないことを考慮します。

さらに2トップでもロボツカをぼかす/消すことを行います。ここからプレスが始まっていきます。

そしてここで大切になるのがWBのプレスのスタートポジションです。モウリーニョはWBに走力(ここではスピード)を要求しているのように思えます。WBに走力があるからこそ、少し低い位置からでもSBのジャンプに間に合います。さらにこの基盤があるのでWBがWGを隠すポジションからプレッシングをスタートすることが可能になっています。

ザレフスキが起用されること、昨夏にチェリクを獲得したのも納得です。

当然、WBがSBまで出ていくとCBが横にズレてWGに対応します。ここのWBとCBの対応準備が1つ目のポイントになります。

では次の図をご覧ください。

モウ・ローマが考えるのはSBのサポートをいかにして鈍角にするかです。鈍角にすればするほど、SBがボールを受ける場所が低くなっていきます。だからこれを達成するためにCBに影響を与えなければなりません。もっと言うとCBの視野に影響を与えなければなりません。

これらを踏まえると、やはり最も重要なポイントになるのは2トップのプレッシングになります。ディバラとエイブラハムがどれぐらいCBに影響を与えれるプレスを行えるかにこのプレス完結の成否がかかっていると僕は感じました。

では以下の図をご覧ください。

このようにCBに対してCFが制限をかけることでCBの見える場所を狭めていきます。やはり上から見るのと平面で見るのとは随分と見える景色が違います。さらに追い討ちをかけるように中央も完全に封鎖します。

ナポリからすると、CBで奪われてしまっては失点の確率がぐんと上がってしまいます。だからSBが降りてヘルプを行います。ここでCBの視野に入らないと見つけてもらえないので、かなり低い位置までSBが下がります。

ここで初めて「SBのサポートを鈍角にする」ことが達成されます。当然ですが、制限がかかっている状態でSBを下げさせなければなりません。

では次の図をご覧ください。

ここまでくると一気にプレスの強度を上げていきます。SBが下がっているので、WBがSBまで出ていきます。これで後ろ向きになればほぼ確実にボールを奪えることができますし、低い位置+中央を消しているのでWGに出した時にCBが狙って奪うことも可能になっていました。

 

モウ・ローマはCBの視野に影響を与えてSBのヘルプを強制することでWBを押し出せるような設計を作り出していました。ローマはナポリに制限をかけることでナポリのパスワークを止めにかかっていました。

それでもナポリはローマのプレスを止めることに成功します。では次はこれを考えていきましょう。

 

ナポリがプレスを止めた方法

ではどのようにしてナポリがローマのプレスを止めたのか、これはWBのピン止めに関係しています。この図をご覧ください。

このようにCBが広がりを作ることでCFのプレスの影響力を弱めることを行います。これがまずプレスの強度を弱めることに繋がっていました。ですが、これだけではプレスを止めることはできません。なぜならWBがジャンプをすれば、まだSBに強い制限をかけることができるからです。

だからナポリはWGがWBの視野に入るようにしてポジションをとっていました。こうすることで、SBをピン止め/ジャンプの遅れを作り出すことに成功します。

では以下の図をご覧ください。

WGがWBを止めたこととCBがプレスの影響力を弱めたことで、サポートの角度を無くされてプレスを嵌められるSBの場所で、サポートの角度を付けつつポイントを作り出すことが可能になっていました。さらにSBでポイントを作ることができるようになったので、IHがCHを引っ張ることでさらにプレーする時間を与えていきます。これでSBの横のサポートをDMFロボツカが行うことで逃げ道を作り出します。しかしここはペッレグリーニの守備範囲内になっていました。だから以下のように展開をすることでプレスを止めています。

このようにボールサイドに人を寄せること、カバーを強要させることで意図的に逆サイドにスペースを作り出していました。さらに先述したように、IHがCHを引っ張ることとWBをWGが止めたことでSBが時間を得れるようになっています。だからこそ逆サイドまで見ることができ、そこにパスをすることでローマのプレスを止めて、一度撤退させるように仕向けていた印象です。

 

このようにしてナポリはローマのプレスを止めることに成功し、保持の局面から崩しを行うことができていました。では次はナポリがシーズンを通して行っている「引き摺り出す」攻撃について考えていきましょう。

 

当てるパスとレイオフで引き摺り出すナポリ

ナポリは当てるパスとレイオフを頻繁に行うことで、素早く横に動かして相手を引き摺り出します。これはローマにも例外なく行っていました。個人的に特徴的だと思うのが、ナポリはDF–MFのライン間に人をあまり配置せずに、MF–FWのライン間に人を割きます。これは横に動かすために配置しているのだと思います。さらにライン間に縦パスを「差し込む」のではなく、縦パスを選択する時の多くは「当てる」ものになっている印象です。この当てるパスが相手を引き摺り出すものになっており、さらに差し込むパスではないため、レイオフを作りやすくなっているのだと思います。

