当てるパスの乱発とレイオフを駆使してローマを引き摺り出したナポリ【セリエA 20節 ナポリ vs ローマ】

ゴール。フットボールというスポーツにおいてゴールという瞬間の熱が熱中を生み出し熱狂を呼ぶことは間違いないです。だからこそゴールに向かう情熱が異常なチームが好きです。それが耐え忍んで一刺しのカウンターであれ、ゴールのために守備をする熱が伝わった途端にそのチームが面白くなります。

まさにナポリとローマはこれを体現してくれたと思います。

本当に見応えのある一戦でした。少し時間が経ってしまいましたが、今回はこの試合について考えていきますので、最後まで目を通して頂けると嬉しいです!

動画でも解説してますので、YouTubeでもご覧ください!

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CBの視野を利用するプレス

まず考えていきたいのがモウ・ローマのプレッシング。彼らはCBの視野に影響を与えることでプレスを完結させることを考慮していたと思います。

ではどのようにプレスを完結させていたのかを考えていきましょう。こちらをご覧ください。

プレス開始の基本的な配置は5−2−1−2となっていました。これは過去YouTubeのショート動画でも解説していますので、こちらをご覧になってもらうとイメージが付きやすいと思います。

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この動画は2ボランチになってますが、基本的に中盤を捕まえていくことに変わりはありません。対ナポリだとペッレグリーニがDMFロボツカを捕まえること、クリスタンテとマティッチがそれぞれアンギサとジエリンスキをマンツーマンで捕まえることで、外側へ誘導を行っていきます。やはり中央を経由させないことを考慮します。

さらに2トップでもロボツカをぼかす/消すことを行います。ここからプレスが始まっていきます。

そしてここで大切になるのがWBのプレスのスタートポジションです。モウリーニョはWBに走力(ここではスピード)を要求しているのように思えます。WBに走力があるからこそ、少し低い位置からでもSBのジャンプに間に合います。さらにこの基盤があるのでWBがWGを隠すポジションからプレッシングをスタートすることが可能になっています。

ザレフスキが起用されること、昨夏にチェリクを獲得したのも納得です。

当然、WBがSBまで出ていくとCBが横にズレてWGに対応します。ここのWBとCBの対応準備が1つ目のポイントになります。

では次の図をご覧ください。

モウ・ローマが考えるのはSBのサポートをいかにして鈍角にするかです。鈍角にすればするほど、SBがボールを受ける場所が低くなっていきます。だからこれを達成するためにCBに影響を与えなければなりません。もっと言うとCBの視野に影響を与えなければなりません。

これらを踏まえると、やはり最も重要なポイントになるのは2トップのプレッシングになります。ディバラとエイブラハムがどれぐらいCBに影響を与えれるプレスを行えるかにこのプレス完結の成否がかかっていると僕は感じました。

では以下の図をご覧ください。

このようにCBに対してCFが制限をかけることでCBの見える場所を狭めていきます。やはり上から見るのと平面で見るのとは随分と見える景色が違います。さらに追い討ちをかけるように中央も完全に封鎖します。

ナポリからすると、CBで奪われてしまっては失点の確率がぐんと上がってしまいます。だからSBが降りてヘルプを行います。ここでCBの視野に入らないと見つけてもらえないので、かなり低い位置までSBが下がります。

ここで初めて「SBのサポートを鈍角にする」ことが達成されます。当然ですが、制限がかかっている状態でSBを下げさせなければなりません。

では次の図をご覧ください。

ここまでくると一気にプレスの強度を上げていきます。SBが下がっているので、WBがSBまで出ていきます。これで後ろ向きになればほぼ確実にボールを奪えることができますし、低い位置+中央を消しているのでWGに出した時にCBが狙って奪うことも可能になっていました。

 

モウ・ローマはCBの視野に影響を与えてSBのヘルプを強制することでWBを押し出せるような設計を作り出していました。ローマはナポリに制限をかけることでナポリのパスワークを止めにかかっていました。

それでもナポリはローマのプレスを止めることに成功します。では次はこれを考えていきましょう。

 