では具体的に図を使って説明をしてきましょう。こちらをご覧ください。

表すのならばナポリは2−5−3で相手を引き摺り出して段差を作り出します。ここで最重要となってくるのが「横に素早く」です。これを土台としてプレーを選択していきます。これを行うために、レイオフと当てるパスがあります。このプレーが方法で、横に素早くが方針で、段差を作って崩しに入るのが目標です。そして当然ゴールが目的となっています。

だからこそ、上の図のようにMF–FWのライン間に5枚を割くことが多く、WGが大外でピン止めを行っています。この試合は試合はクヴァラツヘリアとロサーノがそれぞれザレフスキとスピナッツォーラをピン止めしていました。これで5−3−2でブロックを作り出すローマに対してナポリは3センターの外側に立つSBでポイントを作ることができるようになります。

ではここからはどのようにして横素早く動かして段差を創出していたかを考えていきます。

こちらをご覧ください。

崩しに入るポイントとしてナポリはハーフスペース(WGの並行のサポート)かつMF–DFのライン間に人を配置しないことが多いです。ここに人を配置しないのは相手を引っ張り出すために繋がっていると僕は考えています。

それはなぜか。以下の図をご覧ください。

ローマとの一戦の場合、SBで時間を作り出すことで3センターの外側の選手を釣り出すことができます。ここではクリスタンテです。ここでクリスタンテは「自分の背後に人がいない」のでSBに迷いなく出ていくことができます。この守備の影響を及ぼすためにナポリはハーフスペース+MF–DFライン間に人を配置していないのだと僕は予想しています。

ここではマリオルイでクリスタンテを引き摺り出すので、それに呼応して当然マティッチとペッレグリーニはスライドを行います。これでナポリはローマの3センターを縦と横に動かすことに成功します。そしてここから当てるパスとレイオフを駆使して逆のディロレンツォまでボールを持っていきます。先ほども言いましたが「横に素早く」です。だからこそ、ローマの「ポジションの戻し」が間に合わない/遅れることで、ナポリは段差と遅れを発生させることが容易にできるようになっています。

 

この手前を素早く動かすプレーの精度がかなり高く、さらにそれを達成するための技術を持った選手がいるので、ナポリは強いのだと思います。

 

当然、このパターンだけではありません。以下の図をご覧ください。

このようにSBがWGにボールを預けることでワンツーのような形で空けておいたハーフスペースかつMF–DFのライン間に入り込みます。こうすることでSBの対応をしているIHが後ろに引っ張られることが多くなり、さらにCBに影響を与えることが可能になっていました。当然、ここでWGとSBのセッションで崩しに移行することもできますし、IHが出て行ったSBの場所に降りることでWGのサポート(ネガトラ込み)を行います。しっかりとIHがバランスをとるのも偉い。

だからこそSBとWGのセッションで崩しが行えなくとも、FWーMFのライン間を素早く横断することができます。

このようにSBとIHが入れ替わりながらトライアングルを形成しているのでWGは3つの選択肢を持てます。それがSBとセッションする、WBとの1vs1に入る、IHへのレイオフです。ナポリのWGに入る選手は誰が出ても1vs1で仕掛けることができ、特に今季はクヴァラツヘリアはもの凄いです。1vs1を制してクロスからチャンスを作り出すことも多くあります。もちろん判断も良く、無理ならば上の図のようにレイオフをして逆サイドまで持っていきます。そして逆サイドで崩しを行っている間にボックス内に入ってフィニッシャーとしても機能しています。

 

この2つのパターンで横断した場合は、逆SBから斜めに差し込んでいきます。ナポリがライン間に差し込むときは斜めまたは横から差し込むことが多くなっていました。

特に右SBディロレンツォは内側で中盤とセッションを加えながら入りこむことができるので、この方法ととてもマッチしていると思います。現にシメオネの決勝ゴールはディロレンツォが内側で絡んでから生まれたゴールでした。

当然、差し込む縦パスを使うこともありますが、その頻度は他のチームと比べても極端に少ないと僕は感じます。

 

そしてナポリが恐ろしいのは、チームとして素早く横断していく中で独力でライン間に侵入できる選手が揃っていることです。特にこの試合では試合ではジエリンスキのターン技術が異常だったと僕は見ていて思いました。

このようにジエリンスキがボールを受け、そこから独力でターンして空けておいた場所に入っていくことで崩しに入っていきます。これは先制点で見せたプレーを筆頭にジエリンスキのターン技術は半端ないなと見ていて思いました。すげえよ、ほんと。

 

強さを見せつけるナポリ

圧倒的な強さで首位を走り続けるナポリ。追いつかれとしてもそれを跳ねかすだけの確固たる強さが今季のナポリには備わっています。オシムヘンを筆頭にゴールを量産する攻撃陣に、その能力を最大限に生かすための崩しとその入り方。スパレッティが作り出したチームは本当にスリリングで面白いチームになっていると思います。ボールがたくさん動いて、なおかつゴールに向かっていくので見ていて楽しいです。

当然、ローマにも違った面白さがあります。ゴールを奪うための守備からの構築はモウリーニョならではだと思いますし、保持からの攻撃も組み立ててゴールに向かうことができるようになっています。ディバラという華のある圧倒的スターを生かすチームになっていますし、彼hがチームに貢献することも厭わないので良いチームになっています。もちろん主役になれる選手も多くいて、魅力的なチームだと思います。

 

冒頭にも触れましたが、違った形でゴールに向かう情熱を見せつけてくれた両者。本当に楽しい試合をありがとうございました。まだ見てない方はぜひディレイ観戦で見て欲しいですし、見た方はもう一度見返して見てほしいです!

 

今日の記事はここで終わりとなります。長い記事となりましたが、最後までありがとうございました!

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ではまた次の記事もお楽しみに!

2022ー23 プレミアリーグ 第21節 フラムvsトッテナム 備忘録記事


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フラム0-1トッテナム

得点者(TOT)
45+1' 10ハリー ケイン

得点者(FUL)
なし

両チームのフォーメーション

 

 

ハイライト

 現在リーグ戦連敗中のトッテナムは1つ下の順位に付けるフラムと対戦。アウェイの地でシックスポインターゲームに臨んだ。

 トッテナムはマンチェスターシティ戦と同じ11人を起用。対するフラムは、前節のニューカッスル戦から1人の変更。左SBのクルザワに代わりロビンソンが出場している。

 序盤から両チーム共に長いボールを多用しつつハイプレスを狙う入りを見せた中、主導権を握ったのはホームのフラムだった。

 非保持では4-2-3-1で構えつつプレッシングに出て行き、狭い方のサイドに追い込んでボールを奪うシーンが多かった。ここはトッテナムのビルドアップの拙さが目立った側面が強いが、効果的なプレスに行けていたのはフラムという印象である。

 それでも開始4分にはベンタンクールとホイビュアが良い感じの横関係になり、アンカー番に来るペレイラを剥がして前進できるケースがあった。ただ、真ん中を使って上手く押し込めたのは序盤はこのシーンだけである。

 フラムは保持でも優位を作る。GKのレノから1トップのミトロヴィッチにボールを当てて前進するケースがメイン。トッテナムも前からプレスをかけに行くも、ボールホルダーに牽制をかけられないため、レノのキックで引っ繰り返され、ダイアーとロメロがミトロヴィッチに競り勝つことが出来ずにセカンドボールを拾われ続けてしまった。

 ここで気になったのは、ミトロヴィッチがデイビスと勝負せずにトッテナムの右サイドばかり固執していた点だ。ここは、トッテナム目線で言えば助かった部分である。

 仮にセカンドボールを拾ってもフラムの強烈なカウンタープレスによってボールを失うことが目立った。ここは日程的にもフラムが優位だったこともあり、トッテナムはなかなか自分たちのペースで進めない時間帯が長く続いた。

 ボールを前進できたフラムは、サイドチェンジで広い方に持って行き同サイドで3角形を作りながら押し込んで行く。保持の際に1つ前の位置に出るHリード、もしくはトップ下のペレイラに加え右サイドのテテ、Bリードの関係が非常に良く、そこからクロスを入れる形が多かった。

 19分にはテテの長いボールに抜け出したBリードがキープをし、サポートに来たペレイラに渡すと左足に持ち替えてインスイングのクロスを入れる。これにHリードが合わせるもロリスが防いでゴールならず。

 25分にはディオプの持ち運びからテテがクロスを入れ、シンプルにミトロヴィッチに合わせる場面もあり、攻守共にフラムが優性の中で試合が進む。

 一方でトッテナムが流れを掴んだのは31分あたりから。ここでホイビュアが相手に捕まった状態で無理矢理ターンした場面からチャンスを掴むようになっていった。

 具体的に配置を換えて云々では無く、個々の質的な部分で剥がすことが多め。右サイドクルゼフスキが何枚も剥がして、エメルソンがシュートを打った場面を見ても、属人的な部分に頼っている感じはした。

 そんな中で迎えた前半アディショナルタイム。コーナーキックの流れからホイビュアのパスをスペースで受けたソンがターンからケインに繋ぐと、リームのマークを振り切ってシュートを決める。ケインのスーパーゴールで均衡を破った。

 後半はローラインで5-4-1を敷きつつ守る時間帯が多め。特にレノ→ミトロヴィッチのラインをケアしてなのか、ケインがプレスに出ても2CHが前に出て行かず、セカンド回収係としてDFラインと近い距離感を保っていた。ここは前半との違いである。