ナポリがプレスを止めた方法

ではどのようにしてナポリがローマのプレスを止めたのか、これはWBのピン止めに関係しています。この図をご覧ください。

このようにCBが広がりを作ることでCFのプレスの影響力を弱めることを行います。これがまずプレスの強度を弱めることに繋がっていました。ですが、これだけではプレスを止めることはできません。なぜならWBがジャンプをすれば、まだSBに強い制限をかけることができるからです。

だからナポリはWGがWBの視野に入るようにしてポジションをとっていました。こうすることで、SBをピン止め/ジャンプの遅れを作り出すことに成功します。

では以下の図をご覧ください。

WGがWBを止めたこととCBがプレスの影響力を弱めたことで、サポートの角度を無くされてプレスを嵌められるSBの場所で、サポートの角度を付けつつポイントを作り出すことが可能になっていました。さらにSBでポイントを作ることができるようになったので、IHがCHを引っ張ることでさらにプレーする時間を与えていきます。これでSBの横のサポートをDMFロボツカが行うことで逃げ道を作り出します。しかしここはペッレグリーニの守備範囲内になっていました。だから以下のように展開をすることでプレスを止めています。

このようにボールサイドに人を寄せること、カバーを強要させることで意図的に逆サイドにスペースを作り出していました。さらに先述したように、IHがCHを引っ張ることとWBをWGが止めたことでSBが時間を得れるようになっています。だからこそ逆サイドまで見ることができ、そこにパスをすることでローマのプレスを止めて、一度撤退させるように仕向けていた印象です。

 

このようにしてナポリはローマのプレスを止めることに成功し、保持の局面から崩しを行うことができていました。では次はナポリがシーズンを通して行っている「引き摺り出す」攻撃について考えていきましょう。

 

当てるパスとレイオフで引き摺り出すナポリ

ナポリは当てるパスとレイオフを頻繁に行うことで、素早く横に動かして相手を引き摺り出します。これはローマにも例外なく行っていました。個人的に特徴的だと思うのが、ナポリはDF–MFのライン間に人をあまり配置せずに、MF–FWのライン間に人を割きます。これは横に動かすために配置しているのだと思います。さらにライン間に縦パスを「差し込む」のではなく、縦パスを選択する時の多くは「当てる」ものになっている印象です。この当てるパスが相手を引き摺り出すものになっており、さらに差し込むパスではないため、レイオフを作りやすくなっているのだと思います。

では具体的に図を使って説明をしてきましょう。こちらをご覧ください。

表すのならばナポリは2−5−3で相手を引き摺り出して段差を作り出します。ここで最重要となってくるのが「横に素早く」です。これを土台としてプレーを選択していきます。これを行うために、レイオフと当てるパスがあります。このプレーが方法で、横に素早くが方針で、段差を作って崩しに入るのが目標です。そして当然ゴールが目的となっています。

だからこそ、上の図のようにMF–FWのライン間に5枚を割くことが多く、WGが大外でピン止めを行っています。この試合は試合はクヴァラツヘリアとロサーノがそれぞれザレフスキとスピナッツォーラをピン止めしていました。これで5−3−2でブロックを作り出すローマに対してナポリは3センターの外側に立つSBでポイントを作ることができるようになります。

ではここからはどのようにして横素早く動かして段差を創出していたかを考えていきます。

こちらをご覧ください。

崩しに入るポイントとしてナポリはハーフスペース(WGの並行のサポート)かつMF–DFのライン間に人を配置しないことが多いです。ここに人を配置しないのは相手を引っ張り出すために繋がっていると僕は考えています。

それはなぜか。以下の図をご覧ください。

ローマとの一戦の場合、SBで時間を作り出すことで3センターの外側の選手を釣り出すことができます。ここではクリスタンテです。ここでクリスタンテは「自分の背後に人がいない」のでSBに迷いなく出ていくことができます。この守備の影響を及ぼすためにナポリはハーフスペース+MF–DFライン間に人を配置していないのだと僕は予想しています。