 ここまで来たらトッテナムがやることは明白。5-4-1をコンパクトに保って凌ぎつつ、カウンターで局面を打開する形だ。この辺から、降りてくるケインも前を向けるようになってきたし、そのケインを起点にカウンターを打てる場面も多々見られた。

 一方のフラムのブロックを組まれた相手を崩そのにかなり苦戦を強いられた様子を受けた。時たまトッテナムのCHがプレスに出すぎたことにより、その背中に出来たスペースを使って前進する形もあったが、シュートの形までは作れず。

 個人的に気になったのはフラムの両WGがトッテナムのDFラインを押し下げるような動きが無かったこと。ウィリアンとBリードは足元で受けたがっており、背後に抜け出すような動きが少なかった。そのため、サイドチェンジをしてもトッテナムのWBと正対した状態で1on1を余儀なくされていた。

 トッテナム目線で言えばエメルソンのウィリアンへの対応はかなり良かったように感じる。単騎での突破はほぼ許さなかった。

 試合終盤、フラムはDFラインを1枚削り、元トッテナムのカルロス・ヴィニシウスを投入し、前に圧力をかける。しかしソロモンに訪れた決定機もロリスがシャットアウトしゴールを許さず。

 試合は1-0でトッテナムが勝利。重要なシックスポインターを何とか逃げ切った。

雑感

 アーセナル戦とシティ戦で大きなダメージを受けた中で迎えた直接対決で勝利出来たことは大きかったと思う。正直戦術の部分もこの短期間で良くなるとは思えないので、そう考えたら妥当な試合だったのかなと感じた。

 本音を言えば自分たち次第では防げた場面はあったのではという疑問符は常に残っている。特に、レノへのプレスを速くすることで簡単にミトロヴィッチに蹴らせないようにするとかはもう少し欲しかったところである。

 まぁなんにせよこの直接対決に勝ったことで、上位追撃の望みは繋がった。この勝ち点3を無駄にしないよう、次節はホームでシティとのリベンジマッチに臨む。

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(編集者:川崎人)

 

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師弟対決はペップに軍配!カバーとプレスと個人の関係とは?【FA4回戦 マンチェスター・C×アーセナル】

みなさん、どうも。今季初の師弟対決。軍配が上がったのはペップ。アルテタはペップに対してしっかりとプレッシングでズレを消していく対応を見せて、多くのチームが苦戦する戦術を押さえ込むことに成功した。前半の結果がその象徴だろう。

その中で冨安の対応も繊細で堅実なもので、グリーリッシュの対応も行いながらホールディングのカバーも行うという離れ業も披露した。

 

後半に入ってペップが行った対応と、人が変わったことによる遅れがマッチしてしまい、アーセナルは負けてしまったが『今季こそ本物』ということをサポーターに見せつける試合内容であったことも間違いない。

今回はこの一戦をYouTubeで振り返ってみましたので、ご覧ください!

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また後日、『チャンネルとライン間の埋める重要性』を考えた記事を更新しますので、お楽しみに!!!

 

【サカはなぜ有利な状況でボールを引き取れるのか?】アルテタが仕込んだサカの引き取り方!

リーグ首位を直向きに走り続けるアーセナル。アルテタが仕込み、落とし込んだことは確実にチームに行き渡り、そして確かな幹となった。そしてその太く強く育った幹の周りを彩るのは若き選手たち。

ウーデゴール、マルティネッリ、サカ、エンケティア、サリバ、ホワイト。ジンチェンコ、トーマスの安定感。そしてジャカの新境地。その他にも貢献している選手が多くいるのもアーセナルの好調を支えているのは確かだ。

 

そしてアーセナルの右サイドで異彩を放っているのがサカだ。アルテタの下で確かなスターに成長しているサカ。彼のボールの引き取り方はアルテタから学んだことではないだろう。

ボールを受けた時点でマーカーよりも優位な状況でドリブルに入ることができるようになっていて、さらに周囲に多大な影響を与えることができている。

では今回は「アルテタが仕込んだサカの引き取り方」についてを考えていこう。

動きながら受けるサカ

ここから文章で考察を行っていくが、YouTubeショートでサラッと解説した動画をアップさせて頂いている。

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では本題に戻って早速、サカのボールの引き取り方についてを考えていこう。

『その場』で引き取る場合

動きながら引き取る場合を考察していく前に、まずは「その場」で引き取る場合についてを説明していこう。

その場で引き取るはこのような状況のことを僕は指している。以下の図をご覧になってほしい。

例えばこのようにSBからボールを引き取るときに、レーン移動をせずに縦に降りてボールを受ける場合だ。そうするとSBを動かすことができなくなる。もちろん大胆に降りるとマーカーを縦に動かすことができるが、これでは出し手と近い状況になってしまうので引き連れたマーカーがそのまま出し手までアタックすることが可能になる。