ここではマリオルイでクリスタンテを引き摺り出すので、それに呼応して当然マティッチとペッレグリーニはスライドを行います。これでナポリはローマの3センターを縦と横に動かすことに成功します。そしてここから当てるパスとレイオフを駆使して逆のディロレンツォまでボールを持っていきます。先ほども言いましたが「横に素早く」です。だからこそ、ローマの「ポジションの戻し」が間に合わない/遅れることで、ナポリは段差と遅れを発生させることが容易にできるようになっています。

 

この手前を素早く動かすプレーの精度がかなり高く、さらにそれを達成するための技術を持った選手がいるので、ナポリは強いのだと思います。

 

当然、このパターンだけではありません。以下の図をご覧ください。

このようにSBがWGにボールを預けることでワンツーのような形で空けておいたハーフスペースかつMF–DFのライン間に入り込みます。こうすることでSBの対応をしているIHが後ろに引っ張られることが多くなり、さらにCBに影響を与えることが可能になっていました。当然、ここでWGとSBのセッションで崩しに移行することもできますし、IHが出て行ったSBの場所に降りることでWGのサポート(ネガトラ込み)を行います。しっかりとIHがバランスをとるのも偉い。

だからこそSBとWGのセッションで崩しが行えなくとも、FWーMFのライン間を素早く横断することができます。

このようにSBとIHが入れ替わりながらトライアングルを形成しているのでWGは3つの選択肢を持てます。それがSBとセッションする、WBとの1vs1に入る、IHへのレイオフです。ナポリのWGに入る選手は誰が出ても1vs1で仕掛けることができ、特に今季はクヴァラツヘリアはもの凄いです。1vs1を制してクロスからチャンスを作り出すことも多くあります。もちろん判断も良く、無理ならば上の図のようにレイオフをして逆サイドまで持っていきます。そして逆サイドで崩しを行っている間にボックス内に入ってフィニッシャーとしても機能しています。

 

この2つのパターンで横断した場合は、逆SBから斜めに差し込んでいきます。ナポリがライン間に差し込むときは斜めまたは横から差し込むことが多くなっていました。

特に右SBディロレンツォは内側で中盤とセッションを加えながら入りこむことができるので、この方法ととてもマッチしていると思います。現にシメオネの決勝ゴールはディロレンツォが内側で絡んでから生まれたゴールでした。

当然、差し込む縦パスを使うこともありますが、その頻度は他のチームと比べても極端に少ないと僕は感じます。

 

そしてナポリが恐ろしいのは、チームとして素早く横断していく中で独力でライン間に侵入できる選手が揃っていることです。特にこの試合では試合ではジエリンスキのターン技術が異常だったと僕は見ていて思いました。

このようにジエリンスキがボールを受け、そこから独力でターンして空けておいた場所に入っていくことで崩しに入っていきます。これは先制点で見せたプレーを筆頭にジエリンスキのターン技術は半端ないなと見ていて思いました。すげえよ、ほんと。

 

強さを見せつけるナポリ

圧倒的な強さで首位を走り続けるナポリ。追いつかれとしてもそれを跳ねかすだけの確固たる強さが今季のナポリには備わっています。オシムヘンを筆頭にゴールを量産する攻撃陣に、その能力を最大限に生かすための崩しとその入り方。スパレッティが作り出したチームは本当にスリリングで面白いチームになっていると思います。ボールがたくさん動いて、なおかつゴールに向かっていくので見ていて楽しいです。

当然、ローマにも違った面白さがあります。ゴールを奪うための守備からの構築はモウリーニョならではだと思いますし、保持からの攻撃も組み立ててゴールに向かうことができるようになっています。ディバラという華のある圧倒的スターを生かすチームになっていますし、彼hがチームに貢献することも厭わないので良いチームになっています。もちろん主役になれる選手も多くいて、魅力的なチームだと思います。

 

冒頭にも触れましたが、違った形でゴールに向かう情熱を見せつけてくれた両者。本当に楽しい試合をありがとうございました。まだ見てない方はぜひディレイ観戦で見て欲しいですし、見た方はもう一度見返して見てほしいです!

 

今日の記事はここで終わりとなります。長い記事となりましたが、最後までありがとうございました!

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ではまた次の記事もお楽しみに!