だからこそ、あまり降りずにボールを引き取ることが多くなる。(当然、数多の状況があるので状況によりけりだが。)

そしてその場でボールを引き取ると「相手を動かせない」と同時に自分は「背負った状態」で1vs1に入らなければならない。相手を背負う(=後ろ向きのプレー)と前を向く労力が必要になり、何よりも不利な状況から1vs1に入らなければならないのでドリブラーにとってはかなりのストレスにもなるだろう。

さらに周囲のサポートにも影響を与えてくる。以下の図をご覧になってほしい。

このように引き取った状況が不利(後ろ向き+マーカーを動かせてない)ので周囲のサポートも後ろになる。こうなるとサポートの選手たちも近くの相手選手やマーカーを動かすことが難しくなる。

このようにサポートが後ろになるので、引き取った選手と同様に相手を動かすことが難しくなる。だからこそ、サイドで圧縮されやすくなってボールを失いやすい。さらにこの状況でボールを失ってしまうと「相手が整った状況」でボールを奪われてしまうので、被カウンターになってしまうことが多くなる。

また、ボールを失わずともサポートが後ろになるので「やり直し」を行わなければならない。この「やり直し」は能動的(ポジティブな)なものではなく受動的(ネガティブな)なものになるので、再び崩しに入るための更なる労力が必要になる。これを繰り返してしまうと、やはりストレスが溜まり相対的にミスは多くなってしまう。

 

ただ捕まった状況でも3人目や4人目の関わりがあった場合には細かいパスワークで崩すことも可能だし、ワンタッチでボールを回す技術とサポートの的確性があれば一気にフィニッシュワークまで持っていくこともできる。何度も触れるが、やはりサッカーは数多な状況があり、絶対的なものはない。だからこそその状況でもっとも良いとされるプレーを選択して実行する必要がある。

そしてアルテタがサカに教授した動きながらボールを引き取るプレーはサカの特徴を存分に生かし、周囲にも良い影響を与えている。ではどのようにしてサカがボールを引き取っているのかを説明してこう。

「動きながら」引き取る場合

これは何度も行っていることで、確実にアルテタが落とし込んだことだ。ではそれがどのようなものなのか。こちらの図をご覧になってもらいたい。

このようにホワイトからボールを引き取るときに、サカは内側に入りながらボールを引き取る。これを行うポイントがあって、それが「マーカーのベクトル」の作り方だ。守備のベクトルを前向きに作り出し、急に方向転換をすることで守備ベクトルを自分から逃す。こうすることでマーカーから離れた状態でボールを引き取ることが可能になっている。

そしてこのプレーの大きなメリットとして、有利な状況で1vs1に入れることだ。では有利な状況とはどのような状況なのか。それがマーカーを半分置き去りにした状況でボールを引き取れる状況だ。だからボールを引き取った時に、相手よりも体が半歩前に入っている。こうなるとボールを守れるし、最悪ファールをもらうことが可能になる。アルテタはサカのドリブル能力を生かすために、そしてよりゴールに向かうための無駄な労力を省くために、このような引き取り方をサカに教授した。

そしてこのプレーを継続して行っていくと、マーカーの立ち位置を内側に強制移行することができるので、「その場」でもボールを引き取れて対面で1vs1に入ることも可能になる。これでサカは常に複数の選択肢をマーカーに与えながら、ボールを引き取ることができるようになっている。

 

さらにサカがこの動きを加えることで相手を動かすことも可能になる。だから周囲のサポートの位置も当然変わってくる。この図をご覧になってもらいたい。

まずサカが内側に入りながらボールを引き取ると、マーカーを引き連れると同時に内側の選手(ここではCH)も誘き寄せることが可能になる。すると当然、大外(SBが動くので)が空き、誘き出したCHのマーカー、ここではIHがフリーになれる。

要するにこのような状況になる。ここからアーセナルは主に2つのパターンがある。

1つ目がSBがオーバーラップするパターン。

このようにサカがSBを動かすことでその外側をオーバーラップ。これでサカに対して更なる選択肢を与えてDFを混乱させる。当然ボールを失ったときのためにIHが後ろのサポートを行うと同時にネガトラ要員として機能する。これはポジティブなサポートで、前に出るため、もしくは新たなる展開を促すためのサポートになっていて、現にここでウーデゴール(トーマスのこともある)が受けると逆サイドまで展開、またはウーデゴールの異次元かつ糸を引くようなスルーパスで一気にフィニッシュまで持っていく。

このパターンは多く見受けることができ、ホワイトのオーバーラップするタイミングも絶妙だ。

そしてもう1つがこちらになる。

そんなに頻繁には見られないが、IHがサカの外側を回るパターン。これは試合に2、3回見られる程度のもの。この場合は後ろのサポートをSBが行うことが多くなる。だからサポートとネガトラ役をホワイトが担うパターンだ。

アーセナルはサカが内側に入ってボールを引き取ることで相手を動かし、そして周囲の選手もそれに合わせて動きを加えていく。全てはゴールに向かうためのものであり、そしてゴールに向かうための無駄な労力を省くためのものでもある。

 

先ほども触れたが、サカがこの内側の引き取りを行うことで「その場」で引き取ることも可能になる。そうすると、後ろのサポートを行いってリターンを受けるプレーもネガティブなものではなく、ポジティブなものになる。なぜならサカがその場で引き取ったときに、時間があり相手を誘き寄せることができるからだ。

このようにアルテタはサカの個人戦術を向上させたことで、サカをプレミア屈指のドリブラーに仕立て上げ、そしてチームに多くのものをもたらす選手に育てあげた。

 

アルテタが築き上げた土台の上に多くのものが積み重なっている。19年ぶりのプレミアリーグ制覇まで愚直に走り続ける若きアーセナル。残り半分ほどとなった今季をこのまま突っ走ることができるのか。優勝の行方は若きドリブラーの出来にかかっているかもしれない。

 

最後までご朗読ありがとうございます。これからは個人戦術に焦点を当てた記事も書いていこうと思いますので、どうぞお楽しみに!

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ではまた次回の記事もお楽しみに!

熱狂へ誘う最高の試合!アーセナルが逆転できた理由とは!?【プレミアリーグ第21節 アーセナル×マンチェスター・U】

どうも!みなさん!この試合見ましたか!?

僕は起きれずにリアタイできず、ひどく後悔しています。ですがディレイで見てその後悔も薄れました。なぜならとても興奮する、熱狂へ誘ってくれる両チームがいたからです。

かつてはプレミアリーグのシンボルだった両チーム。小学生の頃にブイブイ鳴らしていた両チームにこんな面白い試合をされると、どこか懐かしく、嬉しい気持ちにもなりました。

 

試合内容もかなり面白いもので、この勝利でアーセナルはまた1つ、優勝に近づきました。さらに自信の深まる一戦だったのは間違いないでしょう。

では今回、アーセナルがどのようにして攻守に渡ってユナイテッドを押し込むことができたのか。それをYouTubeで考察しましたのでどうぞご覧ください!

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ではまた次の記事もお楽しみに!!!

 

2022ー23 プレミアリーグ 第7節 マンチェスターシティvsトッテナム マッチレビュー~見逃してはくれない相手~


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マンチェスターシティ4-2トッテナム

得点者(TOT)
44' 21デヤン クルゼフスキ
45+2' 12エメルソン ロイヤル

得点者(MCI)
51' 19フリアン アルバレス
53' 9アーリング ハーランド
63' 26リヤド マフレズ
90' 26リヤド マフレズ

両チームのフォーメーション

前書き

 エリザベス女王崩御を受け延期となっていたこの試合。両チーム共に直近の試合で大事なダービーマッチを落としているため、この試合で嫌な流れを払拭したいところ。

 トッテナムは前節のアーセナル戦から4人スタメンを入れ替えて臨んだ。怪我でワールドカップ明けから離脱が続いていたベンタンクールは、この試合から復帰を果たした。

 対するシティは前節のユナイテッド戦から、5人のスタメン変更。ストーンズがこの試合から復帰し、右SBには18歳のリコ ルイスがスタメンを飾った。

効果的なプレスだったのは?

 両チーム共にハイプレスで試合に入る。シティは4-1-4-1の陣形を作りつつ、IHかWGがスイッチ役となってボールホルダーにアタックする入りを見せた。

 対するトッテナムは、ケインがGKのエデルソンまでスプリントをかけながら出て行くシーンが多め。前から追いかけつつサイドに誘導したい狙いがあったと思われる。

 開始早々にエデルソンからアケと繋いでグリーリッシュにボールが入った際に、ロメロとエメルソンがサンドして奪ったシーンは、1つの理想だったと思う。

 以前までのトッテナムvsシティの試合と言えば、トッテナムがローラインで5-4-1を作って構えつつ、カウンターで一気にひっくり返す形が多め。昨シーズン、エディハドで劇的勝利を収めた際も、ブロックを組んで速攻への好機を伺い続けていた。

 それでも今シーズンはハイプレスに行く傾向が強めなトッテナムは、この試合でもその流れを踏襲。そこが、直近の対戦カードと比べての変化であろう。

 しかし相手はシティである。プレス回避で言えば相手の方が何枚も上手である。開始早々にアケからグリーリッシュに当てて、レイオフからボールを受けたロドリから、2CHの裏で構えたギュンドアンという形でボールを動かされ、前進を許してしまっている。こうなるとトッテナムはミドルブロックに移行。5-2-3っぽい形で守りを固める策に出る。

 シティの保持はリコルイスを内側のレーンに入れた3-2-4-1っぽい形。トッテナムの2CH+3トップの五角形で守りつつ中央を封鎖するのに対し、五角形の中にロドリとリコルイスを入れる。そこからケインの脇でボールを受けつつ、シャドーが絞って来たら外に張るCBに届ける形で前進を試みていた。

 一方でトッテナムの保持で言えばベンタンクールの復帰が大きかった。中盤でボールをキープすることで、相手のプレスを無効化しつつ左右に振り分けられることが出来るので、保持の場面でチームに落ち着きをもたらしていた。

 特に5:26~5:30までの、プレスに行って陣形の乱れたシティの間を取るポジショニンが素晴らしかったので皆さん見て欲しいところ。

 それでも試合はシティペースで進む。トッテナムが前から行くことによって、縦が間延びするケースが多め。その際、間で浮くギュンドアンの存在がとても厄介であった。

9分のシーン

 8分のシーンではトッテナムのCH前に顔を出してレイオフをしたり、9分の場面では逆にCHの裏で受けたしていた。そこからアルバレスを使った加速するのが主な流れである。

 コンパクトなスリーラインを維持出来るミドルブロックであれば、常に人を捕まえることが出来るため間延びすることは無い。そのためそんなに怖くは無かった。しかし、前から行くことで選手間が開いてしまい間が空いてしまう。そことのリスクは、常に隣合わせの中で試合は続いていた。

 よってトッテナムのハイプレスが効果的だったかと言われれば何とも言えない入りであった。

適応からの2得点

 基本的に敵陣に押し込む時間が長かったのはアウェイのシティである。押し込んだ所で前線で幅を取る両WGにボールを届けつつ、WGの単騎突破orサポートを使ってファーサイド目がけたクロスという感じである。

 そこの匙加減はシティWGに対しトッテナムのDFが何枚で対応して来るかで決めていた風に思える。1vs1なら単騎で剥がしに行くし、ダブルチームで対応に来るならバックパスでサポート役の選手を使うという感じである。

 ただ残り30メートルでの攻撃には苦労をしていた印象だ。特にグリーリッシュに対してはエメルソンが奮闘を見せていたように思える。

 この試合のエメルソンは良かったと個人的には思う。裏抜けの回数も増えたし、落ちて受けた際は斜めは横にボールを刺せるようになるなど、ビルドアップや保持での欠点が改善されつつあった。

 話は再び試合の方へ。試合の半ばに差し掛かると、トッテナムが守備で人を捕まえられるようになる。前からのプレスに行く際の着いて行き方は間違っていない!と思える時間帯が前半の中盤以降から増えて行った。特に前から追った際に、捕まえた受け手へと誘導できるようになったのは序盤からの変化だと取れる。

 しかし、ボールを奪える訳では無いのが痛かった。クリーンにボールを奪ってマイボールに出来れば良いが、シティの選手にボールを隠されたりしてファウルになることが多め。リコルイスとベンタンクールの所はそれが顕著であった。よって、流れは止めれられるけど保持は出来ないジレンマに襲われていた。

 それでも人を捕まえる形は時間が進むごとに適応は出来ていったように感じる。自陣からのビルドアップが上手く行かなくなった事により、降りてくる回数が増えたマフレズに対してはペリシッチが後ろから対応。前を向かせない守備を続けていたし、32分の場面ではホイビュアとサンドでボールを奪い切っている。

 これは右サイドでも同様。降りてくるグリーリッシュにエメルソンが対応してボールを奪うシーンも見られた。

 ハイプレスというよりも、マンツー気味で捕まえに行く守備で試合の主導権を握り始めたトッテナム。このあたりから、何度かシティゴールに迫ることが出来ていた。

 一方でトッテナムがプレスの手を緩めればシティの攻撃が牙を剥く。長いボールからハーランドを使ってひっくり返したりと脅威となった時間帯はあったが、そこを何とか凌いでいた。

 ハーランドに訪れた2つの決定機を凌いだ直後。前線からプレスをかけに行くと、エデルソンのパスを受けたロドリからベンタンクールが高い位置でボールを奪い最後はクルゼフスキが決めてトッテナムが先制に成功した。ようやくハイプレスが結実した瞬間であった。

 更にその直後にはカウンターアタックが発動。右の外に開いたクルゼフスキから、エリア内のケインにボールが入ると、驚異的な粘りからシュートを放ちGKが弾いたボールをエメルソンが頭で押し込んでネットを揺らした。

 何と前半の終盤立て続けに2点を奪ったトッテナムが前半をリードして折り返した。

隙は見逃してくれない

 ここまでリーグ戦で先制した試合は6勝1分と負けが無いトッテナム。このまま勝ちパターンへとシティを引きずり込めるかと思ったが、そう甘くは無かった。

 シティはGKエデルソンがシンプルに前に蹴り出すことが増えた印象。降りるリコルイスとロドリに対し、トッテナムのホイビュアとベンタンクールが着いて来るため、中盤に大きな空洞が生まれる。そこを利用したかったのだろう。

 また非保持も積極的に前から出て行く。降りるクルゼフスキに対してはアケがタイトに対応をする。そこで1つ起点を作れなくなったのも大きかった。

 そんな中で迎えた51分。ケインがエデルソンまでプレスに出るも、後ろが着いて来ずにアカンジがフリーになっていた。そこから前進を許すと、フリーになっていたリコルイスで加速を許す。そのまま、右サイドで受けたマフレズに対しペリシッチが軽い対応を見せてクロスを入れられると、ゴール前の混戦をアルバレスに押し込まれ1点を返された。

1つ目の原因

 ここの原因は3つ。1つはケインのプレスに対して後ろが合わせて着いて来なかったこと。ここの押し上げは遅かったように感じる。

2つ目の原因への解答

 2つ目は浮いたリコルイスのところ。アカンジが出し所を探していた際に、上記の画像のようにソンが戻れば防げていたように思える。3つ目はペリシッチの対応。あそこで縦に行かれるのは少々厳しい気がする。

 色々な要因が合わさって見事に押し切られたトッテナム。更にその1分後には、自陣でのビルドアップミスからシティに押し込まれると、ロドリとのワンツーに抜け出したマフレズに折り返され、最後はハーランドに決められてしまう。わずか1分間で同点に追いつかれた。

 こうなるとトッテナムは苦しい。折角の2点リードが無に帰した瞬間だった。

 両サイドから前進に関しては、相手がしっかり捕まえに来るので中々難しい時間が多かった。それでも、クルゼフスキがアケを剥がす、もしくはここの対応が緩ければ前進出来るシーンは続いていた。しかし、こかは五分五分の勝負。確実に勝てる算段では無かった。

 それでも60分。クルゼフスキに対しアケが緩い対応を見せると、そこからクルゼフスキの落としを受けたダイアーが楔を入れる。ボールを受けたケインが落としたボールに走り込んできたクルゼフスキが運んでマイナスに折り返し、最後はペリシッチがシュートを放つがリコルイスに防がれてしまう。

 後半最大の決定機を逃したトッテナム。再びシティに押し返される時間が続くも、そこをカウンターで応戦する形に出る。

 だが、迎えた63分。シティに左右に揺さぶられると、ロドリのサイドチェンジをインターセプトしようとしたペリシッチがミス。ボールを拾ったマフレズに縦突破から右足で二アサイドを撃ち抜かれ逆転を許してしまった。

 完全に試合を主導権を持って行かれたトッテナムはメンバー交代で流れを変えようとするが、ここでゲームチェンジ出来る選手が不在であることが響いてしまう。セセニョンが投入された直後は左サイドからプレスを剥がせるようになったものの、逆転までの一押しが足りない。

 対するシティは前からのプレッシングを更に強める。これによってトッテナムのビルドアップ隊がバタつきを起こしてしまっていたし、シティにボールを握られる時間帯も増えて行った。

 何とかして同点に追いつきたいトッテナムはボールを奪い返すために前からの圧力を強めるが、エデルソンのキックによってプレッシングが引っくり返されるようになる。キックの先がトッテナムのDF3枚に対し、シティの攻撃陣4枚という地獄絵図が起ったりしていた。

 その結果90分にエデルソンのロングキックの処理を誤ったラングレからボールをかっ攫ったマフレズに再びをネットを揺らされ万事休す。試合は4-2で今シーズン初の逆転負けを喫した。

雑感

 前半の中盤から終盤にかけて流れを掴んだあの時間帯はとても良かったように思える。そこで2点も奪えたし、非常に良い前半の終わり方が出来たと評価しても良いだろう。

 ただ、後半クローズに持ち込めなかった。特に色々な要因が重なって喫した1失点目でバタつきが生じ、その流れのまま同点に追いつかれたのが痛かったように感じる。やはりシティレベルになると、ああいうミスは見逃してくれない。それに加え、ホームの声援という追い風も彼らにはあっただろう。

 これで1週目のビッグ6との対戦は1分4敗。それだけで勝ち点を14も落としてしまっている。

 今のトッテナムには、ビッグ6相手に真っ向から戦える力があるかと言われれば疑問符が付いてしまう。ビッグ6との対戦は残り4試合。そこでこれまでのハイプレスを続けるのか、違う形で戦うのかは気になるところだ。

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今回はおやすみ。

 

(編集者:川崎人)

 

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